私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
猛スピードで警察署へ迫ってくる峰空と栄空に備え、私と椿は同時に巾着袋から麒麟甲と御剱を取り出して、それぞれ武器に妖気を流しながら力強く身構える。
そして、やっぱりというか警察署に集まっていた人達は何が起こるのか分からないといった様子で、キョトンとしながら私達を眺めているね。これじゃあ向こうからの初撃は避けずに防がないと、容赦ないパワーを放ってくる相手の攻撃に巻き込まれちゃうな。
「あの・・・本当の意味での化け物って、一体・・・?」
そんな事を考えていると、逃げる様子が無い人々の方から1人の女性が疑問の声を上げてきた。
ぶっちゃけ今はすぐにでも逃げて欲しい所なんだけど、ひとまず説明だけはしておかないと後で何を疑われるか分かったモンじゃないから仕方ないな。
とはいえ、寄生する妖魔とか妖魔人とか何て説明すれば良いんだか・・・。
「う〜ん・・・これから此処にやって来る化け物は、分かりやすく言うなら自分が利用されていると分かっていながらも、その私利私欲の為だけに妖怪に身体を改造された元人間・・・かな?」
「えっ・・・元人間って?」
その私の言葉で再び困惑しだした人達へ、椿はフォローするように更なる解説を加えてくれた。
「ええ、綾ちゃんの言う通りです。それに僕達の事を化け物って一括りにしているみたいだけれど、僕達にだって良い妖怪や悪い妖怪の分別があります。それは半妖も一緒だし、人間の社会関係と変わらない、そうですよね?」
「う・・・」
おお、見事なナイスアシストだったよ椿。あんなにザワついていた人達を一斉に黙らせちゃうなんて、流石の説得力というか私より上手い説明だったんじゃないかな。
「綾!椿!」
すると、2階の窓から雪が叫んで向こうを指差してきた。
なるほど・・・もう相手もおいでなすったか!しかも、こっちに向かって爆発するような妖気を投げつけてくるなんてな!
すぐさま私は"悲愴天・玄武"へ妖異変化し、椿と同時に飛んでくる妖気を迎撃するべく飛び上がった。ここは攻撃を吸収しても良いんだけど、それだと下に居る人達に何が起こってるのか分かりにくくなっちゃうからね。
そして、飛び上がったと同時に爆発の連鎖が空中から私達目掛けて一気に飛んできた。
「きゃぁあ!?」
「うわぁぁあ!?」
「なんだなんだ!!」
「爆発した!テロだ!!」
それを見た下の人達はやっぱりというか、慌てて逃げようとパニックになって散り散りになりかかってしまっているよ。すぐに捜査零課の人達や半妖の人達が避難誘導をしてくれているけれど、あまりのパニックで誰も言う事を聞いてくれていないみたいだ。
「こんな時に限って、その人達を信用しないなんて・・・クソッ!」
「皆!その人達の言う事を聞いて、急いで避難を――」
そう椿が下に呼びかけようとした時。私達の目の前に、相変わらず真っ黒な身体をした峰空が瞬間移動したかのように姿を現してきた。
「あ〜ら、椿ちゃんに綾ちゃん?そんな人間達に構っている暇はあるのかしら?」
「なっ――あだっ!!」
「くっ――うぐぅ!!」
危ない危ない・・・下で逃げ惑う人達に気を取られて、峰空と栄空が何処に居るのか感知するのをウッカリしていたよ。
あの太い鞭を咄嗟に防いだとはいえ、それでも腕が痺れるくらいの威力は危険だな。これは飛び上がって防御する事にして正解だったかもね。
「ふ〜ん、その普通の状態でも少しはやるようになったわね」
「油断するな」「相手は神妖の妖狐と烏森の遺物だ」
「分かってるわよ、栄空。あと、その2つの顔で喋らないで。めちゃくちゃ気色悪いわ」
そう言いつつ、峰空と栄空は半年前から変わらぬ真っ黒な身体に付いた赤い目を私達に向けてくる。
しかし、服装に関しては変異前と変わらない格好をしていた閃空とは違って、峰空は小悪魔気取りなのか胸と股の部分しか隠れていないような露出度の高い姿に悪魔っぽい羽根を生やしていた。
