私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
何とか滅幻宗の襲撃を退けた私達は、妖怪達と協力して捕まえた連中を縛り妖界へ送る手伝いをしていた。椿の家族だった2人は完全に震え上がってしまい、蟲喰いも数珠に縛られたまま放置されている。
「く、くそ。こんな、こんな事になるとは・・・離せ、くそ!」
「やれやれ、お前は折角のチャンスを不意にしたんだ。観念して、妖界にある牢獄にでも入ってろ」
「くっそ!こんな妖狐のガキの世話を押し付けられて、不満に思わない奴はいないだろう!」
私はその自分勝手な言い分をした蟲喰いに、とうとう堪忍袋の緒を切らして叫んだ。
「いい加減に黙ってよ!椿はさ、あんたらにまで拒絶されて辛かったって事がまだ分かんないのかよ!?」
「なっ・・・!」
椿を見る。彼女は母と姉であった2人へ近寄って恐怖で震える姿の前に立ち尽くしていた。椿はいくら自分をいじめてきた相手だからとはいえ、家族からそんな反応をされて一体どれほど辛い気持ちになっているんだろうか。
私が怒った事を見かねた椿の祖父が間へ入る。
「ふぅ・・・あの2人は大切な者と、その娘だろ?助けんのか?」
「ふざけんな!俺の事を良い金づるとしか思っていない、こんなクソみたいな人間を大切だと思う訳がないだろうが!」
「ッ!ふざけてるのはお前だ!そんな事を言う方がクソだろうが!!」
「精々隠れ蓑にする為の人間、その為に選んだ存在だ。それ以外の感情など無い!全く、反吐が――ぐぎゃっ!!」
腐りきった態度に私が蟲喰いに殴りかかろうとした瞬間、突然そいつの頭が爆発して周囲に残骸が飛び散った。私は慌てて椿の祖父へと振り向くと、いつの間にか抜け出したのか塀の上に逃げた栄空と呼ばれた坊さんを睨んでいる。
「しまった!まだこんな力を残しとったか!」
「すぐに捕まえる!小次郎!」
私は小次郎を呼び出して栄空へと攻撃させるも、まだ一撃放てるだけの余力を残していたらしい敵の攻撃を腹に受け塀から落とされてしまう。その瞬間に私の腹部もまるで小次郎が蹴られたのと同じように痛み、その場に膝をついてしまった。
「綾!」
「やっぱり妖怪は醜い・・・滅ぼさねばいけません。ですが、流石に手負いの状態では雑魚を1匹片付けるのが限界ですね。――それでは、いずれまた」
「くそ、待て!」
私が叫び、椿の祖父が追いかけようと翼を広げたが既に栄空はそこから素早い動きで姿を消した。
『椿に綾、大丈夫か?』
「わ、私は平気。それよりも椿の事を」
『あ、ああ。椿?』
私にそう言われた白狐さんが、椿の肩へと手を置いて心配そうな顔を浮かべた。
「大丈夫、白狐さん。・・・ちょっとだけ、あの2人と話をさせてくれる?」
それでも、目の前で義父だった妖怪が殺された直後だというのに、椿は大きく動揺する事もなく残された家族だった2人の傍へと歩いていく。私も腹を押さえながら彼女の隣へと立った。
彼女の母親だった方は完全に気をやってしまったのか怯えてばかりだが、姉の方はまだ話す気力がありそうだ。
「あっ、あっ、あぁぁ・・・」
「こっちはダメそう、そっちの方は?」
「・・・やっぱり夏美お姉ちゃんも、あの人には何の感情も湧いてなかったんだね」
「――っ!そ、その姿で、その声で、お姉ちゃんなんて言わないでくれる!?」
怒鳴った椿の姉に危うく「ごめんなさい」と言いかけた椿の肩を抱くと、それで落ち着けたのか彼女はゆっくりと口を開いた。
「そうだね。僕はもう、槻本家の人間じゃないよ。・・・妖狐の娘、椿だよ」
椿のその言葉を聞いた瞬間に、彼女の姉は強気だった表情を消して淡々と今の質問に答え始めた。
「――さっきの質問だけど、答えは「イエス」よ。あんなの、お母さんが勝手に再婚した相手だからね・・・私は反対だったのに。だけど、あいつは案外金を持っていたし、お母さんはただそれに目が眩んでいただけ。今だって、あいつに内緒でこっそりとしていた借金をどうしようって・・・それでショックを受けているだけだから」
「そうか・・・それでも、椿にこれまでしてきた事の全ては帳消しになるとは思わないでよ。あんた達の罰は彼女が決める事になってるんだから」
私は椿から離れようとするけど、ふと椿の祖父の様子が悲しく落ち込んでいるように見えたので足を止める。椿もどうやらそれを感じ取ったようだった。
「ねぇ、白狐さん黒狐さん。おじいちゃんがあんな状態だから、僕が罰を決めて良いですか?」
『むっ?良いと思うぞ。翁はそのつもりで、さっきお前さんに聞いたんじゃ』
『おっ、罰を決めたのか椿』
「黒狐さんは静かにして」
すると椿は妖怪達の中から、鞠を手にずっと私達を見ていた座敷わらしの子へ視線をやった。その子は自身が呼ばれた事に嬉しそうな顔で私達の元へやって来る。
「なに?椿ちゃん」
「ねぇ、座敷わらしちゃんは人に幸福を与えるんだよね?その逆も出来る?」
「椿、どういう事?それってつまり・・・」
「不幸を与えるって事?そうだね、近い事は出来るよ。今着ている私のこの服の上に、赤いちゃんちゃんこを着てその人達に見せれば凶事が起こるから。だけど何が起こるかは分からないし、ずっと起こる事はないよ」
「うん、分かった。それでお願い」
「は〜い。椿ちゃんに酷い事をしたんだから、これくらいはしないとね」
座敷わらしの子はそう言って、赤いちゃんちゃんこを探しに行った。その会話の一連を聞いていた椿の姉は徐々に顔を青ざめていく。
「夏美お姉ちゃん。これが僕からあなた達に送る、最初で最後の復讐だよ。・・・しっかりと後悔してね」
そう言った椿の目からは、たくさんの涙が溢れてきていた。私は彼女の手を握って、白狐さんは彼女の頭を撫でながら労いの言葉をかけた。
「よくやったね、椿」
『充分じゃ、椿よ』
私は椿と一緒に白狐さんへ寄りかかりながらも、彼女に選択をさせた事に後悔はないと自分へ言い聞かせていた。