私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「はい・・・え〜それじゃあ、そんな訳で作戦会議の方を――」
「それよりも綾姉さん。まず、椿姉さんに布団から出てきてもらいたいっす」
「あぅぅ・・・今は無理です、楓ちゃん・・・白狐さんも黒狐さんも居ますから」
あれから布団を被って完全乙女恥ずかしがりモードになってしまった椿の代わりに、私は皆を集めて作戦会議を始めようとしていた。
ちなみに、椿の大胆な告白で気絶してた狐2人は既に復活済みだ。まぁ、それが今の椿の状態に繋がっている訳なんだけどさ・・・。
『ふっ・・・椿の永遠の愛の誓い、可愛かったな』
『しかし白狐、2人というのが引っかかる。どちらが椿の旦那に相応しいか、まだまだ勝負は着いていないな』
『良かろう。それなら、どちらが先に椿との子を為せるか、勝負――』
「すんなやぁ!この色ボケ狐共がぁ!」
「というか、勝手に決めないでください!!――あっ・・・」
狐2人に対してツッコミを入れた瞬間、椿も布団から飛び出てツッコむ。でも、2人と目を合わせてしまった椿は、一瞬で顔を真っ赤にして再び布団に逃げ帰っちゃったよ。
「ちょっと椿!いい加減に出てきなさいよ!作戦会議が出来ないでしょうが!」
「大丈夫です、このままで出来ますぅ・・・」
「あのねぇ・・・あ〜もう。そこの夫3人、何とかしてよ」
「夫3人って・・・美亜、それ私も含めてか!?」
いやいや喜んでる場合じゃねぇからな私。今ので椿、ビクッて震えてから更に布団へ潜っちゃったからな。
『こういう時の椿は、様子を見るのが1番可愛いんじゃ』
『だが、弄って反応を見るのも可愛いぞ』
「おぅ最悪な事言ってんじゃねぇですよ、白狐さんも黒狐さんも。とにかく椿は大丈夫だって言ってるんだし、このまま作戦会議を進めるからね」
そして、私は人差し指で布団に潜ったままの椿をつついた。
「えっと・・・それで僕達は、全生徒と捜査零課の半妖さん達、そして京都市内に住む半妖の人達が誘い込まれて閉じ込められた、あの学校の旧校舎へ侵入して助けに行きます」
そう椿が言った矢先、わら子が不安そうな表情で手を挙げてくる。
「あの、椿ちゃん・・・それって、凄く危険だよね?どうして私達が行く必要があるの?」
「酒呑童子さんと伊吹さんは今、亰嗟の方を足止めしてくれています。それと同じように、他のライセンス持ちの妖怪さん達も、今は酒呑童子さん達の手伝いをしたり、妖界から逃げてきた妖怪さん達の把握や犯罪防止に努めている状態なんです」
「な〜るほどね。つまり、手が空いていて尚且つ、最強パーティーの私達が1番適――にゃぁっ!?」
「美〜亜ちゃ〜ん?いつから君がリーダーになったんですか?」
ありゃりゃ・・・椿が影の手で美亜の尻尾を引っ張って黙らせてらぁ。こういう真面目な話をしてる時にふざけるような事、椿の前じゃ絶対やっちゃいけないね。どんなお仕置きされるか分からないし。
「椿ちゃ〜ん、椿ちゃ〜ん・・・」
それと、椿に向けて尻尾をパタパタさせてる里子については何も言わんでおこ。椿も相手してたらキリが無いって分かってて、敢えて無視してるみたいだからね。
「とりあえず、作戦の方に話を戻すよ。それで旧校舎の侵入に関してだけど、復活したレイちゃんが結界を破ってくれるから、問題はその後だね」
「そこは美亜ちゃんに呪術の罠を警戒してもらって、その後ろを僕達が行く・・・というのはどうかな?」
そう椿が罠への対策を提案すると、今度は龍花さんが少し難しい顔で手を挙げてきた。
「椿様。それでは咄嗟の事態が起こった時、美亜さんが危険ですよ」
「うっ・・・それもそうでした。だけど、厄介な効果が多い呪術は警戒したいですから、なるべく美亜ちゃんには出来るだけ先頭に居て欲しいんですけれど・・・」
すると、そこで更に玄葉さんが手を挙げて割り込み、龍花さんに自信を持った眼差しを向けてくる。
「龍花、椿様は呪術を警戒されているのですから、美亜さんを頼りにするのは当然の事です。それならば、その美亜さんを私が守り抜いてみせますよ」
「いや・・・それは無茶だ、玄葉。玄武の盾を持っているお前には、全員を守る方が得策だ」
「しかし龍花、そうなると私の盾の防御力は皆様へ割いている分、分散して薄く・・・」
「だから、そこをカバーするのが我々4人の役目でしょう?座敷様も居るんですよ?」
