私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
『は〜い!視線、こっちに向けてくださ〜い!』
という訳で「私達」は現在、オタクっぽい男子学生の幽霊の言う通りに写真を撮らせてあげている状況だ。
え?なんで「私達」ってなってるかって?
そりゃあ、勿論――
『銀髪ポニテの子、ポーズが固いですよ〜リラックス、リラックス〜』
「は、はい・・・こう?」
『そうそう!良いですよ!あっ、猫耳の子、もっと笑顔でお願いします〜!』
「くっ・・・」
「我慢して、美亜ちゃん。ここは綾ちゃんみたくシッカリやらないと、この人が呪いをかけようとしている幽霊さんなら機嫌を損ねたら駄目なんでしょ?」
「何で、何で私まで・・・」
まぁ、言わずもがなです。一先ず此処の神主さんが「見える人」で助かったけれど、まさか皆の分の巫女服を用意してもらえるなんて思ってもみなかったよ。
「つ、椿姉さん・・・いつも、こんな恥ずかしい格好を?」
「恥ずかしいとは何ですか?全国の皆さんに謝ってください、楓ちゃん」
「あの・・・座敷わらしの私が、こんな格好して良いのかな?」
「うん・・・気持ちは分かるよ、わら子。でも、もう少し我慢してて」
それにしても、この幽霊が椿どころか私達5人にまで巫女服をお願いしてくるとはね。よっぽど巫女さんにこだわりがあるみたいだけど、逆に言えばそこに成仏させる為の手がかりがありそうだな。
「綾と、おそろい・・・ふふふ」
「はぁ、はぁ・・・このまま椿ちゃんと、ペアルックデートを・・・」
お揃いの巫女服でテンションが幽霊と同じくらいに上がっちゃってる雪と里子は放っとくとしよう。何か物騒な事言ってたような気がするけど知らん知らん。
とりあえず、今はこの幽霊を操っている犯人を探さないと。
幽霊に写真を撮らせながら、私と椿は向こうに見えないようコッソリとスマホで相手の妖気をチェックする。
「よし、やっと見つけた。椿、この妖怪で間違いなさそうだよ」
「えっと・・・魂猟?"彷徨う魂を捕まえ、その未練や願いを叶えさせて満足した直後を狙って食べる妖怪"なんだ・・・って、不味いよ綾ちゃん!このまま満足させちゃったら、この幽霊さんが!」
「マジでか!?」
あまり内容を細かく読んでなかったからビックリしたわ!でも、そんな慌てふためく私と椿とは対照的に、何故だか美亜は不審がる様子で唸っている。
「ん〜・・・何だか違う気がするわね。この幽霊は今みたく、色んなコスプレイヤーの巫女服姿を撮影する為に神社を彷徨っているようには感じないわ。むしろ、神社を呪おうとしている原因はこの幽霊の未練なんじゃないかしら?」
「あっ・・・そうか。普通に考えれば、確かに美亜ちゃんの言う通りですよね」
「でも、それならそれで神社を呪う理由が益々分からないんだけど・・・」
そう皆で首を傾げていると、今の話を聞いたのか男子学生の幽霊は急に静かになって俯いてしまう。
とはいえ、その話は魂猟の支配から解き放つ為にわざと聞いてもらうようにしていた私と椿の作戦なんだけどね。
それに、手配書によると魂猟のランクはBらしいけれど、操られている幽霊から感じる妖気の邪悪な質からして、コイツも先の河童と同じく寄生妖魔に憑かれているのは間違いなさそうだ。
『違う・・・』
「「んっ?」」
すると、今度は俯いていた幽霊が何事かを呟き始める。
『こんな、こんな女の子なんか・・・居る訳がな〜い!!』
「え〜!?」
「ちょ、カメラ壊して何やってんだよ!?」
なんと、男子学生の幽霊は心底絶望したように自分のカメラを地面へ叩きつけて、更には地団駄を踏んで壊してしまったのだ。
「ちょっとアンタ、どういう事よ!?こちとら恥を忍んで撮らせてやったのよ!それを『違う』って、何が気に入らなかったのよ!」
勿論というか、その行動を見た美亜は納得いかない様子で幽霊に猛抗議しているけど・・・何というか、その怒りっぷりは"自分の美貌を撮らせてやっていた"という優越感を無駄にされたって感じもするんですが?
だって、今さっき写真を撮らせてやる事が男子学生の幽霊の未練ではないって言ってたばかりだし。
「折角の、私の美貌の記録がぁ・・・」
「はいはい。ややこしくしない、ややこしくしない」
「ふにゃぁ!?ふに・・・っく、尻尾は駄目!椿、綾を止めてぇ!」
「美亜ちゃん、今は大人しくしててください。目的を見失われたままじゃ危険ですからね」
尻尾を掴んで無理やり美亜を後ろに下がらせ、私と椿は皆を守る形で幽霊の前に立つ。どうにも、その魂猟という妖怪は、私達の近くで様子を伺っているかのように感じるのだ。
『巫女さんは、巫女さんは・・・』
そうしている内にも、わなわなと幽霊は何かを溜め込むように身体を震わせていた。あの巫女への執着心からして、何か嫌な予感が――
『巫女さんは全員、黒髪ロングの清楚系じゃないと駄目だろうが〜!!』
「ズコ〜!!」
「はい!?」
ど〜せそんなこったろうと思ってましたよチクショウ!
