私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆話 椿の両親は凄い妖狐でした

 

閃空こと千一を倒して疲れ果てた私と椿は、美亜に運ばれて家へと戻ってきた――んだけど。

 

『椿!?どうした!大丈夫なのか!?』

 

『一体、何があった!!』

 

「うるせぇ〜!!」

 

あまりに狐2人が大声で叫んできたモンだから、思わず飛び起きながら脳天チョップをかましちゃったじゃん。

まぁ・・・椿が起きたのを見てホッと安堵してたみたいだし、危険な状態なのかって勘違いしちゃうのも分からなくはないけど。

 

「綾も椿も起きた?それなら、ちょっと降りて――」

 

「ん、今降りますよっと」

 

「えっ?あっ・・・ごめん、美亜ちゃん!」

 

それはさておき、背負ってきてくれた美亜が汗だくでヘトヘトになってしまっていたので、私達は慌てて彼女の背中から降りる。すると、椿は近づいてきていた白狐さんに抱きとめられていたよ。

 

「わぁ!白狐さん!!もう大丈夫だから!歩けますから〜!」

 

『いいや、傷だらけで服もボロボロだぞ。我が治癒するから、そのままでいろ』

 

そう言いながら、白狐さんはお姫様抱っこしている椿へ優しく手をかざして、その治癒の力で傷や服を治していく。

 

ちなみに私も治癒してもらえたんだけど、今回は普段の素っ気ない雑な感じじゃなくて、頭をシッカリと撫でてきたからビックリしちゃったぞ。

でも・・・なんというか、「よく頑張った」って褒められているような気がしたよ。

 

そんな不思議な感覚に少し照れ臭くなりつつ、私は白狐さんの後に続いて家の中へ入っていく。すると、今度は黒狐さんが白狐さんの隣にやって来て、椿の腕を引っ張った。

 

『白狐。治癒が終わったのなら、後は俺が抱っこして運ぶ』

 

『嫌じゃ。全部、我がやる』

 

『貴様!毎回毎回、そんな役得をさせるか!』

 

『お主の日頃の行いのせいじゃ!』

 

「ま〜た喧嘩してるよ、この2人は・・・」

 

そんな狐2人の普段通りな光景に大きくため息をついていると、白狐さんに抱っこされていた椿が自分から黒狐さんの方にグッと両手を伸ばす。

 

「よいしょっと・・・」

 

『つ、椿!?』

 

当然、自ら抱っこされる椿に黒狐さんは感動のあまり、スキップしながら廊下を進んでいっちゃったよ。

 

「・・・嬉しいのは分かるけど、あんなはしゃいで爺さんに怒られても知らないぞ」

 

「やれやれ・・・まぁ、しょうがないの」

 

そんな黒狐さんの喜ぶぶりに、白狐さんと一緒に呆れながらも微笑んでいると――

 

「全く、もう・・・綾、後でアンタの狐モードの尻尾触らせなさいよ」

 

「ぐぅ、仕方ないな」

 

そういや、ここまで私と椿を運んでくれた美亜の事を忘れてたわ。

暴走せずに使える"鈍色の狐"だと分かってるとはいえ、こんな気軽に変身させる美亜は本当にイタズラ好きな奴だな〜・・・。

 

◇◇◇

 

その後、丁度良く里子に昼ご飯を作ってもらった私達はそれぞれの分を持って地下の大広間へ行き、そこで爺さんに今回の件の事を報告した。

 

・・・相変わらず、椿は黒狐さんに抱っこされたままの状態だったけど。皆から微笑ましい顔を向けられて、凄く恥ずかしそうに顔を黒狐さんの腕に埋めちゃってるよ。

 

「ふむ・・・そんな事が。学校、閃空、そして妖魔人の人格・・・う〜む」

 

その穏やかな状況でも、椿の爺さんは眉間にシワを寄せて悩ましげに小さく唸っている。

 

「八坂め・・・あやつ、一体何をしようとしとるんじゃ」

 

報告した時、学校の事で特にショックを受けたような反応をしていたから、多分あの八坂クソ校長と爺さんは結構な間柄だったんだろうね。

そして、それが裏切られたとなればショックが大きいのも当然っちゃ当然か・・・。

 

「まぁ、良かろう。そちらの方は龍花達に探りを入れさせる。して、椿・・・その様子だと、まだ何かあるのだろう?」

 

「あっ、うん。これです」

 

すると、そう爺さんから聞かれた椿は巾着袋から、彼女の両親が遺した手紙を取り出した。

 

「む?それは・・・」

 

「僕の両親の手紙です。ごめんなさい、おじいちゃん。センターの虚さんが居た所で見つけたんだけど、そのまま渡したら読ませてくれそうになかったから、読み終わるまで黙っていました」

 

「なんじゃ、そんな事せんでも読ませてやったわ。もう椿も綾も、立派な妖狐と霊能力者じゃ。儂らがとやかく言う権利は無い。お主らの好きにして、自由に生きるが良い」

 

そう優しく椿と私に言った爺さんは、椿から手紙を受け取って軽く一通りの文面を見る。

 

