私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾捌話 怪人二十面相かよコイツ!?

 

貴船神社から少し離れた場所にある宇治川へ急いで辿り着いた私達は、そこで既に橋姫が川に浸かってしまっているのを目撃する。

 

「くそっ!一足遅かったか!相変わらず、凄い形相しやがって〜・・・」

 

「でも、このまま21日間浸かられたら鬼になるんですよね?それなら、今の内に浄化して・・・」

 

そう言って椿が御剱を出すと、何故かレイちゃんが私達の前に飛び出てきて、顔を横に振りながら"攻撃するな"と言わんばかりに止めてくる。

 

「レイちゃん!?ちょっと、こんな時に何してるの?」

 

「そこを退いて!早く何とかしないと、アイツが何するか分かんないんだよ!?」

 

「ムゥゥ・・・」

 

しかし、それでもレイちゃんは私達の前から退かず、さっきと同じように唸りながら橋姫を睨みつけ始める。

 

『なるほど・・・コイツ、纏っている力の感じからして"妖怪霊"じゃな』

 

「えっ?妖怪、霊・・・?」

 

「だけど白狐さん、橋姫は生きたまま鬼になっているんだから、霊魂なのはおかしいんじゃ――あっ、まさか!」

 

すると、そんなレイちゃんの様子に白狐さんが聞き慣れない言葉を言ったと同時に、椿もハッとして御剱を一旦しまった。

 

「椿に白狐さん、アレは橋姫なんじゃないの?妖怪霊って事は、何か違うものだったりするのか?」

 

「うん、綾ちゃん。妖怪の中には霊魂から妖怪化した存在も居て、そういう妖怪には"死"という概念が無いんだ」

 

「へ?えっと?じゃあ、つまり・・・この橋姫は元々は肉体を持ってたけど、死んでからも怨念で妖怪になっちゃったって感じ?」

 

「まぁ、簡単に言えばね。多分、倒されて封じられていた間に肉体が朽ちてしまって、霊魂が昔の行動を何度も繰り返してる内に妖怪になった・・・って感じだと思うよ」

 

その椿の説明に白狐さんが「100点満点じゃ」と満足そうに頷く隣で、黒狐さんは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

『ふむ、そうなると・・・今度は霊魂の状態で橋姫が復活してしまう、という訳か』

 

「えっ!黒狐さん、それってヤバいんじゃ・・・」

 

『あぁ、ヤバいな』

 

「おぉ〜い!?じゃあ呑気に話してる場合じゃないんじゃん――って、ちょっと待った。レイちゃんが私達を止めてまで成仏をさせない理由って、一体・・・?」

 

「ムゥゥ・・・キュゥ」

 

そんなレイちゃんの様子を見て、ふと椿は何故そんな事をしているのかを察したように、「あ〜・・・」と小さく声を漏らした。

 

「ひょっとしたらだけど、綾ちゃん。レイちゃんは敢えて橋姫を妖怪化させて、その霊を取り込む事で霊気と妖気をゴッソリ頂こうって魂胆じゃないかな?」

 

「マジですか・・・そんな事まで考えるなんて。やっぱりレイちゃんって、普通の霊狐じゃないくらい凄いよね。普通の霊狐なら、すぐにでも成仏させようと動くみたいだし」

 

「うん、僕も同じ気持ちだよ。でも確かに、これだけの妖気を取り込めれば、レイちゃんの身体も元の大きさに――って、あれ?何だか、更に顔が鬼になっていっているような気がするような・・・」

 

椿の言葉に嫌な予感がしつつも、私は川に浸かっている橋姫の方へ視線を向ける。

 

「えっ?いやいや、そんなまさか・・・うわ、マジで橋姫が鬼になっていってるわ。白狐さんに黒狐さん、あれ放っといて本当に大丈夫なの!?」

 

『ん?いや・・・そうは言われてもな』

 

『むぅ・・・あの様子だとどうやら、もう遅いかもな』

 

すると、そう黒狐さんが言った瞬間に橋姫は川に肩まで浸かったまま、何かをブツブツと呟き始めた。

 

『あぁ、妬ましい・・・あの人を私から奪ったアイツ、私よりも綺麗なアイツ、それを彼女にしている男・・・皆、皆、みんなみんなみんな妬ましぃぃい!!』

 

「げっ・・・!嘘だろ!?」

 

「そんな!?21日どころか1日も経っていないですよ!もう鬼化しちゃったんですけど!?」

 

私達の予想とは真逆に、なんと橋姫は1時間くらいで頭から2本の真っ赤な鬼の角や鋭い牙を生やし、あっという間に真っ赤な鬼の姿へと変貌してしまったのだ。

 

