私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾捌話 人も妖怪も同じだろ

 

その後、私達は黒スーツの人達に拳銃を背中へ向けられたまま、ベランダから変態会長の家の中へと案内される。

 

うん、これ歓迎されてねぇわ。

というか、椿も狐2人もアイコンタクトで『隙を見て逃げるぞ』って送ってきてるくらいだし。

 

「では、そこにかけてくれたまえ」

 

そう変態会長の親父さんに促された通り、私達は恐る恐る応接室っぽい部屋のソファーに座る。

・・・どうやら、座ったら舌で舐められるとか変な仕込みは無いみたいだ。まぁ、変態会長も強ばった顔でふざけてる様子じゃないから、当然っちゃ当然か。

 

「さて、何か飲みますかな?」

 

私と椿、そして雪がソファーへ座って、その後ろで狐2人が立ったまま周囲を警戒する中、変態会長の親父さんは静かに笑みを浮かべながら尋ねてくる。

 

「あっいえ・・・すいません、いらないです」

 

「僕も、今は大丈夫です」

 

とはいえ私達は侵入者な訳だし、こんな風に向こうが飲み物を勧めてくるのは何処からどう見ても怪しいぞ。それに以前、雪の家でハメられた事もあったから、私も椿達も警戒して首を横に振って誘いを断った。

 

「それよりも、勝手に侵入してすいません。だけど・・・」

 

「息子を――いや、半妖の息子を軟禁していると聞いて助けに来た・・・ですよね?」

 

あの警備の出てくる早さと言い、やっぱり向こうには全部バレてたのか。じゃあ、椿の狐耳とか尻尾や狐2人の姿も、この場の全員には見えているって訳だろうな。そうじゃなきゃ、こうして銃を突きつけてはきてないハズだし。

 

「その情報、どこからですか?」

 

でも、椿も負けじと変態会長の親父さんに質問し返す。確かに、最初からバレているんなら駄目元でも情報を相手側から得られるよう立ち回るべきではあるけど、そう簡単に言っては・・・。

 

「あの八坂という人ですよ。貴方達の事も、そしてこういう行動に出るという事も含めて、全て教えてくれました。しかし、時間が掛かりましたな・・・餌をぶら下げておいたのに、中々見つけてもらえずにいるとはね」

 

おっと、割とアッサリ教えてくれやがったぞ。

 

朱雀さんから此処の警備があからさま過ぎる状況を聞いた時にも思ってたけど、どうにも変態会長の親父さんは椿や妖怪の皆の事を甘く見ている感じがするな。なんというか、まるで畑に近づく害獣を相手にしているような対応の仕方だ。

 

「あんなあからさまなのは・・・流石に怪し過ぎるんですよ」

 

「おや?貴方達みたいな妖怪には、知能があったのですか?」

 

「ふざけないでください。伝承や書物を見れば、こっちにも知識があるくらい分かりますよね?」

 

よーっし、コイツ後で殴るリストに追加だわ。

 

だけど、そう椿が怒り気味に言ったにも関わらず、変態会長のクソ親父は落ち着いた様子のまま、更にとんでもない事を口にしてきた。

 

「妖怪なんて、同じ行為を繰り返すだけの存在でしょう?そんなのは猿以下、ただの獣です。しかし厄介ですね・・・伝承とは違い、貴方達には知性や理性、感情があるという事ですか。そうなると、あんな事をさせるのは私も些か、良心が痛みますね」

 

あ"ぁん!?今なんつったテメェ?

・・・っと、抑えろ私。クールになれ私。

 

狐2人が飛びかかりそうだし、実の父親から酷い目に合わされた雪も握り拳を作るくらいに怒ってるけど、ここは少し落ち着いていかないと駄目だ。

 

「皆、落ち着いてください。それで、変態会長のお父さん。貴方は僕達に何をさせようと?」

 

「赤木半二(はんじ)です。ふむ・・・しかし、その息子の2つ名は中々に面白い。言い得て妙だ、あの女の息子に相応しい」

 

それにしても、このクソ親父からは妖気の1つも感じられないし、あの発言からして変態会長の母親が妖怪と見て良いかも――いや待て、何か良くないんじゃないか?だって、垢舐めの妖怪って事は・・・まさか?

 

「話を逸らさないでください」

 

「あぁ、良いですね・・・椿さんと綾さんの、その強気の目。うんうん、そういう女性の方が私は好きですよ」

 

うわぁ!やっぱり!!

ど〜うりで、変態会長が変態会長な訳だわ。こんなマゾな親父さんだったら、そりゃ息子も大変な変態に育ちますよ・・・その変態会長諸共パイプカットしてやりてぇ。

 

「そうそう、質問の答えですが・・・これは貴方達にとっても、利益のある事なのですよ」

 

「利益だって?」

 

そう返した私に、会長の変態親父は毛先がクルンとなっているチョビ髭を撫でて笑顔を向けてくるけど、何故だか椿は吹き出しそうな表情で真っ赤になっていたよ。そこまで面白い絵面・・・だよな、あの時代を間違えたような仕草は。

 

「私が行っているのは、新エネルギーの研究です。そこで八坂さんの妖怪や半妖が実在するという発表と、彼から教えてもらった妖気の情報のお陰で、遂に私は見つけ出したのです」

 

これは、やっぱり・・・というか、下手すりゃ雪の親父よりもタチが悪い予感しかしないぞ。

 

「素晴らしいではないですか!それを新たなエネルギーとすれば、半永久的にエネルギー問題は解決するんですよ!あの女が妖怪だとは知らなかったが、八坂さんのお陰で気付きましたよ。私の手元には研究にはうってつけの息子と、その妖気を抽出する妖怪が揃っているんですからね!」

 

おいおい・・・椿達を人間の生活に使うエネルギー源として使うなんて、とんだ馬鹿な事をコイツ言い出したぞ!同じように物事を考えたり泣いたり笑ったり出来るなら、人も妖怪も同じだろ!

