私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
朝食を食べ終えた私達は早速、朱雀さんからの頼みで変態会長の家へと調査に向かう。
場所は普通に学校近くの住宅街内だからすぐ着いたけど、雪の実家程じゃないとはいえ他の家より少し大きな家だ。
「まぁ、この程度ね」
「ところでさ、どうして雪も一緒に来たんだ?」
「綾と椿が、あの変態に身体中舐められる訳にはいかない。もしそうなったら、凍らせて氷像にして永久保存してやる」
「お、おぅ・・・せめて前の校長、八坂校長の居場所吐かせてからにしような?」
そう雪が心配しなくても、舐められる前に私がボコるし。まぁ、そんな事を言ったら椿に雪と2人まとめて「程々にしてあげてくださいね」ってツッコミ入れられるから止めておくけど。
『ふん、あの者は少々危険だからな』
『そうだな、白狐。こうやって俺達も見張っててやるから安心しろ、椿』
「ムキュゥ!」
しかも、狐2人やレイちゃんもアクセサリーやキーホルダーに化けて、椿の手提げバッグに着いて来る有様だ。むしろ、ここまで厳重にガードされてるのに手を出してきたら逆に変態会長を尊敬するわ。
ひとまず家の見える範囲を確認してみるけど、今回は前の時みたく「お見舞いの為に」とか言って侵入するのは無理なのがキツいな。
なんせ半妖は全員退学させられちゃった訳だし、その親からすれば誰かが訪ねてくる時点で怪しむのは確実だ。
「う〜ん・・・高い塀で侵入を防ぐのは良いけれど、その上に尖った鉄の柵まで付いているなんて、少し妙ですね」
「うん、確かに。まるで、侵入と脱走の両方を防止しようとしてる感じに見えるな」
『ふむ・・・綾の例え通りかもしれん。恐らくは助けを呼びに行かれぬよう、あやつを出さないようにしているのだろうな』
そうキーホルダー姿の白狐さんが言った時、椿はポンと閃いたような顔で手の平を合わせて私の方に振り返ってきた。
「よし、良い事を思いつきました」
『ん?何じゃ、椿?』
「なんというか、嫌な予感がするような・・・?」
『あぁ・・・綾の言う通り、何故か寒気がしてきた』
「嫌だな〜皆〜そんな悪い事じゃないですよ」
そして椿はバッグから狐2人の化けたキーホルダーを外して、それを私の手に乗せてニコリと笑顔を浮かべてくる。
「あー・・・やっぱり、こうするのね。前に私と椿が酒呑童子にやられた方法って事」
『椿よ、目が笑っとらんぞ!何をする気じゃ!?』
『白狐、その前に逃げた方が・・・うぉっ!!』
「大丈夫ですよ〜白狐さんに黒狐さん、綾ちゃんがシッカリやってくれますから。じゃあ綾ちゃん、お願いしますね〜」
「はいよ〜・・・どらぁっ!!」
『『ぬぉぉお!?』』
私は狐2人のキーホルダーを塀の向こう側へとブン投げ、それと同時に椿が発動した影の妖術によって一気にキーホルダーの影を伝って私達も塀を飛び越えた。
「よし、成功したかな?」
「おーっし、行くぞ雪〜」
「椿、綾・・・もしかして、それ誰かにされた?」
「えっと、酒呑童子さんに・・・」
「うん、ま〜ちょっと・・・ね」
「・・・よし、凍らせてくる」
「き、気持ちは分かるけど・・・雪、それは帰ってからにしてくれよ?」
そして私達はキーホルダー姿のまま伸びている狐2人をそれぞれ抱え起こすと、そこで意識を取り戻したのか白狐さんがすかさず変化を解いて椿を抱きしめる。
『ふふ・・・やはり心配なのは我か、椿よ』
「むぎゅぅ、抱きしめないで・・・」
『むむぅ・・・どうして俺は綾なんだ。俺だって椿の事を・・・ブツブツ』
うわぁ、黒狐さん散歩に行ってもらえなかったワンコみたいに、頭どころか耳や尻尾も垂れ下がるレベルでヘコんでるよ。
――なんて思っていたら、白狐さんから降りた椿が
パタパタと黒狐さんの所に来たぞ。
「黒狐さん、黒狐さん。ここで頑張ってくれたら、僕がご褒美をあげますよ」
『なぬっ!?』
「あっ、立ち上がるくらい一瞬で元気になった」
椿、なんて恐ろしい子!
