私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾玖話 強いよ、本当に

 

移動中にも何度か頭をシバいて虚にようやくヘンテコな空間を解除してもらった私達は、彼の案内で椿の両親が残した手紙が置いてある場所へと向かう。

 

・・・ただまぁ、頭をシバき過ぎて虚はタンコブだらけな訳なんだけど。

 

「な、なんて乱暴な女だ・・・」

 

「思い出せない方が悪いんでしょ〜が!」

 

「虚さんの言葉には同感ですけれど、元はといえば貴方の性質の問題です」

 

そう文句を漏らす虚に椿が呆れてため息をつく。

 

あれだけ頭シバいといて今更だけど、コイツ自身の能力が虚ろなせいで自分の記憶すらもアヤフヤになりまくってるから、可哀想と言えば可哀想だと思うわ。

 

そんなこんなで椿の両親の情報があるという部屋までやって来た私達だったけど、今度は扉がドアノブも何も無い事に頭を悩ませる。

 

「参ったな・・・扉がこんなじゃ開けようが無いぞ」

 

「う〜ん、どうやって開けるんだろう?虚さん、この扉は――」

 

「あぁ・・・そうか。米でパンを作れば、朝に和食も食べられて一石二鳥・・・」

 

「う〜わ、またかよ。朝ごはんの事ばっかり考えやがって・・・」

 

「ん?」

 

「えっ?綾ちゃん、いきなり虚さんを持ち上げて何を――」

 

「アバカム(物理)!!」

 

「ぎゃぁぁあ!!」

 

流石に頭をシバくのにも疲れてきたので、ついつい妖異変化の力で虚を片手持ちして思いっきりオーバースローで扉に叩きつけちゃいました、テヘ♪

 

「ひ、開いたね・・・すごく乱暴な方法だったけど」

 

これぞアバカム(物理)ならぬ、妖怪マスターキーって感じですな。虚、君は良い妖怪であったが君の忘れっぽい性質がいけないのだよ。

 

「綾!お前、何するんだ!!」

 

「虚さん本人が鍵だと思いました」

 

「棒読みで言うな!全く・・・俺の記憶が虚ろなのも悪かったが」

 

とりあえず、私はマスターキー代わりに投げ付けた虚を背負って、先に行った椿の後へ続く形で部屋の中に入る。

 

「うぶっ、カビ臭っさ・・・」

 

「長年使われてなかったからか、古い書斎みたいな雰囲気だね。もしかしたら、この部屋の本棚の何処かに僕の両親の情報があるかも」

 

「なるほどね。虚さん、それ何処にあるか分か・・・いや、やっぱり私達で探すんで大丈夫です」

 

虚に詳しい場所を聞こうと思ったけど、ま〜た虚ろな目でブツブツ朝ごはんの事を呟いてたから無視だ、無視。いい加減、本気で頭シバいたりするのが面倒臭くなってきたし。

 

そんな虚を放っといて、私達は時が止まったかのような部屋を探索する。

 

「難しい漢字ばっかりで何も分かんないな・・・椿〜そっちの机はどう?」

 

「う〜ん、ペンと・・・これは羊皮紙?何時の時代の部屋なんですか、此処は・・・」

 

私は本棚、椿は大きな書斎机と手分けして探すけれど、部屋にある明かりが机の上のガスランタンくらいしかないのもあって捜索は全然進まない。

 

すると、そんな中で椿が机の引き出しから何かを見つけたみたいだ。

 

「あれ?これって・・・」

 

「見つかったの!?」

 

「え〜と・・・"どの妖怪食にも合う、秘伝のタレ極秘レシピ【門外不出】"だって。うん、違いますねコレ」

 

「紛らわしいわ!そんなモンを如何にもな場所に隠してあんだか!全く・・・」

 

「そう言いながらポッケにしまうのはどうかと思うよ、綾ちゃん?」

 

そこは没収してるって椿に認識して欲しかったな〜。と・に・か・く、コレは私が責任を持って管理します!

決して、そのタレに魅力を感じたからとか皆に作る料理のアレンジに使えそうだからって理由じゃないんだからね!

 

「うん、椿?その紙の下にもう1枚、封筒があるよ?」

 

「あっ、本当だ。"椿へ"って僕の名前も書いてあるし、こっちで間違いないね」

 

そして、ようやく目当ての物を見つけた椿は早速それの封を開けて、すうと意を決したように深呼吸してから中の手紙を読み始める。

 

『椿へ。この手紙は、私達が直接書いてはいません。ある術を使って代筆を頼み、その方に書いてもらいました。そして、これを読んでいるという事は、貴方は元の姿に戻ってしまったのですね。母である私も、父であるあの人も、それを望んではいませんでした。ですが、どんな理由があるにせよ貴方は戻ってしまった。それを受け入れて前に進むつもりであるなら、この先も読みなさい。受け入れていないのならこの手紙は焼却して、鞍馬天狗の元で穏やかに過ごしていなさい』

 

その意味深な文章に私も椿も息を飲みながら、既に前へ進むと決めた心のまま手紙の2枚目を捲る。

 

