私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾話 ギリギリセーフ・・・って言いたい所だけど

 

私達が妖気を回復しようとした矢先、まさかの狐2人が道中で妖怪食を食べてしまったという大ハプニング。

というか、そこまでいなり寿司の食欲に勝てなかったなんて、2人の椿に対する優先度が下に感じるんだけど・・・。

 

『つ、椿、綾・・・すまん。急いでお主達の所に行くには、空腹では思うようにいかなくての。それに、減らないタイプのいなり寿司だと思っていたが、どうやら里子は特別製にしていたらしく、減るタイプだったと気付いた頃にはもう・・・』

 

『白狐、それも言い訳に過ぎん。妖気が減っていて思考が上手く働かなかったとかも、ただの言い訳だ・・・後でタップリと2人に絞られよう』

 

『くっ・・・お主も賛同したではないか、黒狐よ』

 

『何を言う!俺は椿の為に少しでも残しておくつもりだったぞ!』

 

『嘘つけ!最後の1つを食ったのは、お主だろう!』

 

「「ちょっと黙っていて、2人共」」

 

『『・・・はい』』

 

もう無くなっちゃったモンは喧嘩してても仕方ないだろうし、どっちにしろ狐2人も里子も後で説教するのは確定だから、今は無駄に話をしている場合じゃないです。

それに、私も椿も妖気を回復出来るなら別にいなり寿司じゃなくても良かったのに、皆して変な所で無理に気を遣わなくても・・・。

 

そうして妖気の回復をどうするかと考えようとしていた時、夏美さんが丘さんに肩を貸してもらいながらも私達の方へやって来た。

 

「くっ・・・あ〜もう、しょうがないわねぇ・・・おじいちゃんに電話で事情を話して、別の妖怪に持って来させるわね」

 

「ありがとうございます、お姉ちゃん」

 

「というか夏美さんも丘さんも、2人共それで大丈夫なんですか?まだフラフラしてるけれど・・・」

 

「あぁ、何か意外と大丈夫よ。きっと、三間坂さんって人のお陰かしらね〜。それに、結構なナイスミドルじゃない」

 

全く、丘さんには既に私のオジサンが居るでしょーに・・・って違う違う、話が脱線したわ。

 

とにかく、後は代わりの妖怪食が到着するまでに半妖の人達と龍花さん達がやられないよう、私達も可能な限り手助けをしておかないとね。

 

『よし、椿に綾。我らも補助を――』

 

「役立たずは引っ込んでいてください」

 

『ぐっ』

 

「残す分に私をカウントしてなかった事、ちゃんと聞いてたからな〜?」

 

『ぐは!す、すまぬ・・・』

 

『び、白狐・・・やはり、ここは大人しく引っ込んでおいた方が良さそうだぞ・・・』

 

そう言って、狐2人は怯え半分で警察署だった瓦礫の山へと引っ込んでいった。まぁ、あの2人には椿の爺さんからの説教も加わるみたいだから、これ以上は弄らないでおいてあげますか。

 

それに、今の私と椿は妖術が空腹とかの怒りでコントロール出来ない状態だから、そうして大人しくしておいてもらった方が色々と安全だしね。

 

「玩具生成、てい!!」

「食らえ!緊急祭繰龍!!」

 

「ぐっ!!」

「なんの・・・っ!!」

 

私と椿は栄空2人を別々に攻撃し、椿の細く発射した竹の水鉄砲や私の規模を小さく細くした竜巻によって、どちらの栄空も衝撃で前につんのめった。

 

「貫通しないのは予想してたけど、やっぱりアイツの身体は硬すぎだな・・・」

 

「うん・・・だけど、この半妖の人達の隙間を狙って放った攻撃は見えなかったみたいだし、このまま援護を続けよう!」

 

そう半妖の人達の姿に紛れるようにしながら、私と椿は栄空2人に向かって見えない攻撃を続ける。すると、どちらの栄空も自分の思い通りにいかない事への怒りで堪りかねたらしく、ついには2人して声を荒らげてきた。

 

「くそ・・・!いい加減にしてくれませんか、この雑魚共!!」

 

「あぁ、そうですね・・・いい加減イライラしてきます。それならば、一気にカタを着けましょうか!峰空とは違う、私の覚醒した姿を見せてあげましょう!」

 

そして、また栄空2人は互いの手を合わせて禍々しい妖気を膨れ上がらせていく。あの妖気の感じは、やっぱり相手も峰空同様に・・・!

