私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾話 真面目過ぎるのに不器用な人達だな

 

十極地獄の鬼"厚雲"を遠くへ吹っ飛ばした事で、その場から何とか逃げおおせた私達は、疲労困憊でヘトヘトの状態になりながら椿の家へと帰り着いた。

 

わら子が幸運の気で皆をカバーしてくれたお陰で、誰1人として大きな怪我なく帰ってこれたのは良かったけど・・・。

 

「座敷様!」

 

「しっかりしてください!まさか、妖気を使い過ぎたのですか!?」

 

家の玄関に辿り着いた瞬間、わら子はフラフラと倒れそうになってしまい、すぐさま龍花さんと虎羽さんが受け止める。

 

「大丈夫・・・ちょっと疲れただけだから」

 

わら子は額に汗を流して苦しそうにしている所から、恐らくはかなり妖気を消耗させてしまったのだろう。

 

「そんな事言ったって、元はといえば私達が無茶させなければ・・・あ、ありゃ?上手く身体が・・・?」

 

「綾ちゃん、大丈夫ですか・・・って、あれ?」

 

「綾!大丈夫!?」

 

『椿!』

『しっかりしろ!』

 

わら子を心配しようとした矢先に、私も危うく倒れそうになって雪に支えられてしまった。椿の方も、案の定というか秒速のスピードで狐2人が助けてくれていたよ。

どうやら、わら子と同じくらいに私達も結構妖気を使い過ぎちゃってたみたいだな。

 

『むっ、黒狐?もう良いぞ、後は我が運ぶ』

 

『いいや、俺が運ぶ。お姫様抱っこでな!』

 

『させるか!!』

 

そんな狐2人が椿を取り合う様子に、私は大きく深呼吸してため息を吐く。

 

「ま〜た変な事で喧嘩してるよ。あの2人は、全く・・・」

 

「ふふ、こっちは私が綾を独り占め出来る。だから安心して、お姫様抱っこ出来る」

 

「うぐ・・・妖気を消耗しきってなかったら雪を運ぶつもりだったのに、これじゃスッカリ逆転だよ」

 

「でも、そう言っている割りには綾も嬉しそう」

 

まぁ、嫁を自称してるとはいえ親友に手助けしてもらっちゃってる訳だからね。そりゃあ、私だって気持ちを無駄にはしたくないですよ。あと、雪と私を運ぶ話で取り合いそうな楓も、今は疲れて美亜の背中で寝ちゃってるし。

 

『我だ!』

 

『俺だ!』

 

「ちょっと、2人共――」

 

「白狐様!黒狐様!いい加減にしてください!!」

 

すると、椿が狐2人から揉みくちゃにされる直前で龍花さんが怒声を上げてブチ切れた。

 

「お2人共、少しは椿様の事を考えてくれませんか?椿様も綾様も妖気が切れそうになっているんですよ?今すぐ給仕の者に言って、ご飯を用意してもらってください。せめてそれくらいはしてくださいませんか、役立たず」

 

『うっ・・・すまぬ』

 

『あっ、そうだったな・・・悪かった』

 

そう龍花さんから正論で怒られてしまった狐2人はションボリと、まるで大型犬みたいに背中へ哀愁を漂わせながら里子を呼びに歩いていった。

 

「さっ、椿様はこちらへ。ちょっと失礼します」

 

「わわ・・・あっ、待って!白狐さんと黒狐さんの様子が――」

 

「先ずはご自分の心配をなさってください。私達は此処の守護があって助けに向かえませんでしたが、貴方と綾様がこんな無茶をされるのなら次の任務は私達4人も行きます」

 

そして椿を慣れた手つきで肩に担いで、そのまま離れにあるわら子の部屋へと運んでいく。すると、その途中で思い出したようにクルッと私を抱える雪の方に振り返ってきた。

 

「あぁ、そうだ・・・雪、貴方も綾様を此方へ運んで貰えませんか?」

 

「えっ?あ、うん・・・ちぇっ」

 

