私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾弐話 いつか戦うとは思ってたけど

 

それから私達は、くらやみ目の案内で地下の広くて白い通路を進んでいく。突き当たりの扉以外に他の扉が全然無いから、正に研究施設といった雰囲気だ。

 

「この部屋だ。垢舐めの妖怪は中に居るが・・・気を付けてくれ。ある男が妖具で見張りを作っている上、最近ここに出入りしている見知らぬ使い魔も待ち伏せしている」

 

そう言って、くらやみ目は向こうの扉を指差して立ち止まった。ハンドルでアチコチをロックしている船や潜水艦みたいな扉だから、これは確かに待ち伏せされてるのは間違い無いね。

 

あの中に居る奴、それが亰嗟の自称ナンバー2の2人目こと和月なのは確実として・・・此処に捕まっていた、くらやみ目ですら知らない使い魔は何だかヤバそうだ。

 

でも・・・これはヤバいというより、嫌な予感に近い気がする。

 

「よし・・・皆、準備は良いですか?」

 

そう思いつつも、椿の一声に私も皆と一緒に頷く。

すると、その後に三間坂さんが再びタバコの煙をもうもうと出して、それを扉の隙間から中へと送り込みだした。

 

その様子に、椿は首を傾げながら三間坂さんへ尋ねる。

 

「三間坂さん、それは?」

 

「あぁ、これは牽制みたいなもんさ。効かないとは思うが、効果範囲の限られた催涙効果のある煙だ。強い濃さがある代わり、1人しか包めないがな」

 

「なるほど、ここならではって感じですね」

 

そうして煙が全て部屋の中へと入っていったと同時に私が扉を開けて椿が飛び込もう――とした瞬間、なんと部屋の中から椿と入れ替わりにゴゥと突風のような勢いで誰かが扉から飛び出し、それと同時にバタン!と扉も閉められてしまったのだ。

しかも、その一瞬で扉に細工でもされたのか固く閉ざされて開けられなくなっているらしい。

 

そんな突然の出来事に、美亜は扉の向こうにいる椿へ叫ぶ。

 

「えっ、嘘でしょう!?ちょっと椿!大丈夫!?」

 

『大丈夫です!どうやら相手は、複数での戦闘を避ける為に僕達を分断したみたいです!こっちは僕に任せてください!』

 

「分かった!椿、気を付けてよ!!」

 

そう叫んでから、私は扉から出てきた相手が飛んで行った反対側の突き当たりへと振り返る。

 

――そこに居たのは、かつて私が使役していた小次郎だった。あの単眼で細身のロボットみたいな姿は見間違うハズもない。

 

「久しぶりだな、綾よ・・・その姿、やはり本来の力を取り戻しつつあるという事か」

 

「まぁ、私だって半年間で何もしなかった訳じゃないしね。いつか戦うとは思ってたけど・・・こんな所で待ち伏せてたのには少しビックリしたかな」

 

「皆には出来れば降参してもらいたいものだが・・・その様子では無理そうだな」

 

「そういう訳にはいかないよ、小次郎。私だって、もう守るのは椿だけじゃないんだ」

 

そして、ゆっくりと振り返りながら小次郎は刀を私達に向けて中段に構え直してきた。

 

「それならば、仕方ない。ここは力ずくで――っ!?」

 

・・・でも、もう私は相手が誰であろうと立ち止まるつもりはないよ。

 

すっかり小次郎が構えるより早く白虎の儀礼衣装に変身して、防御をしにくい懐へと飛び込む。

そのまま懐に拳のラッシュを一瞬で叩き込むけれど、それを小次郎は左脚だけで捌ききられて距離を取られてしまった。

 

「くっ・・・疾い!」

 

「悪いが、綾の持っている力については私には全て調べがついている。だから、その対策など造作もない事だ」

 

小次郎に合わせて私も一旦距離を取って皆の所に着地すると、すぐ雪や楓が心配そうに未だ開かない扉から駆け付けてくる。

 

「綾!大丈夫!?」

 

「大丈夫だよ、雪!」

 

「ごめんなさい、綾姉さん!まだ扉は開かないっす!」

 

「くっ、やっぱりか!そっちは里子や三間坂さんと協力して、扉を開けるのを続けて!私は美亜と一緒に小次郎を何とかする!」

 

「「分かった(っす)!」」

 

そう言って扉へ戻っていくのを見送りながら、美亜は私の隣に出ながら大きくため息を吐いてきた。

 

「はぁ、綾・・・アンタねぇ、こんな奴を相手に私が役に立つと思ってるの?」

 

「こんな奴、だからこそだよ。美亜、小次郎は1対1なら殆どの相手に太刀打ち出来る腕を持ってるんだ。それなら、私は勝つ為に使える手段を取るまで!」

 

