私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾壱話 私だって――

 

それから里子の持ってきてくれた夕飯を食べ終えて妖気も回復出来た私と椿は、龍花さんに怒られてヘコんでいるであろう狐2人の所へと向かう。

 

一晩は寝ていろと言われたものの、椿がどうしても心配そうに落ち着きがなかったので、龍花さん達はため息をつきながらも私も同行させる事で許してくれた・・・というか、椿の事で狐2人が暴走しないように見張りとして付けられた感じだけどね。

 

「それにしても、なんだかんだ言って椿も白狐さんと黒狐さんが好きなんだね」

 

「茶化さないでよ、綾ちゃん。さっき龍花さん達からも同じような事を言われたけれど、僕はただ心配なだけで・・・ほ、ほら!行くよ!」

 

「はいはい、分かってる分かってる」

 

そんな話をしながら2人で家の屋根に登ると、やはりというか狐2人はチビチビと寂しそうにしながら酒を飲んでいた。

ほら、やっぱり・・・あの2人が落ち込んだりしてる時は、大体あそこに居るハズだもんな。

 

『椿に綾よ、どうした?』

 

『むっ?2人共、もう身体は大丈夫なのか?』

 

「まぁ、私も椿も妖気を使い過ぎちゃっただけだからね」

 

「うん、妖怪食を食べて復活しました。それで、白狐さんと黒狐さんは何やっているんですか?」

 

『見て分からんか?月見酒じゃ』

 

「いや、どう見ても曇り空なんだけど」

 

「あれじゃあ月、見えていませんよ?」

 

『ふっ、良いんだ・・・これで』

 

そう格好付けても、私から見たら白狐さんも黒狐さんも結局、さっきの事でヘコんでるから酒で誤魔化してるだけにしか見えないぞ。

 

「もう・・・2人共、元気出してくださいよ」

 

『すまんな、椿よ・・・こんな情けないのが旦那では、お主も嫌じゃろう?』

 

すると、その白狐さんの言葉に椿は少しむくれながら、狐2人の間に割り込んでチョコンと座る。

 

それにしても、狐2人でも結構悩んだりする事ってあるんだな。状況的にはだいぶ違うとはいえ、こうやって黄昏てる姿が、以前に暴走して私を殺しかけた時の椿にそっくりだもん。

 

「ていっ!」

 

『ぬぉ!?』

『あたっ!?』

 

なんて思ってたら、椿がハンマー状にした尻尾で軽く狐2人の頭を叩いたわ。というか椿、さっきから何か怒ってない?

 

「白狐さん、黒狐さん。2人は稲荷の守り神なんでしょう?存在しているだけで、人々の心の支えにならないんですか?」

 

『いや、そうなんだがの・・・ただ、もう1つ重要な役目が我にはある』

 

『多分・・・俺も白狐と同じ、だと思うんだが・・・』

 

あ〜・・・何となく、椿が怒ってる理由が分かった気がする。

きっと、以前の時に落ち込んでるのを励ましてもらったのに、その当の本人である2人が同じように落ち込んでるのが心配だったんだ。

 

狐2人は守り神の仕事もある訳だし、こんな落ち込んでる場合じゃないってのも分かっているんだろうけど、それでもヤケ酒してないとやってられない感じっぽいんだよね。黒狐さんの場合は、一部の記憶が無くて気付いたら稲荷の守り神をやってた状況だって事だそうだけど。

 

『我はな・・・年に1度、ここ京都に集まってくる邪気を振り払うという、とても大事な仕事があるのだ』

 

「へぇ〜皆が知らない所で、そんな重要な事を・・・って、まさか?」

 

「ちょっと待ってください。その今の様子だと・・・」

 

『残念ながら、2人の予想通りじゃ。今の我の状態では、それすらも出来んのだ』

 

「「・・・」」

 

そんな大事にも程がある白狐さんの言葉に、私も椿も一瞬かける言葉を失ってしまう。

 

