私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾陀話 だからこそ諦めたくない

 

賀茂様から話を受けた私達は普段から使っている雲操童に乗って、邪気が発生しているという北区の船岡山公園へと降り立つ。

 

近くに大徳寺や建勲神社があるから、もしかしてとは思っていたけれど・・・まさか辺り一面、亡霊や怨霊のオンパレードになってるなんて予想外だ。

そして、その公園の異様な光景に椿も狐2人も呆然としてしまっていた。

 

「何これ・・・一体、何が起きているの!?」

 

『なんじゃ、この数は・・・此奴ら、何処から湧いて出たというのだ?』

 

『ちょっとやそっとの数ではないな・・・まるで、棄てられた古い墓場かと思うくらいだ』

 

「もしレイちゃんを連れて来てたら、必死に成仏させようと無理してたかもね・・・今回ばかりは、連れて来なくて正解だったかも。それにしても・・・こんな沢山の霊、本当に何処から来たんだ?何かあるといっても、あまり知られてない史跡だろ?」

 

そう私が呟くと、椿がハッとした顔で思い出したように私や狐2人の方を振り向いた。

 

「史跡・・・そうか、綾ちゃん。確か此処は源家の誰かが子供と一緒に処刑された場所の上、城があった頃には"応仁の乱"で戦地になって多くの人が亡くなっているんだ。そうなると、これだけ多くの亡霊が出てくるのも頷けるかな」

 

「うへ〜マジか・・・って、椿!後ろ!!」

 

『『なっ!危な――』』

 

「神風の禊ぎ!!」

 

私や狐2人の心配するよりも早く、背後に迫ってきていた落ち武者や農民の亡霊を、椿は事投げもなく浄化の風で一気に吹っ飛ばす。

 

「さっ、皆。新手が来る前に行きますよ」

 

『む、むぅ・・・だが、この公園の中央に何か居るな』

 

「うん・・・分かっていますよ、白狐さん」

 

その椿の表情で、私は到着してから感じ続けていた妖気の正体に確信を持った――持ってしまった。

でも椿にも狐2人にも、これから私が何をするつもりなのかは隠すつもりだ。この機会を逃してしまえば恐らく、きっともう"あの人"を助けられなくなってしまうかもしれないからだ。

 

『椿!綾!』

 

「あっ・・・!」

 

「細氷拳!!ふぅ、危なかった・・・椿、油断しているヒマは無いよ」

 

「う、うん・・・ごめん、綾ちゃん」

 

そう謝りながら凍らせた亡霊を浄化させる椿に、私の心は親友の気持ちをも踏みにじっているのではないかとチクリと痛む。

椿だって、公園の中央で待ち受けている妖気の正体が誰かなのかは既に見当が付いているハズだ。きっと椿も、私と同じように助けようとするハズだ。

 

だから・・・ひょっとしたら私が何をしようと考えているのかも、もう椿にはバレているのかもしれない。

 

「神風の禊ぎ!はぁぁあ!!」

 

「稲妻雷轟蹴!でゃぁあ!!」

 

そんな事を考えながらも、私は椿と共に先頭へ立って亡霊達を浄化しながら、公園の入り口から続く坂道を突き進んでいく。

 

でも、その亡霊達は浄化される時には全て怨嗟か謝罪の声を上げて消えていった。

明らかに苦しみながら彷徨っていたハズにも関わらず、こうして私達に迷わず襲いかかってきたという事は・・・どうやら、この先に居る妖気の本体が亡霊達を操っていると見て間違いなさそうだ。

 

『椿、どうした?さっきから様子がおかしいぞ?』

 

『綾も、そんなに無言で急ぐように動くなんて・・・一体、2人共どうしたというんだ?』

 

それでも、やっぱり狐2人は椿どころか私も良く見ているよ。ずっと隠しておくつもりじゃなかったんだけど、もう公園の中央は目の前なんだ。

 

それに・・・その大きな広場にある石造りの舞台には、やっぱりというか私も椿も会いたかった人の姿があった。

その人物は、髪が腰元まで伸びて口元には鋭い牙も生えてはいるけど、それでも私と椿は一目で認識する。

 

「やっぱり、あれは――」

 

「湯口先輩・・・」

 

『なっ!あやつは!?』

 

『靖か・・・なるほど、椿も綾も妖気で分かっていたな?』

 

「ごめん、2人共・・・どうしても、途中で止められたくなかったんだ」

 

「僕も、綾ちゃんと同じです。それに、白狐さんと黒狐さんには無茶をして欲しくなかったんです」

 

何故、というまでも無い・・・だって私も椿も、此処には湯口先輩を助ける為に来たんだから!!

