私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾壱章 竜騰虎闘 〜戰の始まりは花火のように〜
第壱話 いくら何でも迫害ってレベルじゃねぇだろコレ!!


 

――それから数週間後。

 

ゴールデンウィークで世間が賑わう中、私達は次々にやって来る依頼を京都の端から端まで片付けていた。

 

もちろん妖魔人や十極地獄の鬼の襲撃に警戒しながらの日々ではあったけど・・・まるで嵐の前の静けさと思えるくらいに、最近は全く出くわしていない。

 

とはいえ、それでも妖界への十極地獄の侵食は進んでいるから早急に対策法が出され始めてる状況でもあるんだよな。

ちなみに現在、影の妖怪『影法師』の妖具による妖気の侵食能力を利用して、地獄に侵食された妖界の一部を侵食し返すってトンデモな荒業が行われていたり。

 

お陰で十極地獄の侵食は妖界全体の3分の1くらいで、こっちの"侵食返し"と拮抗して止まっている状態だ。それでも3分の1も取られてしまっている状況は私達にとって、妖界での行動を大きく制限されてしまっているから厳しい事に変わりは無いんだけどね・・・。

 

閑話休題。

 

そんな訳で私達は今、来るべき時に備えて色々な特訓を行っているんだけど――

 

「椿ちゃん!そこで足を引いて、腕はもっとしなやかに!」

 

「うわっと・・・こ、こう?」

 

「うん、そうそう!それで――あっ!ダメだよ綾ちゃん!そこはコブシをきかせる所じゃないよ!」

 

「えっと・・・〜♪、〜♫・・・こんな感じ?」

 

「OK!椿ちゃんも綾ちゃんも、だいぶ良くなってきた!」

 

まぁ、わら子からの舞いや歌に関する指導がキツいの何の・・・。

 

だけどコレ、私達の舞いや歌でも妖魔に対しては強力な武器に成りうるんだから、こうして何度でも上手く使えるようにしておく為の特訓なんだよね。

 

「座敷様、椿様も綾様も疲労しております。もうそろそろ・・・」

 

それでも玄葉さんは心配そうに、わら子へストップの言葉をかけてくる。

 

「え〜・・・椿ちゃんと一緒に舞える日が来るなんて思ってもみなかったから、もっと舞いたいのに〜」

 

「あはは・・・そういえば小さい頃、僕もわら子ちゃんと一緒に舞いたいって言ってたっけね・・・」

 

「へぇ〜!わら子と椿って、私が思ってた以上に仲良しなんだな〜・・・ちょっと羨ましいかも」

 

「そうだよ〜!だから、綾ちゃんの歌もあるのが嬉しくて嬉しくて!ね、椿ちゃん!」

 

ありゃりゃ、椿ったら照れ臭そうに笑っちゃって・・・と思っていたら、今度は虎羽さんからも注意の言葉が飛んできちゃったぞ。

 

「駄目です、座敷様。それに、椿様と綾様に来客が・・・」

 

「えっ?マジで?」

「ぼ、僕達に?」

 

一体、誰が来ているんだろう?でも、お客さんが来ているっていうなら今は舞いと歌の練習は仕方ないか。

 

「ごめんね、わら子ちゃん。舞いの練習は、また今度ですね・・・」

 

「うん、しょうがないよね〜・・・だけど最近は2人共、人気者だね」

 

「はは、誰かさんのお陰でね〜」

 

いやはや・・・雪が私や椿のファンクラブを一躍有名にさせてしまっていたから、こっちに来る依頼の殆どで私達を指名してくる程になっちゃったんだよ・・・とりあえず、それは椿の爺さんが何とか整理してくれたけれども。

 

とにかく、その来客に対応する為に玄関へ向かった私達は、玄関の曇りガラスに映るシルエットでゾゾ〜ッと背筋に寒気が走るのを感じた。

 

そして、その扉を開けたと同時に私達へ会いに来たという客はビョッとカエルのように飛び上がって、長い舌をベロベロさせながら飛びかかってきたのだ!

