私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
舞いと歌が終わった後も妖魔達が動く気配が無かったので、私と椿はそれをチャンスと見て全ての妖魔をドンドン巻物に封じていった。
それにしても・・・結果的には1番上手くいったけど、幻影の妖魔すら魅了出来てしまうなんて私と椿が紡いだ舞いと歌は一体何なんだろう?
あの狐の面を被った子供達に聞こうと思ったけど、舞いと歌が終わった途端に霧のように消えちゃったしな。
でも、椿が扇子を取り出してきた風呂敷の包みに何か関係がありそうだね。当の本人が、それを再び呼び出して確認しているし。
「・・・これは?」
「どう見ても、さっきの子達・・・だよね」
その広げられた風呂敷から出てきた木箱を見ると、それには狐の耳が生えていて妖狐専用だという事が一目瞭然だ。そして椿が木箱を開けると、その中には先程まで私達の周りに座っていた狐の面を被った子供達を模したような布の人形が入っていた。
「ふむ・・・先程のはコレか?妖気は感じんが、何やら他の力を感じるの」
「おじいちゃん!?」
「爺さん!?」
うわビックリした・・・いつの間にか、私達の後ろに椿の爺さんが不思議そうな顔で立っていたわ。
でも確かに爺さんの言う通り、この人形からは妖気とは別な謎の力を感じるよ。
「これ・・・一体、何なんだろう?」
「まぁ、悪い物ではないじゃろう。それと、素晴らしい舞いと歌じゃったぞ、椿も綾も。ついつい、年柄にもなく見惚れてしまったわい」
「うぐ、おじいちゃ〜ん・・・恥ずかしいので、あんまり言わないでください・・・」
「わ、私だって椿の舞いにつられて歌っちゃっただけなんだから・・・うぅぅ」
何か思い出したら恥ずかしくなってきちゃったんですけど。
本当だったら、椿が尻尾の魅了パワーを使って妖魔の動きを鈍らせている隙にバンバン私が捕まえていく予定だったのに・・・何がどうして、あんな大層な舞いと歌を披露する事になっちゃったんだか。
『そう恥ずかしがるな、椿。本当に素晴らしい舞いで、我も改めて惚れ直したぞ』
『白狐の言う通りだ。これはもう、どちらかではなくとも結婚した後も舞いを踊って欲しいものだ・・・無論、綾の歌も付けてな』
『ああ、そうだな黒狐よ』
「全く、調子良い事言っちゃって・・・この2人は」
私なんか褒めても椿のガードを緩めたりしないからな――って思った矢先に、2人して椿の耳や尻尾をモフモフしてるし。あ〜もう、私も一緒にモフモフしたくなっちゃうじゃんか。
「うぅぅ・・・あっ、そうだ!それよりもおじいちゃん、試験の結果は?」
「ふっ、そんなの見んでも分かるじゃろう?まさか、たった2人でSランク妖魔を全て封じるとはな。椿は流石あの2人の娘といった所じゃし、綾もとびきりの才能に恵まれとるもんじゃ。のう、達磨百足よ」
そう椿の爺さんがゆったり首を縦に振ると、達磨百足さんやヘビスチャンさんも何故か満足そうにしながら私達の方へとやって来る。
「全くだ。30分という時間付きでありながら、2人共あれだけの数を前に対処して確実に1体ずつ仕留めようと動いていたからな。それだけでも一級は確定なんだが・・・その後に見せてくれたSランク妖魔すらも無力化した、あの舞いと歌。そんな特殊な能力があるのなら、もう誰も2人に文句は言わない。そうだろう、皆の者?」
「「「うぉぉお!勿論だ!!」」」
「「「というかアンコールだ!アンコール!!」」」
「・・・ぉぉお!!あんな美しい舞いと綺麗な歌声を見て、自分は心が洗われた!この浮遊丸、今までの自分の行いを猛烈に悔いています!!」
おーわ、何だこの盛況ぶり。皆、興奮だか感動だか分からんくらいに盛り上がりまくってて、浮遊丸とか一部の妖怪が感動のあまり泣き出しちゃってるんですけど・・・というか、オジサンも丘魔阿さんも泣いてない?そんな「ここまで娘が立派に育ってくれるなんて」って感じな泣き方されても・・・いくら何でも大袈裟だぞ。
「さぁ、2人共。もう何も、自分に劣等感や焦りを感じる必要は無い。お前さん達は立派な妖怪の戦士どころか、殆どの妖怪をも超える唯一無二の特別な才能の塊じゃ。じゃから、この級は必然じゃ」
「そうだな、翁。こいつらはもう、自由に動くべきだ。そうなると、今度は俺達が補佐する番だな。では、妖狐の椿に霊能力者の綾。試験の結果、お前達は当然昇級。2人共、これからは特級として特殊任務の受注も許可する!」
「・・・えっ?」
「・・・へっ?」
「「えぇぇぇえ!!」」
なんて思ってたら、飛び級なんてレベルじゃないくらいに昇級!?
