私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――爆睡した椿を担いで狐2人と一緒に帰ってきた、その日の夕方。
私達の部屋で目を覚ました椿は、神社で泥酔した時の事を思い出したらしく、布団を被って「あ〜、う〜」と後悔するように唸っていたよ。
『綾よ、そろそろ椿は起きたか・・・って、あやつは何をやっとるんじゃ?』
「うぅ・・・白狐さんも綾ちゃんも、放っといてください・・・今は、お布団から出たくないです・・・」
「まぁ、見ての通りだね。椿ったら派手に酔うクセして、それ全部を覚えてたみたいで・・・白狐さん、何とかならない?」
『むぅ、難しいのう・・・というか、元を辿れば綾が甘酒を飲ませたのが原因ではないか?』
「うぐ、それは分かってるんだけどさ〜・・・」
そうコソコソ白狐さんと小声で話し合っていると、いきなり椿は布団を天井ギリギリまで吹っ飛ばしながら、何かに対して驚いた声を上げて飛び上がった。
「わぁぁぁあ!?」
「あ、自分から出てきた」
『今回は早かったの』
白狐さんが椿を受け止めたと同時に、私達はチビ賀茂様が家に・・・というか、椿の布団の中から出てきたのを確認する。
すると、椿は白狐さんの腕から降りながら土下座して、チビ賀茂様にペコペコと頭を下げ始めた。
「賀茂様、ごめんなさい!僕、とんでもない事をしちゃいました!どんな罰でも受けるので――」
「あ〜、よいよい。そんなに謝らんでも、本体の賀茂は怒っとらん。それに本来なら本体が伝えるべき話じゃったのだが、今は恥ずかしいから顔を合わせられんそうじゃ。何せ、まさか椿からキスをしてくるとは思――むぐっ」
「そ、それは言わないでください・・・」
それでも、キス魔をやらかした件については椿は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にしながらチビ賀茂様の口を両手で封じていたけどね。
・・・心なしか、賀茂様よりエグめなキスをした私や狐2人に対しては、更に顔を背けてるようにも見えるし。いやまぁ、私達だって滅多に無いシチュだったから、ドキドキしたのは間違いないんだけどさ。
「ふむ・・・可愛いの、椿よ」
「そ、そんな事よりも賀茂様!一体、何の用事で――」
「いや、なに。鞍馬天狗の翁からも許可を貰ったので、脱神の説明をと思っての。先は椿が酔ってしまったから、それどころではなかっただろう?」
「あっ・・・そうでした」
そういえば、そんな重大かもしれない話を聞くって約束を高龗神様としていたっけね。今の落ち着いてるチビ賀茂様の様子からすると、あっちも無事に帰ってくれたみたいで良かったよ。
「まぁ、それは兎も角・・・チビ賀茂様、その脱神ってのは一体何なんです?」
「単刀直入に言おう。あれは妖怪が"神妖の妖気"を得る為の儀式によって力を弾かれ、抜け殻となった"神"そのものだ。」
「なるほど〜・・・って、えぇぇぇえ!?」
すると、そのチビ賀茂様の言葉を聞いた椿は、驚きながらも何かを思い出したような表情を浮かべる。
「えっ?あっ・・・そっか、そういう事だったんだ」
「どうかしたの、椿!?」
「いや、"神妖の妖気"を得る為の儀式については聞いていたけれど、どこか何かが引っかかるなと思っていたんです。でも、これで全てハッキリと理解出来たよ」
「あっ、そうか・・・神様を呼んで、その力だけを妖怪に入れて神様本体は弾き出す儀式。つまり、それで力を奪われた神様が存在し続けてても、何の不思議も無い訳だもんね」
「うん・・・だけど僕は、それを妖怪センターが口止めし続けている理由が分かりません。だって、儀式によって、その神様から力は全て弾き出されてるハズじゃないんですか?」
そう椿が首を傾げて疑問を零すと、今度は白狐さんがそれに答えてくれた。
