私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第参拾弍話 ええい、卑怯もラッキョウもあるもんかい!

 

屋敷の空間異常から何とか抜け出せた私達は、ようやく旧校舎の探索に取り掛かる。

 

それにしても……最初に入ってきた時にあった大穴は何処へやら、今は出入口と廊下の間は全くの元通りだ。そうなるとやっぱりこれも、あの空間異常が原因だったみたいだね。

 

『とりあえず皆、無事のようじゃな』

 

「いや、私と椿はあんまり無事じゃないんだけど……皆して頭の上に落ちてきやがって〜」

 

「うぅ、お陰でコブが沢山出来ちゃっています……痛たた」

 

白狐さんが私と椿の頭を優しく撫でながら、治癒の妖術で回復させてはくれたけど……いやはや、こんな所で妖気を無駄遣いさせられるのは勘弁したいよ。

 

今の狐2人は妖怪食を食べても妖術の1〜2回分程度しか妖気が回復しない状態だからね……ずっと椿が心配しているのも頷ける。

 

『全く、彼奴には後で文句の1つでも言ってやらんとな。こんな事で椿の可愛い頭の形が変わってしまったら、どうするつもりじゃ』

 

そう言って白狐さんは両手で狐耳を包むように椿の頭をナデナデしていたけど、黒狐さんがムッとした目で後ろから見てるぞ〜?

 

「本当、それは分かる。綾と椿が傷物になっちゃったら、絶対に許さない……!」

 

まぁ、かく言う私も雪にハグされながら頭にコブが出来てないか撫で回されてたけどね……うぐぐ、背中にフニョンフニョンしたのが当たって地味に恥ずかしいんだけど。

髪の色も似ているし、知らん人から見たら姉妹に見えるんだろうな〜……って、私は何を考えているんだか。

 

「はいはい!こうして皆も揃った訳だし、とりあえず私と椿で妖気を探るよ!」

 

「ええ、そうですね綾ちゃん。例え微弱とはいえ、半妖の人達の妖気が感知出来れば、何処に捕まっているかがすぐ分かりますから」

 

そうして私は椿と共に目を閉じて、漂っている妖気の流れや質を持ち前の高い感知能力で調べていく。

しかし、旧校舎の隅から隅まで意識を集中させても、誰の妖気も感じ取る事が出来ない。

 

「あれ?おかしいですね……僕達も含めて、妖気が一切感じられないんだけど……」

 

「いや……待って、何かタバコ臭くない?」

 

『むっ?確かに、この匂い……まさか、捕まった三間坂の妖具の力で、妖気を感知出来ないようにしているのか!?』

 

「んなっ!?それじゃあ――」

 

「1つ1つ教室を調べないといけないって事じゃないですか!」

 

そう椿と私は同時に驚いた声を上げ、苦々しい顔をする狐2人に振り返った。

 

さっきの屋敷みたく教室にも空間異常とか何らかの罠を張られている可能性があるのに、私と椿の感知能力が役に立たないんじゃ、調べるにしても危ないどころじゃないぞ……。

 

すると、そんな私達に龍花さんは覚悟を決めた様子で声をかけてきた。4つ子の方を見ると、他の3人も同様に「そんな事は分かっている」といった真剣な表情をしていた。

 

「椿様に綾様、こうなってはもう他に手立ては無いかと……」

 

「でも龍花さん、危険です……何があるか分からないんですよ?」

 

「その為に私達が居るのですよ、お2人共。私の盾で周囲を守りながら私達4人が全員を囲い、何かあったら身を呈して庇います」

 

「玄葉さん、それだと貴方達が危ないです!」

 

「椿の言う通りだよ!玄武の盾くらいなら私だって使えるし、そこまでしてもらわなくても……!」

 

「大丈夫です、椿様に綾様。四神の力を持った私達を甘く見ないでください」

 

そんな私達の心配に対して、虎羽さんはそう言いながら自信満々といった雰囲気で頷く。

 

だけど、私達からしたら相手が此処に何を仕込んでるかすら分からないから、なるべく危険な橋を誰かに渡らせたくはないんだけどなぁ……。

 

そう思っていた時、白狐さんがポンと私と椿の肩を叩いてきた。

 

『椿に綾よ。時にはこういう状況に対応しなければならないんだ。他人を気遣い続けていては、やるべき目的を達成出来ないぞ』

 

「うっ……」

 

「だ、だけど……」

 

そんな事、私も椿も修行中に酒呑童子やオジサンから何度も言われてきたから分かっている。

 

それでも、私達は皆を守る為に強くなっているんだから、その守りたい人達に無茶はさせたくないんだよ。だから……!

