私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第捌話 こんなに時間が長く感じたのは初めてだよ

 

北野天満宮にて十極地獄の鬼、厚雲と対峙する私達だったが、さっきの攻防だけでも勝ち目が薄いのは明白だと感じている。

 

それでも狐2人と酒呑童子が合流するまで持ち堪えて皆で無事に逃げる為には、生まれた頃から持っている椿の『増幅』の"神妖の力"と、私の『鈍色の狐』の力を使うしかない。

 

「ははは!逃げないとは、諦めたか!」

 

「あん?誰が諦めるって言ったよ!」

 

「むしろ逆ですよ、逃げる為です」

 

体当たりしてくる厚雲を避けつつ皆を下がらせた私と椿は、そのまま相手の腕に御剱と氷霰剱で斬りつける。しかし、やはり厚雲の防御力は硬く掠り傷の1つにもなっていないようだ。

 

「何かしたか?ふんっ!」

 

「うぉっ・・・と!なんつー硬さしてんだよ、全く!」

 

「こうなれば、やはりコレしかないですか」

 

厚雲が振り抜いてくる腕を2人で受け止め、椿も守るように麒麟甲を分離浮遊させて体勢を整えつつ着地する。

 

「よし、やるぞ!いくよ椿!」

 

「さて・・・では、見せてあげましょう。私の――いや、僕の本当の力をね!」

 

そして自分自身の本来の力を少しずつ内側から解放していき、狐耳を生やして鈍色の毛並みとなった私は白金の毛並みとなった椿の隣に立つ。

今回は私も椿も半分程解放した"繋ぎ"の状態で長く戦っていたからか、今まで以上に力が安定している。

 

「つ、椿ちゃん・・・尾が2本共、白金に・・・それに綾ちゃんも、前より耳と尻尾が大きくなって・・・」

 

「へっ?あっ・・・!」

 

「これは・・・私と椿の妖気の絶対量が増えてる、って事なのか?」

 

「でも、これなら――」

 

椿が試しに美亜達へ『増幅』の"神妖の力"を放ってみても、元の姿に戻ったり暴走しそうな様子は見られなかったよ。

 

「うん、いける!皆、遠慮なく妖術を使って相手を足止めして!」

 

「おし!任せとけ!」

 

「ちょっ・・・そんな事を言われても――って、きゃぁぁ!?」

 

なるほどなるほど、椿の『増幅』は味方の攻撃力を上げる事も出来るのか。美亜が少し木に呪術をかけただけで一気に大木が何本も生えて、自動で厚雲を捕まえようと枝を伸ばしてるくらいだ。

 

「何これ何これ!?ちょっと椿、アンタ私に何したの!」

 

「少しの間だけど美亜ちゃんの力を増幅させました。それが僕の持つ、本来の"神妖の力"なんだよ」

 

それを聞いた皆はポカーンと口を開けて固まってしまったけど、そこで私は自分の『鈍色の狐』の力による更なる応用法を閃く。

 

「じゃあ、私もちょっと――おし、出来た!楓、雪!今から凄い事するから、私に妖術を使ってみて!」

 

「えぇ!?大丈夫なんですか、それ!いや、まぁ・・・綾姉さんが言うなら――」

 

「私は綾を信じる。そしたら、いくよ――」

 

仕方なさそうに楓が放った煙の妖術を左手で、真剣な眼差しで雪が放った冷気の妖術を右手で受け止めた私は2つの妖術を胸の前で合体させて、それを大木と組み合っている厚雲へと向けて放出した。

 

「あっ・・・嘘」

 

「こ、これは一体・・・?」

 

すると、それは辺り一面を覆う程の霧に変化して厚雲を大木ごと包み込み、なんと樹氷のように一瞬で相手を凍り付かせてしまったのだ。

 

「わお、マジでか。やっぱ椿の力で増幅されてるからか、合わせ技した時の威力も段違いになってるっぽいな」

 

「あ、綾姉さん?今のは何なんですか?」

 

「うん、簡単に説明するとだ・・・私がなれる『鈍色の狐』の身体には、別々な妖術の式を一瞬で組み直して1つに合体させられる力があるんだ。更に分かりやすく言うなら、術式吸収&放出の上位互換みたいな感じかな。練習すれば他にも色々出来るみたいだけど、とりあえず今はこれくらいってところ」

 

「凄い・・・流石は綾、私の旦那様にふさわしい」

 

おう何ちゃっかり外堀埋めてきてるんですか雪さんや。というか、凍ってる厚雲からピキピキと割れるような音も聞こえるんだけど・・・?