 

「悪いけど、先輩は・・・私がやる!!」

 

「うん!行くよ、綾ちゃん!!」

 

『待て、椿――』

 

すると、そう言って止めようとする白狐さんの腕を黒狐さんが後ろから引き止めた。

 

『白狐、よせ。椿と綾はもう、それだけ立派になっている。それならば、俺達が出来る事は何だ?』

 

『しかし、黒狐よ。それでも、これは・・・』

 

『ああ、分かっている。だから俺達がいるんだろう!』

 

その黒狐さんの言葉に、私と椿は感謝と罪悪感の入り交じった複雑な気持ちの苦笑いを浮かべつつ、"神妖の力"を2人同時に解放して先輩の方へと向き直る。

 

「湯口先輩!!」

 

「聞こえているんでしょう!?答えて、僕達の言葉に!!」

 

そして、焦点が合っていない妖魔人となった彼の目に、強い眼差しを向けて強く呼びかけるが――

 

「金狐、鈍色の狐・・・神妖・・・来たな、妖狐の椿!そして、呪われし霊能力者の綾!」

 

「なっ・・・うわっ!?」

「う、くっ・・・!!」

 

そう先輩が叫びながら振り下ろした手から、ギリギリで避けた私達でも耳がキーンとする程に激しい衝撃波が放たれた。

 

「こなくそ〜、やっぱり簡単に言葉は届かないか!」

 

「それに、これは投げた石の超音速による衝撃波・・・まさか、ソニックブーム?」

 

嘘だろ・・・たった石を投げただけで今の衝撃波を放てる力を、妖魔人となった先輩は寄生している妖魔の妖気で引き出せるようになったって事かよ。

それに意識も寄生妖魔に乗っ取られていて説得も難しいし・・・でも、だからこそ諦めたくない。

 

私は、まだ先輩が完全に妖魔人の力に飲み込まれていないって、そう信じているんだ!

 

「自分を取り戻して、湯口先輩!!私だよ!綾だよ!寄生する妖魔なんか、すぐ身体から追い出して――」

 

「ふん、何を言っている?これが、俺だ・・・」

 

「なっ!?」

 

その瞬間、湯口先輩は椿の目の前に高速で移動して、私が気付いた時には大きく口を開けていた。

 

「――壊音波」

 

「うっ・・・!」

「み、耳が・・・!」

 

「高周波の音で一瞬にして失神させるつもりだったが、2人共に耐えるか。だが、その威勢がいつまで持つかな?」

 

「止めて欲しけりゃ一緒に来いって?そんなのお断りだ!稲妻風凍槍!!」

 

「僕も綾ちゃんと同じく、今の湯口先輩なんかには着いていきません!金華浄焔!!」

 

何とか耳を塞ぎながら私と椿は片手で浄化の力を込めた一撃を放って、閃空と戦った時のように取り憑いた寄生妖魔そのものにダメージを与えようと試みる。

 

「・・・ふん」

 

「えっ?効いてな――ぎゃぅ!?」

「椿!この――うあぁっ!!」

 

だが、同時に放たれたそれを湯口先輩は胸板で受け止めて全く効いていないかのように打ち消してしまうと、そのまま今度は両手をメガホンのように口元へ添えて強化した爆音の衝撃波で私達を大きく空へと吹っ飛ばしてきた。

 

クソ・・・今の重い一撃、もう先輩は私達に容赦すらしなくなったっていうのか?

 

『椿!!綾!!』

 

その時、宙へ飛ばされた私と椿を白狐さんが尻尾でキャッチしてくれて、そのまま上を向いて相手の頭上にいた黒狐さんへと叫ぶ。

 

『倒そうとはするなよ、足止めだけだ!』

 

『分かっている!そもそも倒せるとは思っていないしな!――妖異顕現、黒雷電狐(こくらいでんこ)!!』

 

黒狐さんが右手を狐の形に突き出すと、そこから激しく黒い雷が発生して狐の姿を取って湯口先輩に襲いかかっていく。

 

「ふん・・・!」

 

だけど、湯口先輩は再びソニックブームを起こして黒狐さんの放った妖術をかき消してしまった。どうやら、あのソニックブームには生半可な妖術なら何とか出来るくらい妖気が含まれているみたいだ。

 

それでも黒狐さんは今ので足止め出来るとは考えていなかったようで、そのまま今度は左手を上げて次の妖術を発動する。

 

『隙ありだ!妖異顕現、極黒雷(きょくこくらい)!!』

 

すると、その瞬間に上空から鋭く巨大な黒い雷が落ちてきて、私と椿がハッとする間もなく湯口先輩に直撃した。

 

「よし、これなら行動を――って、えぇ!?」

 

『な、何だと!?』

 

しかし、その黒雷の電撃に縛られたかのように見えた先輩は軽く振りほどくような仕草をしたかと思うと、いとも容易く黒雷を霧散させてしまったのだ。

 

『馬鹿な・・・こんなに強くなっているとは、信じられん』

 

「まだです、行くよ綾ちゃん!金華浄槍!!」

 

「ああ、怯んだら負けだもんな!稲妻雷轟蹴!!」

 

そこを私と椿で立て続けに先輩へ浄化の力を纏った攻撃を見舞う。もちろん急所を外した、一撃で殺してしまわないよう先輩の肩や脚を狙った攻撃だ。

 

だが、そのコンビネーションを効かせた攻撃も、両方とも素手で受け止められてしまった。

 

「あっ・・・し、しまった!」

 

「まさか、素手で掴むなんて・・・それに何で、僕の浄化の炎も綾ちゃんの浄化の雷も効かないんですか!?」

 

すると椿の尻尾や私の脚を掴んだまま、先輩が呻くようにして声を漏らしてくる。

 

「優し、過ぎるぞ・・・殺、せ。椿、綾」

 

「えっ?湯口先輩!?」

 

「まさか・・・まだ意識を!?」

 

だけど、その先輩の言葉のお陰で私は諦めかけていた助けの希望が微かに見えた気がするよ。

この先輩の状態なら、まだ"あの方法"で元の先輩を取り戻す事が出来るかもしれない!

 

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