私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 ごめん、何か上手くいくか怪しくなってきた!

 

それからすぐ私達は杉野さんと犬吠埼さん、そして赤木会長の案内で捜査零課のある警察署に急行すると、もう既に警察署の周りは大変な騒ぎになっていたよ。

だけど、まだ他の警官や自衛隊の人達は戦闘をしたくはないみたいで、メガホンで警察署へ向かって忠告するよう叫んでいる声が聞こえてくる。

 

「三間坂警部に告ぐ!直ちに匿っている半妖共を引渡せ!君は、やってはいけない事をしている!そんな自覚は無いのか!」

 

やってはいけない事、ねぇ・・・お前ら、それ自分達を鏡で見ても同じ事が言えるのか?

 

妖怪の血が半分混じっていようが、考え方や価値観とかは殆ど普通の人達と変わらないんだぞ。

全員が全員それで納得するとは思ってる訳じゃないけど、だからって魔女狩りのように化け物扱いして追い回すなんてイカれてるだろ!

 

少し前までは私も椿も、その普通の人達と同じ世界に住んでただけに、こんな酷い事が行われるなんて悲し過ぎるよ!

 

「やっぱり大通りは予想通りというか、警官や自衛隊で完全に封鎖されているわね・・・」

 

「よし、それなら入り組んだ路地裏から回ろう」

 

犬吠埼さんと杉野さんの後に続いて、私達は路地裏の道を使ってコッソリと警察署の裏手に回り込んでいく。それにしても、雪が両手に持ってる紙袋いっぱいのパンフレット・・・本当に何をするつもりなんだか。

 

しかも――

 

「杉野さんも犬吠埼さんも、無理しないでゆっくりね。どうせ、表通りからは見えないんでしょ?」

 

うん、夏美さんも一緒に来ちゃってるんです。怪我が治ってない2人の補佐とはいえ、こんな所まで着いて来ちゃって大丈夫なのかな・・・。

 

「椿、それに綾ちゃん。2人共、なんて顔をしているのよ?私が着いてきたら駄目なの?」

 

「いや・・・だって、お姉ちゃんは僕達と違って人間なんだし、表に居る人達に見つかったら何をされるか分からないよ?」

 

そう苦い顔をしながら問いただす椿に、夏美さんは溜息を吐きながら首を横に振ってくる。

 

「大切な妹と好きな人を心配しているんだから、一緒に来て当然でしょ。それに迫害が何よ。こんなつまらない事で迫害するような人間、こっちからお断りよ」

 

そして夏美さんは杉野さんと犬吠埼さんに手を貸しながら、ゆっくりと裏口から警察署内へと入っていった。そんな強気な夏美さんの一面を見せられた私と椿は、思わず顔を見合わせて笑ってしまったよ。

 

やっぱり、あの人も血が繋がってないとはいえ椿の姉さんだね。

 

「それにしても、変」

 

「まぁ、半年くらい前と比べたら良い人になったよね・・・」

 

「うん、お姉ちゃんは変わったよ。変は無いけど、マトモには――」

 

「そっちじゃない、2人共。周りの人達の様子だよ」

 

おぉう、そっちの話じゃないんですね。いきなり真面目な話に戻されると私、ちょっと恥ずかしいぞ。

だけど確かに雪の言う通り、よくよく考えると警官や自衛隊の包囲の仕方とか三間坂さんへの対応とかが少し妙だな。

 

あれだけ表通りを厳重に固めてあるなら普通は路地裏の方だって固められてるハズだし、煙羅煙羅の半妖である三間坂さんに対して「半妖を差し出せ」と忠告しているのだって不自然だ。それなら「投降しろ」と言っているハズだしね。

 

そんな事を考えていた時、ふと漂ってきたタバコの煙の匂いと薄ら感じる妖気で私と椿は状況を理解したよ。

 

「なるほど・・・これは三間坂さんが、あのタバコの妖具で上手く包囲している人達をコントロールしてくれてた感じだな」

 

「そうだね、綾ちゃん。それなら、とにかく三間坂さんに会って色々話を聞かないといけません。行こう、雪ちゃん」

 

「うん・・・でも待って、2人共。ちょっとだけ、コレ運ぶの手伝って」

 

そう言って、雪は私と椿の後ろで重たそうにしながら例のパンフレットが沢山入った両手の紙袋を運んでいる。

 

「あの・・・本当にそれ、要るの?」

 

「そんなに大変なら、無理して持って来なくても良かったんじゃ・・・」

 

「大丈夫、これは作戦に必要な物だから」

 

いや、それ本当に大丈夫な作戦か?何か妙に嫌な予感がしてくるけど、そこまで自信タップリに雪が言うんなら信じるっきゃないか。

 

その後、私達も杉野さん達に続いて警察署内へ入り、正面入り口で椅子や机で組まれた即席バリケードの隙間から様子を伺っている他の零課の人達を横目にしながら、三間坂さんが居るという2階の会議室へと向かう。

 

すると、そこでは三間坂さんが窓の外を見ながら機嫌の悪そうな様子でタバコを吹かしていた。

 

「よう、戻ったか杉野に犬吠埼。んで、狐の嬢ちゃんと霊能力者の嬢ちゃんまで来たか・・・助かる」

 

「皆は?」

 

そう雪が不安げに尋ねると、三間坂さんは私達へ振り返りながら不器用そうに笑顔を作ってみせた。

 

