私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参話 こうなったら全力ではっちゃけてやる〜!

 

私と椿を本格的にアイドルとしてプロデュースするという、ぶっ飛んだ雪の作戦。

 

だけど、これをやらなければ三間坂さんが自身を犠牲に半妖の人達を守ろうとしてしまうから、例え凄く恥ずかしくても私達に出来る事ならば何だろうと全力で取り組むまでだ。

 

「おっと・・・そういや雪、格好はこのままで良いのか?」

 

「あっ、そういえば綾ちゃんは妖異変化で変身したままだし、僕もいつもの巫女服だったっけ・・・大丈夫ですか?」

 

「2人共、問題ない。むしろ、それじゃないと駄目」

 

あ、これで良いんだ〜・・・って、いやいや。

皆から一体どんなイメージで見られてるのか、今ので逆に気になってくるんですけど。

 

「雪ちゃん、ちょっとだけ不安なんですけど・・・僕と綾ちゃんを知らない人も居たら――」

 

「ファンクラブ会員数2000万人の人気者が、どうして怖気付くの?」

 

「って、うぉぉぉおい!?何か倍くらいに増えてない!?」

 

そんな椿の不安や私のツッコミは何処吹く風、雪は紙袋から取り出した大量のパンフレットを持って窓際へと向かっていく。

 

「なっ!?ファンクラブなんてあるのか!?おい、聞いていないぞ!!」

 

「あぁ、そういえば杉野君には言っていなかったわね〜・・・それと、私も2人のファンクラブの会員に登録しているのよ」

 

「ちょっと杉野さん!少しは落ち着いて!まだ身体が――!」

 

おぅ、1番聞かれたら不味い奴に聞かれたぞ。しかも、ちゃっかり犬吠埼さんまでファンクラブの会員な事まで聞こえてきたし・・・あっ、雪が杉野さんにもパンフレット渡してる。やめてください変なファンが増え過ぎて羞恥心で死んでしまいます。

 

それはともかく、私と椿は雪からの指示で皆から1番目立つであろう警察署の屋上へと向かう為、そこに続く階段を上がっていく。

 

「椿、アンタいつの間に・・・それに友達の綾ちゃんまで」

 

「僕達の意思じゃないけどね・・・」

 

「あはは・・・何処で何があったら、こんなに有名になっちゃったんだかって感じですよ、ホント・・・」

 

どういう訳か一緒に着いてきた夏美さんに、そう後ろから言われてしまい、思わず私達は苦笑いを浮かべる。

 

夏美さんからしたら昔の気弱な椿や不良そのものだった私を知っているし、きっと不安な所もあるのだろう。

 

そんな事を考えていると、椿は振り返って夏美さんに明るく笑顔を向けた。

 

「大丈夫です、夏美お姉ちゃん。僕も綾ちゃんも、昔とは違います。これは少し恥ずかしいけれど、それでもやれるだけやってみます」

 

「うん、椿の言う通りです。私も、それで皆を守れるんなら何だってやる覚悟ですよ!」

 

「ふふ、そうなのね。じゃあ、出来る限りのフォローはするわ」

 

そして、夏美さんが私達の後に続いて屋上の階段を登っている途中、また後ろから誰かが上がってきているのが見えた・・・って、げっ!あの人達、まさか!

 

「2人共・・・私達も手伝うわ・・・!」

 

「ご主人、俺も・・・!」

 

「も〜!杉野さんも犬吠埼さんも・・・!」

 

まーた2人は無茶して来たんですか!腕だの足だの折ってるんだから少しは自分を大切に――いや、なんというか私や椿にも当てはまる部分があるから言わんでおこう。

 

とりあえず、屋上へ続く扉まで辿り着いた私達は外の様子をコッソリ開けて伺ってみるけど、やっぱりというか外で警察署を取り囲んでいる人達は「安心して暮らせる町を!」とか「危険な半妖は出ていけ!」とか騒がしく叫んでいるよ。

 

「うぅ・・・メガホンで呼びかけまでしているなんて、近所迷惑にならないのかな?」

 

「椿は耳が良いから、こういうのは大変なんだっけ・・・全く、どいつもこいつも亰嗟に踊らされやがって〜」

 