『そうですか。やはり、この先を読むのですね。できたらこれは書き記しておきたくはなかったのですが、仕方がありません。この先を読むという事は、貴方は"烏森 綾"という子と無事に打ち解けて、その子と共に何もかも受け入れる気で読んでいる。流石は、私達の子ですね。ですが、全てを書き記す事は出来ません。危険ですからね』

 

なんというか、私も一緒に読む事を前提に書いていた文面からして、まるで私達が手紙を読む事を予想していたかのような感じだ。

それに全てを教えてくれないという事は、椿が関わっていると思う妖界の伏見稲荷で起きた事件については極秘中の極秘なのかもしれない。

 

『先ずは、私達の事から。この手紙を残そうと文面を考えたのは貴方の母である私、金狐の金尾(きんび)です。そして貴方の父は、銀狐の銀尾(ぎんび)。私達2人は、日本の建国前から自然界にたゆたう存在として長年連れ添ってきました』

 

「け、建国前からって・・・凄い昔じゃん。そんな長い年月を生きてる妖狐なんて聞いた事も無いぞ」

 

「そうだね、綾ちゃん・・・もしかしたら、あの卑弥呼より前から僕の両親は生きているのかも」

 

書いてある内容に驚きながら、私と椿は手紙を読み進めていく。

 

『そんな私達には、特別な力が宿っていました。それは今では"神妖の力"と呼ばれるもので、私達には2つ元々から備わっていました。それは、強力な封印と解印の力です』

 

まさか2人共、元から2つも"神妖の力"を持っているなんて・・・椿の両親って、かなり凄い人達だったのか。そりゃ、2人の子供の椿も強くなっていく訳だよ。

 

『私達は時にその力を使って、人々や妖怪を守ってきました。そして、いつしか妖狐としての姿を得た私達は、その当時から存在した妖怪センターとも協力して力を振るいました。そんな中で、貴方を身ごもったのです。その時は私も、あの人も驚きました。まさか私達にも、子を宿す力があったなんて』

 

そう読み進めていく内にも、私と椿は一心不乱と呼べるくらい手紙の内容に集中していく。

何故だか分からないけれど、手紙の内容を知るにつれて私の中で忘れてしまっていた"何か"が呼び起こされるような気持ちになっていたのだ。

 

そして、それは椿も同じようだった。

 

『そんな私達の子である貴方には、とてつもない力が宿っていました。まさか、あの神の力が宿るとは・・・それに気付かず、天狐のバカが余計な事を』

 

「天狐って・・・確か、白狐さんと黒狐さんによると稲荷のトップだって話だったよね?」

 

「う、うん・・・でも、よくよく考えたら僕の両親は天狐様よりも長生きなんだ。バカ呼ばわりしてても、あまり不思議じゃないかもね」

 

手紙から漂ってくる天狐様の微妙な扱いに、椿の苦笑いにつられて私も苦笑いを浮かべる。

 

『そのせいで、ある者達が自身の野望を叶えようと動きました。椿、その子と人間界で生活するなら問題はありませんが、ある学校にだけは行かないでください。そこは危険です。詳細は同封してある別の資料に書いてありますが、この学校だけは避けてください』

 

そこで私達は、封筒の中に1枚の古い地図と"危険"と書かれた学校の詳細が書かれた紙が入っているのを見つけた。

 

しかし、その学校の名前を見た私達は驚愕して目を見開く。

 

「な、なんで・・・なんで、この場所が?どうしてですか?」

 

「危険って・・・一体、何があるっていうんだ?まさか、あの旧校舎・・・?」

 

――何故なら、そこは私と椿が今通っている学校だったからだ。

 

私達は困惑しながらも、手紙の最後の部分へ目を通す。

 

『ここまで読んでいる貴方へ、これを伝えるのは酷ですが・・・椿、貴方は非常に危険な者から狙われています。しかも、人間の組織とは比べ物にならない程に危険な者に――抜け殻となった、神にです。ですから椿、貴方は鞍馬天狗の翁に頼み、記憶を消してもらいなさい』

 

「そんな・・・神様?えっ、抜け殻?何なんですか、これ・・・僕は一体、何に狙われているんですか」

 

「椿・・・」

 

「それに、最後にこんな事を・・・?ねぇ、他に伝える事は無かったの・・・?お母さんのバカ・・・」

 

涙を目に溜めて1人呟く椿に、私はどう声を掛けて良いのか分からなくなってしまう。

でも、手紙の最後の一番下に見落としてしまいそうな場所に、両親が椿へ向けた最後の言葉があった。

 

『それでも私達は、貴方の事を愛しています。私達が消滅する、その一瞬まで。貴方の記憶に残らなくてもずっとずっと、永久に愛しています』

 

「・・・綾ちゃん、保管庫へ急ごう」

 

「えっ・・・でも、椿――」

 

「こんな事を書かれて、その後に記憶を消せる訳無いじゃないですか。それに、僕はもう決めているんです。僕と綾ちゃんの過去に何があったとしても、何を知っても・・・僕は前に進み続けます」

 

「・・・うん、そうだね。やっぱり椿は・・・強いよ、本当に」

 

そんな"絶対に思い出してみせる"と言うような椿の横顔を見ながら、私も共に自分の失われた記憶を取り戻す事を心の中に決心する。そして、大切な妹の事も。

 

だから、きっと悪い奴らの手から助け出すよ・・・それまで待っていて、綾花。

 

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