栄空もまた今までの格好ではなく、胴体部分に鬼の顔が彫られた厳つい鎧を全身に纏っており、あちこちから生えている太く鋭い棘は見るからに攻撃的な見た目だ。
勿論、どちらも以前より倍増した禍々しい妖気を身体から放っていて、それを感じただけでも並大抵の相手とは違うと私の脳は認識する。
――だけど、それでも私も椿も半年前から修行をして強くなってきた身だ。こっちの増援が到着するまでに、1人くらいは何とか行動不能にしてやるぞ。
「それにしても貴方達、舐めてるの?こうやって自分から堂々と正体を明かして、しかも名前も大きな声で宣言するなんてね。私達に『ここに居ますよ!』と言っているもんじゃない」
「ええ、そうですよ。だからこそ、そう声高々に表で宣言したんです、"負なる者"」
「そして、まんまと引っかかってくれたって訳だ!覚悟しろよ!2人まとめて浄化してやる!!」
まぁ、これは椿と打ち合わせてたハッタリみたいな感じなんだけどね・・・。私達が誘い出したって言ってやれば、向こうは罠だと警戒して集中力が少しは鈍くなるハズだし。
とはいえ、それでも妖魔人2人を相手に手を抜いてられる余裕なんて有る訳ない。だから、私と椿は"神妖の力"を解放して、それぞれ金狐と"鈍色の狐"の姿に変身した。
「へぇ〜、もう最初から飛ばすって事ね。栄空、この2人はちょっと私にやらせて。その代わり、下の奴らは殺って良いわよ〜」
「「私はゴミ掃除か?」」
「だから、2つの顔で喋るな」
とりあえず、そこだけは同感だわ。まるでサラウンドみたいに別々な方から同じ声が聞こえてきたら気持ち悪いってレベルじゃないし。
でも、だからって簡単に好き勝手はやらせないよ!
「そら!一瞬で真っ二つだ!」
「なっ!?」「ぬっ!?」
そのまま私は"鈍色の狐"と同時に"有頂天・白虎"も展開して、その相手が止まっているかのように感じる程の猛スピードを出しながら氷霰剱で切りつける。それを避ける事が出来なかった栄空は、あまりにアッサリ上半身と下半身を真っ二つにされて、その場にバタリと倒れた。
"有頂天・白虎"による妖気の消耗が激しいから、たった7秒しか使えない大技とはいえ、こんなに呆気なく倒せるとは思ってなかったからラッキーだ。
「ちょっと!私が相手をするって言っているのに、いい度胸しているじゃない!」
それを見た峰空は少し怒った様子で鞭を椿に振るい始めたけど、椿は相手の攻撃を読んでいたから軽い動きでヒョヒョイと躱してみせる。
「おっと!"負なる者"である貴方達の言葉を聞くなんて、私達は一言も言っていませんよ!」
「あら、それもそうねぇ・・・で、栄空?いつまで倒れている気?」
「この妖気の感じ・・・まさか!危ない、綾!」
その瞬間、"怒髪天・朱雀"に妖異変化した私の後ろから、なんと倒したハズの栄空が腕や足を振り回して突撃してきた。
「言うな、馬鹿者が」
「折角これで奇襲をかけようとしていたが、全てパーだ」
ギリギリの所で攻撃を回避した私が見たのは、その真っ二つにされた上半身と下半身から身体が再生して、分裂したように2人に増えた栄空の姿だった。
しかも、その分裂によって妖気も減ったりしていない様子からして、これはかなり厄介な事になっちゃったみたいだ。クソ〜知ってたら真っ二つにしなかったのに〜!
「くっ、綾・・・今そっちに――なっ!?」
「おっと、椿ちゃ〜ん。貴方は私と遊びましょ〜う・・・足腰が立たなくなるまで、ね!」
だけど、椿の方は峰空からの激しい攻撃で手助け出来ないから、逃げ惑う人々に向かおうとする2人の栄空を私だけで止めなきゃいけない状況だ。1人ならまだしも、2人同時となると1人は間違いなく取り逃して皆が襲われる可能性だってある。
すると――
「凍れ!!」
「ぬっ!?」
「これは・・・?」
なんと、雪が2人の栄空の足元を凍らせて足止めをしてくれたのだ。これなら少しは皆の逃げる時間を稼げるけど、こんな戦いに巻き込む訳にはいかない!
