私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

363 / 390
第弐拾陀話 大縦穴での激闘

 

私と椿はレイちゃんに乗って、霧の中から薄らと見える屋敷の屋根を目指しつつ、数メートルもあろう太さの黒い大蛇の攻撃をいなしていく。

 

「シャァァァア!!」

 

「くっ!レイちゃん、今度は上!」

 

「ムキュ!!」

 

「ぐぅ・・・っ!盾で防いだのに、なんつー重さしてんだ!ちょっと身体が掠めただけだってのに!」

 

巻き付こうと身体を伸ばしてきた大蛇を"悲愴天・玄武"の盾で弾いたのにも関わらず、私の両腕はまるで砲丸を金属バットで打ったかのような衝撃でビリビリと痺れている。

 

「黒焔狐火!!」

 

その攻撃を避けた瞬間に椿が黒炎を大蛇へ向けて放ったものの、燃やし尽くすハズの黒炎に対して相手は多少熱がった程度で全く炎上せず、すぐに炎を振り払って再び私達を睨みつけてきた。

 

「なんて野郎だ・・・鱗に耐火能力でも付いてやがるのかよ?」

 

「僕の黒炎をものともしないなんて・・・う〜ん、この大蛇は一体何なのでしょうか?」

 

そう椿と共に首を傾げていると、上から白狐さんの声が響いてくる。

 

『椿、綾・・・!それは、もしかしたら白蛇の堕ちた姿かもしれん!気を付けろ!』

 

「白蛇?それって確か、神様の化身だとか使いだとか呼ばれてる蛇だったよ〜な気がするぞ?」

 

「そうですね、綾ちゃん。そう周りから扱われている内に、本当に神格化するという話は聞いた事があります。だけど、それが邪なる姿に堕ちてしまったという事は・・・」

 

「なるほど、その白蛇が居た地域の人達の信仰心が薄れて、力を求めて負の側面に飲まれたって訳か。信仰を失ったら、神様にとっては死に直結する話だもんな」

 

その私の言葉に椿は力強く頷きつつも、大蛇を見据えたまま再び御剱を構え直した。

 

「それなら、浄化するだけじゃ駄目ですね。レイちゃん、あの蛇から出来るだけ距離を取れないですか?」

 

「ムゥ・・・ムキュッ!」

 

「今のレイちゃんの反応・・・あれだと多分、ちょっと難しいって感じかな。よし、それなら私がレイちゃんの援護をするよ!」

 

「助かります、綾ちゃん!」

 

すると、その瞬間に大蛇は身体を穴の壁に素早く這わせ、鞭のようにしならせながら巻き付く動きをしてくる。

 

「うぐ・・・っとぉ!そう何度も巻き付こうとするなんざ、相手はヤケになってきてるみたいだな!」

 

私の盾で軌道を逸らしたお陰もあるとはいえ、どうやらレイちゃんも大蛇の動きから避け方を学習したらしい。なんと、椿の指示が無くても空中に壁があるように跳ね回って、そのまま大蛇から距離を離してのけたのだ。

 

「レイちゃんナイス――って、わぁっ!?」

 

しかし、それと同時に大蛇は口を大きく開いたまま、舌先からジェット水流のように紫と黒の混じった液体を飛ばしてきた。

何とかレイちゃんは避けてくれているけれど、それが穴の壁や着地しようとしている屋根にかかった途端、ジュウジュウと塩素っぽい匂いと湯気を上げながら溶けていく。

 

「あっぶな!こんなの盾で防いでたら多分、この"悲愴天・玄武"の防御力でも耐えられないぞ!」

 

「レイちゃん!あの黒い液体は絶対に避けてください!」

 

「キュッ、ムキュゥ!!」

 

その液体の危険ぶりはレイちゃんも目の当たりにして慌てていたけど、それでも大蛇の動きを注意深く見ていれば避けられる範囲だ。そうして回避に専念するレイちゃんの背中で椿が懐から扇子を取り出したのを見て、私もスゥと息を吸って"神格化した存在"なら鎮められる"アレ"に備える。

 

「よし!レイちゃん、あの屋根までこのまま向かってくれ!そこで大蛇を迎え撃つ!」

 

舞と歌を安定した場所で行う為にレイちゃんへ指示を出すけれど――

 

「キシャァァア!!」

 