「え、えっと・・・じゃあ、黒狐さんも?」

 

『そうだ、綾。もし、妖界の方にも同じような神事があったとしても、今の俺では不可能だ。というより、俺の居ない間に妖界の伏見稲荷がどうなっているのかすら分からん状況だしな』

 

「あっ・・・そっちにもあるんでしたもんね。でも、それなら何で今まで僕達は1回も確認を――あっ」

 

すると、ふと椿は何かを思い出したようにハッとした表情を浮かべた。そして、ようやくそこで私も違和感に気付いて目を見開く。

 

「そっか!昔に妖界の伏見稲荷で事件が起こってたんなら、そこへハナから悩まずに行けば良かったんじゃん!そうすれば、きっと白狐さんと黒狐さんの事も――」

 

『そんなのは、とっくに情報を手にした時に行っている。そこには強力な結界と意識阻害の方陣、それに近付く者の記憶を曖昧にさせる、あの虚の妖具も使われていた。俺達も椿と綾も、それで妖界の伏見稲荷に行く事すら考えさせられないように対策されていたんだ』

 

「さながら、三重の結界で守られてるってか・・・」

 

『とにかくじゃ。こんな情けない状態では椿を、大切な嫁を守る事すら・・・』

 

道理で、狐2人は曇り空を眺めながらヤケ酒するくらいに落ち込んでる訳だよ。お猪口の酒を2人して一気に飲み干してる勢いだし。

 

『くそ!酒呑童子にも言い返せん!アイツの言ってる事は正論だ!』

 

『だが、我らにもプライドはあるしのぅ・・・』

 

「・・・つまり僕や綾ちゃんに守られるのは、そのプライドが許さない、という事ですね?」

 

『いや、そうでは無いぞ!』

 

そう2人が言った時、椿は2人から顔を背けるようにバッと立ち上がって後ろを向く。

 

「一緒です!僕は白狐さんと黒狐さんを守る為だけに修行をしているんじゃないんですよ!2人の力になって、少しでも2人の助けになれるように・・・もしもの時の代わりになれるように修行を頑張っているんです!」

 

そして、彼女は狐2人から少し離れて目元を袖で擦って再び振り向いた。

 

「ちょっとは僕を頼ってよ!綾ちゃんが僕にしてくるみたいに!それに、2人が出来なくなった事も僕や綾ちゃんが代わりにやります!だから、僕達を信じてよ・・・!」

 

『椿・・・』

『お前・・・』

 

椿が心の内を吐き出す姿に、私は少し気まずくなって何も言えずに立ち呆けてしまう。それは狐2人も同じみたいで、ふっと立って椿を見つめて――って、おい待て?なんで2人共、椿に見蕩れてるかのように頬を赤らめてんだ?

 

『月が・・・』

 

『美しい・・・』

 

「へっ?あっ・・・」

 

その言葉の意味に気付いた私は、改めて月を背にして立っている椿の姿を見た。

 

「本当だ、綺麗・・・」

 

いつの間にか曇っていた空の隙間からポッカリ顔を出すように現れた満月の光は、まるで椿を金色の狐かと思わせるくらいに美しく彩らせていたのだ。

 

これには狐2人をシバき倒そうとしていた私も、思わず椿に見蕩れてしまう。

 

『やはり、こんな嫁は他には居らん』

 

『確かにだ、白狐。たとえ椿が、どちらを選んでも悔いが無いようにしよう』

 

『ああ、そうじゃな』

 

「ち、ちょっと!2人で納得しないでください!」

 

な〜んてやってたら、狐2人が通常運転に戻ったな。いやはや、よくもまぁ歯が浮くようなセリフを好きな人の前で普通に言えるモンだよ・・・私だって、椿が好きな気持ちは2人に負けないくらい強いのに。

 

ああクソ、恥ずかしくて何て声をかければ良いんだか!

