私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 小次郎の謎の行動

 

閃空が放った黒い光線に吹っ飛ばされてしまった椿は、すぐに体勢を整えて私の隣へと跳躍しながら戻ってきた。

 

身体に傷は無いみたいだけど、良く見ると学校の制服が少し破けてしまっている。こういう所を見るとなんというか、やはり私の儀礼衣装を貸してあげたくなってしまうのが本音だ。

 

・・・残念ながら、念じて直接纏ってるからか脱ごうと思っても脱げないし、儀礼衣装を私の身体に呼び出す事以外じゃ呼び出せないのが現実だけど。

 

「ふ〜ん、どっちも結構硬いね」

 

「はん!そう簡単に倒せるとは思うなよ!」

 

「えぇ、色々と修行しましたから。だから、人を捨てた貴方達は帰るべき場所に帰ってください」

 

相手している閃空は、元はと言えば寄生妖魔に蝕まれていた人間だ。例え妖魔との融合で元の人格が失われてしまっていても、その行動理念や感情があるなら恐らく、まだ"人間としての何か"は残っているだろう。

 

そして、きっとそれが唯一の弱点になるハズだ。

 

「――怪異、黒蝕球(こくしょくきゅう)」

 

そう考えながら身構えていると、閃空は自身の突起物から黒い霧を発生させ、それを右手へと集めてバスケットボール並みの球体を作り出す。

 

「ふん、一体どういう事なのか分からないなぁ。僕はただ、お前達みたいな悪しき妖怪を殺せれば何だって良いんだよ!・・・って言っても、妖狐と人間の君ら2人には大人しく捕まってもらいたいけどね。亜里砂様は、君らの記憶を必要としているからさ」

 

すると、そう言いながら閃空はゆっくりと私達へと近づいてくる。感じられる妖気の禍々しさからして、あの球体を直接防御するのはヤバそうだ。

 

「あっそ。だけど、そう言われて私達が簡単に着いていくと思うか?」

 

「僕達も馬鹿じゃないし、君に負けるほど弱くもないよ!」

 

「そっか〜・・・それは残念だね。じゃあ、どっちとも死体にして連れて帰るよ。行け、黒蝕球!」

 

そして、私達の返事に閃空が黒い球を投げつけてきたが、それは突如として地面から生えてきた樹木によって阻まれる。

 

――勿論、これは美亜による呪術のお陰だ。

 

しかし次の瞬間、美亜が驚愕の声を上げてくる。

 

「嘘!?私の呪術で生み出した木が・・・枯れていってる!?」

 

「えっ?あっ・・・!」

 

「うわ、マジか!黒い球が当たってる所だけ腐っていってやがる!」

 

なんと、黒い球は美亜の呪術で強化されているハズの樹木をみるみる内に枯れさせ、当たっていた箇所をくり抜くように貫通して再び私達の方へと向かってきたのだ。

 

あまり球体にスピードは無いけれど、あの能力を見たら油断なんて出来ないな。

 

「あはははは!どうだ!!生気や妖気すら食っていく、この黒蝕球の力は!」

 

しかも、閃空は更に黒い球を幾つも作り出し、私達に対する追撃の準備を整え始めている。あんな物を何個も投げられたら、流石に私と椿でも対処し切れなくなってしまうだろう。

 

「やっぱり相手が相手だ・・・椿、もう本気でやるしか無いね!」

 

「うん!勝てるかは分からないけど出来るだけ全力で、暴走しない程度にやってみるよ!」

 

そう考えた私は椿と互いに頷き合い、出せる限りの"神妖の力"を解放していく。その浄化の力によって椿の髪が長く伸び、毛色と共に金色へと変わる。

 

そして、私の髪も後ろで結わえている部分が倍以上へと伸びながら、狐耳が生えると同時に白とも黒とも何とも言えぬ色に変化する。

 

これが私の持つ本来の"神妖の力"を解放した姿――"鈍色の狐"の姿だ。

 

「御剱、神威斬!」

「麒麟甲、星幽掌打!」

 

力を全身へ巡らせた瞬間に私達はそれぞれの武器を取り出し、飛来する幾つもの黒い球を打ち消した。

やはり、この力なら邪悪な妖気を持つ黒い球でも何とかなるようだ。

 

「へぇ、ようやく本気って事?でも、この前は僕の分身で精一杯だったろ?それに、この僕も分身かもしれないよ?」

 

「――いいや、分身ではない。既に綾も気付いているだろうが、そいつは正真正銘の本物だ」

 

すると突然、閃空の浮遊している所よりも上空から声が聞こえて、それと同時に私達と閃空の間へ降り立つかの如く誰かが物凄いスピードで土煙を上げながら着地してきた。

 

その正体に、私は目を見開く。

 

「小次郎・・・」

 

「落ち着いて、綾。美亜、あの小次郎の言う事は?」

 

「えぇ、本当よ。貴方に言われた通り、根や蔦を使って周辺を探ったわ。近くに誰かが居たら自動的に反応して攻撃するけど、小次郎以外に反応は無かった。アイツが何のつもりかは知らないけど、あれは間違いなく本物の閃空ね」

 

「なるほど・・・そういう訳です。覚悟なさい、"負なる者"」

 

そして、小次郎は少し鼻で笑ってから閃空や私達に味方するでもなく、スタスタと歩いて公園のベンチへと胡座をかいて座っていた。

 

まさかの助け舟で本気を出して戦えるようにはなったけど、あんな座り方でベンチに居たら、そのシャープなロボットっぽい見た目が全部台無しになってると思うぞ。

 

・・・やっぱり小次郎の謎の行動と言い、綾花の使い魔にされてから色々と性格も変わってしまったんだろうか?