 

「皆、そこから離れて!アイツも、峰空のように覚醒するぞ!」

 

その私の一声で、皆も相手の様子を悟って急いで栄空2人から大きく離れてくれた。すると、今度は空から攻撃をしていた朱雀さんが、私達の方へ心配そうな顔をして降りてくる。

 

「椿様に綾様、妖気は?妖怪食で回復したハズでは――」

 

「ごめんなさい、僕達が食べる前に食べられていました」

 

「ちなみに犯人は白狐さんと黒狐さんな」

 

「・・・」

 

やばっ、朱雀さんまでもが申し訳なさそうにしちゃったよ。

龍花さん達は1つの事に強く集中してると周りの他の事が見えなくなる時があるのは、わら子が拐われた時に知ってはいたけど・・・多分、今回は私達の加勢に気を取られたから、あの狐2人が妖怪食を食べてしまう事態を防げなかった感じでもあるのかな。

 

そんな事を考えながら椿と再び狐2人の方を見てみると、やっぱりというか2人仲良く体育座りで縮こまってます。おぅ、シッカリ反省しなよ〜。

 

「でも大丈夫です、朱雀さん。今はお姉ちゃんが連絡をしてくれて、新たに妖怪食を持って来てもらっています。それまでの間――」

 

「なるほど、アレを押さえておけという事ですね。さて、出来るでしょうか・・・いえ、私達にも落ち度があったので、4人で何とかしてみせます!」

 

そう言った朱雀さんが視線を向ける先には、既に妖魔人である自身の姿を更に変貌させていく栄空2人の姿があった。

 

2人の合わせた手は両手共に乱雑な粘土のように絡まり、片方の身体が肩の関節を外して背中へ回り込むようにして、首から下を細長く鋭く変化させていく。そして、もう片方の栄空も四つん這いのような姿勢を取った瞬間に肩から下がグニャリと波打ち、まるで脱皮するかのように甲殻で包まれたハサミや節足を皮の内側から飛び出させた。

 

「ふはははは!これが、私の覚醒した姿です!」

「さぁ、覚悟しなさい!薄汚い化け物共が!」

 

そうして栄空は全身真っ黒で巨大なサソリに2つの顔を無理やり付けたような、こちらを「化け物」と言っている本人が化け物としか感じられない姿となった。

 

「くっ・・・これはいけません!」

 

すぐさま朱雀さんは弓を引き、変貌し終わる直前の栄空へと矢を放とうとするが、相手は先端に顔の付いた尾をしならせ鞭のように振るってくる。

 

「おっと、そうはさせませんよ!」

「はははは!」

 

間一髪ながらも朱雀さんが尾の直撃を回避したと思った瞬間――

 

「きゃぁっ!!」

 

なんと、空を切るような尾が振るわれた周囲が激しく爆発し、その爆風が朱雀さんを包み込んでしまったのだ。

 

「「朱雀さん!?」」

 

だけど、すぐ朱雀さんは纏わりついていた爆風を背中の翼から発した炎で切り払い、少し驚いた様子ながらも私達の後ろへ降りたってくる。

 

「ふぅ・・・あまりにも気持ち悪くて、つい冷静を欠いてしまいました。ですが、朱雀の力を受け継ぐ私に炎の類いは効きませんよ」

 

「ほっ、良かった・・・」

 

「ふふっ・・・まさか綾様、本気で私の事を心配してくれていました?」

 

「うぐ、そう恥ずかしくなるような事を言わないでもらえませんか」

 

とにかく、相手がガチガチの本気モードになった以上は、もう半妖の人達を戦わせるのは危な過ぎる。

だから、後は龍花さん達と一緒に私と椿で何とかしなくちゃいけない訳だけど・・・問題は妖怪食が届いてないんだよなぁ。

 

すると、そんな"神妖の力"が使えない私達の状況を察したからか、栄空は半妖の人達や見物していた一般人を無視して私達の方へ突っ込んでくる。

 

「さぁ、もうこれで邪魔する者は居ません!妖狐の椿、そして霊能力者の綾!覚悟してもらいましょうか!」

 

「くっ・・・!」

 

「アイツ、こんな姿でもまだ華陽の言う事を聞くのかよ!」

 

すぐさま私達は栄空から距離を離そうとするも、相手は覚醒した姿に変化した事で峰空同様に強くなったらしく、逃げようとした瞬間には既に目前まで迫ってきていた。

 

「椿様!綾様!このっ・・・朱雀弓!!」

 

