私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾伍話 もうゴメンだ

 

その後、何とか里子から菜々子を助け出した私と椿は、皆と一緒に地下の大きな宴会場で晩御飯を食べていた。家に居た皆によると、地下の大ホールをセンターの施設へ改装する時に見つけたそうで、戦う力を持たない妖怪達で私達の為に頑張って使えるようにしてくれていたんだとか。

 

そんな皆の心優しい気遣いに私も思わずホロリときちゃいそうだったけど・・・

 

「うん?ちょっと、何で私のフライドポテト全部無くなってんだ!?」

 

「あ〜!僕の唐揚げ、誰か取った〜!」

 

「綾姉さんも椿姉さんも、油断する方が悪いっす!」

 

「おーっし楓、そう言うんなら私だって容赦しないからな!」

 

「全く、何やってんだか――って、椿!それ私の佃煮よ!」

 

「良いじゃないですか、美亜ちゃん。どうせ食べないでしょう!」

 

まさかの料理争奪戦勃発ですよ、レッツファイッ!

 

というか里子曰く、倍近くに増えた人数分の料理を小分けにするのは流石に限界だったらしく、今日から大皿に盛って個人で取る中華スタイルに変えたそうな。

 

お陰で大皿から取る段階から食べたい人同士で取り合いが続くわ続くわ・・・しかも妖怪食だから跳ねたり逃げたりするし!

 

「妖異顕現!」

 

「あっ、こら!がしゃどくろ!妖術は卑怯だぞ!」

 

「ふん!嫁の為ならば、そんなのは関係ない!」

 

いや、妖気を補充する為の食事なのに妖術使って消費してたら駄目でしょ、がしゃどくろさんや。でもまぁ、そこまでして口裂け白骨女に良い所を見せたいって気持ちは伝わってきたわ。だって、見るからに口裂け白骨女も嬉しそうにしているもん。

 

・・・というか、妖術に関しちゃ既に椿が影の妖術で皆からコッソリいなり寿司を盗んで机の下に隠しているから、そういう意味じゃ今更なんだよな。

 

う〜む、私も妖術で何とか料理をゲットしたいけどね。残念な事に使える妖術が雷だの風だのだから、下手に使うと宴会場がめちゃくちゃになっちゃうよ。

 

「あ〜!!椿お姉ちゃんズルい〜!こんなに沢山おいなりさん隠してる!」

 

「わぁ!!菜々子ちゃん駄目!僕のおいなりさんだから!」

 

「こんなには要らないでしょ!?」

 

「要ります!!」

 

とか考えてたら椿の隠してたいなり寿司が菜々子にバレて〜ら。

 

それにしても子供と取り合いして必死になるなんて、普段の椿らしくないくらいに大人気無いな〜。

あっ、そう思ってる内にも椿が大量のいなり寿司の上に覆いかぶさって威嚇してる・・・何やってんだ。

 

「ウ〜!!」

 

「椿お姉ちゃん必死過ぎ〜!本当のお稲荷さんみたい!」

 

「全く、椿ったら・・・っと、この妖気の感じは――」

 

「相変わらずですね、椿様も綾様も」

 

すると、私はそこで久しぶりに会う人達の妖気を感じた。そして、その声に振り向いた私と椿の前には、任務から帰って来たのか少し疲れた様子の龍花さん達が居たよ。

 

「あっ、お帰りなさ〜い!龍花さん虎羽さん、朱雀さん玄葉さん」

 

4人の姿を見て、すぐにわら子が労いの言葉をかける。それぞれ全員をパッと一目で間違えずに当てられるなんて、やっぱりわら子は凄いね。私は久しぶりに見たからか、少し龍花さんと玄葉さんを間違えそうになったぞ。

 

「おぉ、4人共帰ったか。して、どうじゃ?」

 

そのまま龍花さん達は真剣そうな表情で、声をかけてきた椿の爺さんの方へと進んでいく。そして、爺さんに何か小声で報告し始めた。

 

皆に聞こえないようにしているみたいだけど、椿はその内容が気になってピコピコと狐耳をそっちの方へと向けているし、どうせなら私も少しだけ"鈍色の狐"の力を解放して、この自在に動かせるようになった狐耳で聞いてみるとしますか。

 

オジサンとの修行のお陰で"神妖の力"とは違って、この力は使い過ぎても暴走する事は無くなったからね。

 

「華陽こと亜里砂の姿は確認出来なかったのですが、妖魔人となった例の5人。その彼らが出入りしている場所は突き止めました」

 

――えっ、何だって?まさか龍花さん達は、あの元滅幻宗の幹部4人と湯口先輩の事を調べてたのか?

