私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
此方を捕まえようとしてくる手長足長達をノックアウトした私達は、先程その1人から椿が聞き出した情報を元に保管庫への道を進む。
「それにしても、全く・・・保管庫が地下じゃなくて、まさか1階だったなんてね」
「危うく迷子になる所でしたよ。本当、酒呑童子さんの馬鹿野郎」
聞き出した情報によればホールから進んだ通路の先は迷路に改造していて、更に"ある妖怪"の力で保管庫へ行きにくくしているんだとか。そこまで厳重な防犯をするなんて、あのネ〇ミ先輩もどきは流石に口だけじゃないって事か。
そして、迷路の入り口で狐の姿から元の姿に戻った私と椿は、持ってきていた服を着てから迷路の先を進んでいく。
この狐に変化する妖術、狭い場所とかに入れるのは便利だけど、その度に一々すっ裸にならないといけないのが面倒なんだよな。まぁ、すぐ妖異変化するからあんまり問題無いんだけど。
とはいえ・・・地味に椿が女性慣れしてきたせいで、普通に着替えてる途中でこっちを見てくるのが恥ずかしいや。
「さて、と。こういうのは、綾ちゃんが良くやるような闇雲な進み方じゃ埒が明きません」
「まぁ十中八九、罠は仕掛けられてるだろうしね。それなら、一体どうするのさ?」
「確か・・・右手を壁に付けて、そのまま真っ直ぐ歩いて行けば出口に辿り着けるハズ、かな」
「わ〜お、流石パズルが得意なだけあるね」
「むしろ、力ずくに攻略しようとする綾ちゃんの方が変だからね?この前だって中々解けないからって、力で無理矢理やって知恵の輪を壊したでしょ?」
「ぐっ・・・猛省してます」
うん、アレは本気でイライラしてやっちゃいました。ま、細かいのは私の性にあわないし。
――そんな失敗話をしながら椿を先頭に、2人で右手を壁にベッタリくっつけたまま進んでいく。
しかし10分くらい歩いた時、何故か先程まで居たスタート地点の目の前に戻って来てしまった。
「うぅ・・・何でですか!?」
「ちょっと待って。この迷路、何かおかしいと思ってたんだけどさ・・・」
その道中で違和感を覚えていた私は、自分の直感が指し示す方向に人差し指を向ける。
そこには、やはりというか迷路の壁が分かりにくいレベルの微妙な動きで、常に道を変化させている所が見えたのだ。
「うわ、やっぱり!こんなの、クリアさせる気ないって言ってるモンだろ!」
「う〜ん・・・防犯で言えば完璧だと思うけど、職員の人が保管庫に行きたい場合はどうしているのかな?」
「そりゃ、確実に此処を抜ける方法はあるハズだよね。でも、そう考えてる時間は無さそうだよ」
「そうだね。迷路に入る前の通路の方から、センターの職員さん達の妖気が近づいてきてるし。しょうがない・・・ちょっと合わせ技をやるよ、綾ちゃん!」
「OK、了解だ!」
私と椿は各々の武器を取り出して、それに"神妖の力"を流し込んでいく。修行で攻撃力が前よりも高くなっているから、うっかり流し込み過ぎないようにしとかないとね。
「この迷路を作っている妖怪さ〜ん!今から此処に突風と冷気を混ぜた斬撃を飛ばすから、死にたくなかったら逃げて下さいね〜!」
準備が出来た後、すぐに椿が迷路の方へ呼びかけた。それでも、隠れているであろう相手は返事の1つもしない。
まぁ、壁全体から妖気を感じるから此処に隠れている妖怪が妖術か妖具で迷路を作っているハズだし、そりゃ逃げるつもりは無いよね。
「妖異顕現、泰焚・峯璃裂弩(タイフーン・ブリザード)!!」
「神風、華螺羅狗斬(かららくざん)!!」
ポニーテールへ流した妖気で冷気と豪風を放った私に合わせ、椿も僅かに解放した"神妖の力"を乗せた浄化の一撃を放つ。
その椿の混ぜた浄化の風で強化された沢山の竜巻が、勢いを増しながら迷路内へと入っていくと――
「うわぁぁぁあ!!」
迷路内から突然悲鳴が聞こえて、アチコチの壁から大きな顔が出てきては逃げ回るように消えてを繰り返しだす。
すると、その顔の妖怪のせいか迷路はグチャグチャになっていった。
「えっと・・・よし、見つけた!綾ちゃん、出口はあっちにあるよ!"壁面"さんが逃げてる内に、早く迷路を通り抜けちゃおう!」
「よっしゃ!やっぱり力押しは最高だな〜!」
「そ、そうだね」
そう言った私に椿は苦笑いを浮かべながら再び先の通路を走り始め、それに続いて私も走るスピードを上げながら、薄暗く不気味な雰囲気のある通路を駆け抜けていく。
「ほっ!とっ!あわわ・・・あっぶない!」
「ふっ!うぉ!よよよ・・・ギリセーフ!」
扉も何も無い通話に仕掛けられた、妖具の罠をジャンプしたり片足で滑りながら掻い潜っていく私達。
これ、妖気の感知能力が高い私と椿だからスイスイ進められるけど、職員の人にはトコトン不親切なシステムに感じるわ。あぁでも、きっと職員には罠が作動しないようになってたりするんだろうな・・・おのれ。
「うぐぐ・・・踏んだら死ぬ、踏んだら死ぬ」
「だ、大丈夫だ私・・・バレリーナ選手になったって思え、バレリーナ選手に」
そんな嫌がらせにも近い足元の罠に四苦八苦する中、私達はその先の通路を確認してドン引きする。
