私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
それから私達はすぐに家へと戻り、橋姫を退治した任務完了の報告と共に、レイちゃんが完全復活した事を椿の爺さんに伝えた。
「ふむ、ご苦労じゃった。それに霊狐が復活した事で、あの旧校舎に再び入れると・・・」
「そうです、おじいちゃん」
「だから、今すぐにでも――」
「いいや、ならん」
「「な、何で!?」」
「お前達には危険過ぎるわ」
そう告げられて、私も椿も正座の膝に乗せた握り拳に力が込もってしまった。
確かに爺さんの言っている事は正論ではあるけれど、それでも相手から良いようにされ続けている今の状況を打ち崩す事が出来るかもしれないんだ。
「爺さん、いつまでも受け身の姿勢じゃ相手の思うままにされるよ」
「ええ、綾ちゃんの言う通りです。向こうが何もしてこないのは、その結界内が安全だと思っているからで――」
「八坂は、そう思うとらん。それに2人共、そこには妖魔人が出入りしとるのを忘れたか?むしろ、あそこまで目撃がハッキリしとる状況からすれば、あからさまな罠と考えるべきじゃ」
「う、ぐ・・・」
「そんな・・・」
その可能性は否定出来ないのも確かだ。
わざと私達が食いつくように堂々と妖魔人達の姿を見せて、さも旧校舎が相手のアジトだと思い込ませるのが目的だったりするかもしれない。
それでも、あれだけ強い妖魔人を堂々と旧校舎に出入りさせてたら、それこそ正面からの攻撃どころか奇襲すらも成功しないと思われて、逆に警戒させているような気もするんだよなぁ・・・。
『椿に綾よ、また2人して頭から煙が出とるぞ』
「うぅ・・・また考え過ぎちゃって・・・」
「相手の考えを推測しても、何が何だか・・・」
「2人共、焦る気持ちは分かる。じゃが、もう少し情報収集をしてからの方が――」
すると、そう爺さんが言おうとした矢先にガラガラッと乱雑に襖が開けられる。
そこに居たのは、フラフラと酒を持ったまま酔っ払っている酒呑童子と、スマホの画面を私達に見せつけてくる伊吹の姿があった。
「あぁ〜・・・悪いが、そうも言っていられない事態が起きたぞ」
「とりあえず、コレを見て欲しい」
そのスマホの画面には、つい先程に発表されたばかりの、情報サイトのニュース速報の動画が映し出されていた。
『今日お昼頃。伏見区の○○中学校にて、その敷地内にある旧校舎へ全生徒が入って行き、そのまま出てこなくなるという事件が起きました。現在、警察が調査に乗り出していますが、何故か旧校舎に立ち入る事が出来ず、捜査は行き詰まっているとの事です』
「おじいちゃん、これ!」
「爺さん!これはもう、ジックリと調べてる時間なんて無いと思うんだけど!」
「む、むぅ・・・」
私と椿が訴える中、爺さんが悩ましげに唸っていると、酒呑童子が酒を飲みながらドカッと私達の後ろに座ってくる。そして、伊吹もスマホをポケットに戻しながら私達の後ろで正座をしてきた。
「ぷはっ・・・あ〜ヒック、お〜お〜翁よぉ?心配なのは分かるが、もう敵さんも待ってはくれないみたいだぜ」
「八坂はもう、何か行動を起こそうとしている。それなら早めに潰しておかないと、この状況で亰嗟にも動かれたら対処もクソもないだろう?」
そんな鬼2人の言葉に、爺さんは険しい目付きになりつつも決心した表情で顔を上げた。
「仕方ない・・・酒呑童子、星熊童子。亰嗟の方は、お前さん達が何とかせぇ」
「んなっ!?俺かよ!?」
「当たり前じゃ!元々、お前さんが何とかすると言っとったじゃろうが!」
「いや、確かに言ったがよ!俺にとっちゃアイツらは、その・・・」
「気持ちは分かるけど・・・酒呑、ここは四の五の言っていられる状況じゃないよ」
「ぐっ、まぁ・・・なんだ、分かった。そっちは、俺と伊吹で何とか抑えておく」
何だ何だ、急に酒呑童子の歯切れが悪くなったぞ。茨木童子の件と言い、そこまで亰嗟と何かあったのかな?
