私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾伍話 椿の家族"だった"人達

 

日が暮れそうな時間までに椿の祖父の家へ戻って来た私達は、妖界へ来た時と同じようにして勾玉で元の人間界へと帰った。さっきのレイちゃんの暴走の事を椿が叱る。

 

「良い、レイちゃん?あのね、ちゃんと僕達の言う事を聞いてね?そうじゃないと、レイちゃんを捨てないといけなくなるかもしれないからね」

 

「ムキュゥゥ・・・」

 

「でも私は可愛いから許――」

 

「ダメだからね、綾ちゃん?」

 

「あっ、はい。すいませんでした」

 

白狐さんと黒狐さんからレイちゃんの事をしっかり躾ろと言われた私達なのだが、この子の落ち込んで反省している姿を見ると心が痛んできてついつい甘やかしたくなってしまう。

 

そんな具合で家に入ろうとした時、玄関先に誰か小さな女の子が鞠をつきながら軽快に手毬歌を歌っていた。

 

「まる たけ えびす に おし おいけ。

あね さん ろっかく たこ にしき。

し あや ぶっ たか まつ まん ごじょう。

せきだ ちゃらちゃら うおのたな。

ろくじょう しっ ちょうとおりすぎ。

はっちょうこえれば とうじみち。

くじょうおおじでとどめさす」

 

私達はその手毬歌に誘われるようにゆっくりと女の子へ近づいていき、その姿を見る。10歳くらいの女の子はおかっぱに髪を揃えており、綺麗な着物を着ていた。まるで昭和以前の時代から此方の世界へやって来たような、そんな不思議な格好をしている。

 

私達に気づいた女の子が、鞠をつくのを止めてニッコリと微笑んで挨拶してくる。

 

「おかえり、椿ちゃんに・・・そっちが綾ちゃんだよね?」

 

「う、うん、そうだけど。・・・ただいま、で大丈夫だよね?」

 

「あ、えと。た、ただいま」

 

『おぉ、座敷わらしか。離れの部屋にずっと居て、滅多に出てこないお前さんが出迎えとは珍しいではないか』

 

「座敷わらし?この子が?」

 

すると座敷わらしの女の子は少し暗い顔をしたかと思えば、すぐに椿の手をとって元の表情へと戻った。

 

「えっ、ちょっと!?」

 

「おいで椿ちゃん。"また"一緒に遊ぼ」

 

「待って待って、君も僕の事を知ってるの?ごめん僕――」

 

椿は自身の記憶が無いと言おうとするも、それでもお構いなしと言わんばかりに女の子は手を引っ張り続ける。

 

「記憶がなくても、椿ちゃんが帰ってきただけで私は嬉しいんだから。また遊んでよ、ね?」

 

「はぁ、椿って昔からモテモテだったの?こんな小さな子にも慕われてるって」

 

「し、知らないよ〜」

 

そんな中、突然玄関の扉が開いたかと思えばそこへ椿の祖父が怒鳴り声をあげて現れる。

 

「こりゃ、わらし!椿を何処に連れていく!」

 

「ひっ!」

 

「わっ!椿のお爺さん!」

 

その怒鳴り声で私達は反射的に硬直し、女の子も身をすくめて椿から手を離した。それでもその子は椿の身を案じるかのように椿の祖父へと話しかける。

 

「全く、油断も隙もない。」

 

「でも・・・このままだと椿ちゃんが、不幸な思いをしちゃう。私、守ってあげたいの。翁お願い」

 

「わらしよ。その気持ちになるのは分かるが、これは椿が超えねばならん出来事なのじゃ。こいつらから逃げてばかりいては、椿はいつまで経っても弱いままだ」

 

一体どういう事なのだろう、椿の超えるべき出来事って・・・。翁が首で指示すると、玄関の妖怪達が一旦家の中へ引き返していく。家の中から悲鳴らしい声が聞こえるが、お構い無しといった様子で椿の祖父は私達へ向き直った。

 

「さて、椿に綾よ。ライセンスは取れたんじゃな?」

 

「う、うん」

 

「少し向こうで騒ぎになっちゃいましたけどね・・・」

 

私達がライセンスの取得証明書を見せるも、特に褒める訳でもなく怒る事もないまま妖怪達が誰か連れて来たのを見て言った。

 

「よし、ならば椿よ。次はこやつらに、罰を与えなくてはならんな。お前さんが決めろ――どうするかをな」

 

「えっ・・・?あっ!」

 

「あ、あんたらは!」

 

そこに現れたのは意外な人物達であった。

 

「お、お母さん・・・お姉ちゃん」

 

「いつの間に、どうして此処へ連れて来られたんだ?」

 

そう、椿が翼として生活していた頃に彼女の義理の家族を振舞っていた母娘だった。そして、彼の事を酷くいじめ精神的にも追い詰めた原因の1つでもある。私は学校では椿を守る事は出来ても、それぞれの家庭事情についてはオジサンからも「よそはよそ、うちはうち」と口すら出させてもらえなかった事に未だ後悔が残っている。――もっと早く、何とかして椿を助ける事が出来たんじゃないかって。

 

「ひっ、い、いや。助けて、助けてぇぇええ!!」

 

「ひっ、あ、あんた。翼・・・なの?そこに居るのも、友達の・・・」

 

椿の母だった人物は酷く怯えて叫んで、姉だった人物はそれでも何とか正気を保って椿へと話しかけているようだった。

 

「ええ、烏森綾です。私の事、覚えていたんですね」

 

「う、うん。そうだよ・・・お姉ちゃん」

 

「ひっ!あ、あんたらも、ば、化け物だったなんて・・・」

 

私は椿へ放たれたその言葉に強く眉をしかめた。確かに姿かたちが大きく変わってしまったとはいえ、心は元の「槻本翼」のままだというのに。

 

『ほぉ、翁はなかなか粋な事をするな。よし、椿。徹底的に痛めつけてやるぞ。なんなら拷問みたいに――』

 

「黒狐さん、これは椿へ与えられた彼女のお爺さんからの選択だよ。私達が口を出していい場面じゃない」

 

そうだ。さっき椿の祖父が言った通り、「罰を与えるのは椿」なのだ。ここは彼女の選択を見守るしかない。

 

「あの、白狐さんは何も言わないのですか?」

 

『我は何も言わん。お主が後悔しないよう、お主の満足のいく罰を与えれば良い』

 

どうやら白狐さんも私と同じ気持ちのようで、困惑している椿の質問にも自身は関与しないとキッパリ言い切った。けれど、椿はまだ今すぐに決断を下す事は出来なかったようで――

 

「ごめんなさい・・・今は2人を、どこかの部屋に閉じ込めておいてください。罰は後で考えるよ、すぐには難しいから」

 

そう言って、悲痛な顔をした。

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