私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾捌話 こんな妖怪が空間を歪ませてたとか信じられます?

 

廊下を進んでも天井へ飛び上がっても脱出出来ない空間の中、私と椿は何が空間の原因となっているのかと頭に考えを巡らせる。

 

「気付いたんだけどさ、センターの地下にこんなデカい広間なんてあったっけ?ライセンスの試験を受けた時でも来た事無かったような気がするんだけど・・・」

 

「増築した、とは思えないや。それだったら、他の妖怪さんか妖具で此処の空間を作ったって考えた方が現実的だよ」

 

「だよな〜・・・でも、妖気は全く感じない訳だし。どうなってんだ、こりゃ?」

 

「う〜ん、空間に関係する妖怪さんは・・・鏡の妖怪"雲外鏡"さんとか?でも、これは鏡を使ってどうにか出来るものじゃないし・・・」

 

そう話し込んでいたら、いつの間にやら椿が顎に人差し指を当てて考え込む探偵モードに入っちゃったよ。

 

でも、こういう時の椿って妙に頭が冴え渡っているから意外な所で閃いたりして頼りになるんだよね。

この間も私が料理に使う妖怪食を失くして慌ててた時に、ピタリと妖怪食が隠れている場所を言い当ててたし。

 

「綾ちゃん、1つだけ有り得そうな妖怪さんが居るのを思い出したよ。存在感の無さで人々に認知されていない妖怪さんです」

 

「存在感の無い、だって?この空間のおかしさが、そんな妖怪と何の関係が?」

 

「話はここからだよ。その妖怪さんは、空間と空間の境界線をアヤフヤにして、何もかも虚ろにしてしまう"虚(うろ)"さんの可能性があるんだ。自分の妖気すら虚ろにしてしまうから、幾ら感知能力が優れてる僕達でも捉えられなくて当然なんです」

 

「なるほど・・・じゃあ、その"虚"って妖怪はどう探したら良いんだ?」

 

推理の内容に私が頭を傾げていると、椿は少しイタズラっ子そうな可愛らしい笑みを浮かべる。

 

「ふふ、簡単です。虚さんの弱点、それは驚かされる事に弱いんだ。だから――わっ!!」

 

「なるほど、ビックリさせれば良いって事か――わぁ!!」

 

そうして不意を突いて2人で大声を出してみた・・・けれど、特に向こうから反応は返ってこない。

 

「・・・何も起こんないけど?」

 

「あっ、そっか。向こうからは僕達の事が見えてるだろうから、大声出しても意味ないや」

 

「ちょぉぉぉい!?ほ、他に何か方法は〜!!」

 

「ゆ、揺らさないで揺らさないでっば!これ以上の情報は妖怪辞典のアプリにも載ってなかったんだし、無茶言わないで〜!」

 

「ご、ごめん椿・・・私もちょっと考えてみる!」

 

ついつい椿の肩をガックンガックン揺すってしまった私は、頼りきりじゃいけないと思って新たな策がないか考え込む。

 

「とは言ったものの、驚かせる方法は結構キツそうだしな〜・・・」

 

「いっその事、僕と綾ちゃんの"増幅"の"神妖の力"で無理やり突破してみるとか・・・?」

 

「何だと!?」

 

「うわぁ!!」

「ぎゃあ!!」

 

そうして2人で同じように腕を組んで悩んでいたら突然、私達の後ろから大声が聞こえたからこっちがビックリしちゃったよ。

 

しかも、何だ何だ!?その声に振り向いたら、いつの間にか通路ギリギリな体の幅をしたホームレスみたいな人が居るし・・・。

 

「ビックリしたなぁ、もう。もしかしなくても、この人が椿の言ってた虚さん?」

 

「うむ、左様だ。バレてしまったものは仕方ないが・・・お前、さっき増幅の"神妖の力"と言ったか?まさか、お前達・・・それを使えるのか?」

 

「あっ、はい。使えますけど」

 

「気になるなら、僕と綾ちゃんで実際に見せましょうか?」

 

「いや、良い。2人が上で暴れていたのは見ていたし、繋ぎも確認した・・・そうか。そっちの狐の子が椿で、その人間の子が綾か」

 

すると、今度は虚って妖怪が初めて会うハズの私達を知っていた事にビックリさせられる。

 

「へっ!?なっ――」

 

「な、何で僕達の名前を知っているんですか!?」

 

「いや、知っている訳ではない。ただ、万が一その名前で"増幅"の"神妖の力"を持っている妖狐か人間の少女が来たら、それが本人か確認をして欲しいと両親から言われたのだ・・・椿、お前のな」

 

「えっ・・・僕の両親?」

 

「まさか、此処って椿の両親と何か関わりがあるの!?それに、どうして私の事まで!?」

 

「俺もあまり多くは知らん。しかし、椿とやらの両親についてなら、少しはな。椿、両親の事を知りたいか?」

 