元々が男の子だからか、こう黒狐さんみたいに単純なタイプの人の好みを正確にブチ抜く発言しちゃうなんて・・・!というか、顔がイタズラっ子の悪魔なんですよ完全に。
「静かにして、今は不法侵入してるんでしょ」
「あっ・・・そうでしたね。ごめんなさい、雪ちゃん」
雪に注意されて少し恥ずかしくなりつつも、私達はグルリと周囲を見渡して家の何処に降りたのかを確認する。
ちょっとした中庭っぽい所で、洋風のベランダがすぐ先に見える所からすると、どうやら変態会長の家は派手な豪邸って感じじゃないようだ。これなら、会長を見つけるのも早そうかな。
『安心しろ。外から見た限り、この近くに人の姿は無い』
「えっと、その事なんだけど・・・今更とはいえ、このまま侵入して良いの?普段よくやるような綾ちゃんはとにかく、雪ちゃんは・・・」
「ちょっと椿おい今何て言ったよ」
「それなら気にしないで、椿。私だって半妖だし、あまり人の法律は適用してないから。それに、既に不法侵入してるし今更でしょ」
「あっ・・・そうですよね・・・」
まぁ、雪がそう言うんなら遠慮なく侵入を・・・って思ったけど、よくベランダを見たらハエ取り紙みたいにベロ〜ンとした舌みたいな変な物が垂れ下がってるぞ。
変態会長の舌を思い出して気持ち悪いから燃やしたいけれど、アレから妖気を感じるし・・・下手に近づいたりしたら、それこそベロベロ舐められそうで嫌だな。
『椿・・・ここは、俺が行こう』
「えっ?黒狐さん!?」
とか思ってたら、さっきの椿のセリフで黒狐さんが凄くやる気になってたわ。ま〜白狐さんどころか雪も止めないし絵面的に得は全くしないけど、ひとまずは囮として役に立ってもらおうかね。
『ふっ、こんな物に舐められた所で俺は――ぐおっ!?』
はい、囮にもなってくれませんでした!
『ぬっ!?くそ、この!』
鞭どころか棒みたいに勢いよくバシバシ叩かれて退散してくるなんて、これは稲荷の守護神として情けない姿だな〜・・・。
「ふぅ・・・一体誰かと思えば、君達か・・・何で玄関から来ないのですか?」
「えっ?あっ・・・」
「げっ、いつの間に?」
そんな事を思いながら黒狐さんを見ていると、その中庭を見下ろせるような所にある窓から、変態会長が不思議そうな顔をして私達を見ていたよ。
半妖だから当然とはいえ、半年ぶりなのに何処も変わった感じがしないね。
「っていうか、変態会長は監禁されてるんじゃなかったのか?てっきり私達は捕まってたもんかと・・・」
「誰の情報ですか?監禁ではないですよ?」
「えっ、それじゃあ・・・」
「軟禁です」
だけど、そう変態会長が言ったと同時に私達がいる中庭へと黒いスーツ姿の人達が沢山入って来て、一斉に私達へ拳銃を構えてくる。
「やれやれ・・・何で貴方達は、こんな変態すら見過ごせないんですか?此処は、貴方達が来るべき場所ではないのです」
ん?何か妙だな・・・来るべき場所じゃないって意味はよく分からないけど、あの変態会長が普段の変態丸出しな感じを1ミリも出してないなんて。
そう思って変態会長を見ていると、今度は私達の後ろにある玄関口の方から誰かが、黒スーツの人達を咎めるように手を挙げながら入ってきた。
「これこれ、宗二。せっかく来てくれたお客様に、追い返す真似は止めなさい」
「くっ、はい・・・父上」
えっ、あのチョビ髭で高級そうなスーツ着てる、見るからに金持ちっぽい雰囲気のオッチャンが変態会長の親父さん!?
しかも、その周りに居るのは要人警護の人達みたいだし・・・あ、まさかコレやらかしたか?