私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「あ、そ〜れよよいのよ〜い――」
「ていっ!」
「いいっだぁい!!……ちっくしょ〜、とうとう私の番かよ〜」
――あれから私達は、公平にジャンケンで教室を1つ1つ順番に開いていき、罠が発動しては龍花さん達にハリセンで正気に戻される事を繰り返していたよ。
それを繰り返していく内、罠は扉を触れただけじゃ発動せず、教室に入った瞬間に発動する事も発見したぞ。
そして、私が開いた"どじょうすくいがしたくなる"教室も調べ終えて、次は椿の番なんだけど……今度は開いた途端に、あのバラエティー番組あるある「押すなよ!絶対押すなよ!」な湯船に向かおうとしている。
「はい!」
「いったぁ〜い!!」
まぁ、それも先程から続いている龍花さん達によるハリセンツッコミで正気に戻してくれたけどね。
「う〜、痛たた……龍花さん、ありがとうございます。でも、やっぱり気になるんですよね、もしかしてそのハリセンって……」
「うっ、秘密です」
とはいえ、あのハリセンについては一切こっちに何も話してくれないのも相変わらずだ。う〜む、怪しい……まさか、こんな事態を最初から想定してたとは思えないだろうし。
すると、そんな龍花さん達の様子を伺っていたのか、わら子が私と椿の方にやって来てコッソリ耳打ちをしてきたぞ。
「あのね、2人共……実はアレ、いつもボケまくっている皆にツッコミを入れようと4人で魂を込めて作ったハリセンなんだよ」
「「やっぱり自作だった(んですか・んかい)!?」」
しかも4人とも入魂するレベルだなんて……だけど、そう考えたら今の状況を何とか出来ちゃってるのにも納得だわ。
いやはや、なんというか……これじゃまるで、変な所で奇跡的なボケとツッコミの応酬が生まれちゃってる感じだな……。
「はぁ……聞こえていますよ、座敷様」
それを聞いていた龍花さん達4人は普段の仏頂面ながらも、少し恥ずかしそうに頬を赤くしていたよ。
そして、椿に「早く次に行ってください」と言わんばかりにチラチラ目配せしてきたぞ。
「あの……またなんですか?今、僕はやったばかりなんですけど……」
「はいはい、それなら次は私が行きますよ〜っと」
そんな訳だから龍花さん達、そんなハリセンを女王様の鞭みたいな持ち方しないでくれます?
あれじゃあ次にシバかれる時、頭どころか人としての尊厳すらもシバき倒されそうで怖いんですよ……。
◇◇◇
「はぁ、はぁ……あの、この教室で1階は最後です……」
『椿よ、大丈夫か?』
「白狐さ〜ん、少しは私の事も心配して欲しいんだけど……あんなにシバかれたら身体的には平気でも、精神的にはヘトヘトだよ〜……」
そう心配する白狐さんの頭に軽くチョップしながら、私は今日一番のデカい溜息を吐く。
何せ、あれから私も椿も龍花さん達の視線に怯えながら一気に教室を調べ倒して、何回もハリセンの餌食になったんだから気分的には疲れるわ……。
とはいえ、そんなこんなで私達はようやく廊下の突き当たりにある最後の教室へと到着した。
「さて、此処に誰も居なければ2階より上にって訳だけど……」
「お願いします、此処に居てください……」
またあんなハリセンでシバかれるのはゴメンだという気持ちで祈りながら、私は椿と共に教室の扉を開いて中を覗く。
すると、そこには連れ去られた沢山の人達が集まっていて、その全員が虚ろな様子で部屋の奥の方を向いて正座していた。
「よし、居た!だけど、皆こんな所に集められていたなんて……早い所、ここから連れ出さないと!」
「というか綾ちゃん、ここは本当に教室なんですか……?この中、まるで何処かの神社の本殿みたいで広いよ!?」
それでも私と椿は目の前の人達を助けるべく、急いで教室の中に足を踏み入れていく。
「えっ!?綾ちゃん!椿ちゃ――!」
「あれっ、皆!?そんな、扉が消えてるなんて!!」
しかし、その瞬間にブツッと里子の叫ぶ声を遮るように、私と椿は教室の外に居る皆と分断されてしまったのだ。
「クソッ、またやられた!この感じ、さっきの屋敷と同じだ……!」
扉があった場所に拳を叩きつけながらイライラをブチ撒ける私に、椿は不安げな表情を浮かべつつも冷静な様子で肩を優しく叩いてきた。
「綾ちゃん……今はジタバタしてもしょうがないよ。ここにも出口はあるハズだし、とりあえず捕らえられた人達を助け出す事に集中しよう」
「OK、分かったよ椿。それと、捕まった人達が此処に集められてたのは運が良かったかな。もしバラバラに場所を移されてたら救出に時間がかかって、その間に相手に付け入る隙を作っちゃうだろうし」
「ええ、そうですね……」
そうして私は椿と共に、皆の様子を確認していく。皆は一心不乱といった様子で、部屋の奥に見える神棚らしい物体に拝んでいて、その中には捜査に入って姿を消した零課の人達もあった。
「皆!大丈夫ですか!?」
「おーい!聞こえてんのか!!……駄目だ、耳元で叫んでみても無反応だなんて」
「ここに閉じ込めた時、皆に外的刺激を一切シャットアウトする程の術をかけたのかもしれないね」
なるほど、だけどシャットアウト出来る情報に限りがあるなら、それを超える事をすれば――
「それと綾ちゃん。念の為言っておくけれど、あまり皆に危害が及ぶような事はしないでよ……殴るとか、蹴るとか」
「や、やらないよ!流石に!!」
すると、それを察知したように椿からジトっと睨まれました。
あっハイ、やっぱり駄目ですよね。ヤダな〜椿、モチロンそんな危ない真似をする訳ないじゃないですか〜……。
「やれやれ、全く……困った子達だね、椿君に綾君。遂に、こんな所までやって来るなんて」
――そう思っていた矢先、私達の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
私と椿にとっては久しぶりの声でありながら、その優しげな声に秘められた凄みは異様なまでに増大している。まるで、既に後ろから首筋に手を掛けられているかのように……!
