私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
椿が取り憑いている寄生妖魔を見つけるまでの間、私は美亜達と共に魂猟や幽霊の動きを止めるべく奮闘している。
「くっ、中々上書き出来ないわ。綾に楓、ちょっと相手に攻撃して、向こうの集中力を削いでちょうだい」
「なるほど!それで少しでも呪術が弱まれば!」
「でも、無茶な注文っすね!片方の相手は霊体っすよ!?攻撃しても吹き飛ばされるし、どうすりゃいいんっすか!?」
「私も爪で攻撃してもだし・・・う〜ん。吠えて追い払った所で、だよね。とにかく狛犬らしく、守りに専念しないと」
とはいえ、まだまだ里子や雪は戦闘に不慣れな様子で、楓も鍛えていても腕前は美亜に及ばないので苦戦は必至だ。でも、確か里子は少しでも戦えるようにと様々な妖具を持ってきていると聞いたけど・・・。
「里子、妖具は?持ってきていたハズでしょ?」
「えっ?あ〜、えっ・・・と」
オイちょっと待て里子、何で凄く気まずそうに目を逸らすよ。何となく嫌な予感がするんですが?
「里子ちゃん、全部出して」
そう笑顔を浮かべた椿の言葉で、里子は観念した様子で巾着袋から妖具を出してくれた・・・んだけど、嫌な予感が的中したわ。
里子が持ってきてた妖具、どれも首輪とか鞭とか手錠とか捕獲や服従用のばかりじゃね〜か!!
「「さ〜と〜こ〜(ちゃ〜ん)?」」
「ご、ごめんなさい!」
「はぁ・・・ったく。まぁ一応攻撃出来る物はあるんだし、その鞭で援護を頼むよ」
「そうですね。僕が妖気を探って寄生している妖魔の位置を特定するから、里子ちゃんはそれを使って綾ちゃん達の援護お願いね」
実際問題、少し嫌な予感のする妖気が遠くから迫ってくる感覚もあるので、私も椿もあまり戦闘を長引かせる訳にはいかない状態だ。ここで下手に消耗してしまえば、もし追いつかれた時に逃げ切れるかも怪しくなってしまうからね。
「ところで2人共、あの・・・これね、蛇女さんの妖具でね。認識した相手に向かって蛇のようにうねって伸びて、自動で捕まえたり叩いたりするの。だから・・・」
「って、もう魂猟も幽霊も捕まってる!?いやいやいや、それ強すぎだろ!」
「本当は椿ちゃんに使いたかったんだけど――んぅ!?」
あ、椿が影の妖術で里子の口を塞いだ。まぁ、サラッとトンデモ発言しそうになってたから仕方ないね。
『ちくしょう!!何だコレは!?離せ!!』
まさか自分が捕まえられるなんて思ってもいなかったのか男子学生の幽霊もビックリしているし、魂猟の方も身体に巻き付く鞭から抜け出そうとしてもがいていたよ。そして、そのお陰で取り憑いている寄生妖魔が危機を感じてか妖気の反応が1箇所だけ強くなる。
「なるほど・・・そこですね、御剱!!」
椿がそれを感じ取って魂猟へ飛び込みながら御剱を突き刺し、飛び出した大量の触手みたいな寄生妖魔を一斉に浄化した。
「おっと!手配書に書かれているから、ついでで巻物に封じさせてもらうよ!」
私が身動きの取れないままな魂猟を巻物に封じ込めたから、後はわら子と美亜に場所の浄化と幽霊をレイちゃんの所に連れていくだけ・・・なんだけど。
やっぱりというか、そう簡単には上手くいかないらしい。
「美亜、わら子・・・ごめん、此処の浄化は一旦後回しだ」
「ええ、綾・・・幽霊の方も後でレイちゃんに言っておきます。だから、今は皆とにかく逃げますよ!」
そう椿が叫んだ瞬間、神社の塀を破壊して私達の目の前に茨木童子の呼び出した十極地獄の鬼の1体がドスン!と着地してくる。
「ぐはははは!!見つけたぞ!!」
「なっ・・・もう目の前に!?」
妖気は確かに遠くから感じたハズなのに、なんて身体能力をしているんだ。しかも向かってきている敵が1体とは限らないし、大柄で優れた身体能力のある鬼が相手では勝ち目の薄いから戦闘を長引かせる訳にもいかない。
「ちょっと、何よ・・・この感じ、凄く気分が悪くなる」
「ね、姉さん達・・・逃げましょう・・・これ、駄目な奴っす」
そんな相手の異常な威圧感に美亜も楓も震え、雪も無言で立ち尽くしてしまう。それでも、わら子と里子が何とか爺さん達と連絡を取ろうとしてくれているが――
「おっと、増援を呼ばれては厄介だ!」
そいつは一瞬で2人との距離を詰め、鋭く尖った爪で引き裂こうとしてきた。
でも、それをさせる訳にはいかないよ!