なんというか、今まで私達が未熟だったから爺さんには色々と言われてきたけれど、こんな形で1人前として認められた事に少しビックリしちゃったよ。

 

「ふむ・・・それで、椿と綾よ。これを読んで内容は分かったのか?」

 

「あっ、えと・・・その。レポートの方は、正直分かりませんでした」

 

「私も、レポートについては専門用語っぽい単語が沢山あって全然・・・」

 

ただ、そんな私達でも手紙に記されていた"邪妖"という存在は、もしかしたら茨木童子が呼び出したような地獄の鬼の事なんじゃないかと推測している。

 

単に人間界や妖界に住んでいるような存在じゃないからって理由ではあるけど・・・。

 

"天の者、その力剥がされし時、その肉体は負に満ち、邪妖となる"

 

問題は、この文面の意味がイマイチ良く分からない所だ。

 

その"天の者"ってのが椿のような『天』の"神妖の力"を持っている人を指しているのか、それとも"神妖の力"そのものを指しているのか・・・謎なんだよな。

 

そんな事を考えていると、手紙を椿に返した爺さんはとんでもない事を口にしてくる。

 

「このレポートは、椿の実の両親が書いた物じゃ。もう箝口令も無いから言うが、お主の両親である金狐と銀狐はライセンスを持つ妖怪でも唯一の存在、特級持ちの妖狐なのじゃ」

 

「へぇぁっ!?マ、マジで・・・?」

 

「ぼ、僕の両親が・・・1番ランクの高い、特級の持ち主!?」

 

あまりの驚きの事実に、座りながら背を伸ばしていた私はスッテンコロリンとひっくり返っちゃったし、椿も黒狐さんの腕から飛び降りちゃっているよ。

 

達磨百足さんがライセンスの等級について説明してくれた時、特級の事で何か気まずそうにしていたけど・・・これってつまり、そういう事だったからなんだね。いやはや、椿の両親は凄い妖狐でした。

 

「うむ、2人が驚くのも無理ないじゃろうな。そして、このレポートに書かれている事は当時において、その2人にしか出来ないと言われていた特級の特殊任務・・・邪妖の調査の報告書じゃ」

 

そう爺さんは説明してくれたものの、私も椿も相変わらず何も思い出す事は出来ない。というより、ピンと来ないと言った方が正しいような感じだ。

 

「どうやら、その様子からして椿も綾も記憶は戻らんようじゃな。これ程の重大な情報でも駄目だとは、あの2人は強力な記憶封鎖をかけたものだ」

 

「うぅ・・・」

 

「そ、そうですか・・・」

 

「何故正座をするのじゃ?」

 

何となく申し訳ない気持ちになってしまい、思わず私と椿は正座に座り直しながら俯いてしまう。

 

「とにかく、そんな折りに2人は妖界の伏見稲荷で行方不明となった。そこについてはもう椿と綾、白狐と黒狐にしか分からん事じゃ」

 

それはそれとして、狐2人も椿も当時の事は何も思い出せていない状況だ。しかも、あの手紙や椿の爺さんの話しぶりからして、当時の現場に私も居たかもしれないのだ。

 

でも、その時の記憶を私達の誰も思い出す事が出来ない程に、椿の両親は強力な記憶封鎖の妖術をかけている。そう考えると、とんでもない事態が起きた事を再確認して、それを思い出す事を少し躊躇ってしまいそうだ。

 

椿が起こしてしまった、直接関わった人全員の記憶を封鎖されるだけの事を知って、それを受け入れられるのだろうか・・・と、そう私の中で不安になってきてしまっている。

 

『なるほどの・・・椿の両親が、それほどの強力な存在とはな』

 

『それならば益々、椿は俺の嫁に相応しい。いや、お前じゃなきゃ駄目だな』

 

しかし、そんな私とは真逆に狐2人は相変わらずというか、封じられた記憶の事を恐れもしない態度だ。

 

その様子を見た椿は勿論、不安そうな表情で2人に訊ねる。

 

「白狐さん、黒狐さん・・・恐く無いんですか?」

 

『なに。どんな記憶だろうと、どんな事件が起きていようと、我らは揺らがん』

 

『あぁ、そうだ。俺とて、椿を嫁にするという信念は揺らがん!』

 

当たり前と言ったように答える狐2人に椿は少し呆れたため息を吐きながらも、何処かホッとしたような表情を浮かべていた。

 

「私も・・・椿の親友として、全力で支えてくつもりだよ。それに比べたら、記憶の事なんて全然恐くないね」

 

「綾ちゃんも、相変わらずですね・・・」

 

その2人の言葉で反射的に私も椿へ答えた。

だが、正直に言うと今の言葉を守り切れるのか、私には自信が無い。

 

《記憶が戻れば、椿も綾も皆の所には居られなくなる》

 

半年以上前、そう酒呑童子から言われた言葉が、今も私の頭の中には忘れずに残ってしまっていたのだ。

 

何故そんな事になってしまうのか理由は分からないけれど、それでも私は勝手に居なくなるなんて、椿も皆も悲しませるような事はしたくなかった。

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