・・・というか、いつの間にか美瑠が酒呑童子の頭に乗っかってるし。それ見るのも随分と久しぶりだな〜。
「鬼丸、鬼丸。桃丸と話してたアレ、言わないの?」
「うるせぇ、まだ時期じゃねぇんだよ。コイツらには先ず、目先の事を何とかして貰わないといけねぇ」
「そもそも、今の亰嗟は華陽の行動を見ているに過ぎないからね。それまではただ、領土拡大に力を入れているといった状態だよ」
しかし、そんな美瑠と鬼2人の怪しげな言葉へ私達が質問する前に、そそくさと鬼2人は美瑠を連れて部屋から出て行ってしまった。
色々と気になる発言ではあったけど・・・亰嗟の方は何とかすると言っていたんだから、ここは鬼2人を信じて任せて、私達は私達の戦いに集中する事にしよう。
「全く・・・アイツらは相変わらずじゃな。こうなっては仕方ないの。白狐と黒狐、それに椿と綾。お前さん達は旧校舎内を調査し、可能ならば囚われた者達を救出するんじゃ。椿と綾は、あのメンバーと一緒に入るんじゃぞ?分かったか?」
「OK、爺さん!了解です!」
「うん、分かりました」
「亰嗟の方は酒呑童子と星熊童子が抑えてくれるじゃろうから、地獄の鬼共が襲撃してくる心配はするな」
そうして爺さんは私達に指示を出した後、テキパキと手元のスマホで何度か電話をかけ、「よし、頼むぞ」と言ったり「すまんな」と連絡を入れる。その話し口からすると、どうやら達磨百足さんや捜査零課に電話していたようだ。
それにしても、爺さんの使っている妖怪専用スマホ・・・画面に表示されてるアイコンがデカかったりホーム画面用や電話用のボタンが付いていて、何だか年寄りの人向けっぽい感じがするな。
「むぅ・・・この妖怪用の"すまほ"とかいう携帯は未だに慣れんのぉ。今までので良いと言うたのに、折り畳み式のコンパクトな物を廃止するとは・・・人間達の方は、まだ廃止されとらんというのに」
あ〜、うん・・・椿の爺さん、ガラケータイプを使ってたんだね。妖怪の世界でも、時代の流れに合わせて機種の更新とかやってたりするんだ。とはいえ、それで以前まで使われていた機種を一斉に廃止にしちゃうのは、ちょっと思い切りが過ぎると思うかな〜。
――と、そんな事を考えていたら私と椿のスマホにメッセージが届いたぞ。
「あれ?これって・・・」
「"KAINE"の友達申請?」
「いや、なに・・・これはやっておいた方が良いんじゃろ?」
椿の爺さんから、妖怪専用スマホのSNSとも言えるチャットアプリ"KAINE(カイン)"の申請が届いていたよ。こらそこ、「しょうきにもどった!」とか言わない。
使い勝手は人間界の方で言う"LI○E"と"T○itter"を合わせたような感じだ。だけど、コレにはなんと手配書アプリや妖気感知アプリとの連動機能も備わっているから、もし任務で何かあった時とかに増援を手軽に呼べたりする優れ物なんだよな。
実際、今までもコレで増援を呼んでたりした訳だし、それを爺さんも使えるようになったのは喜ばしい限り・・・なんだけど。
「おじいちゃん・・・それスタンプだって」
「うっ・・・ぬぬ。ちょっと待て、これ文字はどうやって打つんじゃ?」
「あ〜もう、画面の下の方にね――」
まぁ、やっぱりというか不慣れな感じバリバリですわ。しかも、さっきからムキムキマッチョマンぬりかべのドヤ顔な"OK!"スタンプが送られまくってくるから、ジワジワ笑いが込み上げてきちゃうんですけど・・・って、今度は幼い頃の椿が笑顔でピースしてる写真が送られてきたぞ。うん、コッソリ保存しとこっと。
「あっ!だから、そっちは違うよ!それ、写真選択だから!」
「ぬぬ、下に空白など・・・」
「空白というか、ラインが入って――だから、そこじゃなくって!」
そんな微笑ましい光景を見ている内に、ふと私はテレビとかで良く見るノリを思い出して、そっと白狐さんに耳打ちする。
「白狐さん白狐さん、椿と爺さんの様子を見てると・・・なんというか、アレだよね」
『うむ。傍から見たら、まるで孫娘が翁にスマホの操作を教えているみたいじゃの』
「うぅ〜!こんな事は早く終わらせて、少しでも急いで旧校舎に向かいたいのに〜!」
