私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾壱話 勝てない・・・!

 

反転鏡の鍵が入った保管庫を開けられたのは良かったけど、今度は私のせいで亰嗟の連中から逃げ回っている状況だ。

 

逃げる道中で鉢合わせした奴は、椿の尻尾ハンマーや私の雷キックで吹っ飛ばしてはいるけど、ぶっちゃけ相手が多すぎてキリが無いや。

 

「はぁ、はぁ・・・広いですね、此処は――おっと!」

 

「見つけたぞ!それを寄越――ぐぇ!」

 

「あ〜もう、次から次へと!どんだけの人数で此処に押しかけてたんだっつーの!」

 

鉢合わせた半妖を稲妻雷霆蹴で一撃ダウンさせた私は、そのあまりの連中の数にハァとため息を吐く。

保管庫部屋の造りが単純な十字路だらけで逃げるのには助かるけど、1人1人が弱いとはいえ鉢合わせる度に吹っ飛ばしていくのは骨が折れるよ。

 

「でも、酒呑童子やオジサン達の妖気が強くなっている方に逃げていれば、いつか出口に着くかも!」

 

「そうだね、綾ちゃん。今はとにかく、真っ直ぐに行こう!」

 

ひとまず酒呑童子の妖気が強く感じる方へと突き進んでいく私達だったが、しばらく進むと今度は行き止まりの壁へと辿り着いてしまった。

 

「えっ、嘘?何で!?」

 

「あ〜・・・そっか。妖気の感じる方向と実際に出口がある方向は多分違うわ、コレ」

 

「うっ、言われてみれば・・・あぁぁ、僕の馬鹿」

 

「そう落ち込まなくても大丈夫だよ、椿。壁の向こうに酒呑童子達が居るのが分かってるなら、"壁自体"をぶっ壊しちゃえば良いんだからさ」

 

その私の言葉を聞いた椿は、納得したようにポンと手を叩いてから尻尾を振りかぶる。

 

「なるほど!それなら・・・黒槌岩壊、術式吸収――」

 

「同時にいこう!稲妻雷霆蹴、術式吸収――」

 

私と椿は自らの妖術を吸収と放出の繰り返しで溜めに溜めて、壁に向かって威力が倍々に強化されたそれを繰り出す。

 

「おっ、しめた!行き止まりだ!もう奴らは逃げられないぞ!捕まえて、あの小箱を――」

 

「術式解放!黒槌岩壊『極』!!」

「術式解放!稲妻雷霆蹴『極』!!」

 

「「「えぇ〜!?」」」

 

その同時に放った一撃で壁を木っ端微塵にした様を見て、後ろから追ってきた亰嗟の連中は目を飛び出させるくらいにビックリしてるけど無視だ無視!

 

「馬鹿か!逃げ場が無いからって、ヤケを起こしやがって。此処は重要な物が保管されている場所だから、そんなハンマーや蹴りで壊せる程度の壁じゃあ――」

 

「う〜ん、流石に1回突き破っただけじゃ駄目か」

 

「綾ちゃん、それなら壊して進めば良いだけだよ。あと2〜3回で向こうに繋がりそうだし」

 

「おい!普通無視するか!?こうなったら、とにかく捕まえ――うわぁ!なんだ、影が!?」

 

とりあえず、椿が影の妖術で後ろから邪魔されないようにしてくれているし、私は私で壁を破壊する事に専念しないと。

 

「術式解放!」

 

「くっ、まだ壁あるのかよ・・・術式解放!!」

 

そうして椿と同時に壁を破壊していくと――

 

「ぎゃぁああ!!」

 

「よし、やった!この赤い陽射し、ようやく通じたみたい!」

 

「それより綾ちゃん。壁を壊した瞬間、誰かの悲鳴が聞こえたような・・・」

 

「さぁ?私には何も聞こえなかったけど?」

 

保管庫から入り口のホールへと戻ってきた私達の目の前には、酒呑童子達がボコボコにした亰嗟の連中の山が築かれていたよ。やっぱりというか、此処も既に亰嗟の手に落ちていたみたいだね。

 

「な〜んかドカンドカンと音がすると思ったら、てめぇら・・・一体何処から出て来てんだ?」

 

「酒呑童子さん!僕達を放り投げておいて、そんな事よく言えますね!」

 

「はい、コレ!さっき中身を見たら鍵だったし、それが反転鏡を開ける奴で間違いないでしょ!?」

 

「お〜し、そいつだ!でかした、椿!綾!」

 

そうやって私が酒呑童子に小箱から鍵を見せていると、なんか足元でモゾモゾしてるような音と共に他の職員達が慌てた様子を浮かべていたよ。

 

「センター長!」

 

「センター長、ご無事ですか!?」

 

そういえば私達が出てきた所って何となく、センターを辞めさせられる前まで達磨百足さんが座ってた場所に似ていたような・・・。

 

「綾ちゃん、椿ちゃん。そこ、早く退いた方が良いかもしれないわよ」

 

