私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陸話 義父の本性と襲撃者

 

私は白狐さんに詰めよろうとする黒狐さんの間に割って入った。黒狐さんの表情が不満げに歪む。

 

『おい白狐に綾。なぜ椿を誘導させて、お仕置きを止めさせるんだ』

 

「黒狐さん、さっき椿のお爺さんが言った事をもう忘れたの?」

 

『そうじゃぞ黒狐、慌てるな。何も罰を与えるなと言っている訳ではない。――それに1人足りんじゃろ?そいつをこの場に連れて来てから、改めて考えれば良い』

 

「『・・・そうか、椿の父親!』」

 

私と黒狐さんは同時に目を見開いた。忘れていた、椿の家族だった人物達はこの2人だけでなく他にも妖怪である事を隠していた義父が居た事を。

 

椿もその言葉に振り返った。彼女の質問に椿の祖父が答える。

 

「そういえば、僕のお父さんだった人は妖怪なんだよね?どんな妖怪なの?」

 

「ふむ、奴は「蟲喰い」という妖怪でな。衣服等に穴を開ける妖怪じゃ」

 

「えっ?あ、あれ妖怪の仕業なの?」

 

「うむ。しかし奴はどういう訳か、衣服だけでなく様々なものに虫食いのような穴を開けるんじゃ。それは結界すらも穴を開けてしまうほど、強力なものになっていてな」

 

「なんだって?じゃあ、奴はその力で・・・」

 

私がふと口を挟んだ時、誰かがいきなり扉から現れて私達の方へと向かっているのが見えた。

 

「待って、あれは誰?私達に用事があるみたいだけど・・・って」

 

「あの?おじいちゃん、誰か来たよ?しかも、あの格好・・・」

 

「そうそう、ここにも結界が張っておるから普通の人間は来られないようになっておる。じゃが、アイツの力を使えばこんな風に人が――なにぃぃいい!!」

 

「おいおい、しっかりしてよ椿のお爺さん!!」

 

私が漫才のようなツッコミを入れるのを他所に、歩いてくる数人の坊さんの後ろから誰か別な人物が叫びながら此方へと駆け寄ってくる。それを見て捕まえられている2人が助けを求める。

 

「おまえ!夏美!大丈夫か!」

 

「あ、あなた!?嘘でしょう!何でここに!?」

 

「あ、あぁ・・・助けてぇ!お義父さん!」

 

「あんたは――そうか、虫食いの力を使って結界を!」

 

「おのれ悪鬼ども!そして、妖怪なのに私達の家族に紛れ込み悪さをしていた翼!それが貴様の正体だな!この人達の協力で、今すぐお前達を始末してやる!」

 

私はすぐに振り返って椿の祖父へと目をやると、既に天狗の姿へ変身し椿の義父へと鋭い眼差しで睨みつけた。

 

「蟲喰い・・・お主、とんでもない者を連れて来たもんじゃ。――で、協力するというそいつ等は、お主の言う事を聞くのか?」

 

「な――にぃ!??」

 

「数珠が飛んできた!?」

 

すると突然坊さん達が椿の義父へと数珠を投げつけ、光る縄に変化したそれで縛り上げてしまった。

 

「ご苦労さん、穴を開ける事しか能の無い下級妖怪が。コソコソと俺達の寺を狙い、金品や仏像を略奪しようとするとはな」

 

「うっ、ぐぅ!こんな数珠――くそがァァァアアア!!」

 

蟲喰いはその数珠の束縛から逃れようと頭を虫の妖怪の口へと変えて噛み付くも、逆に数珠に込められた謎の力によって感電したかのようになり動かなくなってしまう。

 

「ちっ、いかんのう。流石に悪い奴とはいえ同じ妖怪を見殺しにしては、後でセンターから文句を言われるわい。皆すまんが、一旦アイツを助けるぞ!」

 

「分かってます!皆――っ!?」

 

しかし彼を助けようとした私達もまた、何故か身体が石にされたかのようにその場から動けなくされてしまっている事に気づいた。

 

「なっ――これは!」

 

「困りますねぇ。あなた達に一斉にかかってこられたら、流石に下っ端の彼らでは太刀打ちが出来ません。ちょっと影に杭を打ち、固定させてもらいましたよ」

 

そう言って坊さん達の中から、修行僧ばかりの格好をした連中とは違う寺の本職みたいな格好をした人物が現れる。若干優しげのある顔に見えるが、そこから鋭くつり上がって此方を見据える目には恐ろしい程の殺気を感じさせた。

 

「いかん!滅幻宗の中でも、戦闘と経によって妖怪を滅する事が出来る実力者の方が出てくるとは!独古で儂らの影を打ち付けたのも奴か!」

 

