私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾壱話 雷獣さんや、ねぇ今どんな気持ち?

 

あれから結構な昼寝を堪能した私と椿は、夕飯の時間が近づいた時に唐突な里子からのダイブで目を覚ます。

 

「いでで・・・ま〜た私達の上にダイブしてきたのかよ里子〜」

 

「げほっ、げほっ・・・里子ちゃん、普通に起こしてください・・・」

 

「え〜、でも・・・白狐さんと黒狐の尻尾に包まれていて、2人共そのまま朝まで寝そうな雰囲気だったし。それに私ともあろうものがありながら、こんな――ふがっ!?」

 

「何を言っているんですか、何を〜」

 

また里子が変な事を口走りそうになったので、椿は影の妖術で里子の鼻をギュ〜ッと摘んでいた。

 

既に夕飯も出来ているみたいだし、とりあえず私達も向か――おうと思ったけど、そういえば狐2人が椿の尻尾を掴んでる状態だな。

 

これはもう毎度お約束みたいな感じだし、狐2人も椿の反応を楽しみたいが為に絶対わざと寝たフリをしているのは分かっているんだ。

 

「はぁ・・・仕方ない。"鈍色の狐"に変身するか」

 

「そうですね、綾ちゃん。僕も"金狐"の状態になって――」

 

『よし椿に綾よ。ゆ、夕飯の時間だな・・・行くぞ』

 

『モタモタしていたら皆に全て食べられてしまうからな、うむ・・・』

 

はい、やっぱりというか一瞬で起きました。

 

というか、私と椿が変身するって言った瞬間にババッと起きて夕飯に向かおうとするんなら、狐2人は最初からイタズラなんてしようと考えるんじゃありません。

 

◇◇◇

 

そうして起きてきた私達は、地下の大宴会場で皆と合流して一緒に夕飯を食べている。

 

もちろん美亜や雪、楓にわら子もチーム全員が無事な事も確認したよ。大丈夫だとは信じていたけど、それでもやっぱり心配なものは心配だからね。

 

「ふふ・・・海坊主ったら、こ〜んなに沢山お魚取ってくれちゃって〜。お腹が減っていたから助かるわ〜」

 

「あれ?美亜達も任務じゃなかったのか?」

 

「結構ご機嫌みたいですけれど、何処に行っていたんですか?」

 

「ええ、ちょっとお魚を捕りにね。その為に雪や楓、座敷わらしにも着いて来てもらっていたのよ〜」

 

「「ズコ〜!!」」

 

――って、そりゃあ皆無事な訳ですよね!下手に心配して損したわ!

 

妖界でアホな雷獣が馬鹿デカい妖具を使って暴れようとしてたりで私達の方は大変だったっていうのに、なんというか相変わらず皆してマイペースというか・・・。

 

「ふーん、ふーん?それじゃあ、美亜は海坊主とデートだったんだ〜――おわっとぉ!」

 

「綾〜アンタねぇ〜!」

 

「おぅ今コンガリ焼かれたトビウオ投げてきやがりましたか?妖気たっぷりで新鮮な妖怪食の魚を人の口に投げてはダメだって教わらなかったんか〜?」

 

そう私と美亜が視線をぶつけて火花を散らしていると、わら子が「落ち着いて落ち着いて」といった感じのジェスチャーで宥めてくる。

 

「まぁまぁ美亜さん、今回は私達が悪いよ。椿ちゃんと綾ちゃんが頑張っていた他所で、こっちはお夕飯用のお魚を捕りに出かけていたんだから。だから、ここは綾ちゃんもとりあえず・・・ね?」

 

「あ、あぁ・・・わら子がそう言うなら、私は何も言わないけど・・・ごめん、美亜」

 

「はぁ・・・確かに私も悪かったわよ。アンタ達の方が大変な事になっていたもんね。だから、ほら・・・アンタと椿の方、お魚を多めにしているでしょう?」

 

美亜がチョンチョンとつついてくる方に私と椿が視線を向けると、そこにはウニョウニョと虫みたいに動いている山盛りの妖怪お刺身が・・・。

 

「えっと、綾ちゃん?大丈夫・・・?」

 

「あ、あはは・・・はぁ〜・・・マジか」

 

うん、やっぱり美亜は私を弄ろうとしてんなコレ。

 

私がイモムシとかグネグネ動くような生き物はダメだっていうの、とっくの今までに知ってるだろ〜が!!勿体ないから何匹かは食べるけど!!

