私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
運良く皆と再会出来た私と椿は、それからハンプティダンプティもどき達に不法侵入&つまみ食いの件を今更になって謝った。
すると……
「いや、構わないさ。2人共、それ以上の働きをしてくれたからな。しかし……どちらも料理人ではなかったにも関わらず、あの実力とは恐れ入る。どうだ?良ければ2人共、弟子入りを――」
そうしてハンプティダンプティもどきの料理長が私達に歩み寄ろうとすると、それを遮るように白狐さんと雪が割って入ってきた。
『それはいかん!椿の手料理が食べられなくなるではないか!』
「綾の方も、私の目が青い内は……ダメ」
「何だ……既に2人共、作ってやる相手がいるのか。それは残念だな……あぁ、そうそう。此処の料理は神々に献上する料理に"特別な処置"を施す事で、悪霊の浄化を促す効果があるのだ。だから"神妖の力"を持っている者なら、妖怪食と同じかそれ以上の働きをしてくれるぞ」
そう言った料理長のハンプティダンプティもどきは私や椿、そして狐2人を見ながら腕を組んだ。
なるほどね……どうりで私達が作った料理でも、悪霊達は不味そうな反応をしてなかった訳だ。というか、そんな重要そうな物を椿はつまみ食いしちゃったんだ……あ、またガックリ落ち込んじゃった。
「だから、気にするなと言っている。そっちの狐の子が反省しているのは良く分かっている上、むしろ我々の方が感謝しなくてはいかん。お前達2人のお陰で、予定の時間通りに料理を出すのが間に合ったからな」
すると、その"やらかし"に落ち込む椿を見た料理長ハンプティダンプティもどきは軽く笑い、ピョンピョン跳ねながら彼女の肩をポンポンと励ますように叩いた。
「しかし、鞍馬天狗の翁にも困ったものだ……新たな部下の紹介ぐらいはして欲しいものだが」
そんな中、さっきのでっぷりした髭のオッサンが私達の会話に入ってくる。そういえば、この人も何者なんだろうな……妖気を感じるから、きっと妖怪だとは思うんだけど。
それは狐2人も私達と同じだったらしく、申し訳ないと言った様子でオッサンに向かって頭を下げていた。
『すまんの……こちらも、そなたの事は全く聞かされていなくてな……』
「まぁ、ずっとこの屋敷に篭っているからな!翁も忘れているんじゃないかな、がはは!!」
うわっ……ファンクラブの認知度、高過ぎ……!?
――にしても、私と椿のファンクラブを何処で知ったんだってはなるんだけど!?
ひょっとしたらコレ、雪が知らないルートで勝手に知名度が上がっていってる部分もあるんじゃないのか……?
そんな事を考えてる内にも、黒狐さんは落ち着かない様子でオッサンと話を続ける。
『兎にも角にも……すぐ俺達は此処から出たいんだ。こんな状況で悪いが、出口に案内してくれないか?』
「それは構わんが……良いのか?外には謎の黒い大蛇がおるぞ?」
『むっ、そういえば……そうじゃったな』
そう狐2人が気を落としかけた所で、私と椿もオッサンとの会話に割って入りながらドンと自分の胸を叩いた。
え?私に叩ける程の胸は無いだろって?そうクスクス笑った人、後で屋上な……主に雪と楓だけど。
「それなら大丈夫!あのバカデカい黒蛇は私達で何とかするからさ!」
「僕達はいち早く、あの旧校舎の異常を調べなきゃいけないんです!だから、手遅れになる前に案内をお願いします!」
「ほぉ……それは心強いな、2人共。よし、それなら我々は何故この空間が妙な事になっているのかを調べよう」
そのオッサンの言葉に頷き、私達はグルリとホールの上下左右を見回す。
空間が変になってる原因は、間違いなく旧校舎だろうけど……これも八坂元校長か華陽達の術か?
でも、こんな所に繋がっているなら失踪した人達も此処に居るハズだろうし……。
――すると、そこで椿がハッと何か思い付いた表情になった。
「そうなると……多分、すぐに空間を元に戻す事は難しいでしょうね。でも、学校の生徒みたいな人や半妖の人達は此処に来ていないのですよね?」
「ん?まぁ、そうだな……お前達が来たぐらいで、それ以前に見慣れない奴が来たといった事は無かったぞ。繋がっていた空間の方も、昨日までは何とも無かったわ」
「なるほど……僕の予想通り、ビンゴです。という事は――」
「そっか!外の空間の何処かに、まだ旧校舎と繋がる所が残っているのかもしれないって事だね!」
『ほぅ、なるほど!椿も綾も、良く気付いたのぉ!』
そう褒めるような様子を見せる白狐さんに、私も椿も少しムスッとした表情を向ける。
「「もう分かってたでしょ、白狐さ〜ん……」」
いや、だって白狐さん……さっきスマホで妖気を確認して、既に打開策の答えに気付いた感じだったもん。それを使わなかった黒狐さんは、全く分からないって様子だったのに……。
それでもう答えを得てる中、私達が空間異常の特徴に気付いたかをチラチラ見てくるなんて、ちょ〜っと性格が悪過ぎやしませんかね……?
