私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾弐話 試験の結果、とんでもない事に

 

第3の試験も終わり、私達は他の受験者と共にセンターの入口ホールへと戻ってきた。私が学校で受けた事のある学力試験の時間と比べると倍くらいかかった為か、身体にドッと疲れが重くのしかかる。

 

白狐さんが普段と何一つ変わりない様子で私達を出迎えてくれた。

 

『おぉ、椿に綾よ。ようやく終わったか。どうだった?』

 

「まぁ、とんでもないアクシデントに見舞われたけどね」

 

「アクシ・・・何じゃ?酷く疲れたようじゃな」

 

すると、達磨百足の方へヘビスチャンが電磁鬼を封印した巻物を見せて何やら物々しい雰囲気で会話をしているのが目に入った。

 

やはりというか、今回のアレは本当に想定外の事態だったようだ。

 

『どうした綾?何か心配な事でもあるのか?』

 

「いや、別に・・・。それよりも、今度からは椿にちゃんと妖術を教えてあげておいてよね!試験でアタフタして大変だったんだから!」

 

『む?す、すまんな椿。しかし妖術というのは教えてもらう物ではなく、自分の頭の中に湧いてくる物での。現に椿や綾が学校で使ったあの妖術は、我はおろか黒狐ですら使った事がない妖術なのじゃぞ』

 

白狐さんのカミングアウトに椿が驚く。

 

「ええ!?そ、そうなの?てっきり黒いから黒狐さんの妖術かと――」

 

『俺にあんな奇妙な妖術が使える訳ないぞ』

 

「なんでそんな自信満々なんだよ、黒狐さん」

 

『しかし逆に、頭の中に湧いてきやすい妖術などもある訳じゃ。変化なんかは正にそれじゃ。もうすぐ椿の頭にもそれが湧いてくるハズじゃぞ』

 

「ははーん、それさえあれば椿も学校でいちいち苦労する必要も無くなりそうだね」

 

『それでな――この試験で1つくらいは椿が妖術が使えるようになると考えた訳だ。第1の試験は俺も白狐も知っている。十級くらいのライセンスは取れると見て、翁も取りに行けと言ったんだろうな。・・・それで、2人ともどうだった?手応えはあったのか?』

 

「あ〜、それは・・・」

 

まじまじと私達へ詰め寄る2人に、つい身体を逸らして避けてしまう。するとそこへ美亜が椿の尻尾を掴んで現れた。

 

「ふ〜ん、そっか。あなた達には、そんな強力な後ろ盾があったのね。それなら2人ともあれだけの事が出来るのも当然よね。」

 

「ふぁっ!?み、美亜ちゃん!尻尾触りながら話しかけないでよ!」

 

「美亜、どんだけ椿の尻尾が気に入ったんだよ・・・」

 

「だから、名前で呼んでいいって誰が言ったのかしら?」

 

「あぅ・・・ご、ごめんなさい」

 

今度は私にも猫の尻尾で鼻先をくすぐってくる美亜。私は思わずクシャミが出そうになるのを堪えながら謝罪する。

 

「ふっ・・・く!わ、悪かったよ」

 

「ふん。その2人のお気に入りなら、これ以上いじると怒られるわね」

 

『その通りじゃな、金華猫の娘よ』

 

「金華猫だって?美亜の姿はまるで――」

 

「くっ・・・!それは言わないで」

 

白狐さんからその言葉を言われた途端に美亜の表情が嫌らしく曇る。

 

『しかもその物腰、話し方。代々優秀な金華猫を出してきた一族だな』

 

「・・・っ」

 

「なんでそんなに嫌そうな顔するんだよ、美亜?私は普通にお前の事を見直したんだけど」

 

『ふむ、そんなにその一族が嫌か?それとも、その毛の色も関係しておるのか?優秀な金華猫といえば茶虎が――』

 

「白狐さん、そこまでにしておいて。なんか美亜には人へ言えないようなコンプレックスを抱えてるのかも。彼女の為にも、ここはそっとしておこうよ」

 

そんな私の気遣いすら、自身を見下されていると感じた美亜はキッと顔をしかめたまま此方へ背を向けた。

 

「良い事?あなた達2人は私のライバルよ、覚えてなさい!」

 

そう言って去っていったのを見届け、黒狐さんが私達へ微笑ましい顔を向ける。

 

『おぉ、椿に綾よ。早速友達が出来るとはな』

 

「勘弁してよ・・・」

 

「黒狐さん、あの態度が友達に見えますか?ハァ・・・絶対にいじめられる」

 

