私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
皆が裏で色々と手を引いてくれたお陰で昇級試験を受けられる事になった私と椿だったけど、なんと今日中に早速やりましょうとヘビスチャンさんに連れられて、そのまま地下へと行く事になってしまったよ。
既に準備は出来てるって事らしいんだけど、まだ私も椿も心の準備が出来てないんですが、それは・・・。
「さっ、お2人共。こちらです」
人型になったヘビスチャンさんの案内に従って進んでいくと、そこは前にも一度来た事がある"開かずの間"の扉だった。
ここは確か使用禁止として閉じられてたハズの部屋だけど、扉の向こうからは沢山の妖怪の声が聞こえてくるから、どうやら昇級試験はこの部屋でやるみたいだね。
そして、扉の前に立っていた巨大な手を持つ妖怪が、その大きな扉を開けてくれた。扉の先は薄暗くて良く見えないけれど、結構な広さがあるようにも感じられる。
「ほほぉ、流石。どんな扉も、劇的な様に綺麗な開け方が出来ると言われる妖怪ですね。素晴らしい開きっぷりです」
いやいや、それ関係あるか?・・・な〜んて思っていると、扉が開ききった瞬間に沢山の妖怪達による大歓声がワッと私と椿の耳に聞こえてきた。なるほど、そういう効果が出るような開け方を今の妖怪はしたって事か。
「お2人共、このように扉の開け方1つで演出が大きく変わるのですよ。開けるタイミング、角度、それが重要なのです」
「ほ、本当ですかぁ?」
「というか、家の中なのにアイドルのコンサートかってくらいに皆は大声出しまくってるけど大丈夫なのかよ――って、なんだこの東京ドームばりのデカい広さは!?」
そのヘビスチャンさんの言葉に苦笑いしながら扉の先へ進んだ私達は、そのドーム状になっている場所の大きさに圧倒されて目を丸くしちゃったよ。
ただでさえ色んな場所に扉があってアチコチに広間があるような地下空間なのに、これじゃあ本当にアリの巣並みの迷宮だぞ。
「つ・ば・き!!」
「あ〜・や!!」
ついでに言うと、皆の歓声もアイドルのライブみたいな黄色い声ばっかりなんですけど。しかも、ドーム壁際の観客席にはデカデカと『椿♡LOVE』だの『綾☆ファイト』だのって垂れ幕が――
『椿よ!いつも通り、平常心じゃぞ!』
「白狐の言う通りだ!緊張せずにいけ、綾!」
『俺達も居るし、2人が暴走した時の対処もある!安心しろ!』
「だから、精一杯パパとママに頑張っている所を見せて頂戴ね〜綾〜!」
OK、ちょっと頭冷やさせて。
最前列で狐2人と一緒にオジサンと丘魔阿さんが、完全にオーバーリアクションな授業参観の装いで応援しに来ているんですが・・・。
「さっ、椿様に綾様。いつまでも入り口で突っ立っていないで、こちらの真ん中に」
そんな私達の背中をヘビスチャンさんがチョンと押してくれたけれど、椿は緊張のあまり右手と右足が前へ同時に出ちゃって軍隊の行進みたくなっちゃってるよ。私も緊張してるっちゃ緊張してるけど、今さっきオジサンと丘魔阿さんの応援してる姿を見たから結構ほぐれてきたかな。
「さぁさぁ!出て来ましたでぇ!!我らが期待の2つ星、"妖狐"椿ちゃんに"霊能少女"綾ちゃん!えっ?霊能少女に合わせて、もう妖狐の方も"幼い"と書いて"幼狐"で良いって?それもありや――ぎゃぁぁあ!!」
「だ〜れが幼いですって?」
「というか、何で浮遊丸が居るんだよ?」
私も椿も、つい条件反射的に武器から飛ばした真空波で切りつけちゃったじゃんか。しかも避けやがって・・・おのれ、ちゃっかり私まで幼い扱いして。
「あっぶないやないかぁ!!今回、自分はお情けをかけてもらえたんや!此処でシッカリと実況の仕事をすれば、限定的に封印を解除してもらえんねん!」
「へぇ〜、そうなのか。今の実況で少し怪しく感じるんだけど」
「でも、浮遊丸さんの目はずっと封印しといてくださいね。また覗きでもされたら困りますし」
「おぉぉ・・・2人共、容赦無いなぁ・・・」
そんな浮遊丸の様子を見ていると、観客席の1番見晴らしが良い席に座っていた椿の爺さんが立ち上がって、天狗の姿で声を張り上げてくる。
「さて・・・椿も綾も、準備は良いか?これより、2人による公開ライ――昇級試験を行う!!」
おぅ今ライブって言いかけなかったかい、爺さん!?まさか、試験が踊って歌うとかじゃないですよな!?
「椿、綾。何故この地下ドームが"開かずの間"になっておったのか、その理由を今こそ明かそう。それは"ある特別な効果"が此処にはあるからじゃ。今回お前さん達には、その効果を受けてもらった限定的な状態で、儂らの用意した幻影の妖魔を倒してもらう!」
そう言って爺さんがドームの天井に向けて手のひらをバッと上げた時、不思議な妖気が天井の真ん中から噴き出すように出てきて、大量の漢字で構成された円形の陣が浮かび上がってくる。
「限定封印、対象は椿と綾!神妖の妖気『浄化』、神妖の妖気『増幅』!そして、妖異変化『鈍色の狐』の力!」
「きゃぅ!?えっ?ちょっ・・・!」
「おわちょ!?こ、この感じは・・・私達の"神妖の力"が、封印されたって事か」
円形の陣から放たれた光に直撃した私達は、その封印の効果を早くも実感する。
「む?なんと・・・2人共、封印出来ても30分じゃと?半永久的に対象を封じるこの封印でも、お前さん達の神妖の妖気を封じられないとはな。流石、大したもんじゃ」
え、ちょっと爺さん・・・何気にヤバめな封印の術をかけてくるの止めてもらえません?
