私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第玖話 半妖の底力

 

全力て覚醒した峰空を浄化し終えた事によって妖気切れを起こした椿は、今は朱雀さんに抱えられて夏美さんや丘さんと共に、残っていた野次馬の人達と一緒に避難していく。

 

そして、栄空を浄化するべく龍花さん達と残った私は、まだ分裂して2人の状態になっている相手を睨みつけるように見据えた。

 

「情けないですね、峰空」

 

「まぁ、アイツは女だったんです。仕方ない話でしょう」

 

そう言いながら龍花さんや虎羽さんの攻撃を軽々と避けたり片手で受け止める栄空2人に、龍花さん達は冷静ながらも苛立たしい声を上げた。

 

「くそ!すばしっこいですね!」

 

「違う、龍花!これは、こちらの攻撃が見切られているんだ!」

 

そう虎羽さんの言う通り、栄空2人は閃空と比べても全然なスピードであるにも関わらず、龍花さんと虎羽さんの攻撃を僅かな動きだけで避けている。

しかも、死角からの攻撃も全て・・・となると、多分これは――

 

「よし、一つ試しに。緊急祭繰龍!」

 

「うん?捕獲対象が、何をしようと・・・?」

 

「ただの捕獲対象だと思うなよ、この私を!!」

 

"ある確認"の為、私は手のひらから発生させた竜巻を野球のピッチャーよろしく、栄空2人に向けて振りかぶる。

 

「綾様!そんなのでは相手に避けられます!」

 

「分かってるよ、龍花さん!だから、この竜巻はサイズが小さい代わりに風圧と気圧を凝縮させて、目に見えないスピードで飛ばせるようにしたんだ!」

 

そして私は振りかぶった腕を力強く振るい、力を凝縮させて小さくした竜巻を栄空に投げつけた。

 

「間抜けですね、自分からその性質を言うなんて」

 

「それに、動きも見えますよ。その小さな竜巻がゆっくりと弧を描いて、落ち――ている?」

 

そう2人の栄空が目を丸くしたのも無理はない。何せ、これだけ風の力を野球ボール大に凝縮させているんだから、目に見えないスピードで飛ばすなんて"悲愴天・玄武"を使ってても不可能なんだから。

 

なので――

 

「凍華繚乱!」

 

すかさず私は一気に花開く氷の花を竜巻が落下する地点に投げつけ、それが開花して放った冷気の勢いを使って栄空2人に再度竜巻を飛ばす!

 

「なっ・・・ぐぅ!?」

「避け――ぐぉっ!」

 

そんな予想外にも程がある攻撃には両方の栄空ですら面食らったらしく、爆弾のようにブワッと膨れ上がった風圧で砕かれた氷の花弁が片方の栄空の足に深々と刺さった。

 

そして、その花弁を受けていない方の栄空も膝をつき、一瞬だけ痛みを表情に出したのを私は見逃さなかった。

 

「やっぱりな。2人に分裂して感覚や意識が分かれてるとはいえ、どっちも互いのを共有してるみたいだな!」

 

「なっ・・・!?という事は綾様、分裂した片方が見ている景色も、もう片方には見えているという事なんですか!?」

 

「簡単に言えば、そういう事!ついでに言えば、痛覚すらも共有してるみたいだよ。さっき私の竜巻を使って氷の花で攻撃した時は1人にしか当たってなかったのに、もう片方の栄空も痛がって膝をついてたから、きっと間違いない」

 

「なるほど。それに気付いていたから、攻撃にワンクッション置いたのですね」

 

「ま、まぁ・・・ね」

 

そう感心した様子を見せる龍花さんに、私は少し照れくさくなって鼻の頭を人差し指で掻いた。

 

「ふむ・・・そうなると、片方に攻撃を集中させた方が良いでしょうかね?」

 

「いいえ、龍花。それでも恐らく避けられます」

 

「虎羽さんの言う通りかな。トリックが分かったとはいえ、それの完璧な対処法が分かりきってなきゃ相手のペースに乗ったままだし」

 

とりあえず上手くいきそうな方法としては、手っ取り早く片方を戦闘不能にするか視界を遮るか、な訳なんだけど・・・あの栄空の我慢ならない様子からすると、また何かしてきそうだな。

 

「ええい、厄介ですね。こうなれば――」

 

「えぇ、全て――」

 

「「爆破させるのみぃぃぃい!!」」

 

すると、その瞬間に栄空2人は互いの手のひらを合わせて腕を大きく開いたと同時に、ドン!と身体に重い妖気がのしかかってきた。

 

「「重空死爆(じゅうくうしばく)!!」」

 

「ぐっ!?しまった・・・そういやコイツ、重力を増やすような事も出来たんだっけ。だとすると、このまま爆発させる術と合わせるつもりか・・・!」

 

私の嫌な予感は的中しているらしく、2人の栄空の手のひらには熱のような妖気が溜まっていくのが見える。あれを何とかして止めないと、とんでもない規模の爆発を起こされて私達も皆も一巻の終わりだ。

 

「目的の妖狐や人間も、身体さえ残っていれば問題はありません」

 

「そうですね。手間がかかって面倒ですが、亜里砂様の力ならば死体からでも記憶を抜き出せる」

 

「「さぁ、散れ!!」」

 

だけど、それを止めようにも私や龍花さん達、それに椿や狐2人も全員が地面に押さえつけられていて身動きが取れない。

 

「くそっ・・・!」

 

「うぅ、綾ちゃん・・・!」

 

『ぐ、椿ぃ!!』

 

『いかん・・・あの爆発だけでも、何とかせんと!』

 

「「もう遅いです!!はっははは!!」」

 

そう叫びながら栄空が手を高く掲げた。しかし、それから何秒経っても私達に爆発が襲いかからない。

 

「ぬっ?これは、どういう――何!?こ、これは!!」

 

その事に驚く栄空の手を見ると、妖気が集まっていた2人の手は何故か凍りついていた。

 

これが出来るって事は・・・まさか、また雪が!?