 

「あ〜もう!それなら私が先に調べて来る!」

 

「駄目です、綾ちゃん!君に危険が及ぶくらいなら、僕が代わりに調べてきます!」

 

『『何(じゃと)!?』』

 

しかし……その考えは椿も同じだったらしく、教室の扉を開けようとした私を引っペがそうとしてきたのだ。

 

「ちょっ、私が行くから椿は待ってて!」

 

「イヤです!こればかりは、いくら綾ちゃんでも譲れません!」

 

『待て待て!2人共、ヤケになる――ぐはぁ!?』

 

あっ、扉の前でグイグイやってたらウッカリ黒狐さんを2人で殴り飛ばしちゃった……ごめん。

 

でも、今はそれどころじゃない!椿が先に入って、危険な目に合うような事だけは避けたいんだ!

 

「ぐぬぬ――って、どわぁ!?」

「うぐぐ――ぎゃん!?」

 

だけど、あまりに私と椿が強く押し退けあっていたせいか、2人してドンガラガッシャーン!と教室の扉をブチ抜いて教室に倒れ込んじゃったよ。

 

……そして、そんな私達の頭にカーン!コーン!とコント番組のツッコミみたく、降ってきた金ダライが当たったのであった。

 

「一応聞くけど、美亜……これって、呪術?」

 

「安心しなさい、2人共。これは正真正銘、手作りの罠よ。というか、アンタら何で教室に入るだけで揉み合いになってるのよ?」

 

「ですよね……」

 

こればっかりは美亜の言う通り、私達2人の完全な暴走だ。よくよく頭を冷やして考えてみれば、私と椿は他人を心配するあまり相当に周りが見えない状態になっちゃっていたよ。

 

でも、こんな手作りの金ダライトラップ程度なら無理に突撃しなくても良かっ――

 

「椿姉さん!綾姉さん!こっちの教室、何か中央に煮込んでる様子の鍋が置いてあるっすよ〜!」

 

「って、楓ぇ!?いつの間に別な教室を開けたんかい!!」

 

「楓ちゃん!勝手に開けないで!もし爆発でもしたら危ないですよ!!」

 

すぐさま私達は楓の声が聞こえた方に走り、ヒョイと2人で彼女を神輿のように担ぎ上げた。

 

あっぶねぇ〜……あの鍋、絶対ヤバいトラップじゃん……どう見ても中身はジャイ〇ンシチューなのに、何か美味しそうな匂いがするし。

 

「ね、姉さん達……自分、何故だか分からないけれど、あれを食べたいっす……」

 

「おぅ止めとけマジで!あんなの、腹壊すだけじゃ済まないぞ!」

 

「綾ちゃんの言う通りです。そんな自分勝手な事をする楓ちゃんには……えいっ」

 

「ひっ!!椿姉さん、尻尾は……!」

 

って、椿も椿で何をやってんだか……。

そういや、楓の尻尾は椿のよりもフサフサモフモフしてそうだな……やっぱり狸の尻尾なだけあって、触り心地も良いのかな?

 

「椿姉さ〜ん……自分も尻尾が弱いんっすよ……は、離してくださ〜い!」

 

「ふ〜ん、そうですか。それじゃあ綾ちゃん、このまま教室から離れますよ〜」

 

「ほーい、りょうかーい」

 

「あぁぁぁ……そんな〜!せめてアレを食べさせて欲しいっす〜!」

 

こりゃ完全に楓は鍋に魅了されちゃってアウトだな……私と椿に担がれて身動きが取れなくなってても、まーだ鍋を食べる事に執着するくらいだもん。

 

「で、美亜……あの鍋は?」

 

「あれも呪術じゃないわね……う〜ん、何これ」

 

「でも、教室の扉を開いた瞬間に楓ちゃんが中央の鍋に執着しだしたから、多分扉に何か仕掛けているんでしょうね……」

 

「こんなしょーもない罠、八坂元校長が仕掛けてたりしてな〜」

 

そう私が言うと同時に椿は少し笑って、それから目の前の教室に視線を向けて腕を組んで唸った。

 

