私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾壱話 因縁の終焉

 

妖気切れギリギリといった状況で黒羽さんが妖怪食を持ってきてくれたとはいえ、サソリみたいな姿となった栄空が邪魔しようと私達や黒羽さんを2つの顔で睨みつけてくる。

 

無論、こんな状況では黒羽さんも迂闊に降りれないので、風呂敷袋を持ったまま空中で相手の様子を伺っている状態だ。

 

すると、そこへ狐2人が瓦礫の山から飛び出して私達の前へと立ってくる。しかし、私達には満足に戦う事が出来ない2人が、これから何をしようとしているのかは一目瞭然だ。

 

『よし、椿に綾よ。我らが囮に――』

 

「却下です、白狐さん」

 

『なぬ!?』

 

「はぁ・・・いやさ、椿は2人に消えてもらいたくないのなんて、分かりきってる事でしょうが」

 

「ええ、そうですよ。それに――」

 

そんな狐2人へ、私と椿は怒りを込めた眼差しを一緒に向ける。

 

「「お説教がまだなんで」」

 

『うぐ・・・』

 

『詰んだな、これは・・・白狐よ』

 

まぁ、こんなピンチになってる原因は言わずもがなだからね。なので、あんな風に落ち込まれていても自業自得って事で放っておきます。

 

「あっ、そういえば綾ちゃん・・・ごにょごにょ」

 

「ふむふむ・・・お、それ良いかもね」

 

そんな2人を避けながら前に出た私は、そこで何かを思い付いた椿から小声で作戦を聞かされ、勝機が掴めそうな事にニッと笑顔が零れる。

 

「じゃあ、行くよ!玩具生成!」

 

「椿、気を付けて飛んでよ!緊急祭繰龍!」

 

そして椿が両手に持ち手のあるマジックハンドを生成してジャンプした瞬間に、私は彼女の足元に小さな竜巻を2つ発生させてスケート靴のように地面を早いスピードで移動出来るよう浮遊させた。

 

「黒羽さん!」

 

「はっ・・・分かりました、椿様!」

 

そんな私達の術を見て黒羽さんも意図を察し、椿が伸ばす3階建てビル並まで長いマジックハンドの範囲に入って風呂敷袋を渡そうと、私達の方へ向けて滑空する。

 

すると、そこでやはり栄空が尻尾や爆炎を使って妨害をしてきた。

 

「"悲愴天・玄武"展開!四神奥義、砕氷拳!!」

 

「朱雀弓!剛矢火炎!!」

 

そこで私は満を持して、修行で身に付けた"儀礼衣装に宿る四神の力を術に加える"奥の手を使い、朱雀さんが尻尾の顔に目掛けて放った勢いの強い矢と共に、相手が吐いてきた爆炎ごと正面の顔を"悲愴天・玄武"や氷の妖術によって強化された剛腕でブン殴る。

 

「「ぐぉ!?」」

 

「どうですか?硬い身体にはダメージは与えられなくても、その顔は脆いようですね」

 

「さっき術を強化解放した時、顔だけは必死にハサミとかで隠して守ってたもんな!それなら、やっぱり顔が弱点って訳だ!」

 

それから朱雀さんは私の隣に降り立ち、声を上げながらよろめく栄空へ向けて再び弓を構えた。その瞬間、今度はオジサンが反撃をしようとした栄空の両バサミを先程の長い矢で射抜いて地面へ縫い付けた。

 

「ぐっ・・・この神力が込められた矢尻、一体どんな作り方をしたというのです!?」

 

「自分の力だけを過信し続けた、妖魔へと堕ちた貴様には分からんだろう。貴様の甲殻をも貫く、この"神涙(しんるい)の隕鉄矢(いんてつし)"は、俺が貴様ら滅幻宗を打ち倒す為に練り上げた、生涯の全てと俺を支えてくれた者達が生み出した切り札だ!」

 

私と朱雀さん、そしてオジサンに挟まれた栄空は機嫌が悪そうにハサミを射抜いていた矢を爆炎で消し飛ばしながら、ゆっくりと姿勢を立て直してくる。

 

「ちっ・・・しかし、それが分かった所で」

「ええ、その対処をすれば良いだけの話です」

 

「むぅ・・・やはり、これだけ変異を遂げた奴相手には足止めが精一杯か」

 

そう言ってオジサンは眉間にシワを浮かべていたけれど、そのお陰で椿は既に黒羽さんから風呂敷袋を受け取る事が出来た。そして、そのまま椿も風呂敷袋を抱えて私の方に降り立ってくる。

 

「おっと、ナイス椿!」

 

「ナイスキャッチ、ありがとう綾ちゃん!それで、やっぱり中身はいなり寿司ですか・・・」

 

「まぁ、今は何でも良いよ!これで何とか!」

 

私と椿は風呂敷の中から出てきた沢山の重箱に詰められたいなり寿司に苦笑いしつつ、それを急いで口に頬張って妖気を補充していく。

 

「はぐっ、はぐっ・・・んぅ〜」

「んぐ、もぐもぐ、ふぅ・・・」

 

だけど、栄空に狙われないように早く食べようとしたせいで、私も椿もハムスターの如く口いっぱいに詰め込み過ぎて少しキツくなってしまったよ。

 

「お2人共、落ち着いてください。あぁ、ほら・・・喉に詰まっているじゃないですか!?」

 

「ん〜!!ん〜!!」

 

「ん、ぐっ!ごほ、ごほ・・・す、すいません・・・」

 

『むっ、椿が不味そうだな。こうなれば、我が口移しで――うごっ!』

 

とか何とかやってたら、どさくさに紛れて白狐さんが椿に変な事しようとしてたので腹に膝蹴りしときました。おぅ、さっきまでヘコんでた気分は何処に行ったんです?