 

「間に、あった・・・」

 

「ぬぅ・・・!半妖如きが!!」

「中途半端な奴らが、この私の邪魔をするなどと!!」

 

「さ〜て、中途半端なのは誰でしょうかね?さぁ皆、あの手に気をつけてかかれ!」

 

すると、今度は赤木会長の一声と共に半妖の生徒達や零課の人達が、一斉に栄空へと飛びかかっていく。

 

そして、私達の身体も何故か重力の術が解除されて自由に動けるようになっていた。よく見ると、三間坂さんのタバコの煙が漂っていて、それによって相手の妖気を拡散して無効化させているみたいだ。

 

とはいえ、それでも皆が身体を張って危険な事なのは変わりない状況だ。それは椿も同じく思ったらしく、皆を止めようと朱雀さんに抱えられながらも必死に叫んでいた。

 

「皆、何やっているんですか!?」

 

「何って、奴の視界を塞いでいるのさ。こうやって大量の人だかりで囲めば、アイツが分裂して2人になっていようと君達を見つけにくくなるだろう?」

 

そこを攻撃しろと言われても・・・と思っている矢先、その内の1人を栄空が狙っているのが見えた。

 

それを見た私と椿が急いで自分の術で攻撃を食い止めようとした時、なんと栄空を囲っている半妖の人達の前に薄い六角形の盾が現れ、相手の起こしてくる爆発から守ってくれたのだ。

 

「この形の盾・・・まさか!」

「そっか!玄葉さんの"玄武の盾"か!」

 

「大丈夫ですよ、2人共。半妖の人達の勇気は、私が守ります。――玄武盾!百葉樹、散開!!」

 

そう玄葉さんが叫ぶと同時に、玄葉さんの周りに漂っていた分裂している玄武の盾も他の半妖の人達を守る為に飛んでいく。

 

そして玄葉さんも1枚だけになった盾を前に構えながら、瓦礫の山から私の前へと降り立ってきた。

 

「綾様、椿様。半妖の人達の行動を無駄にしない為にも、私達は私達の出来る事をやりましょう。私は半妖の人達に紛れ、相手の不意を突いて攻撃を仕掛けてみます。お2人は今の内に、妖気の回復の方を」

 

「うん、分かりました!」

「了解です!神妖の力を使うには、妖気が必要だもんな!」

 

そして、皆の半妖の底力を信じて妖怪食を持ってきてもらっている狐2人の所に向かう私達に、まだダメージが回復していないにも関わらず夏美さんと丘さんが心配の声をかけてくる。

 

「椿、皆は大丈夫なの!?」

 

「大丈夫・・・というより、皆を信じるしかないです」

 

「確かに、あの栄空という奴を倒すには綾ちゃんと椿ちゃんの力が不可欠だものね・・・ごほっ、ごほっ」

 

「ひとまず白狐さん、夏美さんと丘さんにも治癒の力を頼める?それと、椿と私に妖怪食を・・・」

 

『う・・・うむ』

 

うん?おいどうした白狐さんに黒狐さん?何で2人して申し訳無さそうな顔して冷や汗流してるんだ?

そんな様子だと、何となく嫌な予感がしてくるんだけど・・・。

 

「僕、援軍を要請する時に"妖怪食のいなり寿司も一緒に持ってきて"って、そう言いましたよね?里子ちゃんから、いなり寿司を貰っていないんですか?」

 

そこで椿も首を傾げながら質問すると、狐2人は突然ジャンピング土下座してきた。

 

『その、だな・・・すまん!』

 

『すまぬ!白狐と一緒に、食べてしまった!』

 

「・・・は?」

「・・・はい?」

 

いきなりのトンデモ発言に思わず私も椿も威圧感のある返事をしてしまったと同時に、狐2人は土下座したまま妖怪食を食べてしまった経緯を説明してくる。

 

『いや、実は・・・此処に来る途中、全速力で急いでいたせいか妖気が切れかけてしまい、このままではと・・・つい!』

 

「え、っと・・・」

「あぁ・・・」

 

その白狐さんの言葉で、私と椿は狐2人がヤバい状態だった事を思い出して何も言えなくなってしまう。

 

まぁ、確かに2人は妖気が中々回復出来ないんだし――って言っても、それなら何で里子も龍花さん達に持たせなかったんだって話になる訳だし。ひょっとしたら里子も狐2人の状態の事を忘れてた可能性だって・・・だ〜もう!考えたら考えるだけイライラしてきた!

 

「「白狐さんと黒狐さんの馬鹿ぁぁぁ!!」」

「あと里子ちゃんとかも!こんな時に限って、何でウッカリしちゃうんですかぁ!!」

「どうせ皆忘れてたんだろ!2人の妖気が回復しにくいって事によぉ!!」

 

気付いたら私も椿も怒りで叫んじゃってたよ!

というか、それを聞いた龍花さん達も申し訳なさそうにしちゃってたから益々こっちも困るわ!皆が狐2人の状態を忘れてたから起こっちゃった事なのは分かるけども!

 

だからって、私達に渡す為の妖怪食を食べちゃったら意味無いでしょうがぁ〜!もう!!

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