 

「綾!相手はまだ止まっていません!」

 

「むん!!ぐわははは!!」

 

「お、おわ〜ビックリした・・・あんなガッチリ凍らせても駄目なのかよ」

 

相手が地獄の鬼だから案の定と言えば案の定だけど、これくらいじゃ足止めにもならないみたいだな。そうなると、打つ手は――

 

「こりゃもう、力づくしかなさそうだな!!」

 

「やっぱり、これで吹き飛ばさないと駄目って事ですか!?」

 

椿がハンマー状に変化させた尻尾と共に、私も自らの束ねた髪を竜巻状にして振りかぶり、しならせた勢いも使って向かってくる厚雲へ同時に叩きつける。

 

「白金の地龍槌(はっきんのちりゅうこん)!!」

「稲妻雷轟蹴(いなづまらいごうしゅう)!!」

 

「おぉっ!?・・・っと、ぐぅぅ!!」

 

うわ、マジか!まさか両手で掴んで受け止めてくるなんて・・・でも、まだ暴走しそうにない私と椿の力なら――!

 

「白金の火焔槍!!」

「稲妻風凍槍(いなづまふうとうそう)!!」

 

「何っ――ぐがぁぁあ!!」

 

よし、上手くいった!椿の2本目の尻尾による白炎の一撃と、私の風と氷の気を纏わせた尻尾の一撃がモロに相手の土手っ腹に入ったぞ!

 

「たぁぁ!!」

 

「ぐがっ!この・・・しつこいぞぉぉ!!」

 

それに椿が1本目のハンマーにした尻尾で吹っ飛ばしてくれたお陰で、あのヤバい鬼から少しは距離を取れた。

 

これなら今のうちに――

 

「よし!皆、撤退するよ!!わら子は幸運の気を私達の周りに展開して、楓も跳ね返す妖術を張り続けて!付与されてる椿の『増幅』の力は、まだ暫く効果があるから全力でお願い!」

 

「分かったよ!」

「了解っす!」

 

後は、椿と里子に警戒してもらいながら私と雪の妖術で氷の壁を作って逃げ続ければ、何とか狐2人と酒呑童子に合流出来るハズだ。

 

私は雪を抱えつつ、椿達が先に屋根へ登ったのを確認してから飛び上がる。

妖界に逃げたい所だけど、それは相手のテリトリーに自分から飛び込むような状況だから、今は屋根伝いに逃げるしか出来ないのがキツいな。

 

「ふふ、綾にお姫様抱っこされてる」

 

「もう少し緊張感を持ってくれよ、雪・・・」

 

あ〜もう、そんな事言うから嗅覚で後ろを警戒してくれてる里子が椿に「私も椿ちゃんにお姫様抱っこしてもらいたいな〜」って目を向けてんじゃん。

 

私も椿も"神妖の力"で妖気を激しく消耗して元の姿に戻ってしまってるから、本当に今は冗談言っていられる余裕も無いんだよ。

 

「美亜ちゃん、来てる!」

 

「分かったわ!綾、雪!」

 

「OK!しつこい鬼だな!」

「任せて・・・!」

 

椿の一声で美亜が後方に呪術で急成長させた植物を展開し、その樹海の間から抜けてきた最後方の私と雪で一気に樹海を丸々凍らせる。

植物の繊維を混ぜた、ガチガチあずきバー理論の頑強な氷なら暫くは足止めに――

 

「ぐわははは!!良いぞ!そうでなくては面白くない!!」

 

すらならないのかよ!

 

嘘だろコイツ!?アレを薄いガラス割るみたいに壊すなんて、なんつー馬鹿力してんだよ!