おいちょっと本音漏れてたぞ今。雪も雪で、龍花さんに何も言われなかったら私を自分の部屋に運んでくつもりだったろ、全く。

 

◇◇◇

 

「うふふ・・・椿ちゃんも綾ちゃんも、私と一緒だね」

 

「一緒じゃないです。わら子ちゃんと綾ちゃんは、お姫様抱っこだったでしょ?僕は担がれてるだけですよ」

 

「あ・・・失礼しました」

 

わら子の部屋に運ばれてきた私達は、申し訳なさそうに椿を降ろした龍花さんを見て、思わず苦笑いを浮かべてしまう。

ちなみに私を運んできてくれた雪は、狐2人から呼ばれてきた里子に夕飯の手伝いへと引っ張られていっちゃいました。「綾〜椿〜カムバ〜ック」とか聞こえたような気がするけど、何も聞かなかった事にしとこうっと。

 

「違うよ、椿ちゃん。私が一緒だって言ったのはね、椿ちゃんも綾ちゃんも龍花さん達4人に守護されているって事だから。でも・・・2人共これから覚悟しておいてね、4人は相当だから」

 

「相当ってのは・・・あー、そういう事?」

 

「・・・えっと。そうなると僕達、やってしまいました?」

 

「うん」

 

いやいや「うん」じゃないですが、わら子さんや。

あの守護の4人、初めて私と椿を守ってくれようとしてた時のガチガチ感しか守護してくれるイメージ無いから、あれはあれで少し困るんだけど。

 

「座敷様。それは褒め言葉として受け取っておきますね」

 

「あはは・・・」

 

その後、私と椿とわら子は玄葉さんと朱雀さんの敷いてくれていた布団に寝かされる。3人共に身体がヘトヘトだったから、ほとんど龍花さんに手助けされるような感じだったけどね。

 

「良いですか?3人共、食事が運ばれてくるまでジッとしていてください!」

 

そして龍花さん達4人は私達の寝る布団を囲むように規律良く正座して、フンスッと一息ついて真剣な眼差しで見つめてきた。

 

・・・うん、なんか前よりも酷くなってない?

 

これなら普段から私の椿防衛網を突破してくる狐2人でも手出しは出来ないだろうけど、ここまでジ〜って見つめられてると逆に落ち着かないんですが。

 

「あの、流石に恥ずかし――」

 

「椿様、起き上がろうとしないでください」

 

「うぐ、起き上がるのも駄目なのかい・・・」

 

「むぅ・・・そういえば、何で龍花さん達は必死でわら子ちゃんを守護しようとするんですか?」

 

ふと思い出したように椿が尋ねると、龍花さん達4人は少しだけ思い悩むような表情になる。

 

「そうですね・・・これは確かに、もう椿様も綾様も他人事ではなくなっています」

 

すると、わら子が「大丈夫だから」といった様子で、確認を取るように視線を向けようとしていた4人に頷いてきた。

 

「私達が座敷様に助けられて四神に育てられた話は、翁から聞いておりますよね?」

 

「えぇ、はい」

「確か四神から力を与えられて、人妖って存在になったんだっけ」

 

「概ね、綾様の仰る通りです。お陰で座敷様を悪しき魔の手から救う事が出来るようになったのですが、その時に私達はとんでもない事をしてしまっていたのです」

 

龍花さん達は真剣な表情のまま、今も後悔し続けているように眉尻が下がっていく。何だろう、そこまで落ち込むような問題が4人に・・・?