いや、でも待てよ・・・よくよく考えてみたら、この試験は最初から少し変だったな。
私と椿の為に特別に昇級試験をするって時点で私達2人だけの実力を見るテストになってるし、試験で出てきた妖魔の数の多さからすれば、これは一級を見据えた試験だったって事か。
それで、こんな結果を出したんだから特級まで一気に上げられるのは当然・・・なのかな。なんというか、色々突拍子無さすぎて実感が湧かないや。
『2人共、我らの上をいくとはな・・・何、すぐに力を取り戻し、守る為に追いついてやる』
『それは俺の方が先だがな』
「全く、この2人は変な所で対抗心燃やしちゃって・・・というか、いつの間に白狐さんも黒狐さんもライセンスが戻ってたのかよ?」
すると、狐2人は椿の耳や尻尾をモフモフしたまま、バツが悪そうな顔で大きくため息を吐いた。
『うむ・・・センターが元の鞘に戻ったからな。ただ、今言ったように神妖の妖気が使えん』
『暫くは、椿と綾の補佐をしろと言われたからな』
「ご、ごめんなさい・・・ふぇっ!?ちょっと、2人共!力入れすぎ・・・うぅぅぅ〜」
『椿よ、そう謝らんでも良い。ふっ・・・どうせなら、こうやって妖気でも回復せんかと思っとったしの』
『それに、こうしていると妖気は回復しなくとも気力が回復するからな』
あ〜、うん・・・こりゃ暫く離してもらえそうにないな。くそぅ、白狐さんも黒狐さんも見せつけるようにモフモフモフモフしてくれちゃって!
そう思った途端、今度は椿の爺さんが苦笑いしながら私達へ声をかけてくる。
「さて、2人共。観客からのアンコールが鳴り止まん。すまんが、もう一度舞いと歌をやってもらえんかの?」
そういえば、確かにさっきからドーム内はアンコールの嵐だったね。ここまで皆が気に入るとは思ってもみなかったし、これでもう1回やって同じ事が出来るとは流石に・・・。
『大丈夫だよ』
『そうそう、舞って歌いなよ。綾ちゃんも、嬉しいなら一緒に踊って』
おぅ、まさかの幻の子供達からOKサインですか。
だったら、また椿と一緒に件の舞いと歌を皆へ披露するとしますかね。
「ま、そういう訳だから・・・白狐さん、黒狐さん?そろそろ椿を離してもらえない?」
「綾ちゃんの言う通りですよ。僕、もう1回舞いを・・・」
『ならば、我らも2人と一緒に舞おう』
『おぉ!それは良い考えだな、白狐!』
「はぁ!?」
「2人共、舞えるの!?」
『ふっ、甘く見るな。これでも我と黒狐は稲荷の守護神。奉納の舞い等を見てきて、いざ神を宥める為にと密かに練習しとったわ』
『俺は・・・まぁ、勘でやろう。何故か出来そうだからな』
うわすっごい心配・・・特に黒狐さんが。
というか結局、椿は狐2人に離してもらえないままドームの中央に引っ張られていっちゃったわ。
「おぉ?今度は白狐さんと黒狐さんも舞うのか?」
「良いぞ!綾ちゃんの美しい歌に乗った妖狐3人の夫婦舞い、見せてくれぇ!」
「誰が夫婦ですか!!」
「私も夫婦に入れろやぁ!!」
「――って綾ちゃんも何言ってるの!?」
『あはは、良いね良いね。どうせ結納の時にも舞うんだから、2人も今の内に練習しなよ』
おぅおぅおぅ!狐面の子供達からもお許しが出たぞ!だったら尚更、気合い入れてやってやりますとも!
「はぁ・・・しょうがないですね。綾ちゃん、結納の時にも舞うみたいなので、今の内に練習しましょうか」
「うん、了解了解〜」
『むっ、そう綾にばかり良い所はやらんぞ。先ずは我と・・・』
『待て!椿は先に俺とだ、白狐!』
もうヤダこの2人、こんな人目が多い所でいつもみたく喧嘩しないでもらえます?親切心じゃないとはいえ、それは流石に恥ずかしいんだけど。
「ほら、白狐さんも黒狐さんも。喧嘩していないで、皆で一緒に舞いますよ〜」
『ぬっ?綾と黒狐ともか?』
『む?仕方ない、椿の誘いだものな』
「それにしても、妖狐の3人と一緒に舞うなんてちょっと豪華だね」
そう言った時、椿は恥ずかしそうに顔を赤くしながら両手で狐2人を、尻尾で私を巻き付けて引っ張りながらドームの中央へと舞い戻る。
そして私達3人を離したと同時に、さっきの舞いで使っていた扇子を広げると、それだけで再び狐の面を着けた子供達が現れて、それぞれが手にした楽器で旋律を奏でてきた。
でも、さっきとは少しテンポが速い別な曲の気が・・・って、何でか知らないけど私も狐2人も踊れちゃってるよ。
『なんじゃ、この曲は?』
『身体が、勝手に・・・』
「ま、まさかだけど・・・これって――」
『ふふ、気が付いた?これは、強制的に舞いを踊ってしまう曲だよ・・・さっ、椿ちゃんも』
「えっ、僕も?うわぁぁあ!!」
踊れてる理由そ〜いう訳かい!というか、気付いたら踊り出した椿まで巻き込まれてるし!!
『つ、椿・・・!これは・・・止められんのか!?』
『なんというか、割と厳しいぞ!』
「私、なんでブレイクダンスになってんのさ!?」
「わぁぁん!ごめんなさ〜い!止め方なんて分かりませ〜ん!!」
さ、最悪な絵面過ぎるよコレ〜!それなのに皆は喜んでるし、いつの間にやら本当のライブみたくなっちゃってるよ・・・。
ちなみに、それから私達が舞いと歌から解放されたのは30分後だったり・・・いや、本当に私も含めて4人共ヘトヘトになっちゃったぞ。