というか、そんな強い封印って事は浮遊丸もコレで封印されてたんじゃないか?そりゃ実況に集中しようと頑張ってる訳だわ。
――な〜んて事を考えていると、今度は天井の四方八方からライトを照らされて、一瞬にしてドーム内がサーカス会場よろしく明るくなったぞ。
それと同時に、地面からジワーっと染み出てくるように幻影の妖魔も出てきているけど・・・なんか10体ずつが次々とワンサカ出てきてない?えっ大丈夫コレ?
「さぁ、手早くゆくぞ!その神妖の妖気を使えない状態で、30分以内に出来るだけ多くの妖魔を捕まえてみよ!」
なるほどね、コレが試験の内容って事か。
皆が浮かれまくってたから本当に試験かと思ってたけど、ここまで沢山の幻影妖魔を出してくるんだから昇級試験には違いないね。
それに、普通なら妖怪は"神妖の力"なんて持ってないだろうから、確かに試験としてコレは成立してる形になる訳だ。
「さぁさぁ!始まったでぇ!!Aランク妖魔100体にSランク妖魔が50体!この暴れまくる妖魔達の中で、どれだけ妖魔を捕まえたかが昇級試験のキモや!椿ちゃんと綾ちゃんは神妖の妖気を扱えるようになって圧倒的に強くなったけど、それが無くなったらどうなるんや!?自分的には椿ちゃんがメソメソ泣いてしまう姿に期待――やぁぁ!?だ〜か〜ら!綾ちゃんは自分に攻撃してくんのやめ〜や!!」
「ごめん、うるさかったからつい」
ついでに言わせてもらうと、そんな事で椿が泣くと思ってたら大間違いだからな?というか、サッカーの試合かってくらいに実況がやかましくて集中しにくいわ。
まぁ、それは兎も角・・・これだけ沢山の妖魔を捕まえていくなら、1体ずつ相手していくのは時間的にもキツいし、周りの他から数で押されて不利になるのは間違いない。
だったら――
「普通の妖気は・・・よし、OKだ。椿、そっちは?」
「うん・・・大丈夫。僕の方も"自分自身の妖気"は問題無いよ、綾ちゃん」
私と椿は身体に秘めた誰の妖気でもない、その自らの持っている妖気を身体に満たしていく。
半年間の修行によって身に付けた、私自身の妖気。
その四神を模す事が出来る妖気をシッカリと増やし、今すぐにでも解放出来るように手足の先まで力を満たす。
「ぬっ・・・この2人の妖気は?」
そして、雷を操る力は私自身の力を補強する為に烏森の家で後から付けられた術法に過ぎなかった事をオジサンから聞かされたのを思い出しつつ、私は幼い頃から使えていた退魔師の血筋としての・・・私だけの力を、椿と同時に展開する。
「――妖異変化"有頂天・白虎"、展開!!」
「――妖異顕現。遊戯道具、生成!!」
椿が掲げた右手に竹とんぼを出現させたと同時に、私は白い烏鳩の儀礼衣装に巫女的な袖や裾が追加された姿に変身する。
この力は"楽しみ"の感情を糧に作り出せる儀礼衣装で、感情の起伏が激しくなる戦闘中には不向きかもしれない力だけど、修行を積んだ今なら何の問題も無く扱える。
「そぉ〜れ!!」
「おぉぉ!?これは〜!!飛んでいる竹とんぼから巨大な竜巻が発生して、妖魔達を巻き込んでいます!というか、私も巻き込まれ――あぁぁぁあ!?」
あの様子だと、椿の方も自分の"想い"を性質に反映出来る妖術みたいだな。飛ばした竹とんぼが巻き起こしてる竜巻、私の緊急祭繰龍の最大出力と同じかそれ以上にデカいぞ。
「なんと・・・小さい頃の自分の妖術を、戦闘用に改良して・・・」
椿の爺さんも目を丸くして驚いているけど、まだまだ早い!この新しい儀礼衣装による私の力を見せてないよ!行くぞ!
「この程度の竜巻なら!妖異顕現、虎脚零式(こきゃくぜろしき)!!」
私は脚に集中させた妖気をロケット花火のように点火させ、竜巻の豪風を切り裂く勢いで椿が空中に浮かべた妖魔達を手当り次第に巻物へと封じる。
噴射の勢いが強過ぎて1回につき一直線しかカッ飛べないのが難点だけど、コレだけでも吹き荒れる竜巻の中なら十分にいけるよ。
「よっ・・・と、竜巻が収まってきたな。椿、つまみ食いしてごめんね!私だって昇級したいからさ!」
「全く、相変わらず綾ちゃんは危ないなぁ。さてと・・・ちょっと横取りされちゃったけど、あとは捕まえるだけ〜」
そして、椿も竜巻に吹き飛ばされてドームのアチコチでダウンしている妖魔を封じていく。
ちなみに、こうして私達は妖魔を巻物に封じているけれど、妖魔そのものは幻影だから封じた時点で消えて、特別製な巻物の紙面に数字としてカウントされる仕様になっているんだ。
・・・そんな与太話はさておき。
「やっぱりというか、試験は簡単にいかなさそうだな」
「あ〜、Aランク妖魔は今ので全部いけたけれど、流石にSランク妖魔は起き上がってきたね」
Sランクは大型だったからか、そんなに吹き飛ばされたりはしなかったみたいだ。だけどAランク妖魔は全て封じれた訳だし、これで横槍を入れられる事は少なくなった。
さて、それなら次は後付けで得た雷の妖術も合わせて第2ラウンドといきますか!!