「・・・」

「・・・」

 

その虚の言葉に、つい椿も私も呆然としてしまう。

 

今は保管庫に行くのが最優先だけど、こんな閉ざされたセンターの深い所に、まさか椿の両親を知っている人が居たなんて思ってもみなかった。

 

すると、どうするべきかと悩む私の傍らで椿は黙ったまま静かに首を縦に振っていた。

 

「ふむ、そうか・・・ここから脱出して保管庫に行くよりも、両親の事が気になるか」

 

「あっ・・・忘れてた!ど、どうしよう・・・このままじゃ時間が無いし。でも・・・!」

 

「まぁ、大丈夫だ。俺の力なら、すぐに保管庫へ行ける。それに両親の事といっても、それを知った切っ掛けの情報データの紙と、椿への手紙を預かっているだけだ」

 

「「そういう事は早く(言ってください・言えや)!!」」

 

あ〜もう、これだと慎重に考えてた私達が馬鹿みたいじゃん。目の前で話しているのに、ウッカリ気を抜いたら忘れてしまいそうな程に存在感が薄いし、話している内容も中身があるんだか無いんだかで手応えすら感じないよ。

 

「あぁ・・・そうだ、今日は味噌汁にしよう。いや、パンを浸すのも良いな」

 

・・・うん、コレは本人の中身まで虚ろな感じですわ。

それと、味噌汁にパンを浸すのは和食派と洋食派の両方からブン殴られそうな暴挙だぞ。

 

そんな虚のヘンテコぶりに、両親の事を知りたい椿はヤキモキする。

 

「あの〜早く僕の両親の事を・・・」

 

「ん?何の事だ?それよりも、お前達は誰だ?」

 

「記憶まで虚ろになるのかよ、コイツ!?はぁ・・・仕方ない、こうなったら強硬手段だな」

 

私は雷の妖術を両手から発動して、虚のコメカミをグリグリしながらキツい電流を流してやった。

 

「あばばば!そうか、椿と綾だな!増幅の神妖の!」

 

「よし、思い出せたみたいだね」

 

「すまんすまん・・・それで椿、お前は両親の事を知りたいか?」

 

「それは既に聞いたし、答えたってば!」

 

「いだだだ!分かった分かった!」

 

あっ、今度は椿が影の妖術でコメカミ拳グリグリしてらぁ。本当に全部忘れてるなんて、日頃の生活が大変なんじゃないかな――と思ったけど、ホームレスみたいな姿してる時点でお察しだったわ。

 

「さて、では空間から出してやるか・・・保管庫の所で良かったか?」

 

「今度は大分すっ飛んだな!?」

 

「あばだだ!徐々に強くなっていないか!?」

 

「全く、それは覚えているんですね」

 

なんで椿の両親の話って重要な所が抜けたんだよ!

これには椿も私も我慢の限界になって、つい影の妖術と雷の妖術の合わせ技でコメカミをグリグリしちゃったよ。

 

でも、これだけ虚ろな妖怪が此処の守りを任されているという事は、椿の両親の情報が極秘とされていても不思議じゃないかもね。こんな奴が知ってちゃ、外部にはおろか内部にも椿の両親の事を知ってる妖怪は少なさそうだし。

 

それに私の推測だけど、その両親は椿や私には此処へ来て欲しくはなかったんじゃないかと思っている。何せ椿を男の子に変えたり私達の記憶を操作してまで、妖怪の世界から離しておこうとしていた程だ。

 

きっと、椿には普通の人間として暮らしていて欲しかったに違いない・・・そして、恐らくは私にも。

 

そして、そんな事になってしまった程の過去の出来事。恐らく、それは妖怪の世界にとって未曾有の危機だったのかもしれない。

 

「やれやれ、こっちだ・・・ん?いや、どっちだったかな?」

 

「黒槌土塊!」

「稲妻雷霆蹴!」

 

「ぐはぁ!!」

 

って、そんな事を考えてる内にも虚はまた記憶の内容を忘れていたよ!!

こんな妖怪が空間を歪ませてたとか信じられます?

 

「思い出しました?」

 

「おぉ!そうだったそうだった、今朝はパンにしようと――」

 

「そこじゃねぇ〜!!稲妻雷霆蹴【改】!!」

 

「ぎゃふん!!」

 

もうヤダ、このデカい忘れん坊な人。

 

それでも見た目は御老人なので、なるべく椿には殴らないように抑えてもらって、私が代わりにビリビリのツッコミをしていくよ。老人を虐待してるような椿の絵面とか見たくないし。

 

例え椿と私が過去に起きた事を知っても、それで立ち止まってちゃ今まで頑張ってきた意味が無くなるからね。

 

私達は、目の前にある未来を手にする為に突き進んでいくだけだよ。

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