「いざとなったら私が守るから、安心して椿」

 

私はそう言いながら、椿の頭を撫でて「気にするな」と励ます2人になんとなく嫉妬した。

 

すると私と椿の耳元で突然声が聞こえてくる。

 

「いやぁお2人とも、助かりましたよ。ライセンスが無いあなた方は本来妖魔を捕まえる事が出来ないので、私が捕まえた事にしておきましたがあなた方がいなければ捕まえられませんでした。感謝します」

 

「どわぁ!?」

 

「うひゃあ!?耳元でヘビスチャンさんの声がぁ!」

 

声の方向へ頭を動かすと、そこにはヘビスチャンが分身したと思われる1匹の蛇がいつの間にか私達の肩の上に乗っていた。

 

『どうした2人とも!?ヘビスチャンが何かしたのか?』

 

「あっ、何でもないです。空耳でした」

 

「こ、こっちも気のせいだったみたい」

 

いくら私は気に入っていないからとはいえ、2人が捕まえた妖魔が逃げ出したと知られたら後味が悪すぎる。とりあえず2人に余計な心配をさせないように、私達はさっきの電磁鬼の騒動を伏せる事にした。

 

するとホールで職員の声が響く。

 

「これよりライセンス試験の結果を貼り出します!ご自分が提出された妖怪名もしくは命名された名前を確認し、取得された方は受付までお越しください!そのまま、お持ちの「妖怪フォン」に登録をさせていただきます」

 

「妖怪フォン?」

 

「2人が学校で散々いじってたアレの事?」

 

『その通りじゃ、これが妖怪フォンじゃ』

 

『後これを持っていない場合は、ここで支給されるから安心しろ。ほら、結果を見に行くぞ』

 

そう言って私達が人集りの出来ている掲示板へと歩いていくと、そこにいた妖怪達が私達に対してサッとモーセの海割りのように道を開けてくれた。

 

「おいおい、随分な高待遇だね」

 

「白狐さんと黒狐さんって、そんなに凄いんですか?」

 

『いや、そうでもないぞ。我らは妖怪に近いが、白狐である我は稲荷神社の守り神として存在しているので少しばかりランクが違うだけだ。だが、ここまでされる覚えはないの』

 

『俺も白狐と似たようなものだ。稲荷ではないが、妖怪の中でもランクが高い方ではある。だが、ここまで極端な事をされる程ではないな』

 

「それじゃ一体、どういう事だろ・・・」

 

不思議に思いながら掲示板を見ると、そこに貼りだされていたのは――

 

『妖狐・椿、人間・綾。五級認定』

 

「・・・は?」

 

「ほへ?」

 

『椿、綾、お主ら一体何をした・・・』

 

『普通は十級か九級、良くて七級だぞ・・・。あの名家の金華猫の娘も六級と凄いのだが、2人はその上をいっている』

 

なるほど、妖怪達が私達に反応したのはそういう訳だったのか。彼らの中からでも美亜の物凄い気配の視線を感じていたのは言うまでもない。

 

「マジでか・・・」

 

『これは翁も腰を抜かすぞ〜』

 

『十級が取れたら良い方だと、翁も俺達もそう考えていたからな・・・!』

 

「こりゃ、私達やりすぎちゃったって事だよね・・・椿?」

 

「うぅぅ・・・多分あの妖術と、最後の試験のアレだよね・・・やっちゃったよぉ」

 

『『2人とも心当たりがあるんか!?』』

 

2人が驚いた声をあげた事で私達はつい身体をビクッと硬直させてしまう。けれどすぐに2人が褒め称えるように喜び始めた。

 

『そんなにビクビクするな。これは帰ったらご馳走を用意せねばな!2人とも、良くやったぞ!』

 

『本当だな。椿は俺の自慢の嫁になりそうだ。椿、胸を張れ!誇って良いぞ!』

 

「あ、アハハ・・・」

 

「お、怒ってないの?」

 

『何を怒る必要がある、椿よ?驚いただけじゃ。心配するな、お主らはよくやった。それにあんなに怯えていた椿が、五級を取るなんて・・・こんなめでたい事はないわ』

 

「ほら、白狐さんもこう言ってるんだし。椿ももっと自信を持っていいと思うよ?」

 

「てへへ・・・」

 

私達は、まるで本当に家族になったようにその喜びを分かちあっていた。ここまで喜んだ事なんて、オジサンに誕生日を祝われた時以外であっただろうか。

 

――少し、心の底から頬が綻んだ気がした。

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