私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陸話 は〜、無駄に心配して損した気分だわ

 

その翌日。私達は筋肉痛にこそならなかったものの、あの舞いと歌のお陰で家に住んでいる妖怪から以前にも増して変な呼び方で呼ばれるようになってしまったよ。

 

しかも、その呼び方というのが――

 

「あっ、椿姫さんに綾姫さん。おはようございます〜」

 

「お〜姫さん達。調子はどうだ?」

 

「2人の姫様〜また舞って歌ってくれよ〜」

 

「「ぐ、ぐぬぬ・・・」」

 

おのれ浮遊丸。アイツが最初にあんな実況してくれたせいで、今じゃスッカリ私も椿も姫って渾名が定着しちゃったじゃんか。

 

姫って読んだ妖怪はもれなく、椿の影の妖術で体中くすぐったり、私の風の妖術でベーゴマみたく回したりしてお仕置きしているけど・・・それでも呼ぶのを止めないんだから大した根性してるよ、皆!

 

「椿ちゃ〜ん!!綾ちゃ〜ん!!」

 

「うわっ!?・・・って、里子ちゃん?」

 

「ま、まーた椿の尻尾と私のポニテ弄りですかい・・・」

 

すると、その声と共に私と椿は後ろから里子に抱きつかれて、モフモフさわさわと両手で目いっぱいに椿の尻尾と私のポニテを触ってくる。それは別に構わないんだけど、今回はやけに乱雑な触り方じゃないか?せっかく椿の尻尾も私の髪も整えたってのに・・・これじゃ台無しだぞ。

 

「もう!里子ちゃん、今日はいつもよりスキンシップ激しくないですか!?」

 

「だって〜あんな椿ちゃんの舞いと綾ちゃんの歌を見たら、我慢出来なくて・・・本当は夜にお布団へ忍び込みたかったけれど、白狐さんと黒狐が居たから〜」

 

「あ〜確かに・・・昨日は椿、2人に挟まれる感じで抱きしめられて寝てたもんな〜」

 

「うっ、そんな風に言わないでよ綾ちゃん・・・」

 

「ふふっ、椿ちゃん顔真っ赤〜可愛い〜」

 

「里子ちゃんは、ほっぺつつかないで・・・」

 

そう里子が椿を弄っている時、ふと私は里子の発言に違和感を感じて思わず首を傾げた。

 

「そういえば、里子。何で黒狐さんの事を良く呼び捨てにしてるんだ?ひょっとして、何かあった?」

 

「えっ?ん〜、ちょっと・・・ね」

 

「いや、そう言われると逆に気になるんだけど・・・」

 

「言わないと、こうですよ〜」

 

「きゃぅん!!ちょっ、椿ちゃ・・・影で尻尾掴まないでぇ」

 

あ、椿が凄いイタズラっ子な笑顔してる。こりゃあ、さっきまで散々尻尾を弄られてたのを結構根に持ってる感じだな。

 

「わふっ!?椿ちゃん・・・だ、めぇ・・・あぅ!分かった!言う、言うからぁ!!黒狐とは、私は何も無いけれどアイツの・・・父親がぁ・・・私のお母さんを、奪ったのよ!」

 

「えっ?黒狐さんの父親?」

 

「あの人にお父さんが居たんですか!?それに、奪ったって・・・まさか」

 

「こ、殺したとかじゃないよ・・・浮気なの」

 

「ズコーッ!!」

 

あぁそういう事ですか、なるほどね!

いやはや、そんな複雑な関係になっちゃってたのに、よく里子の親父さんも夏休みに黒狐さんと・・・あっ、思い出してみたら2人が話してる様子は見てないわ、黒狐さんの運転する車に親父さんは近づこうともしてなかったわで深刻だったわ。

 

というか、まさか黒狐さんに親父さんが居たなんてなぁ・・・ひょっとして黒狐さん、普通の狐が修行とかで力を積んで神格化、みたいな出自なのかね。

 

「椿ちゃ・・・これ以上は・・・はぅぅ!椿ちゃん!綾ちゃん!2人共、考え事してないで・・・これ、止め・・・わふぅっ!?」

 

「あれ?里子ちゃん?グッタリしちゃってどうしたの?」

 

「って、椿!椿!影の妖術発動したままだよ!!」

 

「あっ、しまった!その・・・ごめんなさい、里子ちゃん」

 

「つ、椿ひゃんの・・・ばかぁ」

 

あ〜もう、ずっと尻尾掴まれてたから里子も完全にヘトヘトじゃん。そして、そんな彼女を運んでいく椿へ向けて、廊下の陰からコッソリと覗いてる視線も感じるし。

 

「羨ましい・・・」

 

「何言ってんだよ、雪・・・第一、そっちには尻尾とか無いじゃん」

 

「良いもん、私は綾になら何処を触られても――」

 

「ゆ、雪ちゃん!早く行きますよ!」

 

はい、雪はそこまでにしとこうな!これ以上は流石にR-15でもギリギリな表現になっちゃうぞ!!

