私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾伍話 貴船神社に伝わる怪しい伝承

 

私と椿が子供の姿になってしまうハプニングがありつつも、それから数週間。私達は任務をこなして人助けをしたり、操られていた妖怪が持つ手がかりから敵の情報を探し続けていた。

 

しかし、それでも中々これといった進展も敵の尻尾が掴めたという事も起こらず、私も椿もヤキモキしている状況だ。私達が知らない間にも華陽や雫、そして茨木童子は私と椿を捕まえる為に更なる手段を用意しているかもしれないのに・・・これじゃ相変わらず、相手のペースに乗せられたままだ。

 

そうしてもどかしく思う日々を過ごしていた、ある日。

 

普段のように朝ご飯を食べ終えた私と椿が地下のセンターに向かおうとすると、そこで前が見えなくなる程に大量の書類を抱えた丘さんと和月に遭遇した。

 

「おっとと、危ない危ない・・・ぶつからなくて良かった〜」

 

「ん?なんだ、貴方達でしたか」

 

「ちょっと和月、"なんだ"とは何よ?私の娘と、その親友に対して失礼じゃないかしら?」

 

「そんな廊下で喧嘩しないでよ、丘さん・・・恥ずかしいったら」

 

「あらあら、そう無理しなくても良いのよ?私の事を気軽に"お母さん"と呼んじゃっても〜」

 

そう言って大量の書類の横からニッコリと笑顔を向けてくる丘さんに私が顔を逸らそうとしていると、椿は呆れた溜息を吐きながらヒョコっと和月の方へ顔を覗かせる。

 

「和月さん、おはようございます。――で、この沢山の資料は何ですか?」

 

「あぁ、貴方達に渡そうと整理していたけれど、あいにく量が多くてね」

 

「って事は、また裏社会の人達絡みで調べてるの?2人共、私達専属の情報屋をやってくれるのは助かるけど・・・あまり無茶はしないでよね?」

 

「うふふ、綾が心配してくれるのは何よりだけれど、彼らは金をしこたま貯め込んでいるからね。そこから金を引っ張れれば、これからのセンターの軍資金にもなるでしょう?」

 

そんな丘さんの少し黒い笑みに、また椿は大きな溜息を吐いて苦笑いする。

 

「丘さんの言っている事は分かりますけど、そんな危ないお金は使いたくないかな・・・まぁ、そこの判断はおじいちゃんなので、そっちに聞いてみてください」

 

「なるほど、分かりました。ところで、もう1つあったのですが――うぉっ!?」

 

「そうそう!和月と探していたら、貴方達に丁度良い情報があったのよ〜!」

 

すると、そこで気になる話をしようとしていた和月を押し退けて、丘さんがズイと大量の書類を私の前に持ってきた。でも、今ので危うく和月の持ってた書類の山が崩れかけてたから、そこまで無理くり押し退けないであげて欲しいかな。

 

「ここ最近、謎の妖気を感じる場所があってね。だけど、そこは"ある事"でとても有名な場所だから、シッカリ調べようにも妖怪の人達は誰も近づかないそうなのよ。その資料は・・・え〜と、真ん中辺りにあるわね。私と和月はご覧の通りだし、貴方達の方から取っていってくれるかしら?」

 

「えっと・・・丘さん、それ取ったら崩れたりしない?」

 

「あら、私を甘く見ないで欲しいわね。これくらい、どうって事ないわよ?」

 

「それじゃ、ちょっと失礼して――って、どわぁぁあ!?」

 

書類の山の真ん中からそれっぽい紙を引っ張った瞬間、ドサササ〜!と上に積まれていた書類が全て私の顔に倒れてきちゃったよ。

 

「ちょっと〜!崩れないって言ったじゃん!」

 

「あららら・・・結構、重さのバランスがキツかったのかしら?」

 

私の大失敗に椿は本日3度目の溜息を吐いていると、その崩れた書類の中から何かを見つけて拾い上げた。

 

「全く、綾ちゃんも丘さんも何をやっているんですか・・・ん?これは、えっと・・・」

 

椿が拾い上げた紙には、『ある者達が経営する水商売の、妖怪娘乗っ取り案』と書かれていました。はい、完全にアウトな奴ですねコレは。

 

「・・・よし、これは破り捨てておこっと」

 

「あ、ちょっと!何をするんですか!」

 

「和月さん、こんなのは駄目ですからね」

 

「うぅむ、良い案だと思ったのですが・・・」

 

そうキツく和月に注意しながら椿と崩れた書類を回収していると、その中からようやく丘さんの言っていた場所について書いてある書類を見つける。

 

「おっと、コレみたいだね。なになに・・・『貴船神社の禍々しい妖気』?」

 

「貴船神社って、あの・・・?」

 

「ええ、そこは京都に住んでいたら知っていて当然の場所でしょう」

 

確か、貴船神社と言えば鞍馬山の近くにある、川沿いに様々な社や沢山の木々で神秘的な場所だったっけ。鞍馬寺の関係で爺さんに何度か連れて行ってもらった事があるって椿も言ってたし、私も修行を兼ねたお祈りの為にオジサンと来た事はあったよ。

だけど、その時は不思議な力を感じた事はあったとはいえ"禍々しい"とかは感じなかったハズだ。

 

「その禍々しい気とやらを感じるようになったという話は、ここ最近の事です」

 

「恐らく、あとで鞍馬天狗の翁からも任務で向かうように言われると思うわ。だから、それまでの間にコレを読んで少しでも情報を・・・って、あら?」

 

すると、今度は私と椿の間でポンッと小さな煙が発生し、そこからチビ賀茂様が現れて慌てた様子で話しかけてきた。

 

