私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弍拾捌話 こんな所で諦めたくない!

 

私と椿は湯口先輩に攻撃を受け止められたまま、それぞれ片手でこっちを引っ張って連れていこうとする。

 

だけど、それを黙って見過ごす狐2人ではないので、私と椿は2人からも引っ張られて地味に痛い状況だ。というか、逆に引きずられているから少し分が悪いし・・・いや、でも椿が何か思いついた顔をしたぞ。

 

「いたた・・・白狐さん、ちょっと離してくれませんか?流石に尻尾が・・・それに綾ちゃんもキツそうです」

 

『しかし椿、そんな事をすれば――』

 

「大丈夫だ、白狐さん。あの椿の顔、あれは何か策があるハズ!」

 

「うっ、やっぱり綾ちゃんにはバレてましたか・・・ええ、そういう事です」

 

そうして引っ張られている内に、私も椿も作戦の準備が整う。

先輩から感じられる妖気の感覚から、寄生している妖魔は体内にいるハズだ。それなら、この状況を利用して逆に相手の本体を引きずり出せる可能性は少しだけでもあるだろう。

 

『ぬっ、椿と綾がそう言うなら・・・黒狐!2人のフォローは頼むぞ!』

 

『おう!任せろ!』

 

その黒狐さんの返事と同時に白狐さんは私と椿を掴んでいた手を離し、それによって湯口先輩は引っ張り合いをしていた状態から急に手を離された事でグンッ!と大きく後ろへと仰け反った。

 

――そこが椿と私の狙っていたチャンスだ。

 

「はぁぁ!!金華狐狼拳!!」

「らぁぁ!!卜伴細氷拳!!」

 

「なっ!?」

 

以前に閃空の寄生妖魔へダメージを与えられたのなら、この浄化の力さえ通れば湯口先輩の寄生妖魔も少しは引き剥がすだけの余裕が出来るハズだ。

そうして私と椿は2人同時に、先輩へと拳を叩き込んだ。

 

「なっ・・・防いだ!?」

 

そう簡単には向こうも耐えてくるか・・・でも、それは私の予想通りだ。すぐに私は、拳を放っている方とは反対の手に浄化の力を集めていく。

 

「ふん・・・あま――くっ!?」

 

「張星柳、業焔凰翼!!先輩、1回防いだ程度で油断すんなよ!」

 

「ナイスです、綾ちゃん!金華浄焔!!」

 

「ぐぉぉぉっ!!」

 

私の左手から放った炎の翼で怯んだ瞬間に椿が浄化の炎を放ち、遂に先輩は私達を掴んでいた両手を離す。それでも、椿によって身体へと放たれた浄化の炎なら――

 

「この、生温い!!」

 

「ぐ・・・っ!!」

「くっ・・・!!」

 

と思っていたのは早計だったな。

まさか浄化の炎を耐え切って、しかも私と椿の脚を再び掴んで地面に叩きつけようとしてくるなんて・・・でも、そう簡単にいかないのは向こうだけじゃなく私達も同じだ!

 

「神風の鉄槌!!」

「稲妻雷霆蹴!!」

 

「ん?――ちっ!」

 

両手で地面に着地した瞬間に私と椿は同時に神術を発動し、浄化の風と雷で湯口先輩を一瞬だけ後退りさせる事に成功した。

それに、今ので先輩の手を離させて少しでも距離を取れたなら、まだ追撃出来る!

 

「黒槌岩龍撃!」

「卜伴祭繰龍!」

 

そして続け様に放った、私の風の妖術で加速した椿の龍みたいな形をしたハンマーの妖術によって、遂に湯口先輩を吹っ飛ばせた。

 

だけど、あの時に先輩から聞こえた声・・・あれは間違いなく、寄生妖魔の意識からじゃなく僅かに残った"先輩自身"の声だ。

あれなら・・・まだ完全に寄生妖魔に乗っ取られていないのなら、きっと私の持つ力でも助けられるかもしれない。

 

「げほっ・・・くそ、無駄な抵抗を・・・折角、父から亡霊を借りてきたというのに、この有様とは・・・」

 

「先輩、頼む。そんな負なる者なんかに負けるんじゃねぇ!」

 

「僕と綾ちゃんが浄化の力で弱らせますから、その身体から妖魔を追い出して!」

 

「黙れ・・・さっきから誰に言っている。俺は妖魔人、空魔(くうま)だ。あの4人のトップとして君臨する俺に、一体お前らは何を言い出すんだ?」

 

でも、先輩の意識も妖魔に喰われかかっている・・・だけど、こんな所で諦めたくない!

