私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第陀話 奮い立つ戦意と共に

 

更なる変異を遂げ、巨大化した峰空が振るった腕の一撃によって崩された警察署を見て、私と椿は仲間を失った絶望に飲み込まれかけつつも、相手に対する怒りを更に強めていく。

 

「くっ・・・!この、救いようの無い"負なる者"が!」

 

「落ち着いて、椿!」

 

「綾!これが落ち着いていられ――」

 

「椿、大丈夫だ!あれを見て!とりあえず、皆は無事だ!」

 

だけど、すぐに崩れた警察署の瓦礫から這い出て、わら子を抱えた狐2人が他の人達を助けながら出てきたのを見て、私は怒りに呑まれかけた椿を何とか宥める。

 

『くそ、こんな時に我の"守護の力"が使えていれば!』

 

『嘆いていても仕方ない。今回ばかりは、座敷わらしに助けられたな』

 

それでも、運気を操る能力をフルパワーで使ったからか、わら子は白狐さんの腕の中でグッタリしてしまっていた。

 

「座敷様!また無理を・・・!1人の運気を上げるだけでも相当な妖気が必要なのに、あれだけ多くの人を助ける為に・・・。致し方なかったとはいえ、あの者達による狼藉、これ以上は私達が許しません!!」

 

その様子を見て朱雀さんが表情を変えないながらも怒りの声を相手に向けて放つと、すぐさま椿は焦るようにそれを咎めた。

 

「落ち着いてください、朱雀。皆が無事なら、それで良いでしょう。自分を責めるのは、この戦いが終わってからにしてください」

 

「ああ、確かに椿の言う通りだよ。先ず、目の前の相手を何とかしないといけない訳だし。その為にも朱雀さん、その怒りは却ってピンチを招くかもしれないぞ」

 

「椿様、綾様・・・」

 

そして、朱雀さんを宥めながら椿は峰空の前に、私は栄空2人の前に立つ。

 

兎にも角にも、コイツらは冷静になって戦わなければ勝ち目は薄い相手だ。しかも、瓦礫から避難している皆を狙われないようにしないといけない訳だ。

 

「ふ〜ん、嫌な目付きをしてくるわね」

 

「そりゃあ、もう貴方は人間ではないですからね。虫を見る目・・・というより、こんなデカい虫ならばUMAを見る目、でしょうか?」

 

「私を挑発しようたって、無駄よ。それに、貴方達が守ろうとしているのは、そこに居る人達だけじゃないでしょう?」

 

「えっ・・・――なっ!?」

 

すると、今度は峰空が私達の後ろへと視線を向けてくる。その方向を見ると、なんと避難したハズの人々の一部が野次馬のように、少し離れた所で私達の戦いを見物していたのだ。

 

「あんっの人達は〜!何で危険だから逃げろって言われてるのに逃げてないんだっつ〜の!!」

 

「これだから人間は・・・くっ、仕方ありません。そこの人達!!その場所は危険ですから、急いで逃げ――」

 

「もう遅〜い!」

 

「しま・・・って、え?」

 

「あ、あれは・・・」

 

そのまま峰空が見物している人達を腕で叩き潰そうとした瞬間、なんと今度は半妖の人達が全員で峰空の腕にしがみついて止めてくれたのだ。

 

「うぉぉお!!」

「こんな躊躇なく一般人を殺そうとするなんて、コイツら頭イカれてやがる!」

「妖魔に寄生されているから、イカれていて当然じゃないか!」

「どっちにしても、必死に守れ!無関係の人達を殺されたら後味が悪い!半妖だからって、力が少ないからって侮るな!」

 

「「「「束になれば、何とかなる!!」」」」

 

そんな半妖の人達の前向きな様子に、私も椿もキョトンとして目をパチクリさせちゃったぞ。

 

「半妖の人達って、こんなに前向きでしたっけ・・・?」

 

「た、確かに・・・前まで皆コソコソしてたのに、こりゃ一体何がどうしちゃったんだろ?」

 

そう一緒に驚いていると、私達の前に立っていた雪や牛元先輩が振り返ってニコリと優しい笑みを返してくる。

 

「椿と綾のお陰。皆、貴方達2人に触発された」

 

「ええ、雪さんの言う通りです。皆、貴方達の戦いを見ていたのですよ。そして、椿さんや綾さんの成長を、その人々を守りたい意志や"想い"を受けて、それに触発されない方がおかしいでしょう?」

 

そして、牛元先輩が指差した先でも半妖の人達が峰空に挑みかかっていくのと同じように、オジサンも栄空と建物の屋根や壁を蹴って飛びながら、猛スピードで戦っている姿があった。

 

とりあえず、これなら私達もしばらくは峰空に専念出来るけれども・・・それにしたって、半妖の人達も張り切り過ぎだよ。私や椿に触発されて無茶をして死なれでもしたら、元も子も無くなって困っちゃうぞ。

 

「ま、それでも助かったのは確かだけど!――卜半稲妻雷霆蹴!!」

 

「ええ、そうですね!――金華浄槍!!」

 

「椿様に綾様、私も手伝います!――朱雀弓、追炎矢!!」

 

すると、私と椿に合わせて合図も何も送っていなかった朱雀さんも同時に、峰空のガラ空きとなった背中へ神術による攻撃を一斉にブチ込む。

 

「あっ、つぅ!いった〜い!もう!何するのよ!!」

 

「くそっ!やっぱり相手の身体がデカいせいか、あんまり効いてないか!」

 

それでも、すぐさま峰空は振り返って私達へと攻撃のターゲットを切り替え、腹の口を大きく開けて妖気を集中させてきた。

 

「貴方達は1度吹き飛んでおきなさい!妖気砲!」

 