 

そんな衝撃的な報告内容を聞いて私も椿も思わず食事の手が止まってしまう。そりゃあ幹部4人の居場所が分かった事も大事だけど、今度こそ湯口先輩を助けられるかもしれないんだから。

 

もう少し、良く聞き耳を立てて情報を・・・と思ったけど、その瞬間に爺さんと龍花さん達が気まずそうな顔で私と椿の方を向いてきたぞ!ヤバい!

 

「あぁ、すみません翁。椿様と綾様が・・・」

 

「むっ?こりゃ椿!それに綾!耳がこっち向いとるぞ!」

 

「ふぇっ!?あぅぅ・・・耳が・・・」

 

「ぎゃあ!!キ、キンキンしたぁ・・・」

 

それで音を良く聞こうとしている時に大声で怒鳴られたモンだから、私も椿も頭がガンガンするくらいに耳へ響いてビックリしちゃったよ。

 

ついでと言わんばかりに、菜々子は椿の隠してたいなり寿司をモッキュモッキュと頬張ってるし、私の方もいつの間にやら楓が真正面から餃子を奪いに来てたわ。咄嗟に私も椿も2人を引っ捕まえたけど。

 

「はぁ、しょうがない・・・菜々子ちゃん、お仕置きです」

 

「ぶむぅぅう!!」

 

「か〜え〜で〜?どんだけ私の所から奪う気だ〜?」

 

「ひ、ひててて!ひたいっす!綾姉さん!ほっぺ抓らないで〜!」

 

ここまで菜々子も楓も強くお仕置きされてるのに吹き出さないって・・・食い意地が張ってると呆れるべきなのか、それとも食べ物を粗末にしてないって感心するべきなのか。

 

何にせよ、食べられちゃった物は仕方ないので今回はこれくらいで許してやりますか。

 

「椿、綾!こっちへ来い!どうせ、こっちが聞かせない様にしていても聞くつもりなのじゃろう?」

 

「「あっ、はい!」」

 

とりあえず爺さんから呼ばれた私と椿は観念し、椿は残ったいなり寿司を狐2人に渡しつつ、私も楓の方に残りの料理を押し付けて向かう。

え?残飯処理みたいだって?別に大丈夫ですよ?

「ありがとうっす〜!」って喜んでたみたいだし。

 

・・・とまぁ、そんな事はさておき。

爺さんの所へ来た私達は正座をして話を聞く。

 

「さて、龍花よ。話してくれ」

 

「はい・・・ですが、椿様と綾様。何を聞いても、驚かれない様にしてくださいね」

 

そう真剣な眼差しで言ってくる龍花さんに、ついつい私も椿もゴクリと緊張してしまう。すると、私達が首を縦に振るよりも早く、龍花さんはそのまま話を続けだす。

 

「私達はセンターが乗っ取られた時、椿様と綾様の手助けをするべく近くまで来ていたのです。しかし・・・実はその時に妖魔人の1体、玄空を見つけてしまったのです」

 

「あの時、龍花さん達は近くに居たんですね。センターが大変な事態になっていたので、そこまで周りの妖気には気付かなかったです」

 

「私も、全く気付かなかったよ・・・それで龍花さん、その後は?」

 

苦笑いで返す私達に、龍花さんは少し困り眉になりつつもその先を話す。

 

「はい、綾様。玄空を見つけたのと時を同じくして、椿様と綾様の気配が消えたので脱出出来たのだと思い、急遽私達は奴の後を追う事にしたのです」

 

「えっ、そんな危険な事を?もし見つかっていたら4人共、大変な事になっていたかもしれないじゃないですか」

 

