私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾話 保管庫、凄い数じゃない?

 

その後、椿は手紙に同封されていた紙に書かれていた場所から書類の束を見つけ出すと、それを何でも入れる事が出来る巾着袋の中へと仕舞った。

 

「この量だと、此処で読んでいられる暇はありませんね。よし、急いで保管庫に行くよ!綾ちゃん!」

 

「はいよ〜・・・でぇや!」

 

「ぎゃぁあ!!分かった、分かったよ!」

 

またもや虚が何もかもアヤフヤな状態になりかかっていたのを殴って元通りにした私はそいつを引きずりつつ、入ってきた扉を開いた椿の後を追いかける。

 

「お、おいおい・・・顔が怖いぞ、綾・・・」

 

「それなら、記憶が虚ろにならないように集中しながら私達を案内してよね」

 

「無茶言うな!」

 

「よし、シバくか」

 

「すまんすまん!善処するから殴るのは止めろ!」

 

私がコキコキと指を鳴らした途端に虚は機敏な動きで慌てて案内を始める。

 

「着いて来い・・・流石に俺だって殺されたくはない。だから綾も椿も、その殺気は抑えてくれ」

 

「はいはい。分かったら、ちゃんと案内してよね」

 

「僕も綾ちゃんも、そんなに殺気を放ったつもりは無いんですけど・・・」

 

そんな事を言った虚だったけど、この後に結局私は2〜3回程シバきました。おい、ちゃんと案内しろよ。

 

◇◇◇

 

――数分後

 

「つ、着いたぞ・・・」

 

虚の能力で空間同士の距離を曖昧にしてもらって、何とか早めに私達は目的の保管庫まで辿り着く事が出来たよ。

 

ちなみに、その方法は虚が数回迷ってる時に私からボコられている間に思い出しました・・・おい、そんな重要な事まで忘れるなや。

 

「よし、此処の・・・Bの・・・っと」

 

「おぉ・・・礼は無しか」

 

「脳天ブン殴って沈めっぞ。そもそもアンタが変な空間で私達を閉じ込めなきゃ、もっと早く保管庫に着けたかもしれないんだし」

 

「クシャミで落ちたクセに・・・」

 

「何か言いました?」

 

「何でもない。だから椿、そのハンマーを引っ込めてくれ!」

 

や〜いや〜い、自分で椿に睨まれるレベルの墓穴掘ってら〜。

 

・・・ここだけの話、落ちた原因が私じゃなくて椿のクシャミだって事を忘れてたのは内緒な。

そんな事を思い出せるんだったら、それこそ保管庫への道のりをシッカリ覚えておいて欲しかったよ。

 

それはさておき・・・保管庫、凄い数じゃない?

 

ダイヤルロックタイプの金庫みたいな奴が鉄格子の向こうに縦から横までズラっと並んでるんですけど。

 

「確か、酒呑童子が言ってたのはBの63だったよね」

 

「うん、そうだね。えっと・・・此処が、22・・・で、隣が――35?何で!?」

 

「はぁ!?誰だよ、こんな雑な並べ方した奴!!」

 

数字通りに探していけば見つかるだろうと思った矢先にコレかよ!規則的に並べられてすらいないとか、此処を管理している奴を殴りたくなってくる・・・はぁ、もうツッコミ疲れてきたから止めとくわ。

 

「此処は重要書類や、普段では使われる事すら無い貴重な道具が保管されているからな。そんな理由で滅多に使う事がないから、こうやって取り出しに来る事も稀なのさ」

 

「なるほどね。良い所に酒呑童子が隠してくれてて一応助かったけど、此処も亰嗟に押さえられるのは時間の問題かな」

 

「それに、きっと・・・やっぱり居た。綾ちゃん、ちょっと隠れるよ」

 

その椿の言葉に従って曲がり角の陰へ身を潜めると、向こうから半妖特有の僅かな妖気と共に話し声が聞こえてくる。

 

「ちっ・・・これも違う」

 

「おいおい、本当にあるのかよ・・・B63って」

 

「文句を言ってないで探せ!見つけられなかったら、俺達地獄に落とされるぞ!」

 

「「それだけは勘弁だぁ!」」

 

その保管庫の数字は、酒呑童子が反転鏡の鍵を隠している保管庫と同じ・・・って事は、もう亰嗟も此処を探し始めてたか。

でもまだ見つかってない様子からすると、施設を押さえて時間が経った今も、保管庫の数とか不規則な並びに苦戦してるみたいだね。

 

「おい、6班!そっちあったか!?」

 

「ねぇよ!つ〜か本当にあるのかよ!これだけの大人数で数ヶ月かけて探しているのに見つからないとか、普通ありえないだろう!」

 

「ブツブツ言わずに探すんだ!保管庫だって無限にある訳じゃない!確実に見つかるハズだ!」

 

う〜む、亰嗟は2人1組のチームによる人海戦術で探してたみたいだね。でも、今の会話からすると保管庫の数は相当ヤバいくらいに多いんだろうな。

 

「参ったな・・・正直な話、私達で見つけられるか不安になってきたぞ」

 

「酒呑童子さんの馬鹿野郎・・・」

 

