私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾捌話 お風呂は静かに入りましょう

 

多くの事がいっぺんに起こった今日の晩、私達は酷くお腹が空いてしまい出された妖怪食へがっついてしまった。

里子からは2人とも妖気切れ間近になっていると言われて、白狐さんと黒狐さんからも気をつけるようにと注意された。きっと試験の時とさっきの戦闘が大きな原因なのだろう。

 

今回の夕食は私達のライセンス五級取得祝いだという事で、和食中心の中に大根おろしや青しそで風味付けされた和風のハンバーグが並んだ。椿の事はもちろん、私の事までも自分の事のように喜んでくれた妖怪達を私は少しだけ好きになっている気がする。今回はオジサンも色々手伝う為に駆けつけてくれた。

 

けれども本命のハンバーグにかぶりつこうとした時にハンバーグが手足を生やして逃げ出してしまい私と椿は電磁鬼の時みたく、また全力で追いかける羽目になった。

 

里子曰く「ゆっくり食べないと怖がって逃げてしまう」という事だったそうだが、私達はそんな余裕も無かったので無理やり捕まえて食べたのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

そうして、オジサンが壊れた家の扉などを直し終えて帰った後、満腹になってウトウトとしている所で里子に引っ張られお風呂へと運ばれていく。

 

「待って里子〜今動けないから〜」

 

「食べた後すぐにお風呂は駄目だと思います〜」

 

「椿ちゃ〜ん!綾ちゃ〜ん!もう30分は経っていますよ〜!!」

 

「・・・嘘でしょ、マジで?」

 

「えぇ!?い、いつの間に!」

 

 

どうやら色々あった疲れからか、ふとした時に意図せず深く眠ってしまったようだ。そんな事を考えている内にも、私と椿は次々と里子によって裸にされてしまい浴室へと引き込まれてしまった。

やはり家事を手際よくこなせるだけの腕はある、という事なのだろうか。

 

――自分の貧相な胸と椿と里子の胸を比べて、なんとも言えない劣等感に少し落ち込む。

 

「は〜い、2人とも。まずは体を洗いましょうね〜」

 

「はいはい、分かってるよ」

 

「さ、里子ちゃん。それくらい自分で出来ます」

 

「駄目で〜す!2人ともまた寝ちゃいそうですからね〜」

 

「・・・勘弁してくれよ」

 

その後私達の抵抗もむなしく、目をキラキラとさせて尻尾を振る里子にシャワーの前で椿と2人して髪と体をしっかりと洗われてしまった。

 

「結構綾ちゃんの髪、傷んでますね〜。可愛い女の子なんだから、ちゃんと手入れしないと駄目ですよ?」

 

「別に、私の髪なんだからそれくらい良いでしょ」

 

「あっ、そういえば。ご飯の時、おじいちゃんが居なかったけれど大丈夫かな?」

 

「椿の家族の事で、酷く落ち込んでたようだったよね」

 

「あぁ、翁なら大丈夫ですよ。私がご飯を持っていった時に様子を伺ったら、ちょっと1人にして欲しいと言われました。・・・あれで思う所があるのでしょうね」

 

私の髪を丁寧に洗いながら里子が答えた。

 

「里子ちゃんは、何か心当たりない?」

 

「――椿ちゃんは本当に優しいんですね。翁の事が心配?」

 

「当たり前でしょ里子。今の椿にとっては、信頼出来る唯一の家族なんだから」

 

「ねぇ、何か知っているなら教えて?」

 

「椿ちゃん必死ですね。本当のおじいちゃんじゃないのに、まるで本当のおじいちゃんみたいに心配するんですね・・・私も、椿ちゃんにそう言ってもらいたいなぁ」

 

すると里子は椿の尻尾を触りだした。

 

「だったら・・・尻尾、弄らないでくれる?んぅっ」

 

「おいおい、こっちは真面目に聞いているんだ。変な事してないで、いい加減に教えてよ」

 

「ふふ、分かったよ。・・・いい?これは本当に、他の妖怪の皆にも話してない事だからね。――単純な話だったけれど、翁とセンター長の達磨百足さん。それにあの蟲喰いの父親だった妖怪は昔ここで一緒に住んでいて、色々と競い合いながら互いに切磋琢磨していた仲だったんだって」

 

「なるほどね。それなら結界に穴を開けるだけの実力があっても不思議じゃないよ」

 

「だけどある日、その蟲喰いの父親が2人を陥れて何かを略奪しようとしたらしいの。その何かは分からなかったけれど、相当マズい物だったと思うよ。だってその話になると、2人の顔付きが真剣になっていたからね」

 

「そりゃ、そんな顔にもなるだろうね」

 

私はため息をつく。だが次に里子の口から出てきたのは意外な言葉だった。

 

「でもね・・・その蟲喰いの父親を2人は許しているような、そんな言葉も出ていたんだよ」

 

「なんだって?それはどういう事なの?」

 

「とにかく、聞き耳を立てて聞けたのはそれだけ。良い?翁は他の妖怪にはこの事を喋っていないからね。知られるとマズい物を狙われて、今もまだ狙われているのかもしれないからね」

 

「とりあえず、分かる事は分かった。私達に話してくれてありがとう里子」

 

