私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
試験が終わって、五級というとんでもないライセンスのランクを手に入れてしまった私と椿は現在白狐さんと黒狐さんに手伝ってもらってライセンスの手続きを終わらせた。とはいっても、渡された紙にはほとんど読めない草書体の字で書かれてしまっていたので、職員による口頭の説明しか私の頭に入ってこなかったのだが。
『ほれ、椿に綾。終わったぞ』
「えっ?あ、ありがとう」
「これが妖怪フォンか〜。なんか見た目が色々あるみたいで選びがいがあるね」
椿に渡された物や白狐さん黒狐さんが使っている物を見る限り、かなりバリエーションが豊富で性能も様々なようだ。
ちなみに私は「最低限必要なデータ容量と長時間使えるなら何でもいい」と言った結果、完全に某林檎の会社の物にそっくりなものを渡された。下手に変な物を持ってこられなかっただけ良かったと思う。
『その妖怪フォンは、まだ2人の妖気データを登録しとらん状態じゃからな。早速電源を入れて妖気を登録するんじゃ』
「はいはーい、人の世界でいう初期設定みたいな感じだね」
「そういえば、これ電池はどうなってるの?」
『もちろんあるぞ。特殊な電磁妖気で動いているのでな、特別な妖具で充電するんじゃ。それもちゃんと渡された物の中に入っているから安心しろ。ほれ、そうしている間にメニュー画面が出たぞ。・・・そうじゃ。その前に使われてる文字を2人が読める物へと変更しておいてやろう』
「本当?助かるよ、白狐さん」
白狐さんからスマホを受け取り確認する。どうやら、ちゃんと読める文字になっているようだ。
『ついでだがそのスマホ、人間の物とも連絡を取る事が出来る。流石に人間のゲームアプリまでは無理だがな。まぁ、その内に何とかするとは聞いているが・・・多分無理だろうな』
『黒狐よ、そう陰謀説に惑わされるな。人間達のセキュリティの凄さのせいで、100%不可能だと結論付けられただろうに。多分も何もないわ』
「っていうか、その携帯の会社の人は何やばい事してんの?」
すると3人で漫才染みた会話をしているのを見かねた椿が操作の説明も求めて止めに入った。
「あのぉ・・・それよりも、どうやって僕の妖気を登録するの?」
『悪い、椿。妖気の登録は簡単なんだ。その設定の中に「妖気登録」があるだろ?それを選んだら、背面にある妖気認証システムに指を置くんだ』
「あっ、これ指紋認証じゃなかったんだ・・・」
「なるほど〜なんか普通だね」
私も椿と同じようにして妖気をスマホへ登録する。そして、そこから様々な設定項目が画面に次々と現れた事で初めてスマホを触った彼女が慌てた。
「えっと・・・こ、これ。一体どうすれば?」
『そうじゃな、それは帰りながらやるとしようか。綾も一旦そこで手を止めて――』
「わぁぁ!?」
「何!どうしたの!?」
『椿!?』
『どうした、椿!』
すると突然――センターの職員が達磨百足へ連れていこうと抱いていた、腕にすっぽりはまるくらいの大きさのモフモフとした白い毛玉が素早い動きとともに椿の胸へと飛び込んできたのだ。
それを何とかしようとわちゃわちゃしながら椿が聞く。
「白狐さん黒狐さん、これ何!?」
「ワンコ・・・にしては、キュルンとした1つ目だけだし何か丸っこいし。何なんだこりゃ?」
『なんじゃ、「霊狐」の幼体か。安心せい椿、それは妖怪達の間でペットとして飼われている特殊な妖怪じゃ。狐の霊が100体集まり化けたものだとされていてな、温和な性格の為に害はなくペット扱いされるようになったのじゃ』
「へぇ〜狐の霊ね。こうして見ると、意外と可愛いもんだね」
そうして椿の胸元で甘えている霊狐を見ていると、1つ目を彼女に向けて可愛らしい鳴き声を小さくあげた。
「キュゥ・・・」
「なんか狐っていうよりも、ウサギとかハムスターみたいな鳴き声だね」
「狐って、こんな鳴き声でしたっけ?」
『霊狐は独特の鳴き声をするんじゃ。それはそうと、ほれ。職員が来たぞ、その子を渡してやれ』
「いやぁ、すいません。捨てられていたのを保護したのですが、こんな反応をするとは思わなくて・・・」
そう言って妖怪の職員が頭を下げた。すると黒狐さんが複雑そうな顔で話を始める。
『霊狐は1つ目だからな。最近は「ペットとしては微妙だった」と言われ、無情にも捨てる奴が続出しているからな。何か制度を作らないといけないぞ』
「えぇ?こんなに可愛いのに捨てるなんて・・・自分勝手にも程があるよ」
「黒狐さん・・・それは分かっていますが引き取り手が中々見つからないので、制度自体が見送りにされる事が多いのですよ。とにかくこうやって、此方が保護するしかないのです。さっ、来なさい?」
職員が霊狐へ手を伸ばすも、霊狐は椿の身体にギュウとしがみついて「絶対ヤダ!」といった感じで離れようとしない。それを見た私と椿は――
「「か、可愛い・・・」」
流石に職員や2人も困り果てた様子をしてしまい、どうしたものかと悩んでいると椿に撫でられている霊狐が、まるで私達へ懇願するかのように鳴いて上目遣いで見上げてきた。
そして私達も「この子を連れて行きたい」と、霊狐と同じような感じで2人へ視線で訴えてみる。効果はてきめんだったらしく、2人がたじろいだ。
『ひ、卑怯じゃぞ2人とも』
『くっ・・・そ、そんな潤んだ瞳で見るな』
「「ダメ?」」
更に私達は追い討ちをかけるように近づいて涙を目に浮かび上がらせる。
「ねぇ、ダメですか・・・?」
「この子、私と椿でちゃんと面倒見るから〜」
『うぐぐぐ・・・』
『椿、綾。お、お前ら・・・自分の可愛さを分かっているな!』
結局、10分も2人を悩ませた末に連れて帰っても良いという事になり私達は喜んだ。私には、この霊狐が椿とどこか似ていて放っておけなかったのだ。