そう屋上の物陰に隠れながら、うるさく騒ぐ外の人達を眺めていた時――いきなり下の階の窓から、雪が身を乗り出しながら叫んだ。

 

「外で文句を言う人達!半妖に対する文句を言う前に、これを見て!そして、この子達2人の話を聞いて!!」

 

雪が両手いっぱいに抱えていたパンフレットを思いっきり2階からバラ撒くと、その警察署の前に集まっていた人達は驚きながら皆一斉に舞い落ちてくるパンフレットを拾い始めた。

 

「何!?あの椿ちゃんと綾ちゃんが来ている!?」

「えっ、嘘!どこどこ!?」

「最新号・・・という事は、あの子がファンクラブ会長の雪ちゃんか!?おい、椿ちゃんと綾ちゃんは何処だ!!」

「その椿ちゃんと綾ちゃんって誰?」

「何、知らないのか?彼女達2人は今、人気急上昇中の妖狐アイドルの椿ちゃんと霊能力者アイドルの綾ちゃんだ!どうやらコスプレらしいが、中々姿を見せないから本物の妖狐と霊能力者じゃないかと囁かれている程に有名なんだぞ!」

「えっ、嘘でしょう!?」

 

うん、どんだけ有名になってんだ私と椿は!確かにやたら人前には出てないし、アイドルっぽい事はやってないのは本当だけど・・・カナの跡を継いだとはいえ、どれだけ雪は宣伝に力を入れてたんだよ!?コスプレ扱いとか初めて聞いたぞ!!

 

うぅ・・・こうしてアイドルみたいな事をやると知ってたなら、せめて影でアイドル活動してた海音さんにでもアドバイスを貰っとくんだった。

それなのに椿は凄いよ。だって、私が戸惑ってる間にも皆から注目を集める為に、下からでも屋上が良く見える方に出ているんだもん。これじゃあ椿を守りたい私の立場が・・・。

 

よし!こうなったら全力ではっちゃけてやる〜!

 

「やっほー!!綾だよ!皆、今日はよろしく!!」

 

「あっ・・・えと。こ、こんにちは・・・僕、椿です」

 

――と思った矢先、いきなり椿が緊張MAXな自己紹介したから、私も夏美さんも思わずズッコけちゃったよ。

 

「何やってるのよ椿!もっと綾ちゃんみたいにアイドルらしく、可愛くキャピキャピしてみなさいよ!」

 

「むむ、無理!無理ですよ!」

 

「キ、キャピキャピって・・・そもそも何をすれば良いのか・・・」

 

すると、夏美さんからツッコまれている椿に向けて、下の階から雪も叫んでくる。

 

「椿、綾。普段通りで良いから、貴方達2人の訴えをぶつけて!」

 

だけど、その声のお陰で私と椿は落ち着きを取り戻せたよ。

 

「普段通り・・・よし、分かった!」

 

「そっか・・・あっ、ごめんなさい。えっと、皆さ――」

 

「「「うぉぉお!!綾ちゃーん!!」」」

「「「椿ちゃんの恥ずかしがっている所も萌えぇぇえ!!」」」

 

うん、それ以前にファンの皆が別な意味で騒がしいわ。しかも、何かファンですら無い人達もザワザワしてる感じが見えるし。

 

「嘘、何あの子達・・・あの2人を見ていると、何だか胸がドキドキしてくる。そんな・・・ダメ、女の子同士なのよ」

「アイドルなんて興味無いのに、俺までドキドキしてくる・・・まさか、これは恋?」

 

あ〜もう、どうして大騒ぎに――と思ったら、そういえば椿の尻尾に魅了の力があるのを忘れていたよ。というか、どうも最近は妖異変化した私のポニテにも何だか同じような力があるっぽいんだよね。

皆して黄色い声を上げまくってる原因はそれか。

 

「お、落ち着いて!一旦、皆さん落ち着いて〜!」

 

「皆!ちょっと・・・僕達の話を聞いてください!」

 

そう必死に呼びかけていると、そんな中から冷静に疑問を投げかけてくる人の声も聞こえてきた。

 

「いや、だが・・・そんな所に椿ちゃんと綾ちゃんは何で?まさか、あの2人も・・・?」

 