「う〜ん……そうなると、扉を開けずに調べないといけませんか……」

 

『しかし、そんな事が出来るのか?』

 

「こんな時にこそ小次郎が居れば助かるんだけど……どうしよう?」

 

「大丈夫です、白狐さんに綾ちゃん。扉に触らなければ良いのなら――玩具生成!」

 

すると、おもむろに椿は妖術で座布団ほどの大きさがあるメンコを生成し、それを両手で思いっきり教室の扉に投げ付けた。

 

その瞬間、叩きつけられたメンコからは凄まじい衝撃波が発生して、教室の扉を丸ごと旧校舎の外まで吹っ飛ばしてしまったぞ。

 

「さてと、中は……?」

 

そんなブッ飛んだ光景に呆然とする私達を他所に教室へと入っていった椿は、何故か和傘と鞠を見つけた途端にフラフラと引き寄せられるように歩きだしていく。

 

あっ、これは……嫌な予感が!

 

「椿、駄目!!」

 

『いかん!あれも罠じゃぞ、椿!!』

 

すぐさま私と白狐さんで尻尾を掴んで引っ張るも、椿は取り憑かれたように両手を前に出して進もうとしているよ……ヤダ何この子、怖い。

 

「きゃぅ!?白狐さんも綾ちゃんも止めないでください!あれを、あれを回したいんです!そして、いつも以上に――」

 

『「それ以上は言うなぁ〜!!」』

 

"いつもより多く回しております〜"なんて言わせるかぁ!……って、そうこうしていたら避難させてた楓が、ま〜た鍋の方にフラフラ歩いているし!!

 

「お鍋……お鍋を……!」

 

『不味い!誰か楓を止めていろ!』

 

「それ以上は駄目。楓、ストップストップ」

 

「冷たっ!?ちょっ、雪姉さん!止めないで下さいっす!」

 

あ〜っぶねぇ〜!雪が足元を凍らせてくれたから何とか進行は止められたよ。だけど……楓の方も椿と同じく、前のめりになってまで鍋に手を伸ばそうとしているな。

 

『くっ、何とかならないのか!このままでは2人が「狐と狸」だなんてコンビを名乗りだして、お茶の間に化かし合いの様相を呈してしまうぞ!』

 

『何を上手い事言っとるんじゃ!お主も手伝え、黒狐!!』

 

「2人共そんな事言ってないで、シッカリ椿も楓も押さえて〜!!」

 

そうして暴れる2人を押さえる事に四苦八苦していたら、今度は何故か龍花さんが私の隣にやって来た。

 

「綾様、少し失礼……ていっ!」

 

すると、おもむろに龍花さんは思いっきり椿の頭を1mくらいあるデカいハリセンでスパーン!!と叩いたぞ!

 

「いたぁっ!?――って、あれ?僕は、一体……?」

 

だけど、その瞬間に椿は和傘や鞠への執着が無くなって、ハッとした様子でキョロキョロしている。

 

「嘘、アレで治った!?」

 

「こ、こほん……こ、こんな事もあろうかと用意しておいて良かったです」

 

そう龍花さんが少し恥ずかしそうに頬を赤くしている後ろでは、楓がスパパーン!!と朱雀さんと虎羽さんにWハリセンで頭をシバかれていたよ。

 

なるほど……さっきまで一際慎重そうに教室や私達の様子を伺っていたのは、こんな事態への対策も一緒に考えてくれていたからだったのか……。

 

「さて、お次は誰ですか?教室を開けるなら、私達の準備は万端ですよ?」

 

すると、龍花さん達4人は何故だか嬉しそうな様子でチラチラと教室と私達を交互に見てくる。

 

「えっと……僕と楓ちゃんはやったから、次は――あっ、待ってください!皆、凄い勢いで離れていかないで!」

 

無論、それを見て嫌な予感がした私も皆と一緒に後ろへ下がりましたよ!

 

「椿、流石に無理だ!これから教室を開けて何かあったら、絶対アレでシバかれるって事じゃん!ヤダよ、私!!」

 

「ちょっ、綾ちゃんまでもですか!それは卑怯です!不公平ですよ〜!!」

 

ええい、卑怯もラッキョウもあるもんかい!椿と楓の二の舞、いや三の舞を踊るのは勘弁したいわ!

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