 

「全く、そこのお2人は何をやっているんですか。はい、椿様。このお茶で、ゆっくりと流し込んでください」

 

「んぐっ、ん・・・ぷはぁ、助かりました〜」

 

そうして椿も無事に妖気の補充が完了したのを見届けてから、私達は再び栄空へ向き直って各々の武器を構える。とはいえ、それでも私と椿が回復出来た妖気の量は金狐や"鈍色の狐"になれば数分で消費し終えてしまう程度でしかないから、いざトドメというべき所で使うしかない状態なのは仕方ないけど。

 

「む、妖気を回復されましたか。しかし、そんな所で私の――」

「そう、この攻撃は避けられないでしょうがね!!」

 

すると、オジサンや朱雀さんからのダメージが回復しきっていない栄空は身体全体に熱のような妖気を溜め込んでいき、それを使って大きな爆発を起こそうと再び身を固め始めた。

 

「くっ、朱雀さん!皆を!」

 

「椿様、落ち着いてください!いくら私でも、1人ずつしか運べませんよ!」

 

そう慌てて椿は皆を避難させようとするけれど、私は冷静になりながら周囲の状況を確認して、虎羽さんと共に"ある方向"へと人差し指を向ける。

 

「朱雀さんの言う通りだ、椿!こんな状況で、栄空と戦っているのは私達だけなんかじゃない!」

 

「ええ!椿様、私と綾様の指している方向を見てください!」

 

私と朱雀さんが言った瞬間、私達が指していた方向から勢い良く水の束が一気に栄空へと飛んできた。

 

「うぉぉぉお!!このまま見ているだけで殺されてたまるか!!」

「人間舐めんなぁ!!」

「そっちが放熱するつもりなら、その身体を冷やしてやる!!」

 

――そう、警察署に残っていたホースや消火栓を使って、一般の人達が栄空に向けて水を発射していたのだ。

 

そんな皆の行動に椿は慌てて止めようとするも・・・。

 

「ちょっ、何やっているんですか!?そんな事をしても、栄空には――」

 

「ぬ、ぐぅ・・・くそ!!」

「放熱が・・・爆発が、出来ないだと!?」

 

「――って、効いていました!?」

 

そう椿が驚く程に予想通りというか、なんと栄空は放水によって身体の熱を奪われた事で、同時に放出していた可燃性のガスへ引火させるだけの熱量を作る事が出来なくなっていた。

 

本来なら多少の足止めをしてもらって氷の妖術で爆発を止めるつもりでいたけど、これなら――!

 

「冷えろ、細氷拳!!椿、今の内だ!!」

 

「うん!動水の儀!!」

 

ホースで放たれていた水の一部を凍らせて栄空の身動きを封じた所に、椿が発動した水を操る妖術によって栄空の足元へ溜まっていた水が槍の形へと固まっていく。

 

そして、私は確実に栄空を浄化するべく雪にも目配せをした。

 

「雪、頼む!!」

 

「えっ――あ!分かった!!」

 

私達の作戦を理解した雪が両手を翳した瞬間、椿の作り上げていた水の槍は大きな氷の塊へと変貌して、必死で逃げようと氷の束の中で暴れる栄空に向けられる。

 

「くそ、くそ!何故、人間共が化け物共の味方をする!?」

「騙されるな!その化け物共は、お前達を天災や戦争が起こる環境で利用し、自ら滅びの道を歩ませようとしているのだぞ!!」

 

そう栄空は往生際悪く一般の人達に向かって訴えるけれど、もう誰一人として聞き入れる様子は無かった。

 

「はぁっ!いい加減にしてください!!」

 

「ぐわぁぁぁあ!!」

 

そして、椿が投げた槍によって栄空は四肢すらも凍らされた事で完全に固定され、とうとう此処から逃げる事すら封じられた。

 

「く、くそ・・・!お前達、分かっているのか!私は、力を持たぬ貴様達の代わりに化け物共を退治しているんだ!この姿も、それをする為だと言うのに・・・貴様らは、生意気にも私を攻撃するというのか!!」

 

それでも、栄空は諦める事なく皆へ訴え続けていたが――

 

「黙れ、"負なる者"。貴様の方が、とっくに化け物そのものなのは分かっていたハズだ。そんな奴の声など、平穏を望む人間や妖怪達にとって本当に必要な声だと、そう思っていたのか?」

 

「ひっ!止め――ぎぃゃぁぁぁあ!!!」

「こんな、こんな所でぇぇぇぇえ!!!」

 

そうオジサンは言い放った途端に矢を放ち、私達がトドメを刺すまでもなく2つの顔を射抜かれた栄空は、その矢尻に込められた神力によってグズグズと寄生妖魔諸共に溶けて消えていった。

 

「さらばだ、栄空。この、因縁の終焉・・・願わくば、なるべく俺も早く向こうに行こう」

 

そんなオジサンが消えゆく相手に向けた物悲しそうな顔を見て、皆の為に浄化をしようとしていた椿は勿論の事、今まで共に暮らしてきていた私すらも何も声を掛ける事すら出来なかった。

 

――何が悪となって、何が善となるか・・・まだ今の私達には分からない。

 

だけど、それでもオジサンはきっと自分が為すべきだと思った"善"の為に動いたのだと、そう私は何となく感じた。

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