 

「椿く〜ん!!綾く〜ん!!さっそく挨拶のペロペ――ろぼぉぉ!!」

 

「うん、やっぱり変態会長だったか」

「それに、そんなの1回もした事無いです」

 

咄嗟に椿の尻尾ハンマーと同時に飛び膝蹴りを決めちゃったけど、まぁ変態会長だし大丈夫だろう。それに、妖気で半妖の人が何人か来ているのは分かっていたから、そっちに話を聞けば良さそうだし。

 

そんな訳で、ひとまず私達は玄関に居たもう2人のお客さんへ振り返ってお辞儀をした。

 

「それで杉野さんと犬吠埼さん、今日は何の用ですか?」

 

そう椿が挨拶すると、松葉杖をついたり腕に三角巾を巻きつつも何とか此処までやって来た杉野さんと犬吠埼さんが苦笑いを浮かべる。

 

犬吠埼さんは相変わらずというか後ろ髪を束ねてピシッとしたスーツ姿で真面目な感じなのに、杉野さんは何か前よりアクセサリーが増えてチャラい感じが増していないか?

 

「つれないなぁ。久方ぶりの再会だというのに、ご主人さ――椿ちゃん、綾ちゃん」

 

おぅ、犬吠埼さんに横目で睨まれて言い直すくらいなら最初から『ご主人様』なんて言おうとしないでください。というか、杉野さんは熱心に看護してくれた椿の姉さんである夏美さんがいらっしゃるでしょ〜が。

 

「杉野さん!?もう〜来てくれるなら連絡してよ!って、犬吠埼さんも一緒じゃない!そうと知ってたら、迎えに行ったのに〜」

 

「いえいえ、大丈夫よ夏美さん。いつまでも貴方に頼る訳にはいかないからね」

 

「それに、ご主人に元気な姿を見せたかったからね――って、痛だだだ」

 

「こら、調子に乗るな」

 

「全くもう、杉野さんったら・・・」

 

それにしても、夏美さんもなんというか・・・2人も看護出来るくらいに世話焼きだったなんて、正に意外中の意外だよ。しかも、犬吠埼さんとも何か『杉野さんの姉』みたいな雰囲気で、いつの間にか3人で仲良くなってるなんてね・・・いやホント意外ですよ。

 

「で、いつまで杉野さんは夏美さんとイチャイチャするつもりなんです?」

 

「あぁ、それなら僕が話そう。本当なら三間坂さんに来てもらいたかったんだが、あの人は半妖の子達を守るのに精一杯でね」

 

「えっ?赤木会長、何があったんですか?」

 

そして変態会長は復活して事情説明を代わりにしてくれるのは良いけど、隙あらば私や椿を舐めようとするのは止めときな?――っていうか、既に私の氷の妖術や椿の影の妖術で身動き取れなくしてるけど。

 

「・・・半妖の迫害だよ」

 

「「えっ?」」

 

だけど、その赤木会長の言葉に私と椿は自分の耳を疑った。

 

確かに半妖の人達は普通の人とは違って、容姿に特徴があったり更には特殊な力を持っていたりもする。だから、それを怖がる人だっているのは分かる・・・でも、そんな簡単に人は手のひらを返せるのかよ!?

 

「今更と言えば今更だけど、他の半妖の子達も私が親にされたように両親から軟禁されたり、酷ければ監禁されていたよ。中には自分の子だというのに、殺そうとして暴力を振るっていた者までいた」

 

「なんで・・・なんで、そんな事が出来んだよ・・・っ!」

 

あまりに酷い話に私が怒りの感情を堪え切れずにいる中、椿は怒ってこそはいたものの冷静に状況の分析をしていた。

 

「・・・化け物の子を産んだ、もしくは産ませてしまった。だから自分達も迫害されるのを恐れたのなら、そうせざるを得なかったんじゃないのですか?」

 

「椿君・・・」

 

「でも、それでも私は放っておけない!」

 

「分かっていますよ、綾ちゃん。こんな事は当然、許せる事ではないです。だから、その人達の親の代わりに僕達が助けるんでしょ?」

 

――その椿の言葉に私はハッとさせられる。

 

そうだった、椿は昔から誰かを助ける事なら全力を尽くす性格なんだ。こんな話を聞いただけで暴走しそうになる私なんかとは違って、自分に出来る事を可能な限り全力で頑張ろうとする・・・そんな優しい、私の親友なんだった。

 

お陰で頭も冷えた私は、自分の頬をパンと叩いて赤木会長へと振り返った。

 

「よし!そうと決まれば、まず学校の皆を――」

 

「あ〜それなんだが・・・実は裏で、雪君が協力してくれていてな。私達の学校に居た半妖の生徒達は既に全員を助けていて、今は警察に保護されているんだ。それで、この家の何処かに匿ってくれないかと相談に来たのが、今回の訪問の理由さ」

 

「ズコ〜ッ!!」

 

ちょっと待てぃ!?い、いつの間に雪は赤木会長達と一緒に動いてたって事なのか?