「まぁまぁ、椿。龍花さん達は私達よりも難しい任務を幾つもこなしてる人だから、これくらいは問題無かったんでしょ。現に、こうして無事に帰って来てくれた訳なんだし」

 

そう慌てる椿を宥めていると、龍花さんがコホンと小さく咳払いをする。

 

「えっと・・・続けて良いですか。そして玄空は"ある場所"に辿り着き、そこを私達が暫く様子を伺っていると、他の4人の妖魔人達も出入りしているのを確認したのです」

 

「"ある場所"?」

 

「それは、何処なんですか?」

 

「場所があるのは、妖界です。ですが、椿様に綾様・・・その場所は、貴方達が毎日通っている場所。八坂校長が就任している、あの学校がある位置なんです」

 

「「えっ・・・」」

 

その龍花さんの言葉に、私も椿も絶句してしまった。

 

つまり幹部4人と湯口先輩は、私達が通っている学校の妖界側に潜伏しているって事になる。それに前に一度だけ旧校舎から妖界側へと行った時から、その旧校舎から放たれる禍々しいまでの気配は濃くなってきていた。

 

校長先生は自身が半妖だと言っていたけど、雪も死んでしまったカナも旧校舎の不気味さには何となく感づいていた様子だし・・・。

 

「ま、まさか・・・」

 

「そんな・・・嘘でしょう」

 

「綾も椿も、それ以上考えるのはよせ。儂も信じたくはない。だが――」

 

『あの校長、八坂が奴らと手を組んでいるのか?もしくは、そいつらを利用しようとしていて匿っとるのか?どちらにせよ、怪しくなってしまったな』

 

すると、嫌な結論に達してしまった私達の考えを代弁するかのように、白狐さんが椿の後ろから複雑な表情で答えてきた。

 

「そうですね、白狐さん・・・だから最悪なんです。あの人はまだ、僕の中では味方として見ていたのに」

 

「カナや雪達みたいな半妖の人達に優しくしてたのも、何か企んでの事だったって事かよ。クソ、このままじゃ学校の皆すら危険に・・・!」

 

私と椿が裏切られたショックに強く歯噛みしていると、今度は雪が私の後ろに居て何処か納得したような顔をしている。

 

「そっか・・・それで、半妖の生徒達が・・・」

 

今のを聞いてたなら、何かしら嫌な感覚になると思うんだけど・・・どうしたんだ?それにまさか、もう半妖の誰かに何かがあったのか?

 

「なぁ、雪。一体、学校で何があったんだ?」

 

「う、それは・・・その」

 

「その話し方・・・僕と綾ちゃんが修行している間に、何かあったんですね?」

 

「綾、椿。ごめん、中々切り出せなかった。学校が始まるまでには、と思っていたけれど・・・実は、終業式に八坂校長が自分も含めた半妖の事、更には生徒達の事を公表した。しかも、この状況じゃ気味悪がられるからって半妖の生徒達は強制退学させられた。そして八坂校長も、そのまま辞任したの」

 

「はぁ!?」

 

「嘘、でしょう。何で・・・何で、そんな事を!?」

 

これには私も椿も思わず声を荒らげてしまったよ。

 

いや、これは本当に訳分かんなくなってきたぞ!

あの校長先生は半妖の人達を思って、誰でも平等に勉強出来るようにって・・・あの時に言った事も、何もかも嘘だったのかよ!?

 

「2人共、しっかりして。とにかく、私も退学にされちゃったから、学校にはもう行けない。悔しい・・・また私、何も出来なかった」

 

「雪・・・」

 

そのまま両手で顔を覆って泣き始めてしまった雪に、私は優しく抱きしめて宥める事しか出来なかった。

 

あの野郎・・・ここまで半妖の皆に酷い事しやがって。でも妖気が使えるだけで人間の私と、純粋な妖怪である椿と美亜が退学になっていないなら、まだ学校を調べようがあるな。その際に、退学にされた半妖の人達の事も調べられるハズだ。

 

何にせよ知らない所で悪巧みされ続けるのは、もうゴメンだ。

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