「ちょっと待って、綾ちゃん・・・この先、足の踏み場が無いんだけど!?」
「マジか!?うっげぇ、しかも次に安全そうな所は数メートルも先かよ!最っ悪だ〜!」
「他には・・・無い感じだね。そうなると、僕も綾ちゃんも片足でジャンプしないといけない訳ですか」
「は、はは・・・いいよ!やってやるよチクショ〜!」
「綾ちゃん!?あ〜、もう!!」
私と椿は片足で深く膝を曲げて、数メートル先に向かって大きく飛び上がる。
「いよっ!とぉ・・・おおおぅ!?」
「はっ!と・・・うわっ、わわわ!」
そして思いのほか余裕で行けたけど、今度はジャンプに勢いを付け過ぎたせいで危うく2人して目の前のセンサーに引っかかりそうになっちゃったよ。
また片足でしか立てないスペースだし、ひとまず落ち着いて――あっ、椿の鼻先にハエが・・・嫌な予感。
「えっ、へっ?ちょっとハエさ・・・は、くしょっ!」
「あっ・・・つ、椿〜!」
椿がハエのせいでクシャミをしてしまった瞬間、浮かせていた方の足を思わず下ろした事で罠のセンサーに引っかかってしまったのだ。
「うわぁぁぁ!!!!」
「ぎゃぁぁぁ!!!!」
そして、それに続けて私達の足元の床がガパッと大きく開いて真っ逆さまに落ちてしまう。
「神風の鉄槌!」
「神風・祭繰龍(サイクロン)!」
このままだと地面に激突して大怪我なんてレベルじゃ済まなくなるので、何とか無事に着地出来るよう私と椿は"神妖の力"を解放して、迫り来る真下の地面に神術を放った。
「ふぅ・・・」
「な、何とかなった・・・」
私が戦闘で良く使っている風の妖術よりも強力な風の神術のお陰で、私も椿も落下の勢いを大きく落としてゆっくり着地出来たよ。
それから"神妖の力"を抑えて、何処に落とされたのかと周囲を見渡してみるけど・・・周りは、隣合う椿の距離から先が全部真っ暗だ。
「それにしても、一体何処なんだよ此処は〜?周りが上の廊下より暗くて全然見えないぞ」
「ん〜、落ちてきた場所は・・・高いですね。これは、飛び上がれないかな・・・」
「マジか、困ったな。オジサン達はまだホールで暴れてくれてるだろうけど・・・センターに直接殴り込んでる訳だし、あまり時間は無さそうかな」
「そうだね、綾ちゃん。何とかして、上に登る階段を見つけるか、もしくは他の脱出方法を考えないと」
そうして椿と話している内にも、私達の目は暗闇に慣れてきて少し周りが見えやすくなっていた。
ひとまず椿から離れ過ぎないようにして周辺を探ると、どうやら私達は大きな吹き抜けのようになっている所から落ちてきて、円形の広間のような場所に着地していたようだね。
そして、その広間からは6つ程の廊下が放射状に暗闇へと伸びている・・・と。そうなると、やる事は1つしか無さそうかな。
「椿、ここは分かれて進んだ方が良いと思うよ。どっちかが先に保管庫へ到着すれば、此処に来た目的は果たせる訳だし」
「う〜ん・・・分かったよ。これ以上遅くなると「どれだけ待たせる気だ〜」って酒呑童子さんが怒りそうだもんね。急がないと!」
私と椿はそれぞれ分かれて、適当に選んだ廊下を真っ直ぐ走った――んだけど、どういう訳か私も椿も同じ広間へと戻って来てしまった。
「あれ?戻って来ちゃった?」
「またパズル系かよ!こうなったら、総当りで行くしかない!」
きっと道が間違っていたのかも、と思って今度は別な廊下へ進んでみても・・・やっぱり、広間へと戻って来てしまう。
しかも、そんな事を2人して10回くらい繰り返しても広間に逆戻りしてしまうのだ。
「ま、まさか・・・私達、ゲームで言うバグ空間に落っこちちゃった?」
「わぁぁあ〜ん!そんな怖い事言わないで〜!僕の気がおかしくなるよぉ!!」
「ごめんごめん、ちょっとした異空間ジョークだって」
「異空間ジョークって何ですか!」
こんな与太話で椿を泣かせるつもりはありませんでした。だから椿、怖いからと言ってポカポカ私の頭をグーで頭を叩かないでもらえませんかね?
それにしても・・・此処は椿以外の妖気も感じられないし、狐2人に助けを求めようと思っても内部からジャミングされてるからか通信が繋がらないんだよな。
う〜む、こうなったら奥の手で行ってみるか。
「よし、椿。今度は出来るだけ高くジャンプしてみて。私が風の妖術で思いっきり上昇速度を上乗せすれば、多分さっきの廊下まで登れるかも」
「はぁ、はぁ・・・そっか、天井の穴から落っこちてきたんだもんね。それじゃあ、行くよ・・・たぁ!!」
そう言って飛び上がった椿に風の妖術で加速を付けた瞬間――
「ごっふぁ!?いっだぁい!!」
「わぁ!ごめん綾ちゃん!!・・・って、えっ!?」
なんと、天井へ上げたハズの椿が急に私の足元から出てきて、私の顎へと物凄い勢いの頭突きが入ってしまったのだ。
「い、いててて・・・何じゃこりゃ。本気でバグってるみたいな空間だぞ」
「落ち着いてよ、綾ちゃん。空間がバグってるなんて、そんなの原因か何か無ければならないって!」
すると、一生出られないんじゃないかと少し不安な気持ちになってきた私に、椿は泣きそうになりながらも深呼吸しながら私の頬をパチンと両手で叩いてくる。
「そうだね・・・OK、大丈夫だ。椿、絶対に此処から脱出するよ!」
「うん!」