 

そうして苦笑いする椿の隣で溜息をついていた時、私達の居る大宴会場の扉が半ば乱暴に開かれて、誰かがゼェゼェと息を切らした様子で入ってきた。

 

此処に来るという事は妖怪で間違いはないのだが、そこに入ってきたのは予想外にも予想外な奴だったのだ。

 

――その扉の前で逆立てた髪の1本1本から2つに分かれた尾の先まで迸らせた電気を纏っているのは、誰が一目で見ても分かる程に傷だらけでボロボロな姿となった、新たなセンター長にして亰嗟の手のひらで転がされまくった雷獣"さん"だった。

 

どうやら雷を纏ったスピードで、何とか此処まで逃げ延びてきたらしい。

 

「鞍馬天狗、達磨百足・・・力を貸せ」

 

「開口一番がそれかの?違うじゃろう?」

 

「ああ、全くだ。折角の食事を邪魔しないでもらいたいな」

 

そして案の定というか、椿の爺さんも達磨百足さんも雷獣さんの心配は無しだ。

 

まぁ・・・私も椿も以前の地獄の鬼から盛大にボコられたのに何とか逃げた姿を見たからか、雷獣さんなら別に大丈夫だろうって感じがあったくらいだし。

 

何せ、頼みの綱もとい切り札の『天雷』に乗ってて撃墜された上、血は止まっているとはいえ腹には大根1本分の大穴が空いてるのに普通に生きてんだもの。どこまでタフなんだって尊敬の念すら出てくるわ。

 

「くっ・・・!このまま亰嗟の、茨木童子の思い通りになっても良いのか!」

 

「そうではないわ、雷獣。儂らに助けを求めるのならば、それなりのケジメをつけんか。そもそも、お前さんを此処に入れたのも先程の件があった事と、その怪我ゆえにじゃ。しかし、それでも頭を垂れずに今の態度を続けるならば、此処から追い出すぞ」

 

あ〜、そういえば家の周りには浮遊丸を含めた見張りの妖怪が居たんだっけね。その妖怪達が雷獣の事を何も言わずに通してたのは、「もし来たら通せ」と爺さんが前もって言っていたからって訳だ。

 

「ちっ・・・もう良い!」

 

でも、そこまで気遣ってもらってるのに頭を下げないのはプライドが高いってレベルじゃないぞ。

しかも、そのままケジメもつけないで背中を向けて帰ろうとしてるし・・・こうなったら、仕方ない。

 

――そして私と椿は互いに顔を見合わせて頷き、雷獣さんに向けた言葉を放つ。

 

「雷獣さん、貴方は一体何を焦っているんですか?」

 

「何?」

 

「ああ、どう見ても焦ってるだろ。ちょっとはさ、こう落ち着いて物を考えられないのかなって思ってさ」

 

そんな言葉が図星だったのか、雷獣さんは苛立たしげに振り向いて私達の方を睨んできた。お〜怖い怖い・・・ま、目の前の杏仁豆腐の甘い香りにすら負ける迫力じゃ全然怖くも何とも無いけど。

 

「この、ガキ共が・・・アイツらは妖界を地獄に変え、自らのものにしようとしているんだぞ!これが焦らずにいられるか!!」

 

「ふ〜ん・・・その為に僕達に酷い事をしたのですか?」

 

「ちょっとは周りを見てみなよ、雷獣さん。お前が乱暴働いてくれたせいで、此処に居る妖怪のどれだけが大変だったか分かってるのかよ?」

 