 

◇◇◇

 

「ねぇ、黒狐さん。黒狐さんって、お父さんが居たんですね」

 

『ん?そのようだな』

 

その後、地下のホールで皆と朝食をとっている最中、ふと椿がそれとなくな様子で黒狐さんに里子から聞いた話を尋ねていた。

 

割とアッサリ答えた黒狐さんに椿は少しジトッと里子の方を見たけど、そこですぐにハッとした顔で不思議そうに首を傾げながら、今度は白狐さんに質問を続ける。

 

「それじゃあ、白狐さんにも?」

 

『ん?どうだろうな・・・我には、その記録が無いからな。もしかしたら、我は"そういう形"で生まれたのでは無いのかもしれん』

 

「その記録?」

 

『つまり、じゃ。妖狐の中には時折、自分の子供といったような高度な分け身をする者がおる。ただ、それを好き勝手にさせては力関係で妖狐の独壇場となってしまう為に、神格化した妖狐が高質な分け身をする場合はセンターから許可を貰う必要がある。そして、それは出生証明書のようにしてセンターでキッチリ保管されておる訳じゃ』

 

「はへ〜、すっごい事出来る妖狐もいるんだな・・・」

 

しかも、そんな制度まであるんだからなんて驚きだ。そうなると、黒狐さんは父親となる妖狐の分け身で生まれた事になるんだね。

 

でも・・・里子の話を変な方向に考える訳じゃないけど、その父親の妖狐が浮気やらかしてると妙に心配になるんだわ。

いや、黒狐さんは黒狐さんだし椿に一途だから有り得ないとは思う・・・けど、やっぱり不安だな。

むむ、椿が黒狐さんの方へ嫁に行くとなったらどうしよう?もし黒狐さんもアレだったら思いとどまらせるべきか?

 

――と、そんな事を考えていた時。

ホールの扉から4つ子の朱雀さんが普段の慎重そうな様子で入ってきて、私と椿の方にやって来て耳打ちをしてくる。

 

「椿様、綾様・・・少し、宜しいでしょうか?」

 

「何、朱雀さん?」

 

「すいません・・・ここでは、ちょっと」

 

「えっ・・・?そんなに聞かれちゃいけない事?それなら、おじいちゃんに・・・」

 

「聞きましたよ。2人共、特級を取られたのでしょう?それならば、もう立場的には此処の皆さんとは違います。貴方がたは、翁の指示無しで動けるのですよ」

 

「へ、へぇ〜・・・そうなのか」

 

「あっ・・・わ、分かりました」

 

とりあえず私達は、朱雀さんの言う通りに従ってホールから出てから今の話を続ける。

 

「椿様に綾様。実はあれから八坂の居場所を探っていたのですが、その際に学校へ通っていた半妖の1人を見つけました。現在は、雪さんが父親にされたように何者かの手によって監禁されているようです」

 

「何だって!?」

 

「そんな、またですか・・・!」

 

クソッ・・・いくら妖怪センターが頑張っても、世間から半妖の扱いは中々変わらないって事かよ。

じゃあ、そうなると今回も監禁してるのは身内って可能性が高いだろうな。雪のクソ親父も、自分の欲望の為だけに娘を監禁してたし。

 

「それで朱雀さん、その半妖の人ってのは?」

 

「ええ、綾様・・・赤木宗二さんです」

 

「お〜し、朝飯の続きに行ってきます」

 

「・・・そうですね、綾ちゃん」

 

「綾様!!椿様!!」

 

うん、今のは聞かなかった事にしとく。

えっ?知り合いじゃないかって?いや〜・・・すまん、気絶した時みたく何も思い出せないんだわ。

 

「お2人共、良いんですか?彼は変た・・・コホン、生徒会長だと聞きましたよ。前校長の行方も、きっと分かるかもしれませんよ」

 

「うぐ・・・」

 

「そういえば、1番あの人に近い人物でしたね」

 

だ〜クソ、よりによってマジでか。だったら、雪とか楓に――

 

「それと、その家には亰嗟のメンバーが出入りしている姿も確認されています。もう、あまり時間の猶予は無いんですよ」

 

はい逃げ道も絶たれました!これ助けに行かないと被害が拡大する奴だ!

うぐぐ・・・私や椿が行くと、向こうの報告で地獄の鬼が差し向けられるかもだから嫌なんだよなぁ。

 

「椿様も綾様も、なんでそんな頑なに行こうとしないんですか?」

 

「う、うぅ・・・だって、だって、あの人は・・・」

 

「というか、そこまで分かってるなら朱雀さんも少しは考えてくれよ・・・」

 

「えっ?そ、そこまで深刻な事なのですか?」

 

もうヤダこの人!変な所で天然かましてきたし!

あんな変態会長、私達が助けに来たと知ったら再会の喜びでベロンベロン舐め回してきそうなのが読めるだろ普通!

 

はぁ・・・仕方ない。向こうも向こうで危険な状況みたいだし、その救出するだけの仕事はやって、とっとと帰るとしましょうかね。

は〜、無駄に心配して損した気分だわ。

 

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