私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陀話 見境無しとかヤバいにも程があんだろ!

 

それからも2、3日間・・・と私達は神社に張り込んでいたものの、禍々しい妖気については奥宮の参道を通っていく事しか分からないまま7日目になってしまった。そして、レイちゃんも威嚇や追いかけはしても相手を成仏させるような行動はしないので、相手の正体すらも全く掴めない状態だ。

 

そんな日々が長く続いたから私は勿論、椿や狐2人も疲労困憊になっているよ。

 

「ぐぅぐぅ、すやすや――あだぁっ!ちょっ、白狐さん!いきなり叩き起こさないでってば!」

 

『眠いのは分かるが、もう一辛抱じゃ。さて、今日で7日目。賀茂様の言う限りでは、ここの神に影響で出ていないらしい。しかし、どうも何か隠しているみたいなのだ・・・』

 

「それは怪しいですね、白狐さん。でも、そうは言っても相手は神様ですから、探りなんか入れられませんね」

 

「知ってるかもしれない牛鬼さんに聞こうにも、『そういった秘密の暴露は二度としない』って言われちゃったしな〜・・・う〜ん、どうしよ」

 

そうして私と椿が首を傾げる中、黒狐さんは深い溜息を吐きながら眉間にシワを寄せて参道を睨みつけた。

 

『とはいえ、7日経っても何も起こらないとなると、益々分からないな。俺達でも感じられる程の、こんな禍々しい妖気を放ちながら何もしないとは、何処かが妙だ』

 

「そうですね、黒狐さん。一体、何が目的なんでしょうか・・・」

 

すると、奥宮の参道を監視していた黒狐さんは何かを発見したような驚いた様子を見せ、すぐに私達の方へ振り返ってくる。

 

『待て、お前ら!今日は何か違うぞ!?』

 

見てみると確かに、今までは奥宮の手前で同じ時間には消えていた妖気が、今回は消える事なく奥宮の前で立ち往生を続けている。

 

「まさか、遂に何かを起こすつもりじゃないのか・・・」

 

『椿に綾よ・・・何が起こっても対処出来るよう、用意をしておけ』

 

「うん、了解だ白狐さん」

「ええ、分かっています」

 

その異様な状況に私達の間には緊張が走り、狐2人も固唾を呑んで相手の動向を伺っている。

妖怪スマホで確認しても『測定不能』となるような相手な訳だし、もし奥宮の方に居る神様に何かするようなら今すぐにでも浄化をしないと・・・と、そう思った矢先。

 

「えっ?あれ!?」

 

「ばんなそかな!?いきなり逃げ出すなんて!!」

 

なんと禍々しい妖気は、その場から今までとは比べ物にならないスピードで離れていったのだ。これには禍々しい妖気をシッカリ感じ取っていた私や椿どころか、狐2人すらもビックリしてしまう。

 

『2人共、何かあったのか!?』

 

『もしや、此処の神に何か――』

 

「いや、あの・・・禍々しい妖気が、この場から遠ざかっていきました。それで、どうやら今は貴船神社からも遠ざかっていってます」

 

『何じゃ、そんな事か――って、いかん!急いで奴を追うぞ!!』

 

「あ、そっか!このまま街で暴れられたら大変じゃん!!」

 

「それなら、すぐにでも雲操童さんを呼ばないと!!」

 

そこから私達は7日間も徹夜してたのもあって、完全にドタバタ大騒ぎになっちゃったよ・・・。

 

◇◇◇

 

それから何とか私達は再び京都市内で禍々しい妖気を見つける。そして、深夜でも今年最高気温で溶けそうな熱帯夜の中、人通りが少ない大和大路通りの上へ雲操童を先回りさせて飛び降りた。

 

「あ〜もう、本当に何が目的なんだコイツはよ・・・」

 

『椿に綾よ、警戒は怠るな。今、その妖気は何処に居る?』

 

「えっと・・・あっ、あそこの道。その角から出てきますね」

 

着地した私達は急いで道の物陰に隠れ、今度こそ相手の正体を探るべく様子を伺う。

 

『よし、白狐。もし姿が見えたら、俺の妖術で足止めをする。その隙に、椿と綾の3人で捕まえろ』

 

『あぁ、分かったぞ。くれぐれもしくじるでないぞ、黒狐よ』

 

それにしても、狐2人が久しぶりに頼もしく見えるな〜・・・いやまぁ、あんな事を椿に言われたんだから当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないけど。

 

そうして隠れていると、こっちの予想通りに禍々しい妖気は大和大路に現れ、私達の隠れている場所から南の方に進ん――

 

『きぃぇぇぇぇえええええ!!!!』

 

・・・おぅ今の何だ、今の?