「うるさい!!貴様らみたいに頭が沸いている奴らに、とやかく言われる筋合いは無い!俺は俺のやり方で、妖界を守ろうとしているんだ!文句あるか!!」

 

「あっそ。それじゃ、私達は私達なりに私達の世界を守らせてもらうだけだから」

 

「ええ、貴方なんかの手を借りるまでもありませんよ・・・負なる者」

 

そう言って私と椿はそれぞれ、"鈍色の狐"と"金狐"の姿となって雷獣さんへ威圧のプレッシャーをかける。

 

こうされてでもケジメをつけられないなら、もうセンター長としてどころか妖怪としても半人前だぞ――という意味を込めて、ね。

 

「ぬっ・・・!」

 

「貴方はやり方を間違えたんです。それなのに、まだ貴方は自分が正しいと思っているのですか?」

 

「もし今もそう思ってるんなら、その力で私達を倒して証明してみなよ!」

 

その私達の言葉に雷獣さんは、とうとう苛立ちを爆発させたかのように腹の傷を押さえていない方の手に雷を溜めていく。

 

「小娘共が・・・図に乗るなァ!!」

 

だけど、そうまでして放ってきた雷獣さんの雷も、今の私達にとっては簡単に対処出来る代物でしかない。頭に血が上っていて、そんな事にすら相手は気付かないようだ。

 

「――術式吸収、金華浄槍」

「――術式吸収、稲妻雷轟蹴」

 

そして私は椿の尻尾の槍と共に、雷獣さんの喉元に強化した雷を纏わせた踵を突きつけた。

 

「くっ・・・うぅ・・・!」

 

雷獣さんや、ねぇ今どんな気持ち?

怪我をしてるからとはいえ、ここまで自分の本気の力を使ったのに、簡単に打ち消される所か吸収されて突きつけられているんだよ?

 

「ふん・・・2人共、まぁまぁだな」

 

あと酒呑童子さんは少し満足げに笑わんでください。地味に恥ずかしくなってくるし、こんな程度じゃ私達はまだまだ修行途中だよ。

 

「クソ!こんなガキ共に!」

 

お〜お〜キレてらっしゃるキレてらっしゃる。私も椿も、もう妖怪の世界じゃ立派なんてモンじゃないくらいに強くなってるのが、そんなに気に食わんのか?

 

すると、悔しそうにしている雷獣の間へ立つように割って入りながら、厳しい表情のままな椿の爺さんが奴に話しかける。

 

「雷獣よ。お前さんがやった事を、儂らは無かった事には出来ん。しかし・・・それを踏まえてもなお、儂らと協力したいと言うのなら許してやらん事も無い。だが、その場合は儂らの下にお前さんがつく事となるがな」

 

やっぱりというか・・・うん、そうなるのが当たり前ですよね。私や椿、それに家の皆へ酷い事をしてきたんだから、それなりに皆から扱き使われるのは覚悟しとくべきだよ。

 

だけど雷獣さんは納得すら出来なかったらしく、私達を睨んだまま――たった一言。

 

「ふん、死んでもごめんだな」

 

そう言った後に雷獣さんは雷となって、捕まえようとした皆の手から逃れながら再び逃げ去っていった。

 

――そのついでに地下を貫通するようなデカい穴を天井に空けてな!!本当コイツ最後の最後まで最低だ!!・・・まぁ、その穴はすぐにぬりかべさんが直しだしてくれたから何とかなりそうではあるけれど。

 

「全く、雷獣よ・・・分かっとらんな。儂らも何もしていない訳ではない。情報収集や的確な反撃の手段の考案、そのタイミングを図っとるだけじゃ。今のアイツは、作戦というものをまるで分かっとらん」

 

そして直されていく天井の穴を見つめながら、爺さんは雷獣に言いきれなかった言葉を続けるように呟いた。

 

あれだけ家の皆が忙しそうにしていたのは、やっぱりそういう事だったんだね。

それなら、私達の方も時が来るまでに力を備えておいて、いざという時に全力を出せるようにしておかなくっちゃ。

 

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