「どういたしまして〜。さっ、椿ちゃんと綾ちゃん!今度は私の背中を洗って〜」

 

そう言って里子はいつもの様子に戻ると、振り返って私達に交代といった感じで背中を向けてきた。

 

「全く、しょうがないね」

 

「ふふふ、椿ちゃんとまたこうやって体の洗い合いが出来るなんて嬉しいな」

 

「本当に仲が良かったんだね。ちょっと私も羨ましいかも・・・」

 

「も〜。綾ちゃんの事だって大切な椿ちゃんの友達だって思ってますよ〜」

 

里子を洗い終えて体の泡を流し終えた私達は湯船へと浸かった。翠色の仄かな香りがする湯で大きく一息をつく。大浴場みたく広い檜の湯船は私にとっては非常に落ち着ける空間だと思えた。

 

「あ〜極楽極楽」

 

「里子ちゃん、これは薬湯なのかな?」

 

「そうだよ〜。それで椿ちゃん、女の子の身体にはもう慣れた?」

 

「そういえば、里子の言う通りだね。椿、何か気になったりしてる事とかは?」

 

「えっ?あ〜ドタバタしていたから忘れていたよ。・・・でも、元々女の子だったからなのかな?全く違和感がないんです」

 

「それなら別に――」

 

と思ったのだが、椿が手で自身の股間を隠しているのを見て、私はまだ彼女が翼という男の子である事を思い出して急に羞恥心を感じて胸元を隠した。私も相当鈍くなっていて油断してしまったのかもしれない。

 

「でも・・・僕は男の子なんだし、女の子の身体に慣れちゃうなんてそんなの信じたくない。元々女の子だったという事も、信じたくない」

 

「ごめん椿、ちょっと迂闊な質問だったね・・・」

 

「けれど椿ちゃん。それは椿ちゃんが男の子として生きていた時の記憶があるからだよね?あなたにかけられた強力な変化の妖術は、もう解けたのよ。その内、女の子としての自分を思い出すハズ。でもその時は恐らく、記憶の封も解かれるかもしれないね」

 

里子の真剣そのものな眼差しに、椿は耳と尻尾を下げて不安そうに湯へ映る自身の顔を見ているようだった。

 

「大丈夫だよ椿ちゃん。椿ちゃんは色んな妖怪に愛されているから、記憶の封が解かれても皆が助けてくれるよ」

 

「そこまで心配そうな顔しないでよ、椿。私だって頑張って椿を守れるくらいに強くなるからさ!だから、ゆっくりと現状に慣れてくといいと思うよ」

 

そうだ、椿は私が守るんだ。

 

例え今はまだまだ強くなくとも、いつかは彼女の前に立って何物をも打ち砕く盾となろう。

 

そう私が安心させようと微笑むも、依然として椿の様子は晴れない。

 

「椿ちゃん?どうしたの?」

 

「私達がついてるから不安になる事なんて――」

 

すると椿はバシャッと自身の顔に湯をかけ、私達に対して何か決心した顔持ちで私と里子へ向き直る。

 

その時の椿の表情は、私が今まで見てきたどんな表情でも「自分はこうありたい」という"想い"が強く感じられた。

 

きっと何時しか私は椿の事を、か弱く小さな存在だと思ってしまっていたのだろう。

 

けれども、現実はそうじゃなかった。

 

それはとんでもない思い違いだった。

 

私が知らない内に――椿は椿なりに、自分から変わっていこうとしていたのだ。

 

「綾ちゃん、里子ちゃん。僕、頑張ってみるよ!皆に守られてばかりじゃ、皆を失った時に後悔しそう・・・ううん、後悔する。だって僕にも戦える力があるんだから。まずはおじいちゃんに言われた妖怪退治と、センターから来る依頼の方を1人でやっていってみるよ」

 

そう言った椿に、私は「友達」として送り出す言葉をかけた。

 

「全く・・・椿は。いつからそんなに強くなったのやら。"2人"でしょ?私も同じような事しろって頼まれてるんだから、お互いに少しずつ頑張ろうね!」

 

「椿ちゃん、綾ちゃん――分かった!私も全力で、2人のお世話をするね〜!」

 

「ひゃぅ!?そう言いながら胸を揉むのは何でなんですか!?」

 

「っていうか、ついでと言わんばかりに私の胸も揉まないでくれる!?」

 

「え〜?椿ちゃんもついでに早く心の方も女の子になっちゃおうよ〜!・・・綾ちゃんはちょっと将来大変そうだけど」

 

「それはまだ時間をください!っていうか待って!綾ちゃんからマズいオーラ出てるって!」

 

「ほう・・・里子、それは喧嘩を売ってると見てよろしいかな?」

 

「わ〜!椿ちゃん、お助け〜!」

 

そんな事をやって、私達は湯船で互いに乳くりあったのであった。

 

「もう、昔は椿ちゃんが私を責めていたのに〜そのせいで私、目覚めたんだからね?ちゃんと責任とってくれなきゃだよ?」

 

「椿は昔に何してんの!?」

 

「し、知らないよ〜!」

 

そんな中で放たれた里子の一言が強烈に頭へ残った・・・と思う。

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