「椿!綾!すまん!急いで、ある場所に――」

 

「チビ賀茂様、それって貴船神社の事だよね?なら丁度、その話をしてた所だったんだ」

 

「そ、そうか。しかし、急いでくれ・・・これは、アレの再来かもしれぬ!」

 

「何だか、危ない予感がしますね・・・となると、無闇に突っ込む訳にもいきませんよ」

 

そのあまりのチビ賀茂様の慌てように、私達は禍々しい妖気の正体が妖魔人や十極地獄の鬼じゃないのかと思いつつ、貴船神社についての報告書を読み進めていく。

 

「何か、良い情報は・・・おっと、『この2〜3日、同じ時刻にて禍々しい妖気を感知。その時刻は午前1時から3時、丑の時』だって?」

 

「丑の時って事は、まさか・・・」

 

「その通り。例の禍々しい妖気の持ち主は、どうも丑の刻参りをしているようなんじゃ」

 

「えっ?丑の刻参りって、藁人形で有名な呪いだったよね。でも、貴船神社って呪術と何か関係あったりするの?」

 

そう言って私は椿と一緒に、貴船神社で起こっている事を不思議に思って首を傾げていると、チビ賀茂様が両手をパタパタさせながら、貴船神社に伝わる怪しい伝承について説明してくれた。

 

「それが大アリなんじゃ、綾よ。そもそも丑の刻参りの元となったのは、貴船神社の"ある伝説"からなんじゃ」

 

「「そうなんですか!?」」

 

「うむ・・・まぁ、知らないのも無理ないじゃろう。その元となったのは恐らく、貴船明神が降臨した『丑の年の丑の月の丑の日の丑の刻』に参詣すると心願成就するという伝承。これが、長い言い伝えによって歪み呪術となったのではないかとされておる。そして、この丑の刻参りの原型は、もう1つあってな。それが・・・」

 

すると、そこからの説明をしようとしていたチビ賀茂様は突然黙って中空を見上げたかと思うと、いきなり私達に背を向けて踵を返しだした。

 

「まさか・・・いや、ん?おぉ、そうか。本体も同じ考えか。分かった、急いで戻る!」

 

「あ、ちょっと!チビ賀茂様!」

 

「僕達、まだ今の説明を・・・!」

 

「すまぬ!急ぐ故、ここで失礼する!」

 

また忍者みたいに煙でワープして帰っちゃったよ、チビ賀茂様・・・よりにもよって、普通そんな重要そうな話してる時に中断します?

 

「うぅぅ・・・気になる事を言うだけ言っといて〜」

 

「そうだね、綾ちゃん・・・丑の刻参りに一体、何が他に関わっているの?」

 

すると、そこで今のチビ賀茂様との話を呆然と見ていた丘さんと和月が、提案するように声をかけてきた。

 

「あら、綾ちゃんに椿ちゃん?どうしても気になったのなら、自分から調べてみたら良いんじゃないかしら?」

 

「そうですね、丘の言う通りです。貴方達の知り合いなら、きっと誰か丑の刻参りについて知っている人物も居るでしょう」

 

「そっか、確かに!じゃあ早速、ちょっと聞いてくるよ!」

 

「ありがとうございます、丘さんに和月さん!」

 

そして私達は2人に会釈をして、急ぎ足で地下にあるセンターのホールへ向かう。すると、そこで幸運にも色々な事に詳しいかもしれない白狐さんと黒狐さんに遭遇し、すぐさま椿は2人に駆け寄った。

 

「白狐さん!黒狐さん!丑の刻参りって知ってます!?」

 

『な、何じゃ突然!?それよりも、貴船に――』

 

「それなら既にチビ賀茂様から聞いたよ!貴船神社は丑の刻参り発祥の場所って事も含めて!」

 

「でも、その後にチビ賀茂様は何かの伝承を思い出したらしくて、僕達に説明をしないまま慌てて去っていっちゃったんです。だから、2人なら何か知っているかと思って・・・」

 

そう私達が少し息を切らしながらチビ賀茂様から聞いた事を話していると、今度は椿の爺さんも現れて驚いたように目を見開いてくる。

 

「まさか、"宇治の橋姫伝説"か・・・?」

 

「えっ?橋、姫?」

 

「・・・だ、誰それ?」

 

またハテナマークが出てきそうな単語に私と椿がキョトンとする中、爺さんは狐2人と共に神妙な面持ちで話を続ける。

 

「なるほどの。丑の刻参りの、あの独特な格好・・・それは橋姫をモデルにしておるからな。そして、その橋姫も元は妬む相手を取り憑いて殺す為、"鬼になりたい"という願いを貴船神社に7日間も通ったと聞く。そう考えれば、確かに今回の異変は色々と合致する箇所が多いかもしれん」

 

『しかし、翁。まだ、そうと決めつける訳には・・・』

 

「分かっとるわ、黒狐よ。じゃから、お前さんら2人が椿と綾に着いていって一緒に調査せい!とりあえず任務中の美亜にも連絡を入れるが、恐らく間に合わんだろうな」

 

そう言って、爺さんは私達や狐2人に貴船神社の調査任務の書類を渡してくれた。すると、椿は思い出したような顔をしながら立ち上がった。

 

「ちょっと待ってください!念の為、レイちゃんも呼んできます!」

 

「確かに!あまり無茶はさせられないけど、呪術系を破れる面子は少しでも居た方が良いね!」

 

はてさて・・・丑の刻参りしてる奴が何なのかは知らないけど、それに対処出来るだけの準備を念入りに済ませてやれば、何が来ても怖いもの無しだ!!

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