私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾捌話 注文だらけの料理店

 

「よし、狐の新入り!次はこっちの料理だ!人間の新入りは、そっちの火加減を頼む!」

 

「あっ、はい!!」

 

「うわっ、とと・・・りょ、了解です!!」

 

拝啓、元気ですかオジサン?――私は現在、椿と共に蒸し暑い厨房にて卵・・・というか「不思議の国のアリス」のハンプティダンプティような人達と一緒に、妖怪食とはまた違った様々な料理を忙しなく作り続けています。

 

「おぉ、狐の嬢ちゃん!野菜の切り方、上手いじゃないか!よし、こっちも頼んだぞ!」

 

「は〜い!!」

 

「そっちの人間の嬢ちゃんもやるな!煮物やスープがベストな茹で加減だ!次、これも任せたぞ!」

 

「すぐ行きま〜す!!」

 

・・・はい、現実逃避終了!

 

さて、どうして私達が妖気も感じないハンプティダンプティもどき達と料理を作り続ける羽目になったのか。

 

それは今から溯って1時間くらい前・・・。

 

◇◇◇

 

「クンクン・・・この美味そうな匂い、こっちの方からするな・・・」

 

足元が何とか見えるような薄暗い通路を進んでいた私は、中華系や洋食系などの料理の匂いがする方へ誘われるように進んでいく。ちょうど妖気も消耗してきて腹も空いているからか、ついつい料理の匂いが気になっちゃうな。

 

敵の罠があるかもとは思っているけど、それでも通路は一本道だし・・・とりあえず、突き進んでいくしかない。

 

そうして数十分くらい通路を進みに進んでいくと、

ようやく真正面に扉が見えてきた。それに、どうやら匂いも扉の先からしているようだ。

 

私は思い切って、その扉の取っ手を強く引く。

 

「さて、吉と出るか凶と出るか――って、な〜んじゃこりゃ!?」

 

すると、その先には50メートルくらい先までも長く大きな厨房が広がっていた。

 

そして、そこでは沢山の某大乱闘ゲームのような白い手袋が、巨大な鍋やらフライパンやらで和洋中どころじゃない様々な料理を作っている。

 

「おい!前菜はまだか!?」

 

「まだだ!スープが出来上がってない!」

 

「だぁぁ畜生!!本来なら、とっくにメインの料理に移っているハズだろう!」

 

「人手が足りないっすよ!!」

 

そんな手袋達の間を縫うように、今度は巨大な卵に手足の付いたような何かが、数人でゴタゴタと忙しそうに動いているのが見えた。

 

・・・うん、何だアレ?まるで顔の無いハンプティダンプティみたいだぞ?

 

「おい!今日来るって言っていた新人はどうしたんだ!!」

 

「妖界の料理人の中でも腕利きの奴が2人来るとは聞いていましたが、まだです!」

 

「畜生!!・・・ん?」

 

あれ?何か、ハンプティダンプティもどき達が一斉に私の方を向いているような気がするんですけど?

 

「お前、何者だ!?」

 

「うわぁ!?わ、私は怪しい者じゃありませ〜ん!!」

 

「・・・ぬっ?おい!そこに居る狐!料理を勝手に食うな、こら!」

 

すると、ハンプティダンプティもどきの1人がヒョイと誰かの襟首を掴んで持ち上げていた。

でも、その人物を良く見ると・・・。

 

「ふぐぅ!?ご、ごめんなさい!!」

 

「んなっ!椿も此処に!?」

 

「えっ、綾ちゃん!?」

 

そんな予想もしてなかった場所で再会した事に驚いている内にも、ハンプティダンプティもどき達はコソコソと集まって妙な事を話し始める。

 

「しかし、料理長。もしかしたらこの子ら2人が、腕利きの・・・?」

 

「馬鹿野郎!んな訳あるか!だが、ここ『霊亡の屋敷』に居るという事は、そいつの関係者なんだろうな。そうなると・・・まさか、弟子とかか?」

 

「自身ではなく、弟子を送り付けるとは・・・なんて奴だ」

 

「いや、それだけ『弟子でも十分だ』と言う程の実力と自信があるんだろうよ。こっそりと俺達の料理の味付けを見たり、評価したりしているんだろうぜ」

 

おーい?何か、勝手に私と椿を料理人さんの弟子か何かと勘違いしてらっしゃいません?