大蛇は依然こっちを食べようと、空中で身体を反転させて襲いかかってくる。あの屋敷へ降りさせないようにしている様子を見ると、どうやら余程あの場所には何かがあるらしい。

 

そう考える中、上の方からは狐2人と美亜が言い争う声が聞こえてくる。

 

『くっ!美亜、お前の呪術で何とか出来んのか!?』

 

「無理よ!どういう仕組みになってるのか分からないけど、ここからだと呪いがかけられないの!」

 

『何だと!?美亜、詳しく説明しろ!!』

 

「そんなの分かんないわよ黒狐!変な結界が張ってあるせいか、負の気を張り巡らせる事が出来ないのよ!」

 

すると、そう言い合う狐2人と美亜を仲裁するように、今度はわら子の落ち着いた声が聞こえてきた。

 

「白狐さん黒狐さん、それに美亜ちゃんも落ち着いて。此処はかなり神聖な場所になっているみたいだから、皆の代わりに私の力で椿ちゃんと綾ちゃんを助けるよ!」

 

そして、わら子は黒狐さんの肩に上半身を乗せて、そのまま簡単な扇子の舞いを行って私達に幸運の気を広げる。

 

「キシャア!!」

 

「うわっ!あぶ――あれ?」

 

「あの蛇、急に苦しみだしたぞ?」

 

「シィ・・・シャ・・・」

 

「いや・・・まさか、液体を上手く吐き出せなくなってるのか?」

 

その相手の様子を見た私と椿はすぐ、わら子が上げてくれた運気のお陰だと認識した。

 

「よし、これはチャンスだ!」

 

「ええ、そうですね!レイちゃん、今のうちに穴の下の方にある屋根に降りてください!」

 

「ムキュ!」

 

とにかく、わら子が作ってくれたチャンスを何としても掴むべく、そのままレイちゃんを屋根へ一直線に向かわせる。すると、それを遮るように大蛇はヨロヨロ動きながらも、私達の前へ身体を伸ばしてきた。

 

「キ・・・シャァァッ!!」

 

「まだ諦めないんですか。でも、この弱り具合なら――綾ちゃん!」

「ああ、真正面から力無く突進してくるなら――」

 

「「神風の鉄槌《合式》!!」」

 

「キ!?シャァァァ・・・!」

 

椿との合体技によって作り出した浄化の風の塊で大蛇を吹き飛ばし、レイちゃんが屋根の近くスレスレでストップしたと同時に私と椿は屋根に飛び降りる。

 

だが――

 

「よっ、と・・・えっ!?うわぁぁぁ!!」

「うげ!?屋根がボロボロで、足元が――ぎゃぁぁぁ!!」

 

うん・・・今回わら子の幸運の舞が簡単なタイプだったから、穴の上から1、2kmある屋根の所くらいだと効果範囲から出ちゃうのを忘れてたわ。

 

「あわわわわ!!皆の所へ戻らないといけないのに〜!」

 

「というか、屋敷の中までも広いってどうなってんだよ〜!?」

 

それにしても、屋敷の中は馬鹿みたいに螺旋階段が続いてて、また下まで見えない吹き抜けに落ちてしまったみたいだ。

 

「とにかく、このままだと地面に激突し――って、あれ!?椿、どこ行ったのさ!?」

 

だが、そんな事を考えていた時。なんと、椿の姿も上から追いかけてくれていたレイちゃんの姿もいつの間にか消えてしまっており、私は慌てて周囲を見渡して彼女らを探す。

 

「くそっ、まさか空中ではぐれるなんて――ぐはっ!!」

 

すると、そこで私は腹から螺旋階段の手摺りにぶつかって引っかかり、その衝撃や痛みで思わず吐きそうになってしまった。

 

「痛たた・・・今のダメージで妖異変化も解けちゃったな」

 

とりあえず、1番下まで落下しなかった事だけは運が良かったものの・・・螺旋階段のアチコチに長い通路が繋がっているから、何処をどう通れば屋敷の外へ出れるか分からないぞ。

 

「ここから上に向かって飛ぶにしても、あんな50階建てビルくらいの高さじゃ"怒髪天・朱雀"でも届かないか・・・仕方ない、こうなったら通路の先を調べてみますかね」

 

まぁ、"虎穴に入らずんば何を得ず"とも言うからな。

敵の罠の中に飛び込んじゃった可能性はあるとはいえ、上手くいけば旧校舎の人達を簡単に助けられる裏道になるかもしれない!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。