その相手の行動を阻止するべく朱雀さんは炎の矢を飛ばして攻撃するも、サソリのような姿となった栄空の身体はその攻撃をアッサリと弾いてしまう。

 

「嘘でしょう、更に硬くなってるの――ぎゃぅ!?」

 

「しまっ、椿――うわっ!?」

 

そして、私達も前から来る栄空を避けようとした途端、なんとまた一瞬で移動した相手に後ろから振るってきた大きなハサミで殴られ、狐2人が隠れている瓦礫の山の方まで吹っ飛ばされてしまった。

 

『椿!くそ、我らは何をやっているんだ!』

 

『嘆いても、あの時食ってしまったのが――』

 

『だから、あの時はお主も!』

 

そんな私達に狐2人は椿を心配しながらも、先程やらかした事でまた口喧嘩を始める。

うん、例によって私は完全に眼中に無いんですけど・・・マトモに栄空と戦える人材なのに、この扱いの差は何なんですかね?嫁補正?

 

とりあえず、急いで私と椿は翻るように身体を起こし、ロケットみたく突っ込んできた栄空の追撃を回避する。すると、相手は両手のハサミを大きく展開して、爆発させた時のような強い妖気を内側に集中させ始めた。

 

「ふむ、あれ位では無理ですか。それなら、最大火力で――ぐぉっ!?」

 

その瞬間、栄空の右側のハサミに2mくらいもの長さがある矢が突き刺さり、それが暴発した衝撃で左側のハサミも空の方へと発射方向が逸れて爆発のエネルギーがビームのように飛んでいった。

 

「この矢は朱雀さんの矢じゃない・・・という事は――」

 

「まさか、オジサン!?」

 

私達が瓦礫の山に振り返ると、そこには鎧が半分砕けてボロボロとなりつつも弓を相手に構えるオジサンの姿があった。パイロットヘルメットのようになっていた兜は3分の1が抉れており、その中からは坊主のように短い黒髪と栄空を強く睨みつける瞳が覗いている。

 

「ふぅ・・・そういえば忘れていました。まだ生きていたのですね、我が兄弟子。そんな状態になっても戦う気でいるとは、情けなさの極みですよ」

 

「貴様に兄弟子と呼ばれる筋合いも器量も、今の俺には無い。お前はもう、ただ罪無き人々や妖怪達に危害を加える怪物としか思わん」

 

「ほぅ、それはそれは・・・ならば、そこに隠れている者と共に消え去りなさい!!」

 

そんなオジサンに向かって、栄空は右側のハサミを再生しながら左側のハサミを開いて再び攻撃態勢に入る。

 

だけど、その攻撃は1回だけなら私達にも返せる!

 

「「術式吸収!!」」

 

私と椿は栄空とオジサンの間に飛び込みつつ、影絵の狐の形にした右手で相手が放った爆発のエネルギーを吸収した。指先が燃えるように熱くなって火傷しそうなものの、それでも椿と2人なら吸収は可能だ。

 

「それから――」

「強化解放!食らいやがれ!!」

 

「ぬっ!?」

「くぉっ!!」

 

そのまま私達は左手を前に突き出して吸収したエネルギーを爆炎に変えて放出し、栄空を連鎖する爆発の中へと閉じ込めた。

 

今ので妖気の残りを殆ど費やしたとはいえ、これなら――

 

「おっと、危ない危ない・・・貴方達には、それがありましたね」

「ですが、それももう限界でしょう?」

 

なんと、それすら栄空の甲殻は簡単に凌ぎきってしまったのだ。

 

「嘘だろ・・・アレでも無傷かよ・・・」

 

「くっ・・・はぁ、はぁ・・・」

 

すると、そうして打つ手が無くなったかと頭の片隅で考え始めた時、空から天の助けとも感じる声が私達の耳へと届いてくる。

 

「椿様!!綾様!!」

 

その声が聞こえた方へ顔を向けると、空から烏天狗の黒羽さんが両手に大きな風呂敷袋を持ちながら飛んできているのが見えた。

あの量や状況からすれば、風呂敷の中身は大量の妖怪食が入っていると見て間違いない。

 

「どうやら、ギリギリセーフ・・・って言いたい所だけど」

 

「ええ、そう簡単に栄空が妖怪食を渡させる訳が無いですよね」

 

しかしやはりというべきか、2つの栄空の顔は尻尾の方が黒羽さんを睨み、正面の顔が私達を睨みつけてきていたのだった。さてはて、どうしたモンかな・・・。

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