『うむ・・・霊魂は、ただ生前の記憶を辿り続けた積み重ねの他に、その手順だけで唐突に元の姿に戻る場合もある。つまり霊魂には"時間"という概念は関係ない訳だが、貴船大神に言葉を貰う為の行動に関しては流石に、それなりの時間が必要だったようだな』

 

『しかし白狐、アレは凄い恨みと妬みの念だな。本来ならば、肉体を失った妖怪の魂は存在を忘れ去られ、その目的を忘れて自然と消滅する。だが・・・あの様に霊魂となって漂う事自体、珍しいな。余程の負の感情がなければ、ここまでハッキリと霊魂が残る事は無いだろう』

 

「ちょっ、白狐さんも黒狐さんも!今は冷静に分析してる場合じゃないって!」

 

「そうですよ!こっちに橋姫が来てるってば!」

 

しかも、狐2人が落ち着いた様子で腕を組んで見ていた間に、橋姫は私達を見つけて狂った笑い声を上げながら走ってきている。

 

『ひぃははは!!』

 

「うっわ怖っ!笑いながら迫ってきてるし〜!!」

 

「でも、あの妖気の質からしたら2人は対処が出来ないだろうし、先ず白狐さんと黒狐さんを下がらせない――と?あ、あれ?目の前に居たハズなのに、2人共どこへ行ったんですか?」

 

いきなり隣から姿を消した狐2人を探そうと、私と椿がキョロキョロすると・・・。

 

『よし、椿に綾よ。我はサポートに入るぞ!』

 

『俺達の事は気にせず、存分に戦え!』

 

「ムキュゥ!!」

 

「いや後ろに隠れるの早っや!!」

 

「あ〜もう、レイちゃんってば・・・結局こうなるなら、僕達の事を止めないで欲しかったですよ・・・」

 

「というか、狐2人はレイちゃんと一緒に隠れててプライドとか無いのかよ!?」

 

『『そんな物は捨てた!』』

 

おぅ一丁前に自信満々で答えないでください!

それにレイちゃんもレイちゃんで、元の姿に戻りたい気持ちは分からない訳じゃないけど、ここまで危ない橋を渡ってまで戻ろうとはしないで欲しかったかな・・・その結果、こうしてエラい目に合っちゃってるんだし。

 

そんな事を考えていると、もう橋姫は私達の目前で立ち止まっていて、ギョロリとした目で睨みつけてきていた。

 

『ひひ・・・お主ら、綺麗じゃのう』

 

「うっ・・・」

 

「ど、どうも・・・」

 

『悔しいのぉ、妬ましいのぉ・・・そんな奴は、死ね!!』

 

すると、そう言うなり橋姫は鋭く長い爪を振りかざして、思い切り踏み込みながら私と椿に襲いかかってくる。

 

「どわぁ!?」

「うわぁ!?」

 

その攻撃自体は咄嗟に避けられたから良かったものの、それと同時に橋姫の姿は黒いモヤのようになっていく。そして――

 

「んなっ!怪人二十面相かよコイツ!?」

 

「どういう事!?さっきまで女性だったのに!」

 

なんと、再び人の形となった橋姫は着物姿の美青年の姿へと変わっていたのだ。

 

『妖異顕現、黒雷弾(こくらいだん)!』

 

そんな橋姫の変貌に驚いていると、黒狐さんが私達の後ろから飛び上がりながら指鉄砲を構え、その指先から黒い雷の弾を発射して相手に攻撃する。しかし、その迸る電撃の弾は簡単に相手の爪の一振りで弾かれてしまった。

 

『椿に綾よ、気を付けろ!橋姫の能力は、男を殺す時は女の姿、女を殺す時は男の姿になって魅了しようとしてくるんじゃ!』

 

その様子を苦虫を噛み潰したような顔で見ながら、白狐さんは私達の後ろから叫んでくる。

 

なるほど、だから相手は私と椿を誘惑しようと男の姿に変化してきたって事か。でも、そんなので誘惑しようとするなんて、全く怖くも何ともないな。

 

『これはこれは可愛いお嬢さん方、どうしました?迷子になられ――』

 

「てねぇわ!目の前で変化されて、それでホイホイ着いてくと思うなよ!」

 

「そもそも、こんな状況で良く誘惑が通じるなんて思いますね!」

 

『ひぃはっ!』

 

しかも、初対面の使い古されたテンプレっぽい誘い方してきたし!