「へっ?えっと・・・」

 

「まさかそんな都合良く私達の下に、あのネズミでポッポもどきな雷獣が?無い無い・・・って、マジで潰されてるわ」

 

な〜にコレ・・・丘魔阿も酒呑童子も面白そうな顔をしているし、オジサンも肩を震わせながら口元を押さえているし。

 

「ふっ、くく・・・それにしても良いタイミングだったぞ、2人共」

 

「そうねぇ、雷獣が格好つけて技を放とうとした時に貴方達が〜って感じよ」

 

「もう芸人に転職した方が良いんじゃねぇのか、コイツ?」

 

そんな散々に言われている雷獣が埋もれる瓦礫の上を、私と椿はわざとらしくピョンピョンしてやる。

 

「えいっ、えいっ」

 

「よっと、とりゃっ!とりあえず、これはセンターから追い出された妖怪達の分だ!」

 

「綾も椿も、そこまでにしておけ。気持ちは分かるが、そろそろ奴も怒るだろうからな」

 

「は〜い、分かってるよオジサン」

「うん、僕もこれくらいにしておきます」

 

そうして瓦礫から酒呑童子達の方へと飛び移ると――

 

「分かっているなら早く退けやぁ!!」

 

「おぉっと!ようやくお目覚めですかい」

 

今さっきまで私と椿が踏んづけていた瓦礫が下から発せられた雷撃で吹っ飛ばされ、そこから雷獣が苛立たしげにボサッとなった髪をかきあげて姿を現す。

 

「この野郎・・・俺を馬鹿にしやがって〜」

 

ンなもん知らんがな。それに、馬鹿にした覚えだって無い・・・訳じゃないけど。

とまぁ、そんな訳で雷獣はサ〇ヤ人ばりに髪を最大限逆立て全身に雷を纏ったブチ切れモードになっていたよ。

 

そして私の持っている小箱を一瞥すると、フンと鼻で笑ってくる。

 

「なるほどな。お前らの目的はそれか・・・で、亰嗟の連中も何かを探していたようだが、もしかしなくとも同じ物が目当てだったか?」

 

「大方お前の想像通りだってこった。亰嗟の奴らは自分達の力をチラつかせる事でテメェらと手を組んで、センターの内部に侵入して俺が保管していた鍵を狙ってただけだ。雷獣、ハナからテメェは利用されてたんだよ」

 

そう酒呑童子は説得力のある事実を突きつけるが、何故か雷獣は全く狼狽えたりする様子を見せない。

まさか、それすら知っていて亰嗟と手を組んだって事は無いよな・・・?

 

「だから何だ?例え奴らが俺達を利用しようとしていても、逆に返り討ちで食い止めれば済む事だ。奴らの妖具や人員、その秀でた力を根こそぎ奪ってな。そうすれば、奴らは目的を達せられない」

 

うっわぁ〜最悪な勘違いしてるよ、この人。

 

そもそも前段階の手段が上手くいってないどころか、寧ろセンターの懐に亰嗟が入り込む状況にまでなっちゃってるのにさ。

そんな状況を放置してたのなら間違いなく他の妖怪達から責任を問われるだろうし、妖怪センターを纏めるリーダーとしては失格だよね、普通。

 

すると椿も私と同じ考えだったのか、雷獣に怒りの眼差しを向けている。

 

「雷獣さん、相手は人間界と妖界を反転させるつもりですよ。そんな事になったら、他の妖怪さん達にも迷惑が・・・」

 

「別に良いじゃないか?何か問題があるのか?ん?その程度で妖怪が滅ぶのか?」

 

「コイツ・・・!」

 

その悪びれもしない雷獣の態度に、私は感情の昂りと共に拳を強く握りしめる。既にコイツも亰嗟の考えに染まってしまっているなんて、本当に最悪だ!

 

だけど、椿の両親が残した資料には"人間界と妖界が反転した際に発生する『邪妖』復活の危険性"という、嫌な予感しかしない名前が表紙にあった。

その邪妖って存在が何なのかは分からないけど、今までに戦ってきた妖怪や妖魔とは段違いな気がする。

 

そんな得体の知れない敵が復活してしまったら、と考えると今すぐにでも雷獣や他の職員達を説得しないと危険だと思う・・・けど、この状況じゃ何をどうしても聞き入れてはもらえなさそうだ。

 

そうなると、私達が取るべき行動は1つしかない。

 

「酒呑童子さん!丘魔阿さん!此処から撤退します!」

 

「オジサンも無理しないで!今は逃げるよ!」

 

そう私と椿は叫んでセンターの入口へと振り返るが、そこにはいつの間にか何者かが立ち塞がっていた。見た目は中性的で華奢な身体付きをしているけど、その身体から感じる妖気の強大さは確かに本物だ。

 

だけど、そんな・・・さっきまで妖気も何も感じなかったぞ。まさか、瞬間移動でもしてきたっていうのか?

