私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
ようやく椿のお仕置きタイムも終わって、私達は凍結した階段を先頭に立つ椿の妖術で溶かしながら、再びビルの中を突き進んでいく。
その途中、足が凍って動けなくなっていた待ち伏せしてた人達を三間坂さんが縄で縛り上げ、5人全員を階段の手摺りに括りつけて部下へ連行するよう連絡を入れていたよ。
そうして階段を降りきった私達だったけど、その突き当たりにある扉を開けた先は真っ暗になっていた事で、皆すぐさま警戒態勢に入る。
「敵が侵入してきたとなると、まぁ当然こうなるな。見ての通り、待ち伏せをするなら暗闇の方がうってつけという訳だ」
「なるほど・・・でも、普通なら向こうだって私達の事は見えてないハズだよな。それでも暗闇に身を潜めてるって事は――」
「暗闇でも目が見えるようになる妖具を使っている・・・という事だよね、綾ちゃん。そういう妖具、あったかなぁ・・・」
ひとまず警戒したまま私は雷の妖術を応用して作った光の玉で周囲を照らしつつ、皆で固まって暗闇の中を進んでいると、椿が私の隣でおもむろに振り返って少し怒った顔を浮かべる。
「それよりも、皆・・・暗闇に紛れて、僕の尻尾を触らないでください」
「おいおい、私は触ってないぞ!?」
「えっ?椿ちゃん、私も触っていないよ?」
「アンタ、敏感になり過ぎてない?」
「自分も触っていないっすよ。というか、こっちは真っ暗だから姉さん達の後ろ姿も見えないっす」
「そうそう。でも、声で2人が前にいるのだけはちゃんと分かる」
いやいや、そんな誰も触ってないハズが――いや、まだ触りそうな奴がいたわ。
「まさか、白狐さんか黒狐さんか?」
『ん?違うぞ、綾。お主達の前を歩いているというのに、妖気で分からんか?』
「嘘は・・・言ってないみたいだね。確かに、2人の妖気を前の方から感じるし」
むぅ、皆の妖気や声からして左右に固まってるっぽいし・・・霊気も感じないから幽霊でもないなら一体、誰が椿の尻尾を触ったっていうんだ?
「効かない・・・馬鹿な、聞いているのと違う」
その瞬間、今度は椿の尻尾の方から誰のものでもない声が聞こえたと同時に――
「よっ、と!てぇいっ!!」
「・・・なっ!?ぎゃぁぁあ!!」
「へっ?――どわぁ!!何だ!?何かぶつかってきたぞ!!」
いや椿さん尻尾で掴んだ奴を投げました今!?
何かゴチ〜ン!って私の頭に当たって吹っ飛んでいった気がするんだけど・・・。
『むっ!?』
「ちょっと、どこからよ!?危ないわねぇ!」
すると、今度は白狐さんと美亜の方からも同時に声が聞こえてくる。この様子、まさか敵から不意打ちされたのか!?
「おい、"くらやみ目"!ちゃんとそいつを抑えてろ!その妖狐が1番厄介なんだよ!」
「そ、そうは言われても・・・その通りに尻尾を触っても、全く悶えませんでしたよ!?」
「うるさい!!そう上からの報告書には書かれていたんだから、間違いはないハズだ!それなら、もっと強く触れ!」
あ〜・・・うん、暗闇に隠れてる敵さん?大声で話されたら丸聞こえなんですけど?というか、そもそも椿が尻尾を触られたら悶えるって話なんか随分と前の話だぞ。
「皆、一体どんな敵の攻撃を!?」
『良く分からんが、飛び道具のような物を使われている。くそ・・・暗闇を照らせる明かりさえあれば!綾、前を照らしている雷球を大きく出来んのか!?』
「無理だよ、白狐さん!こうして照らし続けてるだけでも、妖気をガンガン消耗していってるんだ!」
そうこうしながら暗闇から飛んでくる敵の攻撃を防ぎながら皆を1箇所に集めようとした時、いきなりパッと真っ暗だった空間が電灯の光で一気に明るくなる。
「えっ、何?」
「何だ何だ?急に明るくなった!?」
「・・・ったく、この程度の初歩的な戦法で戸惑うな。俺の煙は妖気だけじゃなく、電気みたいな一部のエネルギーの流れも探れる。そいつを使えば、この通りスイッチを入れるのも簡単だ。ついでに言うと煙を使えば障害物の位置も分かるから、俺には暗闇なんて大した問題じゃないのさ」
そう言った三間坂さんは、いつの間にやら敵の集まっている後ろにある電灯のスイッチの所に立っていたよ。暗闇に入ってから一言も喋らなかったから少し心配してたけど、これは思わぬ助け舟だね。