『2人共、そう思うじゃろ?ところが・・・力は無くともじゃ。向こうは身勝手に呼び出され、自らの力を奪われたんじゃ。その神自身が強力な負の塊となり、時に人間や妖怪に多大な影響を与える事がある。それこそ、祟り神に変じる事もあるんじゃ』
「なっ!?それじゃあ、まさか・・・」
「半年前に滅幻宗のアジトに居た、あの祟り神も脱神って事かよ!?」
『その通りじゃ、綾よ。あれも力は弱いが脱神であり、その成れの果てじゃ』
そんな白狐さんの恐ろしい説明には、私も椿も思わず呆気に取られて黙り込んでしまったよ。たとえ力を奪われても、それによって生まれた負の感情が強力な武器になるなんて・・・つくづく神様って、私達じゃ予想もつかない凄い上の存在なんだな。
そう思っている中、チビ賀茂様が白狐さんから引き継いで話を続ける。
「ところが、もし上位の神が脱神となった場合は非常に厄介じゃ。それは妖界をも人間界をもすら滅ぼしかねない、恐るべき邪神になるじゃろう。今のところ、それが現れたという記録や言い伝えは無いが、昔から一部の妖怪の間では恐れられていた事じゃ」
「そ、そんな・・・じゃあ、ひょっとしたら私や椿の持っている"神妖の力"も、どこかの神様から?」
「うぅむ、それは少し分からんな・・・だが、私は今お前達2人から感じる力を見るに、その力はお前達自身のものだと思っているぞ」
その言葉に私がホッと胸を撫で下ろしかけた時、また何かを思い出しかけたのか椿は頭を押さえてフラフラし始めた。
「えっ、どうしたの椿!?まさか、何か心当たりがあるの!?」
「うっ、いや・・・まだ確信を持てない、推測の域でしかないです。それと頭も痛い、です・・・」
『おっと!大丈夫か、椿!』
黒狐さんがタイミング良く、あわや倒れそうになる椿を抱きとめる。
「ごめんなさい・・・また、僕の封じられた記憶の事らしくて、頭が・・・」
『いや・・・それは恐らく、二日酔いの頭痛だぞ』
「違います、黒狐さん。二日酔いの頭痛じゃないです。フラフラして吐き気がするけれど、多分きっと違います」
「椿・・・それ、間違いなく二日酔いだよ」
『ああ、綾の言う通り二日酔いじゃ』
「うむ、二日酔いじゃな」
「綾ちゃんと白狐さん、それに賀茂様まで!?えっ?ちょっと待ってください、本当にコレ二日酔いなんですか?甘酒1杯で、そんな・・・」
そう椿が慌てていると、賀茂様は苦笑いした。
「まぁ、仕方ないだろう。何せ、高龗神が甘酒のアルコール度数を上げていたからな・・・2倍に」
「うっ・・・おやすみなさい」
あ、今の聞いた瞬間に椿がまた気持ち悪そうな表情になって布団に潜っていっちゃった。
すると、それと同時に私達の部屋へ今度は、お粥を持った里子が入ってくる。
「椿ちゃん、二日酔いは大丈夫?お夕飯、食べられそうにないだろうから、お粥作ってきたよ」
「里子ちゃん、ありがとう・・・妖気が切れたら困るから、とりあえず食べておくね」
「は〜い、そうしてください。あ、それと・・・ちゃんと二日酔いにも効くように作ったからね〜」
そして、そのまま里子は布団に潜っている椿の隣へやって来て、お粥をスプーンで掬い上げる。
「えっ、里子ちゃん?僕、一応は自分で食べられ――」
「椿ちゃん、分かっているでしょ?」
里子が何をしようとしてるのか察した椿は、すぐに器に手をかけようとしたけど、やんわりとした笑顔で椿の手を避けたよ。
「あの・・・風邪じゃないから、恥ずかしいんですけれど」
「ふ〜ん、風邪なら良いの?」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「観念してね、椿ちゃん?」
「うぐっ・・・分かりましたよ」
まぁ、椿に甘酒を飲ませちゃった私も悪いから、今回ばかりは大人しく邪魔しないでおきますかね。
・・・その里子の後ろで並んで、自分も椿に食べさせたいって顔してる狐2人や賀茂様は見なかった事にしておこ。