「「術式吸収!!」」

 

「あっ!しまった!」

 

だけど、相手が妖気を使うのなら私と椿の術式吸収で対応は可能だ。しかも、何より峰空は完全に今まで私達がコレを使える事を忘れていたようだしね。

 

「「強化解放!!」」

 

「くっ・・・この!」

 

「それで、また呑み込むつもりか?その様子からして、私と椿で強化したんだから簡単にはいかないハズだもんな?」

 

「そうしたら?その後に貴方は、どうするんです?」

 

「あ〜もう!苦っしいわねぇ!こうして、跳ね返してやるに決まってるじゃない!」

 

峰空は強化解放した攻撃を再び腹の口で取り込み、それをまた吐き出して飛ばしてきたけど、それも先程と同じように私達は吸収して、更に強化して返す。

 

それすらも峰空は無理をするように腹の口で取り込んでいるものの、どうやら向こうは返された攻撃を避ける事を危険に感じて跳ね返し合戦にしたせいで、逆に追い込まれつつあるようだ。

 

「げほっ、げほっ・・・この、ガキ共ぉ!」

 

「ほれほれ、また術式吸収からの強化解放ですよ〜」

 

「全く、"負なる者"。いつまで貴方も続けるつもりです?」

 

「くそぉ!!」

 

そうして4回も繰り返して峰空がキツそうにし始めた時、向こうで戦いを眺めている一般の人達から不思議そうな声が聞こえてくる。

 

「何でなんだ・・・何で、化け物同士で戦っているんだ?」

 

「あぁ、本当だな・・・しかも、人間を助けているなんて。化け物同士で協力して、こっちを脅かしてくるのかと思っていたのに」

 

そんな偏見の強い言葉を耳にして椿も私も思わず顔をしかめそうになった瞬間、突然その人達の後ろから夏美さんの大声が響いてきた。

 

「ちょっとアンタ達!!一体、何をボーッと見ているのよ!!」

 

私と椿は通算6回目となる峰空からの攻撃を強化して跳ね返しつつ声がした方に視線を向けると、そこには瓦礫の山に登って上から叫んでいる夏美さんの姿があった。

 

「その目は節穴なの!?人間だって、人間同士で争い合ったりするでしょう!他の動物を可哀想だからとか、そんな人間のエゴで助けたりもするでしょう!此処に居る半妖も妖怪も、心の中身は私達人間と何1つ変わらないわよ!!」

 

そう叫びながら、夏美さんは巨大な怪物と化した峰空を指さす。

 

「よく見なさいよ!そこのボス感漂ってるようなデカい奴の方が、本物の化け物っぽく暴れているでしょうが!人でも無く妖怪でも無いとか言って、覚醒した妖魔?邪気の増幅?何その厨二病!モンスターかっての!」

 

おう夏美さんや。その厨二病とかいう後半部分、少し私にも刺さって精神的ダメージが来るんで落ち着いて欲しいんですが。

 

「夏美お姉ちゃん、もう相手に挑発は効かな――」

 

そう椿が言いかけた時、その夏美さんが居る瓦礫の上に丘さんも飛び乗って加勢してきた。

 

「しかも、同じ女だったかしら?信じられないわね、元々の美しさを捨てて化け物になるなんて!私から見れば、反吐が出るわ!」

 

すると、その丘さんの発言に峰空は余裕たっぷりだった表情を一転、目を見開いて般若のような怒りの形相になる。

 

「は・・・?き、さまらぁ!!」

 

「え?効いてる!?ちょっ、何でですか!?」

 

「あー、うん・・・これ多分、椿には分かりにくい女心ってヤツだわ」

 

「ふぇ?お、女心?」

 

そう驚きながら私達は7回目の攻撃を吸収して返していたけど、よく見たら峰空は顔どころか腹の口も夏美さんに向けていて完全に無防備な状態になっていたぞ。

 

つまり――

 

「あっ・・・ぎぃやぁぁあああ!!!!」

 

「うーわ、横っ腹に直撃して大爆発したわ・・・」

 

「えぇ、嘘でしょう・・・?」

 

まさかまさかの夏美さんと丘さんによる大ファインプレーのお陰で、7回もの強化解放をされた攻撃を受けた峰空はボクシングのパンチが顔面を直撃したかのように背中から勢い良くぶっ倒れた。

 

「とにかく、2人共ナイス!」

 

「ま、私だって椿の姉なんだから、コレくらいはしておかないとね!」

 

「あ〜ら、それなら私も綾の母だから当然ね。むしろ、あんな奴は人間や妖怪以前に全女の敵よ!敵!!」

 

「あ、あはは・・・とりあえず、影の操!!」

 

その瞬間に椿は影の妖術を発動し、ガリバー旅行記よろしく峰空の影から作った大縄で巨体を地面に固定した。

 

しかし、それと同時に私達の後ろからドサリと誰かが落ちてくる音が聞こえて振り返ると、なんとボロボロとなったオジサンが倒れていた。

 

そして、ゆっくりと2人の栄空が峰空と私達との間に降り立ってくる。

 

「そんな・・・オジサン!」

 

「くっ、すまん・・・綾。俺とした事が、少々しくじった・・・」

 

「なるほど、ここからは第2ラウンドという訳ですか」

 

すぐさま丘さんがオジサンを担いで助けてくれたとはいえ、あれだけ育ての親をボコボコにされた私は奮い立つ戦意と共に、怒りの視線を栄空2人に向ける。

 

「綾・・・」

 

「椿、心配しないで。私は大丈夫、大丈夫だ・・・!」

 

このまま峰空を浄化させる訳にはいかないつもりだろうが、それなら全員まとめて浄化してやるまでだ!!

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