「そうだよ。半妖を匿っている警察署に現れるなんて、そんなの普通じゃ有り得ない」

 

「椿ちゃんと綾ちゃんも、ひょっとすると半妖なのか?」

 

そんな声を聞いている内に、椿の表情はどんどん暗く重いものになっていく。確かに、ここで上手く説得をしようとしても半妖をあれだけ迫害してきたなら、そう簡単に世論を何とか変えられるのは難しいだろうね。

 

だから、少しでも椿の力になる為なら・・・私は自身の事を正直に言うまでだ。

 

「私は半妖じゃないよ。身体は普通の人間だけど、こんな妖術を使える霊能力者だ!」

 

そう叫びながら私は妖異変化する事なく両手から風の妖術を発動して警察署から飛び降り、フワリと静かに正面入り口の前へと着地した。

 

「僕も半妖じゃありません!正真正銘の妖狐です!」

 

すると、そこへ椿も尻尾に纏わせた黒い炎で空に飛び上がってから、妖術で操った影に乗って私の隣に降り立ってくる。

 

無論、それを見た三間坂さんも杉野さんも口をアングリさせて驚いちゃっていたけど、私と椿は三間坂さんがやろうとした事を代わりにやっただけの話だ。

 

とはいえ、やっぱりというか警察署の前に居た人達は派手に着地してきた私達を見て、今のカミングアウトも合わせてポカーンとしてしまっているみたいだけどね。

 

「皆さん、こんな私達に驚くのは無理ありません。でも、半妖の存在は・・・妖怪と人間の合の子だって分かっているんでしょう?」

 

「それなら当然、椿のような妖怪や私みたいな霊能力者も存在するって事なんだ。これを信じるか信じないか、それは皆に任せるけど」

 

椿と共に自身の素性を明かすと、ざわついていた人達はピタリと静かになる。しかし、そんな中から誰かが声を張り上げてきた。

 

「そうか・・・お前らも化け物だから、同じ仲間を擁護しにきたって訳か!」

 

そんな一声に、また警察署に集まっていた人達はザワザワとどよめき始める。だけど、その殆どが困惑したような様子からすると、どうやら集まって抗議していた人達は第三者の意見に流されていただけみたいだな。

 

そして今の声を張り上げた奴は、きっと自身が世論を動かせる人間だと勝手な思い込みや承認欲求から、こうして人々を嘘や根拠の無い話で思い通りに動かそうとしていたんだろう。

 

――そんな奴は、これから起こる事で分かる"真実"の私達の姿を見ても、同じ事を言えるのかな?

 

堂々と警察署の正面に降り立った私と椿は、すぐに遠くからやってくる、妖魔人2人の微かな妖気を感じ取った。まだ相手が誰かは分からないけど、ひとまず皆には少しでも此処から離れてもらわないと。

 

「皆さん、私達や半妖の事は何者とでも捉えて構いません。だけど、僕達が貴方達に危害を加える存在かどうかは、実際に見て聞いた事で判断をしてください!」

 

「三間坂さん!それと杉野さんに犬吠埼さん!今すぐ、ここから一般人を避難させてください!此処に、本当の意味での化け物が来る!!」

 

「何!?しかし・・・」

 

あ、やっべぇ。そういや警察署に集まってる人達、まだ私達に耳を貸してくれるような状態じゃないんだったわ。でも、このまま放っておいたら妖魔人が暴れだした時に危ないし・・・あ〜もう、仕方ない!

 

「それなら三間坂さん!私と椿が化け物の相手をして時間を稼いでおく!だから、その内に半妖の人達も含めて一般人の避難誘導をお願いします!」

 

「ここから少し離れてもらうだけでも良いです!雪ちゃんも、三間坂さん達を手伝ってあげてください!」

 

「分かった・・・!でも、綾と椿は!?」

 

「雪、それは大丈夫だ!今さっき、勾玉で狐2人やオジサンに増援を頼んだ!」

 

近づいて来る妖気から、やって来ているのは峰空と栄空なのは間違いない。だから、以前に山で戦った時に2人と昔から面識がある様子を見せていたオジサンなら、きっと相手の弱点を知っているハズだ。

 

ここは何としてでも勝って、迫害してくる人達に半妖や妖怪に対するイメージを見直して欲しい所だからね!

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