 

「湯口先輩!!頼むから――くっ!妖異変化"有頂天・白虎"、展開!」

 

「黙れ・・・人間と妖怪の間を取り持とうとする、憐れな小娘如きが」

 

クソッ、また例のソニックブームかよ・・・スピードに優れる白虎の儀礼衣装へ変身していなかったら、私も椿も危なかったぞ。でも、まだ先輩と妖魔との意識は融合していないみたいだな。

 

「はん、憐れだって?それはどっちなんだろうな。"負なる者"に操られて自分の目的も何もなく操り人形になっている、そんな妖魔と比べたらよ?」

 

「黙れ!亜里砂様の・・・華陽様のお心を分からずに、それ以上ふざけた戯言を抜かすな!」

 

「綾ちゃん・・・!」

 

わざと煽ってはみたものの、やっぱり簡単には先輩の意識を表面には引っ張り出せないか。

 

『綾よ、どうする?彼奴を足止めするには、俺と白狐の力では少し厳しいが・・・』

 

「いや、それなら考えがある。黒狐さん、椿と白狐さんと一緒にフォローをお願い」

 

『ぬっ・・・分かった』

 

華陽の目的が元の姿に戻るんだか何だかは知らないけど、私には私の目的・・・先輩を取り戻す。

そう覚悟した私は、思いっきり姿勢を低くして全身に妖気と"神妖の力"を巡らせていく。

 

「悪いけど、椿・・・ちょっと離れてて」

 

「えっ?でも、綾ちゃ――」

 

「危ないから、早く!ここからの足止めは私に任せて!!」

 

その異変をいち早く察知した椿を引き下がらせ、私は湯口先輩を――取り憑いている妖魔をキッと睨みつけた。

 

「ふん、相容れぬ考えの者同士・・・それに是非をつけるのは、やはり力のみというか」

 

「好きに吠えてろ。たった1人の人間も支配出来ない、地味な妖魔くずれが」

 

その刹那に私はギリギリまで押し潰したバネを一気に解放するが如く全身の力を爆発させ、先輩がソニックブームを放つよりも早く、木々を蹴って頭上へと到達して側頭部を蹴りつける。

 

「ちっ!ハエのようにブンブンと!」

 

「悪いな!そっちはハズレだ!!」

 

それを受け止めようとした先輩の動きを察知し、私は蹴りを放った方とは逆の脚で稲妻雷霆蹴を発動して掴もうとした手を払い、そのまま再び木々を飛び移って今度は氷霰剱を地面に突き立てながら着地する。

 

「ぐっ・・・ウロチョロと、ちょこざいな!」

 

「背中に食らっとけ――細氷拳!!」

 

「ぐぅおっ!!ぉぉぉお!?」

 

その連撃の最中、なんと今度は上空から黒狐さんも雷の妖術で加勢をしてきてくれた。

 

『妖異顕現、極黒雷!!』

 

「おぉぉぉぉ!?くっ、この・・・」

 

「ごめんなさい、先輩・・・はぁ!!」

 

そして、それと同時に細氷拳を放った私の後ろから素早く椿が飛び出してきて、振り向いた先輩の腹へと御剱を突き刺して浄化の炎を纏わせた。あの炎の勢いの弱さ・・・あれなら先輩が自分の身体から寄生妖魔を追い出す手助けになるハズ!

 

「うぉわぁぁぁあ!!」

 

「お願いです!僕の浄化の力で弱った妖魔を・・・先輩の気力で、精神力で追い出して!!」

 

『いかん!!2人共離れろ!!』

 

・・・しかし、その瞬間に白狐さんが私と椿を抱き抱えて先輩から引き離したかと思うと、なんと私達のいた場所が激しい爆発を起こしてクレーターになってしまったのだ。

 

「――危なかったな、我が息子よ」

 

そして、その砂煙の中から現れたのは・・・私達にとって最悪な相手の増援である、筋骨隆々な姿となった玄空の姿だった。

 

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