 

「なっ・・・!小次郎め、くっそ・・・」

 

「ふん!その球体を飛ばせるものなら飛ばしてみなさいよ!これだけ大量の木々があるのに、それを一度で全て枯らせられるのかしら?それとも間を縫って投げるつもりなら、こうしておけば良いだけよ!」

 

そんな感傷に浸る間も無く、美亜は公園の木々を一気に成長させて樹海へと変化させる。さっきも少し言っていたけど、どうやら植物の蔦や根を触覚代わりにして相手の気も感知出来るようになったようだ。

 

だから、閃空が次々と繰り出してくる黒い球体を樹海の木々で防いで動きを止めてくれたお陰で、私と椿も簡単にそれの浄化が出来るようになったよ。

 

そして、全ての球体を処理し終え、私と椿は閃空に向かって武器を突き付ける。

 

「ここまでだ、残念だったな」

 

「さぁ、"負なる者"。観念して、私達の力で浄化されなさい」

 

一瞬見せた閃空の様子からして、この姿は相手を威圧するのにも便利そうだ。まぁ、そんな頻繁に変身してしまっていたら普段以上に妖気が早く無くなってヘトヘトになるからやらないけど。

 

しかし、すぐに閃空はヤケを起こしたような表情で黒い球体を10個程作り出し、それを一気に周辺へばら撒くように放り投げてきた。

 

「むっ、まだ抵抗してきますか」

 

「全く・・・往生際が悪いぞ!」

 

「それはどっちかな!こんな樹海くらい、あっという間に枯らしてやるよ!そらそらぁ!」

 

すると、それを木々の上から見下ろしていた美亜が、何かに気付いた様子で腕を組みながら奴に向かって話しかける。

 

「無理よ、閃空。アンタのそれ、妖術でも呪術でも何でもないもの。寄生した妖魔の力・・・かどうかは知らないけれど、アンタは"何かの力"をそのまま使っているに過ぎないわ。そ〜んなので、私の呪術を簡単に破れるなんて思わない事ね!」

 

「なっ!?馬鹿な!」

 

「だって私の呪いは、相手の"負の感情"にも反応して大きく膨れ上がるんですから!あはははは!」

 

その途端、美亜の作り出した樹海が一気に紫色へと変色したかと思うと、なんと閃空の放っていた黒い球体がみるみる内に小さくなって消えてしまったのだ。

 

今の様子からすると、どうやらあの紫の木々が黒い球体から力を吸収しているらしい・・・けど、また呪術の影響で性格が黒くなってないか?

 

「つまり、アンタの力の根源は"憎しみ"よ。そんなもの、私の呪術の前では栄養源にしかならないわ」

 

そうか・・・コイツら滅幻宗の幹部4人も元はと言えば、華陽に飢饉を妖怪の仕業だと"憎しみ"を植え付けられた被害者でもあったんだ。それが妖魔人となった事で増幅されたのかは知らないけど、今はもう強い"憎しみの想い"で人々を傷付ける存在になってしまっている。

 

だから、何とかして囚われている"憎しみ"から彼らを解放してやらないと。"憎しみ"や"怒り"に身を任せてはいけないと、それでは自分自身も救えないと目を覚まさせるんだ。

 

「それなら!これで・・・どうだぁぁあ!!」

 

そう考えていると、閃空は自らの突起物を全てミサイルのように射出し、その鋭い刃先で木々を貫通させながら私達に向けて攻撃してきた。

 

しかし、さっきまで投げられていた黒い球体とは違って防御しても問題ない攻撃だったから私と椿は各々の武器で防げたし、美亜も飛来する突起物を蔦で幾重にも雁字搦めで固定してくれたので簡単に対処出来たよ。

 

「ぬぁ!?くそ・・・!こんな一度に呪術を使っちゃって、後でどうなっても――」

 

「あ〜ら、大丈夫よ。そこんとこ、椿と綾が発散させてくれるから」

 

ついでに、閃空自身も美亜の操る蔦に捕まって身動きが取れなくなっているぞ。流石は呪術のスペシャリスト、やるな〜・・・不吉そうな事を言われたのは聞かなかった事にしよ。

 

何はともあれ、身動きの取れない閃空へ私は氷霰剱を逆手に握りしめて、それに白金色の冷気を纏わせて構える。椿も火車輪を右腕に嵌めて金色の炎を纏って、そして2人で同時に地面を蹴って飛び上がった。

 

「はっ!バ〜カ!誰が肘と膝からしかコレを出せないと言ったよ!」

 

それでも閃空は蔦に身の動きを封じられた状態のまま、全身から剣のような突起物を射出して攻撃してきた。

 

だが、龍花さん達から"手の内は最後の最後まで全て使い切るな"と教えられていた私と椿には、相手が大人しく抵抗を止めるなんて元から考えていない。だから、オジサンや酒呑童子との修行で培った反射神経をもって全て回避するのも簡単だ。

 

「えっ!?なっ・・・!そ、そんな!全部避け――」

 

「諦めなさい、"負なる者"。さぁ、浄化の時です!」

 

「全身全霊、浄化の一撃!その身に刻めぇぇえ!!」

 

「――金華狐狼拳(きんかころうけん)!!」

「――卜伴細氷拳(ぼくはんさいひょうけん)!!」

 

「ぐ、がぁぁぁあ!!」

 

そして、後ろで尾を引く私の白金色の冷気と椿の金色の炎が交差した瞬間、更に加速する2つの拳が閃空の胸へと同時に突き刺さった。

 

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