『む?いや、すまんすまん……少し試したくなってな。2人の予想通り、調べた結果はこの屋敷には何も怪しい箇所は無かったぞ』
そう謝った白狐さんに私と椿は態度を和らげた。
「そうですか……ありがとうございます。さて、それなら次は、外から旧校舎に繋がってる部分を調べたい所なんですが……」
「ここに私達を上手いこと誘い込んだトリック……だね」
全校生徒や半妖の人達を旧校舎に閉じ込めた後、私達への対策で空間異常を引き起こした……と考えるには少し状況が難し過ぎるな。
だって、そんな方法じゃあ妖気が少なからず残っているから私や椿が気付くハズだし……誰かを操っていた線も、皆から感じる妖気が普通な事から有り得ない。有り得るとするなら、それこそ事前に未来予知でもしていなければ無理な話だ……。
――そう思った時、再び椿が思い付いた表情で顔を上げた。
「昨日まで空間は普通の状態だった――と、そう錯覚させられていたら?」
「なっ……!そんな事が……!?」
驚くオッサンを他所に、私の脳内も椿と同じ予想結果に行き着いていく。
「そうか!"アイツ"なら出来てても不思議じゃない!あの何もかもをウヤムヤに隠してしまえる、そんな変な力を使える"アイツ"なら……!」
「まぁ、ひょっとしたらの話です。まだ本人も関わってる証拠も見つかっていないから、あまり大きな声で言うものじゃないけどね……」
「うっ、ごめん……でも、そうなるとやっぱり街の人達を連れ去りだした段階で、既に旧校舎の空間を弄ってたって考えて良いかもね」
「ええ……そっちの方が問題無く、いつでも侵入者を別な所に飛ばせますからね」
そうして私と椿が空間異常の本質を掴んできた所で、白狐さんは私達の間から首をニョッと出してきた。
『とにかくじゃ、いつまで此処で考えていても仕方が無い。とりあえず屋敷の外に出て、黒大蛇の方を何とかするぞ』
「そうですな、白狐さん。此処の人達の為にも、私達が一肌脱ぐとしますか!」
「うん、綾ちゃんの言う通りだね。アレを何とかしない事には、外を調べようにも調べるどころじゃありませんから」
そうして私達がホールから直通する出入口に向かおうとした時、ふと雪がオッサンとコソコソ何かを話してる様子が耳に入ってきた。
「ところで雪とやら……次のファンクラブ創刊号は、いつ頃に?」
「そうだね、今はドタバタしてて忙しいし。来月、出せるかなぁ……」
「月1なのだろう?頼みますよ〜……なんせ次は偶数月。となると、つまり……」
「分かってる、特大号の予定。ちゃんと、椿と綾の写真を沢山――」
そう雪が言おうとした矢先、見かねた椿がニッコリ笑顔を浮かべながら雪の後ろから顔を覗かせてきた。
「へぇ〜……沢山、なんですか?」
「はっ……!つ、椿……いや、その……これは」
「ねぇ、雪ちゃん。創刊号って事は、お金取ってるの?」
「いや、それは流石に……」
それでも何とか言い逃れようとする雪にはとうとう私も見苦しく感じてきたので、"ある情報"をスマホの画面に表示して雪に見せる。
「ふむふむ……ファンクラブのホームページによると、会員費は月に1000円ですか〜」
「へぇ、会員費……それって一体、どうしているんですか?雪ちゃ〜ん?」
「うぐ、それは大丈夫……お金の方は、翁に管理してもらっているから。私は2人を世界的アイドルにしたいだけで、お金儲けをしたい訳じゃないの。だけど、翁の命令で……」
あ、椿の表情が更にヤバくなった……顔はニコニコしたままだけど、目が完全に笑ってませんわコレ。
こりゃ、後で爺さんの方も大変な事になりそうだな〜……。
『ふっ、面白い。それならば、いっそ世界ツアーというものも……』
「でも白狐さん、そうなると椿を独り占め出来なくなるよ〜?」
『ぬっ……それは困る。綾の言う通りじゃな』
そんな普段通りな白狐さんにツッコミを入れてホールを出ようと振り返ると――
「なんで、皆して僕と綾ちゃんの前に並んで……?」
「あの〜……そんなに並ばれたら、ホールから出られないんだけど……」
なんと、今度は私達の前にいつの間にか悪霊やハンプティダンプティもどきも含めた行列が出来てしまっていたよ。
「いやぁ……俺達も君ら2人のファンなんだ。だから、せめて一緒に写真を撮らせてくれ!」
「俺もだ!頼む!」
「待って待って!私も私も!」
「馬鹿者!料理長である私が先だ!」
いや、そういう役職とかで優先はしてないんですが……って、いかんいかん。危うく、私も整列させ直してる雪の雰囲気に流されかけちゃったぞ。
「は〜い、並んで並んで〜――って、ちょっ!椿に綾、襟首を掴まないで!」
「雪ちゃ〜ん!君が率先したらダメでしょう!」
「そこまでしてられる余裕無いのは分かってるだろ!流石の私と椿でも、こんな沢山の人達にゃ触れ合い記念とか何とかやってられね〜からな!」
そうして私と椿は、並んでいた皆にサインをしながら雪を引っ掴んでホールを後にしていくのであった。
カナの夢を引き継いだとは言ってたけど……まさか、ここまで壮大なスケールに発展してたなんて予想外の予想外だったわ!
全く……雪ったら、カナと同じくらいに私と椿が好き過ぎんだろ!