でも、楓の張ってくれてる妖術なら――って、コレ妖術しか跳ね返せないじゃん!!

 

「どぉわぁぁあ!ギ、ギリギリセーフ!!楓、アイツは素手の攻撃だから跳ね返そうとしても駄目だ!」

 

「えぇぇえ!どうするんっすか〜!?」

 

「とにかく逃げるんです!綾ちゃん!楓ちゃん!」

 

しかも、今度は前を走っている美亜の足取りがおぼつかなくなってきたぞ。あの様子だと、呪術の使い過ぎで妖気切れを起こしてるみたいだ。

 

「くっ・・・!はぁ、はぁ・・・流石の私も、限界が・・・あっ!!」

 

「美亜ちゃん!?」

 

「う、ぐぐ〜・・・美亜、何とか持ちこたえてくれ!あと少しで合流出来るから!」

 

ひとまず片手で雪を抱えながら、屋根から飛び移った直後にバランスを崩しかけた美亜の手を引っ張って助けられたのは良かったけど、それと同時に私の間近には厚雲が猛スピードで迫ってきていた。

 

「先ずは3匹。邪魔する奴は殺せと言われている、悪く思うな。これもまた、地獄の定め」

 

「そんな地獄、僕が消してやります!狐狼拳!!」

 

「なっ、ぬぅ!!??」

 

すぐに椿が駆けつけ、腕に付けた火車輪からの炎を纏った拳で鬼の巨大な拳を受け止めてくれた。

 

「良かった、間に合った・・・3人共、大丈夫!?」

 

「私は大丈夫だ!ごめん里子、雪と美亜を頼む!」

 

「えっ・・・あっ、うん!でも、椿ちゃんと綾ちゃんは?」

 

「ここは私と椿で抑える!だから、皆は先に逃げてて!」

 

そうして里子が雪と美亜を担いで、わら子や楓達と共に逃げていったのを確認してから、私は鬼の拳を必死に受け止める椿の隣へ立って氷霰剱を構えながら全力で拳を突き出す。

 

「テメェの相手はこっちだ!食らえ、細氷拳!!」

 

「ぬぅ・・・ぐっ!ガキ2人が、何処にこんな力を!?」

 

「ガキじゃないですよ、僕達は!はぁぁあ!!」

 

更に椿も炎の勢いを強め、私の氷を纏った拳に全力の加勢をしてくれた。これなら鬼を――

 

「――がっ!?」

「――うっ!?」

 

しかし、その瞬間に私達の拳と鬼の拳をぶつけていた部分が激しい爆発を起こして、気が付くと私と椿は大きく吹き飛ばされて、屋根の上をバウンドするように転がっていた。

 

すぐに立ち上がるも、爆発をものともしなかった厚雲が殴り掛かる勢いで再び突進してきている。

 

「厄介だな、貴様ら。やはり、どちらも回収対象なだけはある。2人共とっとと行動不能にしておくか」

 

「くっ・・・!」

 

「不味い・・・!」

 

このままじゃ私も椿も捕まってしまう――そう思った時、私達の目の前に見覚えのある白くフサフサとした毛並みの尻尾が現れた。

 

『椿も綾も、よく頑張ったの』

 

「「白狐さん!?」」

 

待ちわびた助けに喜びの声をあげると、今度は厚雲の後ろからも聞き慣れた低くガッシリとした声が聞こえてくる。

 

「お〜う、随分やんちゃしてくれたなぁ?悪いが、俺の弟子共に用があるんなら俺を通せや。まぁ、テメェは許可しねぇが・・・な!!」

 

「ぬっ!?」

 

そして、そのまま厚雲へ殴り掛かったかと思ったら、相手が牙で受け止めたと同時に牙を掴んで一瞬で綺麗な背負い投げを決めていた。

 

うーん、相変わらず酒呑童子もチートぶりな強さだな・・・というか、こんなに時間が長く感じたのは初めてだよ。

 

でも、お陰で狐2人と酒呑童子に合流出来た。

これなら、逃げ切るどころか相手を撤退させられるかもしれない!

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