そして私と椿はホッと一息つきつつ、おもむろにバッと後ろを振り返る。すると、そこには――
「ひ、ひぃ!!」
「ぎゃあ!!いきなりビックリした・・・コイツ、顔に目が無いのに椿の尻尾を触れてたのかよ!」
後ろに居た妖怪がビビって屈んだ時に私達は注意が逸れて、その周りで亰嗟の連中に囲まれているのが分かったぞ。
「しまった!!まさか、そんな探知能力を持っている奴がいたとは!」
「えぇい、明るくなったからって何だ!やる事は変わらないだろう!」
「そうだ・・・捕まえないと、俺達は地獄に落とされる!」
感じる妖気の量からコイツらは全員、半妖の人達みたいだな。それにしても、相手は遠くからチマチマと物を飛ばしてきてると思ってたけど、この包囲してる連中の近さからして普通に攻撃してきてたっぽいな。うん、暗闇の中で私が雷球で明るくして目立ってたとはいえ、コイツら油断し過ぎだろ。
「あ〜あ、焦ったら負けよ・・・ほ〜ら!」
「うわぁぁあ!!」
「な、なんだこれは!?」
そんな事を考える間もなく、美亜は誰よりも早く地面に妖気を流して呪術のトラップを展開し、そこへ知らずに近づいてきた相手を次々と地面から生えてきた太い蔦に雁字搦めにしていく。
「なっ!?足元が凍って・・・」
「しまった、滑っ――いで!!」
「さ、寒い!手が、足がぁ!!」
雪も床を凍らせ、それに足を滑らせて転んだ奴らを氷の塊を作って包み込み、そのまま人間雪だるまにして動けなくしていたよ。
そして、楓の方も・・・。
「攻撃しても、全部跳ね返すっすよ!」
「うわっ!?き、効かねぇ――ぎゃあ!!」
「こんなふざけたガキにまで・・・ちくしょう!」
「誰が!ふざけたガキっすか!」
あっ、狸の像の鏡で相手の妖術を跳ね返しながら変身解いて飛び蹴りしてら。それにしても、やっぱり向こうから見ても楓のくノ一スタイルは変に見えてたんだな。思いっきり、ふざけたガキなんて言われちゃってるし。
「う〜・・・暗闇にして攻撃なんて、そんなの卑怯だよ!」
すると、わら子が不機嫌そうな様子を見せたと同時に、幸運の気が暴走したのか相手の方では微妙に変な事が起こっていく。
「あぁぁ!?ズ、ズボンとパンツがぁ!!」
「ちょっ、見るなぁ〜!」
よし、今のを私はナニも見なかったぞ。椿に興奮してる時の狐2人のより貧相だったり・・・とかいうのは、やっぱり乙女的には言ったらアウトですよね。
「椿ちゃ〜ん・・・両手で隠してても、綾ちゃんと同じようにガッツリ指の隙間から見ているでしょ?」
「うわぁ!里子ちゃん!?そ、そんな事は・・・というより、他の相手は?確か、まだ2人くらい残っていた気がするけど・・・」
「うん、そいつらは上に殴り飛ばしておいたよ〜」
「えぇっ!?」
何か椿も見ちゃってたみたいだけど、こうして皆も頑張ってくれているお陰で、敵はドンドン減ってるみたいだな。
「むぅ・・・里子も修行をしていたなんて。でも、私だって氷の妖術を練習して、椿や綾の役に立てるように頑張ってる。いつかは隣に立ってみせるから・・・期待していて、綾」
「へっ、あ〜・・・うん、楽しみにしとくよ」
里子が壁ごと隠れてる相手を拳1発で吹っ飛ばしていく姿を見て、雪はジェラシー妬いたのか?
何か、さっきから私にピッタリ寄り添ってくるんですけど・・・。
「うっ・・・これは一体、何が・・・?」
「そういや、"くらやみ目"なんて妖怪も居たんだっけ・・・って、目は膝にあるんですかい」
「あっ、ごめんなさい。貴方を捕まえて利用していた人達は僕達が倒しましたから、もう安心ですよ」
「な、本当か!?本当に、私は解放されたのか!?」
「まぁ、そうかな・・・とりあえず、此処に居た連中は全員ぶっ飛ばしたし」
「そ、それなら"あの方"も頼む!この先に捕まっているから、助けてやってくれないか!」
くらやみ目がそう言った時、階段の方で大人しく隠れていた赤木会長が慌てて飛び出してきて、くらやみ目の両肩を掴んで問いただしてくる。
「それは、母・・・垢舐めですか!?」
「うぉ、おお・・・そうじゃ」
ここまで必死そうにする会長、今までで初めて見たな・・・母親を助けたかったんだから当然なんだろうけど、地味に根性あるじゃんか。これだと格好良くて、今後は変態会長なんて呼べなくなっちゃいそうだぞ。