 

「椿に綾、悪いが撤退はキツそうだ。まぁ、そりゃ出て来るだろうと思ったぜ――茨木童子!」

 

「「えっ!?」」

 

酒呑童子の出した名前に私と椿は目を丸くして驚く。あの立ち塞がっているヅカ系っぽい奴が茨木童子って事は・・・有名な大江山の4大鬼の関係じゃ酒呑童子の側近だったハズだから、アイツが亰嗟を取り仕切っているボスか!

 

「おやおや、私の登場を予想していた。では何故、貴方はこんな派手に暴れているのですか?」

 

「テメェをとっとと引きずり出す為だ!とっくに此処へ来てたんだろ?椿と綾が鍵を持って出てくるタイミングで不意打ちする気でいたのなんざ、テメェとの付き合いが長かった俺にはお見通しなんだよ!」

 

「ふ、ふふ・・・いやはや、流石は私を鍛えてくれた師匠ですね。生半可な術は通用しない、貴方が1番そういう勘に鋭い事を失念していましたよ」

 

そうか、椿と一緒に修行を付けてもらっていた時に酒呑童子が言っていた弟子ってコイツだったのか。

いやまぁ、良く考えれば酒呑童子は大江山の4大鬼のトップだったんだし、当たり前っちゃ当たり前なんだろうけど。

 

そうなると、茨木童子は間違いなく今の私と椿より強い!

 

「椿、綾。お前らだけでも翁の家に向かえ。コイツは俺が相手をする・・・この破門にした、馬鹿弟子をな!!」

 

「ほぅ・・・という事は、そちらの妖狐と人間の少女が噂に聞いていた、貴方の新たな弟子達という訳ですか。そんな私の妹弟子が目的の物を持っているなんて・・・しかも、貴方達2人を捕まえれば私達の目的は一気に達成出来ますし、正に一石二鳥ですね」

 

げっ!そういや亰嗟は私と椿の"神妖の力"も狙ってるんだった!

 

そんな私達が反転鏡の鍵を持っている状況なんて、向こうからしたら鴨が葱を背負ってノコノコ歩いてるようなモンじゃん!

 

「くっ・・・!」

 

「チッ・・・!」

 

「おや?どちらも逃げないのですか?」

 

「逃げたら、腕を切り飛ばされそうでしたから・・・」

 

「それに、私達が逃げようと思っても簡単には逃がしてくれないだろ?」

 

「ふむ、鋭い勘だ。素晴らしいですよ」

 

状況的に逃げようが無いとはいえ、あんな強大な妖気が相手じゃ全員で一斉にかかっても勝ち目があるかどうかだ。

 

酒呑童子は険しい顔をしていて、それなりの戦闘力を持っている丘魔阿ですら足が震えてしまっていた。オジサンも即座に茨木童子へと背中の弓矢を構えてはいるけれど、その手は緊張や恐怖が簡単に見て分かる程に震えている。

 

正直、茨木童子の放っている粘っこくて重い妖気は感知能力の高い私と椿でも初めて感じるよ。

 

「ん?そこに居るのは・・・半妖の纏め役、丘ではないですか」

 

「うっ・・・」

 

「そんな怯えた顔をして、どうしました?捕まったのですか?それとも、そっちの味方をするのですか?」

 

すると、茨木童子は丘魔阿を見て少し笑顔を向けたかと思うと、そこから一瞬で無表情になる。

 

「すぐに答えられないという事は、そっちの味方に付いたと判断して良いですね。それなら、もう貴方は不要です」

 

「なっ・・・ちょっと待ち――」

 

そう言った茨木童子の右腕がシュッと消えたと同時に、オジサンが構えていた矢を放っていた。

 

その瞬間、ガァン!!と大型自動車が衝突したような酷く激しい音が鳴り、茨木童子が苦笑いしながら右腕を軽くパタパタさせる。

見ると、相手の足元には黒焦げとなった折れた矢のような物体が、ボロボロと形を崩れさせていた。

 

「おやおや・・・かつては私達と戦いを共にした貴方ともあろう人が、そんな半妖1人の命を守るとは。長い年月を生きて勘が鈍りましたか、大地?」

 

「・・・お前のような道を外れた鬼と共に戦った覚えは無い。それに、コイツは俺達にとって――ぐぅっ!!」

 

でも、その次の瞬間には茨木童子がオジサンの目の前に移動していて、サッカーボールを扱うように軽い蹴りで浮かせてから職員達の座っている事務机へと蹴り飛ばしていた。

 

「オジサン!!」

 

「ちっ!この野郎!」

 

嘘でしょ・・・修行でも私の妖術を真正面から受け切っていたオジサンが、あのたった一瞬だけで起き上がれない程のダメージを食らわされるなんて・・・!

 

すぐに丘魔阿が担いで酒呑童子の後ろまで撤退してくれたから良かったけど、それすら茨木童子はニコニコとして傍観していた。

 

今ので完全に身体が理解してしまった・・・私達はアイツには、酒呑童子と同じくらいの力を持つ茨木童子には勝てない・・・!

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