神社で働くなら確かに髪とかはキチンとしなきゃいけないだろう事は共感出来るけど、それでも黒髪ロングは拗らせに拗らせ過ぎだっつ〜の!
それに態度も急変して、さっきとは別人レベルで怒りに怒っているし・・・って、何か幽霊の頭上に大量の顔があるだけの白い肉塊が浮いてるんですけど。
「もしかしなくても、あれが魂猟か?」
「うぅ・・・顔が1つだけじゃなくて幾つも付いているなんて、気持ち悪い見た目ですね」
その見た目に私と椿が引いていると、わら子は訝しげな表情をしながらも魂猟の特徴を見つけ出す。
「なるほど、この妖怪さんに食べられた霊魂は身体の一部にされちゃうのね」
「ほほぅ、という事は・・・わら子さん。ここまでブクブク太ったコイツは、それだけ食ったという事っすね。いや、食いすぎっす」
「だったら・・・吐かす」
「怖い事言わないでください、雪ちゃん!?」
「なるほど、それなら簡単だな!お〜っし、やるか〜!」
「綾ちゃんも乗っからない!!」
そうズビシ!と椿にツッコミのチョップを入れられちゃったけど、これは流石にレイちゃんを連れて来てた方が良かったかもね・・・まぁ、"覆水盆に返らず"って感じだから頑張るしかないや。
『黒髪ロング・・・全員、黒髪ロングに・・・そうじゃない神社なんて、神様なんて・・・呪ってやる〜!』
「えっ、たったそれだけの理由でですか!?」
「みみっちいな、オイ!」
とはいえ、男子学生の幽霊くらいの力じゃ神様が神社に張っている結界を破るどころか、1歩も神社内へ立ち入れる事も出来ていないんだけども。
――なんて思いながら相手の様子を伺っていると、宙に浮かぶ魂猟がモヤのような物を発して、それを幽霊へと纏わり付かせていた。
『ふ、ふふ・・・力が湧いてくる。これなら呪える!黒髪ロングじゃない、ブサイクな巫女さんを働かせる神社なんか〜――ぐはっ!』
そのモヤらしき物からは妖気が感じられる事から、どうやら魂猟はああやって獲物である幽霊が目的を達成する為の力を与えているようだ。
・・・その男子学生の幽霊が、魂猟自身でも予想外なくらいに弱かったっぽいけど。全力で鳥居の中央に体当たりして跳ね返ってるし。
しかも相手が神様なのにも関わらず呪おうとする幽霊も、未練を叶えさせて幽霊を食べようとしている魂猟も理性を失うくらいに必死だ。
問題は、その魂猟が寄生妖魔に取り憑かれているせいで半ば暴走しているような状態だろうか。これ以上長引かせたら流石に――って、何か魂猟が私達の方を見てません?
「ひょっとして魂猟の奴、幽霊を満足させる為に私達を黒髪ロングに変化させる気じゃない?」
「ええっ!?それはちょっと・・・美亜ちゃん!!」
「やってるわよ・・・!ただ、周辺にコイツらの邪気が漂っているから、邪気の上書きをするのが大変なのよ!すぐには呪術で何とか出来ないわ!」
魂猟の狙いを察した私達に、美亜は相手を睨みつけながら難しい顔を浮かべる。
「それなら自分が〜――ぎゃうっ!?」
すると時間を稼ぐつもりだったのか、楓がクナイを片手に魂猟へ飛びかかるも、空気の壁のような衝撃波でアッサリ吹き飛ばされてしまった。
「「楓(ちゃん)!」」
「あぐっ・・・す、すみませんっす姉さん達。案外強かったっす」
「そりゃあ、寄生妖魔に取り憑かれてる奴だからな。楓が倒した相手みたく、そう一筋縄じゃいかないよ」
「ええ、綾ちゃんの言う通りです。だから、先ずは相手の動きを止めないと。結構、力も強くなっているから生半可な攻撃だと反撃されますよ」
吹き飛ばされた楓を空中で受け止めた椿が着地するのを見届けてから、私は氷霰剱を構え直しつつ皆の方に振り返る。
「とにかく、椿が寄生妖魔の位置を突き止められるまで、私達で魂猟の動きを何とか止めるよ!」
何せ、こういう仕事は椿より私の方が向いているからね。幽霊を操って暴れさせている魂猟が相手でも、皆と協力して戦えばきっと勝てるハズだ!