「えっ、何をしているんですか雪!?そこから離れてください!」
「雪!椿の言う通り、危ないから逃げろ!そいつらは私と椿じゃないと――」
「嫌だ!一緒に戦う!それに・・・他の半妖の人達も、私と同じ考えだから!」
「そういうこった、嬢ちゃん。おら!戦える奴は、アイツに集中攻撃をするんだ!」
でも、そんな私と椿の心配は無用と言わんばかりに下へ降りてきた雪は、三間坂さんや他の半妖の人達と共に栄空へと向かっていく。
なんで皆、無茶ばっかりして・・・!
「雑魚ですか」
「引っ込んでいなさい!」
身動きが取れなくなった栄空は懐から大量に札をバラ撒き、向かってくる三間坂さんや半妖の人達を爆発で吹っ飛ばそうとした瞬間、今度は栄空の周りに三間坂さんのタバコから流れる煙がモウモウと取り囲んだ。
「な、何?爆砕符が機能しないだと?」
「そのご自慢の札とやら、爆発させてみろよ」
「くそ・・・何故起爆しない!?」
「そら!霊能力者の嬢ちゃん、今だ!!」
そして、私は三間坂さんと同時に2人の栄空の間近に一気に走り寄り、そのまま顔面へと拳を叩き込む。
「どりゃあ!!」
「おらぁ!」
「「ぐおっ!?」」
それにしても三間坂さん、どうやって瞬間移動みたいに早く移動出来るんだ?妖異変化してる時の私より早く動けるなんて・・・と思ったら、またいつの間にか雪の後ろに移動しているぞ?
「合煙奇煙(あいえんきえん)――ほら、お前の爆発も持ち主に会いたいとよ。霊能力者の嬢ちゃん、一旦離れろ!」
「なっ?ぐわぁぁあ!!」
「こいつ!妖具を――ぁぁぁあ!」
「うわっ!アイツら、あの札で自爆した!?」
いや、これはまさか・・・三間坂さんが妖具で相手の爆発する札を逆手に取ったって事か!な、なんつー強い能力を持っているんだよ、三間坂さん!?
「ちょっと、嘘でしょう!?半妖如きが――」
「おっと、貴方の相手は私でしたよね?」
「きゃっ!?ちょっと!!」
勿論、それを見た峰空は栄空の方に加勢しようとしていたけれど、その一瞬の隙で緩んだ鞭の一撃を椿が掴んで引っ張っていたよ。
「椿!コレを使って!!」
「綾、コレは・・・なるほど、分かりました!金華浄槍!!」
すぐさま私は、そこで峰空の妖気でも何でも食べられる口の事を思い出して、以前に雪から貰っていた"ある物"を、峰空に浄化の力を込めた尻尾を突き刺している椿に向けて投げ渡した。
「あ〜ぶないわね〜でも、私に妖術は――うっ!?」
「妖気以外も食べられたんですか・・・何という食い意地でしょうね。だけど、それが食べられる物かどうかは、よく調べてからの方が良いですよ。私のコレは妖術ではなく神術、しかも浄化の力が混じっているんですから。しかも、そんな所に激辛の物を食べさせられたら一体どうなるんでしょうね?」
――そう。私が今さっき椿に投げ渡した物は、雪が激辛かき氷のトッピング用にと私に作ってくれた"世界七大唐辛子ふりかけ・フルクロス"だ。
「うっ、げぇぇぇえ!!」
そんな"とんでもないプレゼント"を、妖気と相反しまくる神力(しんりょく)や浄化の力と一緒に妖魔人の体内に取り込んでしまえば、それはもう地獄どころの騒ぎじゃない。
だからこそ、こうやって寄生している妖魔の本体も腹の口から姿を現してきた。その隙を作ってくれた雪や三間坂さんの活躍を無駄にしたくは無い――んだけど・・・。
「ん・・・ぐぅ、ゴクン」
「いや、本体を飲まないでください」
「はぁ、はぁ・・・ふふ、そう簡単にはいかないわよ〜」
まさか、ここまで復帰するのが早いなんてね。
あれだけエグい物を食らわせたのに、腹の口からはみ出てた寄生妖魔を飲み込み直しちゃうなんて、胃袋にガン○リウム合金でも使っているんじゃないだろうな?
・・・あと、雪は「なんで私の友情の証を妖魔人なんかに食べさせたの?」なんて目で見ないでください。妖魔人が食べてもアレなんだから、私が食べたら死にかねねぇんですよ。