私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
椿の爺さんから色々な話をされた後、昼ご飯を食べ終えた私達は狐2人と共に、こちらで溜まっていた任務をこなしている。
というのも、妖怪センター本部が茨木童子による地獄化で実質壊滅してしまった事で、承認待ちだった任務が全て私達の方のセンターへと流れてきてしまっていたからなんだけど。
一先ずはライセンス持ちの妖怪全員に連絡がついてセンターとしての動きは何とかなってきているけど、それまでに溜まっていた任務の量が多いせいで今は誰もが簡単に休めない状況だ。そして、色んな事情でまだ妖魔を捕まえられない私と椿も特別な許可を爺さんから受けて、自分達が使える浄化の力を活かせる現場へと向かっている。
そんな訳で今、私達は賀茂川の上流で悪事を働いているという河童の所へとやって来ていた。
「女子ばかり誘拐してるって聞いたから厳重注意しに来たけど、これは・・・」
『椿!綾!避けろ!』
「白狐さん、大丈夫です!吸収して返します!」
「ほいっと!案の定、寄生妖魔に取り憑かれてたね!」
悪事を働いていた原因はアッサリ見つかった訳だけど、どうやら寄生された直後で河童本人が抵抗してくれていたから、頭の皿に寄生妖魔の本体が出てきていて良かった良かった。
「よし、あの状態なら何とかなる!」
「うぐ・・・ぁぁあ!!」
「気をシッカリ持って、河童さん!すぐ助けます!」
河童が操ってきた川の水を椿が吸収して、それを直撃しないように彼の近くへと放出する。そして、激しく水しぶきが舞い上がったと同時に椿は妖術を発動した。
「妖異顕現、動水の儀!」
「ナイス、椿!後は――妖異顕現、凍華繚乱!!」
河童を椿の妖術によって縄状となった水で縛り付け、そこを更に私の妖術で凍り付かせて完全に暴れられないよう身動きを封じる。こうなれば、もう頭の皿に取り憑く寄生妖魔は"まな板の鯉"も同然だ。
「御剱!」
「氷霰剱!」
そうしてアッサリ同時攻撃で寄生妖魔を浄化し終え、私と椿は同じタイミングで大きく一息をついた。
「「ふぅ・・・」」
『全く、本当に俺達は必要なのか?』
『黒狐、そう嘆くな。いざという時にフォローをすれば良いだけだろう』
戦闘の一部始終を見ているだけだった狐2人が苦笑いしていると、突如として黒狐さんのスマホから着信音が発せられる。
『むっ、電話か?嫌な予感が・・・』
小さくため息をつきながら黒狐さんが電話に出たと同時に、今度は椿の方のスマホにも着信が入ってくる。画面に表示された登録名から、電話は美亜からのようだ。
「もしもし、美亜ちゃん?」
《椿、綾。こっちは終わったわよ》
《椿姉さ〜ん!綾姉さ〜ん!自分がやりましたよ〜!!》
《ちょっと、うるさいわよ楓!》
その電話越しに聞こえてくる楓の大声に、私も椿も思わず張り詰めていた気が抜けて笑ってしまう。
今回、私達は前のようにチームで分かれて別々に行動している。念の為、妖魔人の動きがないか私と椿で妖気のチェックもしているのだが、今の所は何の動きも無い状況だ。どうやら、閃空が倒された事で警戒されているらしい。
何にせよ、昼間と今のとで大きな戦闘を続けた後でも、白狐さんの治癒と里子が持たせてくれた妖怪食のお陰で、既に次の任務をこなせる程には回復済みだ。
「とりあえず、私達の方も終わった・・・けど」
『椿に綾、また任務だが・・・すまん。俺と白狐の2人で来いと、そう指定されてしまった』
『何じゃと?という事は、社(やしろ)関係か?』
『そのようだ。神域に入れる守り神として、直ちに行かねばならん』
「白狐さん、黒狐さん。僕達は大丈夫ですから、急いで行ってあげてください。でも、亰嗟と妖魔人には気を付けてくださいね」
そう椿が狐2人に言って見送ろうとすると、電話から美亜がやれやれと言った様子の声が聞こえてくる。
《丁度良いわ。2人共、こっちに合流して。翁から次の任務を与えられたから》
「おいおい・・・いくら妖怪食で回復出来るからって、爺さんは過労でぶっ倒れるまで働かせる気かよ?」
「体力の回復は出来ても疲労はあるからね。全くもう・・・」
『はっはっは!まぁ、今は頑張るしかないの』
そう苦笑いしながら、白狐さんは転移空間を作り出して河童と誘拐されていた女子達をセンターの職員と一緒に誘導していたよ。
でも、確かに愚痴を重ねていても任務が減る訳じゃないんだし、とことん一つ一つ片付けていくしかないね。
◇◇◇
狐2人と分かれた後、私と椿は美亜達が待つ北野天満宮へとやって来る。
天満宮というと、学問の神様が祀られているんだったか・・・なんて事を考えている間もなく、駐車場側にある巨大な鳥居の前で待つわら子や美亜と楓、そして雪に里子の姿を見つけた。
それと同時に、神社の周辺から漂ってくる強い妖気と憎しみ一色な邪気も感じ取れた。
「うわっ・・・何ですか、この邪気?」
「や〜っと来たわね〜?2人共、遅かったじゃない?さては、椿が白狐と黒狐にタ〜ップリと甘えていたのかしら?」
「いやね、美亜・・・あの狐2人が椿の尻尾に甘えてたというか、何というか・・・」
プンスカと言った具合に不機嫌な美亜へ説明する私達を見て、楓と雪が困った顔を浮かべる。
「もう、美亜さん。不貞腐れないでくださいっす」
「その通り。椿の尻尾は、皆のもの。でも、綾のポニテは私のもの」
「そこから何で私の髪に話シフトするんだよ・・・しかも勝手に触ってくるなや」
な〜んで皆、こんな気楽なんですかね?