「うぐっ・・・――うぅぅぅ!!」
「"悲愴天・玄武"、展開!ぐっ・・・――うぉぉぉ!!」
白狐さんの力を解放した椿と共に私も儀礼衣装を"悲愴天・玄武"へ変化させ、その鬼の一撃を椿の御剱と私の巨大な盾で受け止める。
だが、向こうのパワーはあまりに強く私と椿はジリジリと後ろに押されてしまう。
「ほう・・・この俺、第一地獄の"厚雲(こううん)"が厚き爪を、その弱き剣と盾で受け止めるか。しかし、どこまで防御は持つのだろうな!」
「てめぇの名前なんか知るか!私達は守りたい物があるから戦う、それだけだ!凍華繚乱!!」
「僕の・・・私の大切な存在を壊すのなら、容赦なんかしませんよ!負なる者――いや、邪なる者!金華浄焔!!」
"神妖の力"を全開に私達は相手の土手っ腹目掛けて神術を放った。しかし――
「ほぅ、どう容赦しないのだ?」
「えっ・・・なっ!?」
「そんな、アレを片手で受け止めるなんて!」
「ふん!!」
「うわっ・・・きゃぁぁぁあ!?」
「んな、尻尾を――ぐぁぁぁあ!!」
なんと厚雲は椿の槍状にした尻尾を掴んだまま、力づくで遠心力を付けて椿を振り回して神社の壁へと投げつけてきたのだ。それに私も巻き込まれ、彼女と共に吹っ飛ばされてしまう。
「流石にこれは駄目か――へっ?」
「ぐっ・・・!あれ?これは・・・」
すると壁に激突したかと思った時、私と椿は幾重にも張り巡らされた蔦に絡め取られギリギリな所で助けられていた。
「これは、美亜の呪術・・・って、なんか身体に絡みついてくるんだけど!?」
「ちょっと美亜!?」
「しょうがないでしょ、2人共。やっとアイツらの邪気が無くなったから、私が呪術を辺りの木々にかけられたのよ。だから完璧に扱える訳じゃないし、脱出はセルフで宜しく」
「くっ・・・アフターケアも、ちゃんと出来るようになってもらいたいですね」
「全くだよ・・・妖異変化"怒髪天・朱雀"、展開!ていっ!」
そして私達は蔦を斬って脱出し、大きく飛び上がって皆の所へと舞い戻る。
美亜はそのまま呪術で成長させた蔦で足止めをしようとしてくれていたけれど、やはり相手は地獄の鬼だからか簡単に引きちぎられてしまっている。
更には、わら子も扇子を手に幸運の気を私達の方向へ誘導してくれているにも関わらず、厚雲の持つ邪気が川の中の岩みたいに遮るせいで上手く運気が流れてきていないようだ。
美亜もわら子も強ばった表情で脂汗を流している事から、その相手のヤバさが簡単に見て取れた。
「不味いな、これ。何とかして逃げられるかな」
「それが出来たら良いけれど、果たして相手は許してくれるかしらね・・・?」
「確かに、今でも戦う気満々で迫ってきていますからね。あれは絶対に逃がしてはくれなさそうです・・・仕方ありません。"アレ"をやりますよ、綾」
「はぁ・・・やっぱりね。日に使えるのがたった1回だけだけど、私と椿『本来の"神妖の力"』で切り抜けるしかないか」
私と椿がそう言うと、里子は不安そうな表情を向けてくる。
「椿ちゃん!綾ちゃん!でも、それは・・・!」
「里子、この場を切り抜ける為なんです。それに、ここを凌ぎきれれば私達の方に来てくれている、こちらの増援と合流出来ます」
「あの狐2人と酒呑童子が間に合えば、何とか逃げきれるハズだ!」
近づいてくる速度からして3分くらい耐えれば合流出来るけど、後はコイツから逃げられるかどうか・・・いや、ここは逃げきれるって信じなきゃ駄目だ。
私だって椿と同じく、もう大切な人達を誰1人として失う訳にはいかない!