おぉっと、まさか龍花さん達4人もガッツリ作戦会議に加わってきちゃうのは予想外だぞ。事前に椿と話してた策じゃ、より多くの任務をこなして実力も高い龍花さん達には自由に動いてもらって、いざという時のバックアップを頼もうと思ってたんだけどな・・・。
「そもそも、いつも龍花や虎羽が前衛で飛び出すのですから、私が全体をカバーする羽目になるんです。たまには、作戦通りに動いたらどうですか?」
「何ですって?そうは言っても玄葉、貴方は戦闘が出来ないでしょう?」
「いいえ、私だって戦闘の1つや2つくらい出来ます!」
「あっ、ちょっと・・・龍花さんも玄葉さんも、喧嘩しないでください」
そう椿が間に入って止めようとするけど、龍花さん達はドンドンヒートアップしていってしまう。
「それに龍花に虎羽、私の事も忘れていないですか?そもそも、援護をする私の身にもなってみなさい!」
「朱雀、貴方は空中から安全に攻撃しているだけでしょう!」
「聞き捨てなりませんね、虎羽。勝手に動き回る誰かさん達に当たらないよう、米粒程の敵を狙い撃つのは至難の業なのですよ!」
わら子の様子が暗くなってきたのを感じ、すぐさま私は龍花さん達を止めようと声をかけようとしたものの・・・。
「龍花さん達!そこまでにして――って、げっ・・・やば!」
「それ以上は、わら子ちゃんが――あっ、もう遅かった・・・」
「ねぇ・・・龍花さんに虎羽さん、それと玄葉さんに朱雀さんも・・・何で喧嘩しているの?私、そんな4人は見たくないよ〜!うぅ〜!!」
「えっ、座敷様?ちょっ――きゃあっ!?」
「待ってください、これは――ぁぁぁあ!?」
「座敷様!落ち着い――うわぁぁ!!」
「くっ、これは一時撤た――わっ!?きゃぅ!!」
「あ〜・・・」
「言わんこっちゃない・・・」
わら子が不機嫌そうな顔で地団駄を踏んだ途端、龍花さん達には天井の板が落ちてきたり床が抜けたり、果てには浮遊丸がスーパーボールのようにスッ飛んできたりして滅茶苦茶な事が起こり始めちゃったぞ。
「う〜ん・・・それじゃあ龍花さん達には、各自で自由に動いてもらいますね。この感じじゃ、いつまでも決まりそうにないので」
そんな龍花さん達を他所に、椿は布団を被ったまま大きく溜息を吐いた。だけど、問題はそれだけじゃないんだよなぁ・・・。
「あのさ、椿・・・そっちもそっちで、いつまで布団被ってるのさ。流石に、これ以上は皆にも失礼なんじゃない?」
そう言いながら、私は思いっきり椿の被っていた布団を引っペがす。そして、驚く椿の顔を狐2人が真上から覗いた。
「え?――うわっ!?」
『綾の言う通りじゃぞ、椿よ。我はもう気にしていないから、大人しく出てくるんじゃ』
「僕が気にするんです!」
すると、また布団を被ろうとする椿の後ろに里子が回り込んで、頬をプクゥと膨らませて怒った様子になる。
「椿ちゃ〜ん?あんまり抵抗すると、尻尾弄っちゃうよ〜?」
「くっ、いつの間に・・・でも、お布団からは出ません!たぁっ!!」
「なっ!?椿ちゃん、お布団を被ったまま飛び上がるなんて!」
「ふっふっふ、甘いですよ――ぎゃんっ!?」
まぁ・・・真上にビョンって飛んだだけだから、私は「いい加減にしろ」って気持ちで尻尾を掴んで引っ張り下ろしたけどね。いくら大の親友とはいえ、モラルの1つや2つは守って欲しいよ、全く。
「今のうちです!椿姉さん!早く布団から出てきてくださいっす!」
「わぁ!?楓ちゃん、布団引っ張らないで!!」
「それなら、私が冷やそうか?」
「雪さん、それ逆効果っすよ!」
だけど、そこで楓や雪が椿から布団を剥がそうと躍起になりまくったから、いよいよ美亜からドス黒いオーラが出てきちゃってるぞ!
「な、なぁ・・・こ、これ以上ドタバタするのは流石に――」
「フゥゥ・・・!アンタ達、今は作戦会議中でしょうが!これ以上バタバタ騒ぐなら、全員呪うわよ!!」
「ぎゃあ!早く出て来い椿!美亜がキレる前に、Hurry(ハリー)!Hurry!!」
「ひっ・・・はい、ごめんなさい・・・」
これには椿も大人しく簀巻きの布団から出てきましたよ、ええ。こんな怖い美亜を見るのとか、多分初めてだと思うんですけど。
「それじゃあ、あとは分かっているわよね?」
「はい、ちゃんとやります・・・」
そんな美亜の恐ろしさもあって、この後の作戦会議は皆も静かにサクサクと進める事が出来たよ。
・・・こりゃ椿と同じくらい、美亜も怒らせちゃいけない人物リストの上位に入るね。