「ふぅん・・・椿もそうだったけど、アンタも変わったわね。良いわ、ここは協力してあげる。だけど綾、後で変な文句は付けない事ね!」

 

すぐさま美亜は地面に右手を付き、そこから妖気を流して呪術で植物の蔦を地面から発生させる。

そして、それを一斉に小次郎の手足へ向けて放った瞬間に私も再び懐へ突っ込むが――

 

「甘い――飛剣"燕返し"!!」

 

「えっ・・・うぐぁっ!?」

 

なんと小次郎は刀を正面に構えたまま、一瞬で"燕払い"で美亜の差し向けた蔦を切り払い、それと同時に私を"燕打ち"で叩き落としてきたのだ。

勢い良く突っ込んでしまったが為に燕打ちを避けきれなかった私は、それを左腕に受けてきりもみしながら壁や床に激突してしまった。

 

「そんな!一瞬で蔦も同時に迎撃するなんて・・・綾!」

 

「これくらい、何て事ない!あの野郎、とんでもない隠し玉を持ってやがるぞ!」

 

「ふっ、これが拙者の持つ奥義たる飛剣の極地。いかなる飛び道具や不意打ちであろうと、この"燕返し"による同時攻撃の疾さの前では赤子の手を捻るようなものだ」

 

そう言いつつ小次郎は美亜の正面へ向けて刀を構え、私を挑発するかのように背中を無防備に晒してくる。

 

・・・まるで後ろから襲われても簡単に迎撃出来ると言わんばかりだ。だったら――

 

「美亜!もう1回正面から呪術をブチかましてやれ!妖異変化"怒髪天・朱雀"展開、火雷神の気砲(ほのいかずちのかみキャノン)!!」

 

「ちょっ、こんな狭い通路で!?あ〜、もう!!」

 

突き出した両手から放った私の炎と雷の熱線、先程より3倍近く太くなった美亜の蔦、この2つの強烈な前後からの攻撃なら小次郎を挟み撃ちに出来る――と思った瞬間。

 

「聞いていなかったのか?私の"燕返し"は、いかなる攻撃であろうと凌ぐ最大の防御であると――ふん!!」

 

それらは小次郎を避けるかのようにして節々に分かれ、その熱線や蔦の全てが相打ちになるかのように衝突して大きく煙を上げながら消え去ってしまった。

 

「なっ、馬鹿な!?」

 

「今の攻撃すら、全て切り払ったというの・・・?」

 

「おおかた通路を全て埋めつくす程の熱線と植物の蔦で押し潰すつもりだったのだろうが、私の凄まじい剣撃から発せられる衝撃波は想像が付かなかったのか?」

 

「なるほど・・・あれだけ疾ければ、刀から出る衝撃波でバリアみたくなってるって訳かよ」

 

「えぇ!?じゃあ、あの攻撃はマッハを超えてるって事じゃない・・・それに衝撃波をバリアにしているとしても、それで自分が傷つかないのは変よ!」

 

「ふん、だからこそ2人は見立てが甘い。私は飛剣の奥義を全て修練したのだ、刀から出る衝撃波など自在に操れるも同然に決まっている」

 

そう言いながら、煙が晴れた先で小次郎は刀を振り抜いた状態からゆっくりと私の方へと構え直した。

 

「次は手加減も何も無しで来い。私を・・・そして綾花を救いたければな。その意味が、今の綾ならば分かるだろう?」

 

「えっ?それって・・・どういう事なのよ?一体、アイツは何を言っているの?」

 

その小次郎の言葉に美亜は訳が分からないと言いたげに首を傾げるが、私は綾花に何があったのかを嫌でも予想がついてしまう。

 

「やっぱり・・・"そういう事"かよ。もう小次郎は倒さないといけない敵になったんだ。美亜、ここからは本気でやるぞ!」

 

「くっ!何が何だか分からないけど、とりあえず分かったわ!どの道、コイツを撃退しない事には椿とも合流させてもらえなさそうだしね!」

 

そして美亜が呪術へ妖気を込めていくのと同時に、私も麒麟甲を手の平で発生させた雷から召喚し、それに"神妖の力"を流して"鈍色の狐"へと変身する。

 

「その姿・・・やはり、既に使えるようになっていたか。烏森が調伏させ人の魂へ込められるように仕上げた"封印されし古の妖狐"の力、それを引き出せるようになるとはな」

 

「ああ、その通りだ・・・さぁ、一転攻勢タイムといかせてもらうよ!!」

 

何処か憐れむように言った小次郎を圧倒するつもりで私は雷の迸る両手の拳を合わせ、身体の周りにバチバチと迸るように跳ねる浄化の雷を纏った。

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