「なんだって!?」

 

私が視線を何とか自分の影へ移すと、確かにあのダンベルもどきが影へと突立っていた。そしてその坊さんは数珠を手にして読経を始めようとする。

 

『いかん、椿、綾!耳を塞げ!』

 

『黒狐よ。綾は人間で、椿も我らの妖気を持っとるから此奴の経ではやられん。しかし、翁以外の他の妖怪はヤバそうじゃな』

 

「白狐さん!何とかならないの!?」

 

皆を守らないと――私が足が折れてでも無理やりにでも動こうとした瞬間、私の影へ突立っていたダンベルもどきが小気味よい音を立てて折れる音が聞こえた。

 

そして、後ろから聞こえてきたのは私が夢で聞いた事のある女性の声だった。

 

「全く、何時から向こうはそんなに物騒な事をするようになったのかしらね。綾、貴方を助けに来たわ」

 

『な・・・誰じゃ!お主は!?』

 

「あなたは夢で会った――雫さん!」

 

玄関に立っていたのは、身なりこそバブル絶頂期に流行っていたような青いピッチリとした長袖とタイトスカートを着ているものの、確かに夢で出会った女性「天女雫」の姿がそこにあった。

 

そして雫は私達の前へ出て後ろを振り返った。

 

「そこの子狐ちゃんが力を解放出来るまで、私と綾で彼らを食い止めましょう。たった5分あれば何とか出来るでしょう?」

 

「そうは言っても・・・雫さん、アイツらと戦う方法なんてあるの!?」

 

「舐めてもらっちゃ困るわね。そもそも綾に「使い魔」の召喚を教えたのは――この私よ、出て来なさい「陰摩羅鬼(おんもらき)」!!」

 

雫がそう言って手を前へかざすと、私が小次郎を呼び出した時と似たような感じで周囲の影から黒いものが集まり、そこに黒い鶴のような怪物が現れた。それが羽根を広げて大きく一度羽ばたくとその力が椿を助けたのか、黒い姿になった彼女が狐の形にした手を突き出した。

 

「妖異顕現、影の操」

 

「あら、子狐ちゃん意外と早いお目覚めね」

 

「な、バカな!私の術が効かないですって!?」

 

お経を唱えようとしていた坊さんが今起こった事態に驚きの声をあげる。

 

「そーれそれ、余所見しているヒマは無いんじゃないかしら?陰摩羅鬼、そのまま皆を縫い付けているものを祓いなさい!」

 

「わ、私も手伝う!来て、小次郎!」

 

「あい分かった!そちらの女は・・・今は後にしておこうか」

 

私と雫の使い魔によって次々と皆の影にあるダンベルもどきを破壊していく。そこへ椿の影を操る力も加わって更に早く抜いていこうとすると、再びあの坊さんが動いた。

 

「くっ、しまった。ええい、もう一度打ち付けて――ぐはぁ!」

 

けれども、先に動けるようになった椿の祖父が天狗の扇で坊さんを吹き飛ばす。

 

「助かったぞ、椿に綾よ。そして見知らぬお前さんもな」

 

「ううん。それよりも、あの人達が向かってくるんだけど?」

 

「向こうはまだやる気なの!?」

 

「これはとことん付き合うしか無さそうかしらね」

 

私達が話している最中にも、修行僧の連中が杖を握って此方へと走ってきた。

 

「うぉぉおお!栄空さんがやられたからって、武闘派の滅幻宗である俺達は違うぞぉぉお!」

 

『ふぅ、やむを得んな。やるか黒狐よ』

 

『そうだな白狐』

 

「全く・・・こいつらも何故かやる気満々じゃわい。しょうがない――皆相手してやれ!」

 

それから私達は妖怪達と協力し、召喚した使い魔を使って次々と坊さん達を倒していく。小次郎は早い太刀筋で峰打ちをしながら気絶させ、雫が呼び出した陰摩羅鬼は影から影へ移って体当たりで1人ずつ死角から仕留めていく。

 

「んっ・・・ふぅ。も、戻った?」

 

「椿の方も終わったみたいだね」

 

『何だ、もう戻したのか?つまらんな』

 

そうしていくうちに殆どを倒して、椿も何とか元の姿へと戻る事が出来たようだった。

ひとまず雫へ礼を言おうとしたが、彼女は自分の役目は終わったとばかりに家から出ていこうとしている。

 

「雫さん、待って!貴方が居なかったら私達今頃・・・」

 

「気にする必要はないわ、綾。私のやるべき事は済ませたんですもの、永遠のパートナーを助けるって仕事をね。近いうちにまた会いましょう」

 

そう言って、1人暗い夜闇の道へと消えていってしまった。

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