 

「そ、そんな事より!白狐さん、その邪気払いって何時なんだよ!?」

 

『あぁ・・・そう顔を真っ赤にしてまで慌てる必要はないぞ、綾よ。基本的には年末が多いが、その年によっては夏に邪気が来る事もある。この前の年末は、見習い稲荷達が何とかしてくれたようだが・・・次はキツいそうだ』

 

「ホッ、そうなんですか」

 

なるほど、そっちの方は少しは安心したよ。

というか白狐さんの言い方からして、長年生きてると数ヶ月先の事までもあっという間に感じちゃうんだろうな・・・やだな〜歳を取るって。

 

そんな事を考えていると、白狐さんは何処か懐かしむ様子で椿を見ていた。

 

『それよりも椿よ、お主はいつの間にか綾と同じくらい逞しくなったものじゃな。何なら、どうだ?いっその事、稲荷も継ぐか?』

 

「んっ?そのつもりですけれど?」

 

『なぬ!?』

 

いや、「なぬ!?」じゃないでしょ白狐さん。からかうつもりでいたの私にもバレバレだったぞ。しかも椿も椿で真に受けて、本気の返事でビックリしてる狐2人にキョトンとしちゃってるし。

 

「白狐さん・・・継がせる気、無かったんですか?」

 

『い、いや違うぞ!継がせられたら良いなとは思っておったが、それはあまりにも我らの都合を押し付け過ぎているからであって・・・ま、まさかそれを即答されるとは思わなかったんじゃ』

 

そして椿は狐2人に特効の子犬みたいな抗議フェイス止めてあげて?めっちゃ2人共タジタジしちゃってるから・・・って、今度は黒狐さんが何か不機嫌なんですが?

 

『ちょっと待て、継がせるのは白狐の方の伏見稲荷か?』

 

『当然じゃろう?黒狐よ、現状お主の所は入れなくなってるではないか』

 

『うぐっ・・・!!』

 

おう仕方ないとは言え、くだんない事で喧嘩しそうになるの止め〜や・・・って、妖界の方の伏見稲荷が入れない状況は割と重要なハズなんだけどな。

それでも「まぁ別に良いか」という気持ちになりかけちゃうのは、やっぱり虚の妖具で守られてるからなんだろうね。うん、コレめんどくさいわ。

 

『だが負けんぞ!白狐!』

 

『何を言うか!お主は色々と駄目じゃ!いい加減に諦めろ!』

 

とか考えてたら案の定、いつもの狐2人になっちゃったよ。でも2人共に何処か楽しそうだし、椿も何か羨ましそうに見て――

 

「僕も混ざる!白狐さんの馬鹿〜!!」

 

って、うぇぇえ!?いきなり白狐さんの脳天にチョップしちゃってるんですけど、この子!!

 

『ぬぁ!?何故じゃ椿!』

 

「えっ?黒狐さんが押されているみたいだったので、今回は黒狐さんの味方をしますよ〜」

 

『ふはは!やはり俺の方が良いか、つば――きぃっ!?』

 

「はいはい、だったら私は白狐さんの側に付くっての。椿に白狐さん、2対1とか卑怯でしょ〜?」

 

『ぬぅ〜!こうなったら、俺と椿の愛の力で白狐諸共けちょんけちょんにしてやる!!』

 

あっ!黒狐さんズルいぞ!私と白狐さんに見せつけるように椿に抱きつきやがって〜!!

 

「ぎゃ〜!ちょっと、黒狐さん!?お酒臭いし、何か当たってる・・・って、お酒弱いの忘れてた〜!!」

 

『椿〜!!』

 

「『離れんか、黒狐(さん)!!』」

 

こうして数十分の後、私と白狐さんは何とか酔っ払った黒狐さんの魔の手から、無事に椿を助け出す事が出来たのであったとさ。

 

・・・その後に3人まとめて叱られたけどね。

トホホ、愛も行き過ぎは良くないモンだな〜。

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