 

そんな風に相手が隙だらけだったから、椿が金狐の姿になるのと同時に私も"鈍色の狐"となって、一緒に槍へ変化させた尻尾で土手っ腹に風穴を空けてやろうとしたけど・・・流石は腐っても鬼だな。ヒョヒョイと避けられちゃったか。

 

『あぁ・・・金色と鈍色、それも美しいねぇ。他の奴らも美しいねぇ・・・妬ましい、妬ましい!その私より美しい姿、妬ましぃぃい!!』

 

すると、また橋姫は雄叫びみたいに「妬ましい」と叫びながら黒いモヤへ姿を変える。

 

『あぁ、それなら先に後ろの2人を――』

 

今度は私達の後ろに隠れている狐2人を睨みつけながら女の姿に戻ってきたが、そこに居たのは・・・。

 

『あら?我々が男じゃと?』

 

『ふん、失礼するな。これを見て、何処が男だと思うの?』

 

ハイそうでしたっけね案の定!狐2人は性別が無いから、自在に男女の姿を切り替えられるんでした!

というか、椿より普通に綺麗だし・・・って、ヤバいヤバい!何か椿が横目でジトーって不機嫌そうに睨んできてる気がする!

 

『ひぃえ?お、女・・・?それなら、男の姿に・・・』

 

『こらこら、男に口説かれても嬉しくは無いぞ?』

 

『そうだな、白狐。椿のような可愛い娘なら、まだしもな』

 

「あっ、また男に戻った・・・というか、結構これ橋姫に効いている感じ?」

 

「た、確かに何だか混乱しているよね・・・」

 

それに対して橋姫は困惑しつつも再び女の姿に変化するけど、やっぱり狐2人も女になって相手を嘲笑うようにニヤニヤしているよ。

 

『ひ、ひぃえ・・・!お、お前達は何なんだぁ!?』

 

そんな事を繰り返されたからか、橋姫は完全にパニックになって狐2人と張り合い始めたぞ。でも、そのお陰で私と椿は眼中に無くなっているみたいだし――

 

「金華槌(きんかこん)!」

「卜半雷霆蹴(ぼくはんらいていしゅう)!」

 

『ぎぃぇ・・・!!』

 

とまぁ、私と椿のW脳天浄化アタックで思いっきり殴りつけての1発KO余裕でした。

 

それからすぐレイちゃんが私達の後ろから飛び出してきて、身体から光を発して浄化されて消えかけている橋姫を取り込んでいく。

 

「お〜しおし、良いぞ〜レイちゃん。ちゃんと橋姫の妖気と霊気を吸収出来たみたいだな」

 

「ムキュゥ!」

 

そして、そう鳴いたレイちゃんの口から小さな光の玉が出てきたかと思うと、それもフヨフヨと橋の方へ漂って消えてしまった。

 

「えっと・・・白狐さん、今のは?」

 

『あの辺りは、確か・・・大丈夫じゃ、椿。あれが宇治橋なら、橋姫を祀った橋姫神社があるハズじゃ。どうやら、魂も納まるべき所に納まったようじゃな』

 

「そっか、それなら良かった――って、レイちゃん!?」

 

すると、その妖気と霊気を取り込んだレイちゃんの身体は、まるでポップコーンかと思うくらいにボンッ!と一気に大きくなっていた。以前にも鬼の魂を取り込んで大きくなった事はあったけど、今回は前よりサイズが私達並みに大きくなっているよ。

 

「ムキュゥゥゥ!!」

 

「げっ、レイちゃ――わぶっ!?」

「うぶぶ、ちょっとレイちゃん・・・お、重いです!」

 

自分の姿が戻った事に喜びながら飛び込んでくるレイちゃんの重さに、私と椿は思わず尻もちをつきそうになりながらも何とか受け止める。

 

そして、ここまでレイちゃんが回復して元気な姿を見た私達も、レイちゃんの持っていた"ある力"が復活した事に気付いた。

 

「レイちゃんの結界破りが復活したという事は、つまり・・・」

 

「あっ、そうだね綾ちゃん。白狐さん、黒狐さん・・・これなら、もしかして」

 

『うむ、我も同じ事を思った』

 

『そうだな。椿と綾が通っていた学校にある、あの旧校舎。その霊狐の今の姿なら、あそこの結界を一時的に破れるぞ。つまり、再び中に入って調べられるという事だ』

 

「「うん、そう(だね・ですね)」」

 

その黒狐さんの言葉に、私達は強く首を縦に振る。

 

・・・もしかしたら旧校舎の中には、前の校長でもあった八坂校長は勿論、華陽や湯口先輩を含めた妖魔人達が待ち構えているかもしれない。

 

だから、今回はシッカリと準備して万全の体勢で旧校舎を、その中から出ている禍々しい妖気の正体を調べていこう。

 

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