そうバタバタ尻尾を激しく上下させながら焦る椿に、爺さんは何度もスマホの操作を失敗しつつ、フゥと一息をついた。
「まぁ落ち着け、椿よ。今さっき任務を終えたばかりじゃろうが。そんなに身体を休めず連続で任務をしても、疲れて動けなくなるだけじゃ。先ずは捜査零課の調査を待って、それから旧校舎に向かえば良い」
「そうそう、爺さんの言う通りだよ。全校生徒の安否が心配なのは分かるけど、今はとりあえず状況を万全に整える事が1番だからね」
爺さんと私の言葉を聞いた椿は心配そうな溜息を吐いてから、それでも観念したように首を縦に振る。
「ふぅ・・・分かりました。それなら今日はタップリと、おじいちゃんにスマホの操作を教えて上げます」
「ぬっ?いや、これは儂1人でも・・・」
「おじいちゃん、またスタンプ連投しているってば。それ、戻るボタンじゃないよ?」
『翁、墓穴を掘ったな』
「ぬぐっ・・・」
まぁ、2つの意味で椿の心配はごもっともかな・・・それにしても、今度は氷雨さんが項垂れてる"NO"スタンプがポッポコ流れてきてるわ。描いてある人が描いてある人だからか、なんか冷気が出てるみたいに涼しくなってきたような気もするぞ。
「よっしゃ!今日の特集はコレでOKやな〜!」
そんな声が聞こえて嫌な予感がした私と椿が上を見ると、浮遊丸が椿と爺さんの様子を写真に撮っていた。
「浮遊丸さん・・・それ、何に使うの?」
「へ?何って、そりゃあ・・・」
そして、浮遊丸は苦笑いしながら部屋の襖へと向かっていき、そこで私達は雪も襖の隙間から部屋を覗いていたのを見つける。
「ありがとう、カメラさん」
「いやいや〜どういたしましてや〜雪さん・・・で、もちろん報酬は?」
「はい」
「うっひょぉ!!椿ちゃんと綾ちゃんの未洗濯お洋ふ――あっ」
「ん?椿と綾からカインのスタンプメッセージが・・・これ、お母さんの"NO"スタンプ――あっ、ちょっと2人共待って・・・!」
「「ふ〜ゆ〜う〜ま〜る〜(さ〜ん)?ゆ〜き〜(ちゃ〜ん)?」」
まーた2人して裏で手を組んで何かやってたね〜?
写真の映りからして、浮遊丸が撮影してたんじゃないかな〜ってのは薄々気付いていたけど・・・まさか、雪から私達の衣服を報酬に動いていたなんてね〜?
どうりで最近、洗濯に出した後から戻ってくるまで何か時間がかかっていたのは、そういう事だったんだ〜?
でも、そんな取り引きの現行犯を見せてるって事は・・・。
「ほーほー・・・2人共、そこまでして私と椿に罰されたかったんだね〜」
「なるほど、そういう事でしたか。僕に――いえ、私に罰して欲しいという気持ち、十分に分かりました」
「待って、2人共?金狐モードと鈍色の狐モードは、流石に・・・」
「雪さ〜ん!今自分が何処に居るか、忘れてたやろう!?」
「そう言う、浮遊丸こそ・・・」
おぅ、互いに責任押し付け合ってても現行犯は現行犯だからな?だから、これ以上は私と椿への被害がエスカレートする前に――って、何か一気に大量のスタンプがポコポコポコポコ流れてきたんだけど!?
いきなりなモンだから、ピロンピロン通知音がスマホから流れまくってて落ち着かないぞ!
「ちょっと・・・おじいちゃん、何をやっているんですか!?変なスタンプばかり送らないでください!」
「いや、じゃから・・・文字がのぉ」
「ですから〜!!」
おわぉ、今度はガッツポーズしてる達磨百足さんと仕事してるヘビスチャンさん、疑問符を頭に浮かべた浮遊丸のスタンプですかい・・・。
「よっしゃ今の内や――って、あばばば!」
「あっ、これは無理・・・きゅぅ」
「ちゃっかり逃げようとしたって、この私が逃がさないからな〜?」
低出力とはいえ雷の妖術で痺れさせてるから、身動き1つも取れないだろうね。その上――
「あひゃひゃひゃひゃ!!待て!ちょい待ちぃ!これは流石にアカンてぇ!」
「ひっ、ふゃぁ・・・2人共ごめん、悪かったから・・・くっ、あはっ、あはははは!!」
椿が再び爺さんに操作説明をしてる間に、影の手でコチョコチョの刑になってます。でも、こうして雪が笑ってる姿を見るのって、結構久しぶりな気がするな〜・・・私、ちょっと嬉しいかも。