あれだけ神社がヤバい雰囲気になってるって言うのに、切羽詰まった様子どころか緊張感の欠片も無いんですけど。
だけど、まぁ下手に緊張で身体が思うように動かないよりはマシかな。
「と、とにかく・・・これも妖魔の仕業だろうから、早いところ調査しますよ!」
「「「「は〜い」」」」
「はーい・・・ふぅ、助かった」
すると、そんな椿の一声に美亜だけが返事していない事に気が付く。しかも、怒っているのか猫耳や尻尾の毛まで逆立てていた。
「椿・・・」
「わっ!ご、ごめんなさい!」
「何で謝ってんのよ?」
「えっ?あれ・・・怒っていないのですか?」
「ふ〜ん・・・私に何か悪い事したと思っている訳。可愛いわね〜」
「ちょっと、美亜ちゃん!僕の方が歳上だし、リーダーなんです――あぅ、ふゃぁ・・・!」
「そうは思えないのよね〜」
そんな事を言いながら美亜は椿の狐耳を弄る。
とりあえず、これ以上は少し椿が可哀想なので助け舟を出すとしますかね。
「なぁ、美亜。怒っていなかったのなら、何で威嚇するように毛を逆立ててたんだよ?」
「あら、椿も綾も気付いていないの?この感じ・・・誰かが、この神社に呪いをかけようとしているのよ」
「えっ、呪い!?まさか、妖怪さんが?」
「それは分からないわ。だから、調べるにしても周囲への注意は怠らないようにしないとね」
流石は美亜、呪術専門なだけあって私や椿より呪いに対するカンは鋭いな。こういう時だと人一倍頼り甲斐があるよ。
「と・に・か・く!今から調べるので、皆は僕の耳と尻尾から手を離してくださ〜い!!」
「あっ、やば!つい私まで触ってた!」
「「「「「魅了能力があるからしょうがない」」」」」
「美亜ちゃん達は口を揃えて言わないで!」
そういや椿の尻尾って、ふと触らずにはいられなくなる程に強い魅了の力があるんだったわ。
ちょっと気を抜いたら、それこそ強く我慢してる私ですらウッカリ触っちゃうんだもんなぁ・・・もう少し忍耐の修行を積まないと。
「もう・・・皆、行きますよ!」
そう言って椿が尻尾をバタバタさせて皆を引き離しながら先に歩こうとすると、その後ろから誰かの声が聞こえてくる。
『ケモ耳・・・巫女さん妖狐・・・も、萌える!』
「へっ?」
「は?」
椿と共に驚いて振り向くと、そこにはいつの間にやら丸メガネでオカッパヘアな男子学生が興奮した様子でハァハァしてらしたよ!
もしもしポリスメン?変態に出くわしたんですが――と思ってたら、腰から下が透けているみたいだしコイツは幽霊みたいだ。
しかも、沢山の邪気が湧き出て椿の方に迫っている事と、変態男子学生の幽霊の頭からはラジコンのアンテナみたいな妖気も感じられる事から、どうやら操られているっぽいな。
「参ったな・・・レイちゃんはまだ弱ってて無理させられない状態だから連れて来てなかったし、どうする?」
「これは僕達だけで、この男子学生さんを成仏させるしかないけれど・・・」
『妖狐・・・巫女さん・・・萌え限界、突破している・・・!あは、あはは・・・しゃ、写真、写真を撮らせてください!』
あ〜・・・はい、そういう事ですか。この人、完全に椿しか見えてないような感じだもんな。
「椿――」
「椿姉さん――」
「えっと、その・・・なんだ、椿――」
「「「「「「ファイト!」」」」」」
「ちょっと皆!他人事だと思ってるでしょう!?」
すまん、許して椿!大人しく写真を撮らせて成仏させられるなら、それが1番手っ取り早いんだよ〜!