というか、料理長も誰も全員がハンプティダンプティもどきだから全然分からないし・・・。

 

「まぁどっちにしろ、ここに足を踏み入れた以上は働いてもらうぞ!」

 

「ですよねチックショウ!!」

 

「でも、僕達は急がないと――って、あれ?厨房の出入り口は何処に!?」

 

「逃げようとしても無駄だぞ。ここ『霊亡の屋敷』の部屋は、その部屋ごとに定められた目的を達するまで出られない様になっている。勿論、この厨房もな」

 

「「そんな厄介な所だった(んですか・の)!?」」

 

こんなヘンテコな建物があるって事は、やっぱり私達が居るのは人間界の旧校舎ではなく、妖界の旧校舎のようだ。

 

それをいち早く皆に知らせる為にも、今は・・・。

 

「ほら、エプロンだ。さぁ、見せてもらおうか。お前達2人の実力をな!」

 

この忙しい厨房で、大量の料理を作りまくるしかないって事だな。

 

◇◇◇

 

――そんな訳で、現在に至ります。

 

「いよぉっし!前菜も副菜もOKだ!メインに入るぞ!」

 

「「「「おぉう!」」」」

 

「ふぅ、やっとですかい・・・数が多い上に下処理まで徹底してるから、とにかく時間がかかるな」

 

「そうですね、綾ちゃん。おじいちゃんの家で作る料理とは比較にならない量ですよ」

 

そうして、私達が下処理に使って汚れに汚れた水や調理器具を眺めていると、料理長と思われるハンプティダンプティもどきが珍しいものを見るような声色で私達に話しかけてくる。

 

「ん?どうした?」

 

「いや・・・ちょっと、大した事じゃないんですけど。下処理に使った水の汚れ方とか、料理のアクを取り除いた後に透明になっていくスープとか見て不思議だな〜と思いまして・・・」

 

「どういう理屈なのかな〜って・・・」

 

「なんだ、2人共そんな事も知らんのか!?この料理は、穢れた霊を満足させる為のものだ。だから、料理自体に穢れがあったら駄目なんだよ!」

 

「あっ、なるほど・・・」

 

「つまり、千と千○の神隠――むぐぐ」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「いえ、大丈夫です〜・・・綾ちゃん、そういう危ない事は言わないの」

 

「はい、すいません」

 

危ない危ない、ついウッカリしちゃったわ。

最近の椿ったら、こんなモノローグで考えていても、何か読心術を使ったみたいにツッコミ入れてくるからね。それに、ただでさえ暴走しがちな仲間が多いから、もう下手にふざけたり出来ないんだよな〜。

 

まぁ、それは兎も角。なるべく早く皆の所へ戻れるよう、まだまだ料理を頑張っていきますか。

 

「よ〜し、良いぞ!狐の新人、魚は焼き加減に気を付けろ!焦げたら失敗だぞ!」

 

「あっ、はい!脂が出てきてから、しばらく待って――うん、今!」

 

「なっ!?い、一発で成功じゃと!?むぅ・・・良し!焼きは任せるぞ!」

 

おっと・・・そんな事を考えてる内にも、椿はサンマみたいな魚を次々と焼き上げていってるな。

 

「おい、そこの人間の新人!料理が出来上がったら、次々と客のテーブルに持っていけ!悪霊だらけの店内で至難の業ではあるが、これも体力のある料理人にしか出来ん仕事じゃ!」

 

「はい!了解です!!」

 

――と思ってたら、今度は料理の運び方ですか。

 

さて、私も椿に負けないくらいに自分の仕事をこなして、こんな注文だらけの料理店から早くおさらばしないとね!

 

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