私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
その翌日。準備を整え終えた私達は、狐2人や龍花さん達4人と共に、かつて私と椿の通っていた中学校にやって来ていた。
既に学校は黄色のテープで立ち入り禁止にされており、正門前は報道陣でごった返している状態だ。その為、私達は学校の裏側から回って敷地内を目指している。
「それにしても・・・つい最近まで通ってたハズなのに、もう随分と昔の事に感じちゃうな」
「そうだね、綾ちゃん。それだけ、この学校が異変によってヒッソリとしてしまっているんです」
その椿の言葉に私は頷き、儀礼衣装"悲愴天・玄武"を展開しながら、心を切り替えるように大きく深呼吸する。そして、建物の陰の薄暗い場所特有の湿気と匂いに少しむせつつ、後ろで周囲を警戒する龍花さん達の方へ振り返った。
「よし・・・それじゃあ作戦通りに。玄葉さんには私達のチームを守ってもらって、他の3人は警戒をしながら学校周辺に待機してください」
「もし何かあったら、僕達の指示を待たずに独自の判断で対応してくださいね」
「分かりました、綾様に椿様。確かに、私達は個別で動いた方が作戦の効率が良さそうですからね」
そんな龍花さんの返事には、ついつい私も椿も苦笑いしてしまったよ。
昨日の口喧嘩の件といい、龍花さん達は血の繋がった4つ子なのに、戦闘面じゃない変な所で連携が取れない時があるんだもんな。それでも、"わら子を守る"という根っこの部分は共通しているんだから何とも不思議な感じだ。
そんなこんなで皆と作戦を再確認した後、椿は影の妖術で大きくジャンプして裏手門を飛び越え、そこから私達を1人ずつ、影の手で自動リフトよろしく運び入れてくれた。
「いやはや、やっぱり椿の妖術は応用が効くね〜・・・って、どうしたレイちゃん?」
「ムキュゥゥゥ・・・!!」
「あ、待っててレイちゃん。結界を破るのは、皆が揃ってからにしてね」
そう裏手からグラウンド越しにある旧校舎を睨みつけるレイちゃんを宥めながら、椿はヒョイヒョイ順調に皆を学校の敷地内へ運び入れていく。
「椿ちゃ〜ん!私を受け止めて〜!」
すると、そんな中で椿の影に乗っていた里子が突然、椿へ向かって両手を広げながら飛び込んできた。
「さっ、と」
「きゃぅん!?」
・・・まぁ、例によって椿が避けたから里子は盛大に顔面着地して痛そうにしてたけどね。こんな状況なのに何してんだか。
「里子、ブレない」
「流石に少しはブレて欲しいもんだけどね・・・というか、雪も雪で何で両手広げてるのさ?」
「ん、私は綾に受け止めてもらおうと思ったんだけど・・・駄目?」
「おぅ、もし顔面着地で地面にキスしても良いなら構わないけどな。上手くキャッチ出来る自信無いし」
とりあえず、その私の言葉を受けて雪は渋々ながらも大人しく降りてきてくれたよ。さっきの里子みたくいきなり行動しない辺り、こっちはまだマシに感じちゃうな。
そんなこんなで最後に狐2人も学校の敷地内へ入ってきたのを確認してから、私達はチーム全員で旧校舎の前へと移動する。此処に来るのは半年以上前に起こった、あの1人隠れんぼ事件の時以来だ。
だけど、今回はその時よりも旧校舎の雰囲気が強く禍々しいものになっているように感じる。
――以前の時にも散々この中は調べたのにも関わらず、だ。
でも・・・あの時に椿の中に居た妲己さんが他に潜んでいた何かに気付いて、それを黙っていたとしたら?
何にせよ、それを知る妲己さんは華陽に捕まっている状況な訳だ。それに、此処に華陽が潜んでいるなら、今は色々と考えるよりも目の前の事を解決するのに全力を注ぐべきだ。
「それじゃ、皆・・・準備は良い?」
先頭を歩いていた椿が振り返って、私達に大きな戦いへの覚悟を訊ねるかのように声を掛けてきた。
「OKだよ、椿。私ならいつでも突入しても大丈夫だ。だから、真正面からの襲撃は任せてくれ」
「えぇ、こっちも良いわよ。呪術があったら、すぐに見抜いてあげるわ」
「術で罠が仕掛けられていても、自分が跳ね返すっす!」
「幸運の気の方は、もう展開しているよ。あの旧校舎の感じからしたら、気休め程度にしかならないかもしれないけれどね」
「他の方向から敵が襲ってきたら、私が凍らせて動きを止める」
「そこを私が吹き飛ばすよ!だから椿ちゃんも綾ちゃんも、安心して自分の力を温存しながら戦ってね!」
その椿の言葉に皆で自らの役割を確認し、それぞれ真剣な眼差しで彼女に頷いた。この四方八方を警戒する作戦なら、たとえ何があっても即座に対応出来そうだ。
「いつでもどうぞ、椿様。私達の方も、戦闘の準備は出来ています」
そして、そう言った玄葉さんは玄武の盾を展開し、私達の周りに薄く透けていながらも強力な防御結界を張ってくれた。
「うん、ありがとう玄葉さん。これで準備完了だね」
「よし、それじゃあ・・・レイちゃん!頼んだよ!」
「ムキュッ!」
そう私が合図した瞬間、レイちゃんは待ちきれなかった様子で旧校舎へ真っ先に飛んでいき、そのまま縦に一回転しながら尻尾でバリーン!と結界の一部を叩き割る。
「よっしゃ!やっぱり、レイちゃんのコレで旧校舎に入れるな!」
「皆!結界はすぐに修復されるから、このまま一斉に突入して!」
「「「「「了解!!」」」」」
その勢いに乗っかって、私達は旧校舎の入り口へ一気に走り込む。
しかし、下駄箱の所へ踏み入れた瞬間に私と椿は目の前の光景にビックリして足を止めた。
下駄箱の先、以前は廊下へと続いていた旧校舎の様相は何処へやら。なんと、今は数キロ先すらも見渡せない程に深い霧で包まれ、真っ暗で巨大な穴がポッカリと口を開けてしまっていたのだ。
「うわぁ!?いきなり断崖絶壁になってるぞ!!」
「わ〜!!ストップストップ!皆ストップ〜!!」
旧校舎、まさかのビフォーアフター!?