それ故、その瞬間から「逃げないとヤバい」と脳が警鐘を鳴らしていくのを感じつつも、それを何とか堪えつつ私は椿と共に声の方向へ振り返った。
「や、八坂さん……貴方は一体、何者なんですか?」
「おや、私の事を『さん』付けか……よもや、校長とも呼ばないとはね。術が切れたのかな?」
そう言って、八坂はパチッパチッと扇子を開いたり閉じたりし始める。
それと同時に脳内には「この人は学校の校長だ」という認識が浮かんできたが、それに飲まれないよう堪えながら、私は相手に食って掛かる。
「くっ……それを止めろ、八坂さん!それは私と椿には、もう効かないんだ!」
「ふむ……なるほどね。思い出した訳ではなく、力を使いこなしている訳でもない。それでも、2人共その段階とは……」
訳の分からない事を呟き、それから八坂は大きくパチン!と扇子を閉じて、私達に視線を向けてくる。
その恐怖感に耐えながら、私と椿は彼を睨みつけた。
「はぁ、はぁ……くっ、もう一度言います。貴方は、"何者"なんですか?」
「ふっ……それに答える義務は、私には無いだろう?」
「ふざけんな!鎌鼬(かまいたち)の半妖だなんて嘘ついて、華陽や雫と手を組んでたりして!そうやって私達を騙して嘲笑ってたのは、何時からなんだ!?」
「うん、綾君……その感情はよろしい。だがね、そもそも君らの前提が間違っているよ。私は初めから、"華陽達と手を組んではいない"。つい最近に彼女らに"私の為そうとしている事"を見せたが、残念ながら共感はしてもらえなかったのだよ。全く、嘆かわしい事だ」
だが、八坂は表面だけ悲しそうに内側の感情も見せる事なく、そう淡々と私と椿に語っていく。
「だから、綾君の"何時から"という質問に対しては、最初から……という事になるのかな?」
その八坂の言葉に、今度は椿が怪しむ眼差しを彼に向ける。
「最初から?それは僕が妖狐になって、綾ちゃんが霊能力者になってから……という意味なんですか?」
「いいや、君らが入学してからだ」
「「なっ!?」」
その八坂の言葉に、私達は思わず驚きの声を上げる。
「それって、一体どういう――」
「どういう意味も何も椿君、私には最初から分かっていたんだよ……"ある予言"でね」
「予言だって?だったら……私と椿が入学した時より前に、お前は私達の事を知っていたのか!?」
「その通りだよ、綾君。君らがこの学校に来る事は、随分と前から知っていた……とんでもない"神妖の妖気"を持った妖狐と、それと同じくらいの力を持った人間が来るのをね」
「まさか、件(くだん)の……」
すると、その椿の言葉に対して八坂は少し苦笑いしながら首を横に振ってくる。
「いやぁ、それはたまたまだったよ椿君。あの妖怪は時折、世界が変わる重大な予言をする事があるからね」
「……それと僕に、何の関係があるんです?」
そう椿が尋ねた瞬間、八坂は苦笑いをしたまま私と椿を交互に指さしてきた。
「ふっ……鈍いなぁ、君らは。世界が変わる重大な事とは、この世界に君達2人が現れる事さ」
「なっ!?ぼ、僕と――」
「私、が……!?」
その衝撃的な事実には、私も椿も一瞬固まってしまった。
クソッ、逃げなくちゃいけない状況だというのは分かっている……だけど、椿と同じくらい私が重大な存在だって理由は何なんだ!?