 

「でも、そんな事は人間の方で出来る訳が・・・」

 

「ところがね、私達に協力を申し出た組織がありましてね・・・確か、亰嗟という組織でしたかな」

 

しかも、自信満々に亰嗟と協力関係にある事まで言ってくれちゃって・・・それなら亰嗟の連中が此処に出入りしてた理由も納得だ。

でも、コイツの研究は妖怪側にとっては良くない事のハズなのに、どうして亰嗟が協力を申し出たんだか、そこだけが謎だな。

 

「さて、そこで貴方達への利点ですが・・・この研究、実はどうしても"相互"する必要があるのですよ」

 

「相互?」

 

「ええ、渡し合うのです。この研究には、人間の生命力も必要なのですよ。妖怪は人間の生命力を妖気に変換出来ると聞きましたからね。それを使い、妖怪から妖気を抽出するのですよ」

 

「勘違いしないでください。それが出来るのは、ほんの一部の妖怪だけです」

 

警戒する椿に、このクソ親父は笑みを崩さないまま軽く頷きつつも目を丸くして、わざとっぽく驚いた様子を見せる。

 

「なんと!それは参りましたね・・・では、その妖怪を――」

 

「はっ、教える訳ないでしょう。私達に仲間を売れってか?」

 

「でしょうね・・・そうなると、やはり半妖を使う事になりますか」

 

そうクソ親父が言った途端、変態会長が肩を強ばらせて身体を震えだした。この尋常じゃない震え方、嫌な予感がするな。

 

「人間と妖怪の合の子!人間の生命力と若干の妖気を持っている、まさにハイブリッド!コイツらを使えば、わざわざ相互させずともダイレクトに妖気を回収出来ますからね!!」

 

「「なっ!?」」

 

いつの間に抽出する装置なんて完成してたって事かよ!しかも、半妖から生命力も妖気も吸ったりなんかしたら――

 

「・・・そんな事すれば、その半妖は死ぬ」

 

そうボソリと言った雪は、怒りで眉間にシワを寄せながらグッと膝に置いた両手の拳に力を入れていく。

 

クソッ、なんて酷い事を考えつく奴なんだコイツは・・・!椿は目線で「ここは抑えて」と訴えてくるけど、これ以上は流石に私も我慢出来ないぞ!

 

「さて、そうなると・・・もう妖怪は要らないですね。半妖は欲しいのですけれど・・・」

 

すると、今度はクソ親父の護衛共が雪に銃を突きつけてきた。

 

「あ?私の親友に向かって、そりゃ何の真似だ?」

 

「貴方達妖怪は必要ありません、お帰り頂いて結構です。ただし、そこの半妖の子は置いていってくださいね」

 

「断ります!!それに帰るのは帰るけれど、赤木生徒会長も一緒に連れて帰らせてもらいます!」

 

その人質を取るような行動に私と椿は立ち上がって、周囲が一瞬たじろぐ程に強くクソ親父を睨みつける。それは狐2人も同じだったらしく、狐の顔になったかのように牙を剥き出しにしながら怒りの形相を周りへ向けていた。

 

「それは残念です。どうやら貴方達も獣、知性も理性もありは――ぐぁ!?」

 

『ふん、黒雷放電(こくらいほうでん)。もう喋るな、うっかり殺してしまいそうだ』

 

そして、黒狐さんが黒い雷の妖術で私達や変態会長以外の全体に放電し、私達へと銃を向けていた護衛達を感電させて気絶させていたよ。だけど、それでも変態会長のクソ親父はまだ喋れるだけの気力が残っているみたいだ。

 

「こ、これが・・・妖術・・・!素晴らしい・・・やはり、妖怪から抽出した方がエネルギーは――」

 

「あっ、手ぇ滑った」

 

「あばばばば・・・」

 

「黒狐さん、綾ちゃんの雷が効いてないみたいなんでお願いします」

 

『しょうがない、もう1発――なっ!』

 

私が更に雷の妖術を撃っても元気だったクソ親父に、もう一押しと黒狐さんが黒雷を放とうとした時、誰かがそれを阻むかのように立ちはだかってくる。

 

「赤木会長!?」

 

「おい!どうして庇うような事を・・・今コイツが言ってた事、変態会長も聞いてなかった訳じゃないだろ!」

 

「頼むから、帰ってくれ・・・そして、この件にはもう関わらないでくれ」

 

「何で、ですか・・・?」

 

「そんな事を言われて、納得なんて・・・」

 

「良いから!帰ってくれ!」

 

その変態会長の覇気迫る様子に、つい私達はたじろいでしまった。だけど・・・このままだと変態会長だって命が危ないんだぞ?それなのに、一体どうしてなんだよ・・・?

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