確実に面倒な事になるのを察した私と椿は大きくため息を吐いたけど、これだけの人数を相手に隠れ続けるのも限界があるし、ここは仕方ない。

 

私達は、酒呑童子の意地悪な頭なら目的の保管庫を何の理由も無く使うハズが無いと考えて、壁や天井どころか床にまで保管庫が並ぶ壁から少し離れて、それらを観察してみる。

 

すると――その天井の角付近、パッと見て目に付くか付かないか微妙な位置に私達が探していた保管庫のナンバーがあるのを見つけた。

 

「あっ・・・!」

 

危うく椿は声を出してしまいそうになり、咄嗟に自ら口を手で覆って向こうに気付かれていないのを確認してからホッと胸を撫で下ろす。

 

「おぉ、やっと見つけたか?」

 

「・・・」

 

「・・・おい、その様子だと最初から場所知ってたろ」

 

ジトッと私と椿は虚を睨んだけど、今回は向こうも少し不満げに言い返してきた。

 

「さてね、ボカボカと俺の頭を殴った仕返しだ」

 

「それは、お前が何回も忘れるから・・・」

 

「綾・・・俺は元から"そういう性質"なんだ、仕方ないだろう。それに2人共、お目当ての物が見つかったなら俺の役目はここまでだろう?・・・じゃあな」

 

そして、そう言い残した虚は私達から離れて徐々に空間へと姿を透けさせていく。恐らくは再び、"虚自身の存在"を虚ろにさせているのだろう。

 

「あっ、ちょっ・・・」

 

「虚さん、貴方は僕達の敵なんですか?それとも味方なんですか?」

 

「――それも"虚ろ"だ」

 

すっかり姿を消した虚の言葉に、ついつい私も椿も困惑の表情のまま首を傾げてしまったよ。ああ言ってたなら、結局は自分でも何が何だか分からないって事なのかな。

 

それはさておき、ようやく目的の保管庫を見つけた私達は亰嗟の連中に見つからないよう、椿の影の妖術で静かに壁や天井を伝って、黒電話のダイヤルみたいな暗証番号の鍵を調べる。

 

「綾ちゃん、確か酒呑童子さんは自分に縁のある物が暗証番号だって言っていたよね」

 

「うん、そんなアバウトなヒントで分かる訳ないっつーの。せめて最初の数字とか教えて欲しかったわ」

 

「でも、その数字を入力する画面が4桁になっているから、多分お酒の名前かそれに因んだ数字だと思うよ」

 

「酒に因んだってすると、製造年とかかな・・・」

 

私と椿は酒呑童子の飲んでいた酒を思い出しながら、覚えている限りの製造年の数字をジーコジーコとダイヤルで入れていく。

 

しかしそのどれも当て嵌る事は無く、遂には私達の方がネタ切れになってしまったよ。

 

「う〜ん・・・何が正解なのか分からないや」

 

「お酒以外で酒呑童子に因んだ物、とすると・・・誕生日とかかな・・・でも、妖怪は自然発生する存在らしいしな〜。それなら、退治された年で――駄目かぁ、ぐぬぬ」

 

「酒呑童子さんの暴れ始めた年も・・・駄目、違うみたい」

 

全然開かない保管庫に苦戦し、同じ角度に首を傾げて悩む私達。

あれからも鬼に関係しそうな数字は全部入れてみても合わないし、何が正解なんだろう?

 

途方に暮れかけた時、ふと私の頭に閃きが走る。

 

「ねぇ、椿。酒呑童子って酔っ払いだよね?」

 

「えっ?う、うん・・・そうだけど、何かしたの?」

 

「いや、実はさ・・・酔っ払いって"4801"で読めるんじゃないかと思ったんだ。ひょっとしたら、ひょっとするかも」

 

「いや、まさかそんなね・・・でも、とりあえずダメ元でやってみるよ」

 

そう椿が苦笑いしながら私の当てずっぽうな数字を保管庫のダイヤルに入れると――

 

「あっ、開いた」

 

「嘘、マジで!?――あ、やっば」

 

「綾ちゃんの馬鹿・・・」

 

あまりにもアッサリ開いた事にウッカリ大声を上げてしまった私のせいで、この場に居る亰嗟の連中全員に保管庫の場所どころか私達の存在までバレてしまったよ。

 

「おい!?あれ見ろ!」

 

「ふざけんな!何で、あんな所にあるんだ!」

 

「俺達が馬鹿みたいじゃないか!」

 

「というか、あの妖狐と人間は誰だ!」

 

「誰だか知らんが、とにかく捕まえろ!」

 

あ〜もう、やっぱり逃げ回る羽目になるのかい!

元はといえば見つかったのは私が原因なんだけど!

 

でも、相手は半妖だけだし私達の高い身体能力なら――

 

「って、しまったぁ!此処の出口分かんねぇ!!」

 

「うぅ、僕の馬鹿!虚さんに出口の事まで聞いとくんだった〜!」

 

ど、どうしよう・・・あまりにツッコミ疲れて、変な所で気を抜いちゃったぞ。こんな事なら、虚が帰るのを無理やりにでも引き留めとくべきだったかな・・・。

 

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