え、ちょっ・・・いくら何でも行動力が凄すぎるわ!!いや私達のファンクラブを世に知らしめた時点で凄いのは分かっていたけども!!

 

――無論、あんな格好つけた事をやっちゃった私と椿は怒り心頭です。

 

「いたたたた!!つ、椿君に綾君!?何で2人して抓ってくるんだ!!」

 

「ふーん、何となくです」

 

「椿に同じく。自分の胸に聞きやがってくださ〜い」

 

そうして私と椿で赤木会長の両頬を抓っている後ろでは・・・。

 

「あぁ、ご主人。久々に私にも――いだだだだ!!」

 

「また何変な事を言ってるのかしら、す〜ぎ〜の〜く〜ん?」

 

「杉野さん、そんな事なら私でも良いよね〜?」

 

ハイやっぱりというか、夏美さんと犬吠埼さんから同じように両頬を抓られてたわ。でも、あの様子なら2人が上手く歩く変態の抑制剤になってくれているみたいだし、安心安心。

 

すると、そこで突如として杉野さんのスマホが着信音を鳴らしてきた。

 

「はい、もしもし・・・えっ?本当ですか!?分かりました、急いで戻ります!」

 

その電話を取った杉野さんは一瞬にして真剣な顔になり、何か緊急事態でもあったかのように深刻そうな様子で電話を終えた。

 

「杉野さん、何があったんですか?まさか・・・」

 

「そのまさかだ、椿ちゃん。俺達が所属する捜査零課のある部署。そこの警察署が住民による抗議をした挙げ句、政府にまで申し出をした」

 

「だけど、そんな事で政府が動くハズ無いだろ!?」

 

「あぁ、そう俺達も想定していた・・・だが、その政府が動いたんだ。つい先程、政府は半妖を『我々と同じ人間ではない』と断定し、駆除対象として自衛隊が動き始めた!」

 

「えぇ!?」

「はぁ!?」

 

いくら何でも迫害ってレベルじゃねぇだろコレ!!

 

今までは色々な妖怪が頑張ってくれてたから、一般に妖怪や半妖の存在は知られる事なく何とかなってたっていうのに・・・それもこれも元を辿れば、あの八坂クソ前校長が余計な事を言ってくれたからじゃねぇか!

 

「っていうか法律は!?警察署なんでしょう?どうして、そんな事に・・・」

 

「いや、それがだな・・・ここ最近、おかしな事件が起きているだろう?化け物が暴れ回っていたり、何かを探していたりする、と・・・」

 

「それ妖魔人とか地獄の鬼の事じゃね〜か!コンチクショ〜!!」

 

あ〜ほら!椿が「自分の戦いのせいで周りの人達も危険に晒して・・・」って感じで落ち込みかかっちゃってるじゃん!どーしてくれんの杉野さん!!

 

「とにかく、政府は国の防衛の為にと陸上自衛隊を動かした。そして、そんな彼らを匿っているとして私達の警察署は今現在、政府から直接の猛抗議を受けているらしい。署長からは「大人しく半妖を出せ」と、そう強く言われているが・・・」

 

「三間坂さんが断って、何とか止めてくれているんですね」

 

「あぁ、そうだ。だが先程、他の警官や自衛隊の連中が私達の警察署を包囲したと連絡があった。もう、三間坂さんの部署だけでは匿いきれない。だから、何とか半妖の人達を脱出させて此処へ匿ってもらいたいんだ」

 

そう言った後に杉野さんは犬吠埼さんと一緒に頭を下げると、それを聞いていた椿の爺さんが私達の後ろから静かに前へ出て来た。

 

「そのくらいの事なら構わん。そんな事態になっているのなら、何人だろうと保護しよう。椿、綾!行ってこい!」

 

「よっしゃあ!了解です!」

「はい!分かりました!」

 

すると、私と椿が返事したと同時に2階からも誰かがバタバタと慌てて降りてきた。

 

「待って・・・綾、椿。私も、一緒に行く」

 

「雪ちゃん、大丈夫ですか?その目のクマは・・・」

 

「大丈夫。それに私に良い作戦があるから、任せて」

 

「そう雪が言うんなら、私も無理に来るなって言わないけどさ・・・」

 

こっちはむしろ、両手いっぱいに抱えてる大量のパンフレットが気になるんだけど。とはいえ雪も自信満々だし、今はモタモタしている時間は無いからね。

 

ここは雪の作戦とやらに、私達の全力をかけて乗っかってやるとしますか!

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