危ない危ない・・・全員で勢いよく突入してしまったから、ドドドドッ!と穴のフチのギリギリまでつんのめっちゃったぞ。
「へぶっ!?ちょっと、椿に綾!?」
「姉さん達!どうしたっすか!?」
「美亜も楓もあんまり押すな〜!この先に廊下が無いんだって!」
「下が霧で何も見えないのに、このままじゃ落ちちゃう!!」
「えぇ!?そうは言っても、結界が・・・!」
「わわわわ!ギリギリセーフだけど、椿ちゃんも綾ちゃんも早く前に進まないと・・・って、廊下が無いの!?」
そうして私達は瞬く間に落ちる寸前まで押しやられてしまい、精一杯の力を込めて再び皆に向けて大きく叫んだ。
「おいおいおい!それ以上押すな!!」
「皆ストップ!穴の中に落ちちゃいます!この先、本当に足場も何も無いんです!!」
「「「「『『何だって!?』』」」」」
すると、そんな中で椿はふと穴の中に何かを見つけたらしく、皆を押さえながら人差し指を下の方へと向ける。
「んっ・・・綾ちゃん、ちょっと待ってください。あの霧の中、あそこの下の方に薄らと屋根みたいな物が見えるよ」
「こうなったら、一か八か・・・レイちゃん!あの屋根に飛び移るから、椿と私を背中に乗せて!」
「ムキュゥ!」
そして私と椿は意を決して飛び降り、丁度その下へ回ってきてくれたレイちゃんの背中にボフンと着地した。
『椿、無事か!?いきなり飛び降りるとは、少し焦ったぞ・・・』
『しかし・・・この旧校舎の様相は一体?』
そんな私達の上から、何とか穴のフチで踏みとどまっている皆と共に、狐2人が心配そうに覗き込んでくる。
「皆、ちょっと待っててください。さっき穴の下の方に屋根を見つけたので、そこへ降りられるかどうか確認してきます!」
すると、そう椿が言った瞬間。穴の上まで飛行して来ていた朱雀さんが、何やら慌てた様子で私達に叫んできた。
「椿様、綾様!後ろ!!」
「へっ?――うわぁ!?」
「どわぁ!な、何だこのバカデカい蛇は!?危うくレイちゃんごと丸呑みにされる所だったぞ!!」
咄嗟にレイちゃんが飛び退いてくれたお陰で巨大な蛇の大口を避ける事は出来た。しかし、その蛇からは"普通なら感じるハズのもの"が何1つ出ていない事に私と椿は違和感を覚えた
「くっ!この蛇、何かおかしいぞ!コイツから妖気を一切感じない!」
「そうなると・・・美亜ちゃん!これ、呪術の類ですか!?」
「わっかんないわよ!邪気は感じられるけれど、それでも呪術程の濃さじゃないわ!」
その美亜の言葉に、私達は更に蛇に対する不審感が積もっていく。しかし、皆も穴の中へ落ちてしまいそうなギリギリの状況なので、こんな事を考えるよりも早いところ巨大な蛇を何とかしないといけない。
「よーし、こうなったら・・・レイちゃん!あの蛇の後ろまで回り込めるか!?」
「ムキュ!」
「ふふ、レイちゃんは良い返事をしてくれますね。それに何だか嬉しそうです。そんなに、僕や綾ちゃんと一緒に戦えるのが嬉しいのかな?」
「それよりも、椿。こんな京都タワー並みにデカくて黒い蛇、どうやって戦うのさ?目も真っ赤で呪術の可能性があるとはいえ、美亜でも分からないと対処も限られるよ?」
「うん、そうだね。それでも邪気があるというのなら・・・御剱で浄化するしかない!」
「やっぱりね!それなら私だって・・・麒麟甲、展開!」
そして私達はそれぞれ、金狐や鈍色の狐にならない程度で自分の持つ神刀や神甲に妖気を流し、武器に秘められた力を解放していく。
まだこの先に何が待ち受けているか分からない以上、可能な限り温存しながら戦っていくしかない・・・それなのに、最初からこんな強そうな蛇が居るとは思ってもみなかったけどな!