 

何か、真っ赤な肌をした上半身裸のメチャクチャ怖い顔した女の人が通り過ぎてったような気がしたんですが?

 

でも、妖気はアレから感じるのは間違いないみたいだし、ひとまず椿や狐2人に・・・って、そっちはそっちで椿が白狐さんの顔に引っ付いているんですけど。

 

「椿、何やってんのさ?」

 

「あ、あれ・・・僕、いつの間に?て、手が・・・ふ、震えて離れない・・・」

 

うん・・・どうやら、あまりにビックリした上に怖かったみたいだね。だって、そういうのは割と平気な私だって真面目にビックリして、思わず黒狐さんの陰に隠れちゃったくらいだもん。

 

そんな状況でも、黒狐さんは冷静に物陰から相手の様子を伺いながら分析を続ける。

 

『あれは、やはり橋姫じゃないのか?』

 

「じゃあ、アイツが椿の爺さんが言ってた奴って事?」

 

『まぁ、神社で起こっていた事や感じられる妖気の禍々しさから推測した結果だがな。そうなると、奴の行き先は"あの場所"かもしれん』

 

『橋姫だとするなら、恐らくはな。よし、そうと決まれば再び先回りするぞ』

 

おぅ、とても真面目にやってもらってるとこ悪いんだけど・・・いつまで白狐さん、椿を顔面に引っ付けてるつもりなんです?

 

「ち、ちょっと待ってください。僕、ここから降りたいし・・・それと、その橋姫って何かあるんですか?」

 

「あ〜、そういや私も気になってたわ。京都の宇治の橋姫が何とかって言ってたよね?」

 

『むっ?そうか、2人は知らんか。橋姫というのは、一般には全国の橋の守り神とされているが、ここ京都の宇治の橋姫は少し違っておってな』

 

なるほど、そうなると今回は普段より危険な戦いになる可能性がある・・・と。それと白狐さんや、椿を猫みたいに掴んで剥がしながら抱きしめるのは――とか思ってたら、お姫様抱っこのまま相手の後を追いかけに行っちゃったよ。

 

『だが、これで合点がいったな。宇治の橋姫は、妬む相手を取り憑いて殺す為に「生きながら鬼にしてくれ」と、貴船神社に7日間籠って願いを掛けたそうだ』

 

「じゃあ、鬼になったのは・・・まさか」

 

『あぁ、恐らくは綾の想像通りだ。それを見て哀れに思った貴船大神が「本当に鬼になりたければ、その姿を変えて宇治川に21日間浸かれ」と、そう言ったそうだ。この言い伝えと今の状況は、ほぼ合致しているな』

 

そんな黒狐さんの話に納得して頷いていると、椿も白狐さんに抱えられながら、驚いた顔で振り返ってくる。

 

「あっ、それでさっきの格好だったんですね。あれ?でも、待ってください・・・それじゃあ、この後は宇治川に21日間も浸かるんですか!?」

 

「そういえば、確かに無茶な話に聞こえるわ。妖気を放ってる霊みたいな存在だとしても、"丹"とかいう鉛の顔料で全身真っ赤に染めてるし、頭にも鉄の輪っか乗っけて松明括りつけてたもんな・・・」

 

あんな格好で宇治川に浸かり続けるなんて、流石に体力とか持たないだろうし――っていうか、あれを今になって考えてみると、丑の刻参りの格好っぽくも見えたな。ひょっとしたら、あの特徴的な格好のモデル元だったりして。

 

そう考えていると、ふと黒狐さんが訝しげな表情で急に立ち止まった。

 

『う〜む・・・だが、これはおかしいぞ。確か、橋姫は"源 綱(みなもとのつな)"に退治されたハズだ』

 

「源のって、何か聞き覚えがあるような・・・」

 

『あぁ、酒呑童子を退治した奴だ』

 

「「・・・」」

 

うん、この黒狐さんの言葉には私も椿も絶句でしたわ。あの人、どんだけ京都の鬼を退治出来てるんだ?もしかしたら鬼の退治話とかコンプリートしてたりするんじゃないか?

 

『黒狐よ、それより今は現状を分析せねばならんだろう。その倒された奴が何故こうして再度現れ、昔と同じ行動をやっとるのか・・・それを探らねば。このままでは、対処が遅れて被害者が出てしまうぞ!』

 

『くっ、そうか!橋姫は確か、老若男女問わずに殺しまくる悪鬼でもあった!!』

 

「「えぇ!?」」

 

見境無しとかヤバいにも程があんだろ!

宇治川で相手が鬼に変化する前に何とか止めないと、本気で通り魔の如く大暴れする可能性が高いって事じゃん!

 

そんな事態を避けるべく、すぐさま私達は雲操童に再び乗って宇治川へと向かうのであった。

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