 

「私達を育ててくださった四神様の力は、受け継ぐようなものではなかったのです。四神様は私達を気に入ってくださって与えてくれた力、それは四神様自身の妖気だったのです。でも・・・私達は未だにその力を使いこなせていない!道具に頼っても、四神様の力を一部しか使えていない!こんな有様じゃあ、私達は四神様から力を根こそぎ奪ったも同然なんです・・・!」

 

そう話す龍花さんは、まるで自分自身に怒っているかのようにどんどん声が荒くなっていく。そして、他の3人も自らに対する怒りと悔しさで辛そうな様子だ。

 

すると、そんな4人を宥めようと椿が龍花さんへと優しく声をかける。

 

「龍花さん。そう貴方は何度も言っているけれど、それはちょっと違うよ。信頼されて力を渡されたのなら、それは奪ってなんか――」

 

「いいえ!その心につけ入り、奪い取ったと言われても仕方ないのです!なぜなら京都は今、守護されていないのですから!それも四神様は私達に力を与えた後、姿を消してしまったからに他なりません!」

 

なるほど・・・それで悪い妖怪やら妖魔やらが京都で暴れてる事が多かったんだ。

だから、それを4人は自分達が四神から力を受け継いだせいだと思って、その罪悪感からわら子を守ってるって事なのか。

 

全く、本当に真面目過ぎなのに不器用な人達だな。

四神がどうして4人に力を与えたのかなんて、少し考えれば簡単に分かるハズだろうに。

 

「龍花さん、虎羽さん、玄葉さん、朱雀さん・・・ちょっと僕の方に来て、ここに並んで?」

 

そう思ったのは椿も一緒だったらしく、一瞬だけ呆れた顔を浮かべてから龍花さん達を呼んで横一列に並ばせる。

 

そして――

 

「はっ?一体何を、椿さ・・・まぁ!?」

「いた!」

「はぐ!」

「ちょっ!」

 

龍花さんから順番にゴチーン!と額へ頭突きを見舞っていったよ、うん。

いくら妖気切れで身体動かせないからって、それはちょっと無茶し過ぎだと思うぞ〜・・・やった椿本人も痛そうにしてるし。

 

「いつつ・・・全く、その四神様は何の為に龍花さん達へ力を譲ったと思っているんですか?」

 

「えっ?」

 

「はぁ・・・どう考えたって、龍花さん達4人に四神を継いで欲しいからだろ?それを罪だと思っちゃうのは四神も望んでないって、私は思うんだけど?」

 

「うっ、しかし――」

 

「と・に・か・く、龍花さん達は真面目過ぎます!普通なら四神様から譲ってもらった力で誰かを守れると、そう誇るべきでしょう?」

 

椿と私の言葉に、龍花さん達4人は思い詰めた表情のまま俯いていく。ここまで私達が説明しないと分からないなんて、いくら鈍感さにも程があるぞ・・・。

 

「僕なら白狐さん黒狐さんに稲荷を継いで欲しいって言われたら凄く嬉しいですし、何より2人に信頼されているって証だから誇らしいです。ひょっとしたら、僕も龍花さん達みたいに2人の力を貰っているから消えそうになっているんだとしても、僕は2人の意志を継いで頑張っていくつもりです」

 

そう椿が言うと、4人は今までになく驚いた様子で目をパチクリとさせていた。

 

「そんな・・・わ、私達が?」

「いや、そんな・・・事は」

「で、ですが・・・それなら色々説明が・・・」

「だから、あんなに修行も厳しく・・・」

 

4人が困惑していた丁度その時に里子が夕飯を持ってきてくれたけど、わら子と一緒に椿が布団で寝かされてる有様にビックリしちゃってたよ。

やっべぇ、そういえばサラッと龍花さん達が寝かせてたから気にしてなかったけど、これ椿ファンクラブ皆さん一同からしたらヤバい状況じゃん。

 

「そ、そんな、椿ちゃん・・・私じゃなくて、わら子ちゃんを選んだの?一緒のお布団で寝て・・・そ、それに4人の後見人まで?もう、そんなに認められてるなんて・・・」

 

「だぁぁ!落ち着け里子!勘違いしてるって!!」

 

「ちょ、里子ちゃん!どうして僕達が寝かされてるなんて、少し考えたら分かるよね!?」

 

なんというか、4人に負けず劣らずで里子も半年前から相変わらずだよな・・・本当、そういう所は成長していて欲しかったんだけど。

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