「あぁ、地下の部屋に避難してもらっている。しかしなぁ、この騒動は既に"裏取引"が済んで何とかなりそうなんだ」

 

「えっ、"裏取引"?どういう事ですか?」

 

「簡単だ、狐の嬢ちゃん。政府としても、人間と妖怪の間の子なんて認めたくはない。しかし、世間で騒がれ始めて海外にまで妖怪や半妖の存在が大きく知られれば、どうなると思う?」

 

その三間坂さんの言葉で、私の頭の中に電流が走った。

 

「そうか!だから政府は私達を"面白い研究材料"として海外の手に渡らせないよう、何とか姿を隠せられるように誘導してくれているって事か!」

 

「えっ!?でも、それなら半妖を駆除しようとしていたら、向こうにとっては好都合になっちゃうんじゃあ・・・」

 

「ふっ、霊能力者の嬢ちゃんは察しが早くて助かるな。そんで、政府は一芝居打つ事にしたのさ。俺達に"半妖を隠せ"と言ってまでな。そうやって何年か隠しておいてやれば、人間界の人々から妖怪の記憶は薄れていく。そうすりゃ半妖とはいっても、その存在を認知出来なくなるだろう?」

 

「平たく言えば、皆が忘れるまで半妖の人達を何処かに隠すのは政府の作戦通りって事だね。だけど、そうなったら今この場に居る人達はどう上手く解散させるんです?」

 

そう私が言うと、三間坂さんは私の眉間に向けて素早く銃を突きつけてきた。

 

「綾ちゃん!」

「綾・・・!」

 

すぐさま椿と雪は焦って三間坂さんを妖術で取り押さえようとしたけど、三間坂さんの意思を理解した私は咄嗟に2人の前へ腕を出して、それを止めさせる。

 

「代わりに1体身代わりを出せって、そういう事ですよね?」

 

「あぁ、そいつが全ての元凶だという事にして今までの罪を全て被ってもらえりゃ、半妖達への意識も逸れるだろうという話さ」

 

「ま、それで全て上手くいくとは思ってないですけどね・・・私は」

 

三間坂さんの行動から全く殺意を感じなかったので、私は怖気付く事なく至って冷静に言葉を返した。そして、そこで椿もようやく彼の意図を理解したみたいで、何処に向けたら良いのか分からない静かな怒りの表情を浮かべていたよ。

 

「ちっ・・・ったく、2人共まっすぐに見てきやがって。あぁ、その通りだ・・・そう俺も考えていた所だ。表面上しか見ず、そこしか解決しようとしない政府といった、もっと根っこの部分を解決しなくちゃならない問題だろう。きっと奴らには鉄や木も、汚れた表面だけ削れば綺麗に見えると思っているんだろうさ」

 

「中身が錆びてたり腐ってたりしたら、それこそ意味が無い話だっていうのにね」

 

「正しく、その通りだ。霊能力者の嬢ちゃん、実は結構な頭が回るようだな」

 

いやいや、そこまで褒められても何も出ませんっての〜HAHAHA。

 

でもそれなら、さっき私達が来てくれた時に言ってた「助かる」って言葉も、また別な意味を含めてる事になりそうなんだけど・・・?

 

「そこでだ。お前達に、地下に居る半妖の子達へ避難誘導を頼みたい。此処の騒動は・・・まぁ、俺が正体を明かして全て被るつもりだ」

 

すると、私達が三間坂さんの発言に反応するより早く、杉野さんや犬吠埼さんが驚いた声を上げた。

 

「三間坂さん!それなら自分も!」

 

「杉野君の言う通りです!零課へ勤めている他の半妖の人達も、きっと同じ気持ちですよ!」

 

「止めとけ、1人で良い。杉野に犬吠埼、零課の責任者は俺だ。なら、その部署での責任を取るべきは俺だろう?」

 

「しかし・・・!」

 

「――あの、話の腰を折って失礼」

 

そんな中、雪がおもむろに手を挙げて3人の会話へ割って入ってくる。確かに、私も三間坂さん1人が犠牲になるのは間違ってるとは思ってたけど・・・ひょっとして、ここで例の作戦が出てくるのか?

 

「この今の状況・・・きっと椿と綾なら、何とか出来る」

 

「えっ?」

「僕と綾ちゃんがですか!?」

 

「名付けて『椿と綾をプロデュース』大作戦!!」

 

はい前言撤回!ごめん、何か上手くいくか怪しくなってきた!

 

私と椿をプロデュースしようにも、私達2人は既に一部じゃアイドルみたいな感じに・・・うん、やっぱり下手に気にするべきじゃなかったわ。

何となくだけど、雪が何をしようとしてるのか予想がついちゃったんだけど?

 

「雪ちゃん、まさか・・・」

 

「私達を、本気で世間のアイドルにするつもりか?」

 

「そのまさか。大丈夫、かなりのファンがついている2人なら問題無い」

 

「いや、あのさ雪・・・これ失敗したら、それこそ私達は表を歩けなくなるぞ?」

 

「あっ・・・」

 

おいおい「あっ・・・」じゃないですよ「あっ・・・」じゃあ!思いっきり私と椿が体を張る作戦じゃね〜か!

 

でも、これが上手くいけば誰1人も犠牲にならずに半妖の人達を避難させられるのは間違いない。しかも、ひょっとすれば半妖に対するイメージや評判も全て逆転させられる可能性だってあるな・・・うむむ。

 

それなら雪の作戦を信じて、いっちょ派手に頑張ったりますか!!

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